異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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 今まで前書きや後書きで「○○編開始です」「○○編終了です」などと言ってきましたが、それを作品の目次にも反映させました。あんまり章分けに拘る必要も無いかなと思っていたのですが、やはり言った以上はちゃんと反映させないといけないな、と思ったのでこの(意味不明な)タイミングで行いました。


犯した罪、そして赤竜。あとブリッツボール。

 ワッカの作戦により、崖の近くへと誘導された黒竜。その背中にエルゼと八重の攻撃が炸裂した。

 

「ゴオオッ!?」

 

「痛ったあぁ…!硬すぎるわよコイツ!」

 

「それでも再生しないだけマシでござるよ」

 

エルゼが文句を言い、八重がなだめる。背中に鈍い痛みを感じた黒竜はその場でスピンをし、2人を払いのける。

 

「「きゃああ!!」」

 

2人は()()()上方向へと弾き飛ばされる。背を下にした黒竜が2人に向けて火炎弾を吐き出した。

 火炎弾の直撃を確認し、油断する黒竜。しかしエルゼと八重は火炎弾を突っ切って落下攻撃を仕掛ける。「バファイ」の賜物(たまもの)だな。

 

「ブースト!!」

 

「せやぁっ!!」

 

エルゼのガントレットでの一撃が敵の腹に直撃。八重は刀で敵の右目を斬りつけた。

 

「ギャオオオッ!!」

 

黒竜の悲鳴を聞きながら、2人はあえて追撃せずに地面に飛び降りる。泡玉爆弾(バブルボム)に当たらぬよう注意しながら。

 

「ギャオオオオガッ!!?」

 

痛みにもだえていた黒竜は、自身の辺りを浮遊する「バブルボム」の存在をすっかり忘れていた。不用意に動いている間に自ら爆弾に当たりに行く結果となってしまい、その報いを受けることになる。破裂した泡玉の勢いで飛ばされた黒竜は更に別の泡玉に激突。ワッカとリンゼは「バブルボム」を操作し、黒竜に一弾ずつ泡玉を当てていく。その様子はまるで、バンパーに弾かれ続けるピンボールの球のようであった。

 

「グオオオォォォ…!」

 

 最後の泡玉が黒竜を真下に弾き飛ばす。地面に激突した勢いで激しい土煙が吹き荒れた。

 

「けっ、少しは効いたかってんだ!」

 

 腕で土煙から顔を守りつつ、ワッカが吐き捨てた。大きなダメージを受けた黒竜は翼を動かし、再び上空へ飛び立とうとする。

 

「まだ動けんのかよ!?」

 

「させません!」

 

リンゼが魔法を唱える。

 

「水よ来たれ 清冽なる刀刃 アクアカッター」

 

水属性の刃が右の翼の付け根に命中した。

 

「続くぜ!ウォタガ!」

 

ワッカも水属性魔法で大きな刃を生み出して追撃する。同じ部分に命中した水の刃は、黒竜から右翼を切り取った。

 

「ゴガアアアアッ!」

 

片翼を失った黒竜は再び地面に激突、飛ぶ手段を失ってしまった。

 

「ブリッツボールはまだ来てねえが、このままけりを付けるぜ。ブリザガ!」

 

ワッカは巨大な氷柱(ブリザガ)でトドメを刺そうとする。しかし黒竜の生存本能がそれを許さなかった。敵は体を起こして口から炎を吐き出した。今までの火炎弾のような吐き出し方ではなく、火炎放射器のような吐き出し方だ。

 

「何!?」

 

ワッカの放った氷が溶かされてしまう。同時に炎は辺り一帯に火を起こし、己の身を守る炎の壁を作り出した。

 

「へっ、まだやられねぇってか?」

 

「でも、ワッカの魔法(バファイ)で炎は効かないんでしょ?」

 

「そうでござる。たたみかけるなら今でござる!」

 

そう言ってエルゼと八重は炎の壁を突っ切ろうと試みる。

 しかしその時、ワッカは自分達の体から淡い光が立ちこめ、空へと消えていくのを目にした。

 

「ダメだ!エルゼ!八重!」

 

「えぇ!?」

 

「な、何でござるか!?」

 

ワッカの叫びを聞き、2人は立ち止まる。

 ワッカが確認した光の消滅、それは「バファイ」の効果が切れたことを意味していた。黒竜との本格的な戦闘を開始する以前に使用していた魔法だったため、効果時間が過ぎたのだ。

 動きを止めた八重に向けて黒竜は顔を向ける。口を開け、火炎弾を放とうとしていた。

 

「やっべええ!!」

 

ワッカは焦る。「バファイ」の効果消滅という計算ミスで動揺し、判断が鈍っていた。このままでは八重に火炎弾が炸裂してしまう。

 と、次の瞬間、村と牧草地帯を分ける林の中から一挺(いっちょう)のナイフが飛んできた。そのナイフが黒竜の左目に命中する。敵は突然、視力を奪われてしまったのだ。

 

「ギュオオオッ!?」

 

相次ぐ予想外の出来事。しかし折角のチャンスを無駄にするほどワッカは抜けてなかった。

 

「バファイ!」

 

 ワッカは再び火属性無効(バファイ)の魔法をかけた。

 

「わりいな、バファイが切れてたんだ!もう大丈夫だぜ!」

 

「そう!行くわよ、八重!」

 

「承知!」

 

エルゼと八重は炎の壁を突っ切って、黒竜への追撃を開始する。

 

「リンゼ、オレ達はこの炎を消火するぞ!」

 

「分かりました!」

 

 ワッカとリンゼは水属性魔法で炎の消火に尽力する。

 視力を失った黒竜はやたらめったらに炎を吐き続ける。しかしこれは「バファイ」によって無効化されている。なおも敵の攻撃が止まらないので、黒竜は爪を振り回して抵抗を続ける。エルゼと八重はそれを(かわ)しながら、追撃を続けていた。

 そこに、()()()()()()()が到着した。

 

『お待たせしました、主!』

 

ビャクティスが口にブリッツボールを咥えて戻ってきたのだ。

 

「おお!良くやったぞぉ、ビャクティスぅ~」

 

ブリッツボールを受け取ったワッカが、ビャクティスの頭をなでる。

 

『私の頭をなでるのは後です、主!』

 

「おお、そうだな!後でタップリ可愛がってやるからな」

 

 そう言ってワッカは力を溜め始める。彼の横に現われたリールが回り始めた。

 

2HIT

 

2HIT

 

2HIT

 

リールの結果を確認したリンゼが、エルゼと八重に叫ぶ。

 

「お姉ちゃん!八重さん!退いて下さい!」

 

声を耳にした2人は黒竜から離れる。それと同時にワッカはコマのように回り始める。そんな彼の豪腕から次々と発射されるブリッツボールが、黒竜の体を打ちのめした。

 ワッカはシンとの最終決戦まで戦い抜いた歴戦の勇士だ。その攻撃力はエルゼ以上である。加えて、彼のブリッツボールには刃物(エッジ)が生えている。つまり彼のブリッツボールによる攻撃は、エルゼの破壊力と八重の殺傷力を両立した攻撃と言える。

 オーバードライブ技「アタックリール」の2HIT揃えは、そんな彼の攻撃を12回連続で行える技である。いくら表面に硬い鱗を持つ黒竜とはいえ、無事では済まない。加えてこれまでの戦闘で、すでに黒竜の全身は傷だらけだった。そんな体にブリッツボールが次々と炸裂する。

 

「グッガッゴッガッゴッギッゴッゴッギッゴッグッガアアア…!!」

 

ワッカは回転を止め、黒竜の様子を確認しに向かう。

 黒竜は最早、己の体を起こせないほど痛めつけられ、満身創痍の状態だった。

 

「終わりだな…」

 

ワッカが黒竜に言葉をかける。

 

「本来ならここで見逃してやっても良いんだが…。お前は、お前の犯した罪を償わなくちゃならねえ。自分の享楽、なんてふざけた理由で罪も無い人々の命を奪おうとした罪をな」

 

そう言ってワッカは再び力を溜め始める。リールが再度回り始めた。

 

ドクロ

 

ドクロ

 

ドクロ

 

ワッカは上空へ跳び上がり、黒竜の右翼が生えていた傷口にボールを直撃させる。

 彼の選んだ技は「ステータスリール」、攻撃を与えながら強力な状態異常を付与させるオーバードライブ技である。ドクロマーク揃えは敵に毒状態、暗闇状態、沈黙状態、睡眠状態を付与させることが出来る。

 この場でこの技を使うのはオーバーキルに他ならないのだが、黒竜の自分勝手な行動に対する怒りが、ワッカにこの技を選ばせたのだ。

 

「じゃあな。せいぜい苦しんで逝くこった」

 

 そう言ってワッカはその場を立ち去った。

 

 こんなハズでは無かった。弱っちい癖に生意気で、偉そうな(にんげん)共をぶっ潰し、竜の恐ろしさを世界に知らしめてやる。そんな軽い考えで聖域を抜け出し、人間の村を襲った。

 しかし、それがいけなかった。突如現われた訳の分からない人間に良いようにしてやられ、右翼と両目を失い、徹底的に痛めつけられた。オマケにあの人間は自分に毒を仕込んでいった。ヤツの毒が体を巡る。苦しい。辛くて堪らないのに声をあげることも出来ない。

 激しい苦しみと後悔に身をもだえさせながら、黒竜は息絶えた。

 

 黒竜へのトドメを終えたワッカに、エルゼ、リンゼ、八重、ビャクティスが駆け寄ってくる。

 

「やったわね!」

 

「お疲れ様です!」

 

「見事でござった!」

 

『さすが主!スカッとしました!』

 

口々に褒め称える3人と1匹に対し、ワッカは照れくさそうに言葉を返す。

 

「いやいや、オレ1人じゃどうにもならんかった。お前らの協力があったからこそ、アイツを倒せたんだぜ?ありがとよ!お前ら大好きだ!」

 

「えっ!?」

 

「だ、だだだ大好き!?」

 

「そ、そんな、拙者は…」

 

 しかし、ワッカの()()()()()()()()()()()()()()()()()に赤面している余裕は無かった。突如上空に現われた何者かが、ワッカ達に大きな影を落としていたのだ。

 

「なっ…、もう1匹来やがった!」

 

 ワッカが絶句する。影の正体は、赤い鱗の(ドラゴン)だった。黒竜よりも一回り体格が大きく、後頭部から尾の先まで白い体毛が生えている。

 

『こちらに争う意志は無い。我が同胞が迷惑をかけたようだ。謝罪する』

 

赤竜が声を発した。しわがれ声ではあるが、威厳のある声だった。

 

「アンタ、喋れんのかよ!?」

 

『我は聖域を統べる赤竜。暴走した若人(わこうど)を連れ戻しに来たようだが、どうやら遅かったようだ』

 

そう言って赤竜は、黒竜の亡骸に悲しそうな視線を送る。

 

「オレだってのかよ!?…オレだよなぁ」

 

『赤竜よ、蒼帝に伝えておけ。己の眷属くらいちゃんと教育しておけ、とな』

 

ビャクティスが割って入ってきた。

 

『この気配……、まさか貴方は白帝様か?なるほど、道理で黒竜ごときでは相手にもならぬ訳だ…』

 

驚きの声をあげる赤竜に対し、ビャクティスは不機嫌そうに言葉を返す。

 

『勘違いするな。黒竜を倒したのは我が主、ワッカ様だ。恐れ多くもこの小僧は我が主を侮辱しおったのでな。当然の報いよ』

 

『なんと…!?白帝様の主ですと…。人間が、ですか!?』

 

 赤竜が驚きの目でワッカを見つめる。どうやらビャクティスの主であるというのは相当スゴいことらしい。そう理解したワッカは胸を張って自己紹介する。

 

「いかにも!オレが白帝(コイツ)のご主人であるワッカさんだ!」

 

エラそうなワッカに対し、赤竜は地面に降り立ち、身を(かが)めて頭を下げた。

 

『重ね重ねのご無礼、ひらにご容赦願いたく…。此度の不始末は全てこの黒竜一匹(ひとり)が起こしたこと。何卒温情を…』

 

「ああ、ああ!わーったわーった!」

 

大きな赤竜に丁寧に謝罪され、ワッカは戸惑いながら言葉を遮る。だがしかし、人間代表として一言言っておかねばならないと思い立ち、赤竜に言葉をかける。

 

「でもよ、白帝(コイツ)の言う通り、後輩へのコーチングはしっかりやんなきゃダメだぞ?ワッカさんとの約束だ!」

 

『仰るとおりです。必ずや、聖域の皆に言って聞かせましょう。それでは、これにて失礼いたします』

 

そう返事をして赤竜は飛び立ち、聖域へと戻っていった。

 

『全く迷惑な、これだから蒼帝は…』

 

「なあ……、いや、何でもねえや」

 

ビャクティスに「蒼帝って何スか?」と尋ねようとするワッカだったが、相手がどうも不機嫌そうなので言葉をつつしむ。

 ふと周りを見渡すと、他の3人が地面にへたり込んでいた。

 

「なあんだ、ゲンカイかぁ?」

 

「違うわよ…、動けなかったの…」

 

エルゼが疲弊したように言葉を返す。赤竜が自然と放つ(オーラ)に3人とも気圧(けお)されていたのだ。

 

「ワッカさんは…、何とも無いんですか…?」

 

「あったりめえよ!」

 

「何だか、理不尽さを感じるでござるよ…」

 

「情けねえこと言うんじゃねえよ…。つってもま、経験の差ってヤツだな!お前らも精進するこった!ハッハッハ」

 

 高らかに笑うワッカだったが、すぐさま自分のやるべき事項を思い出す。

 

「おっと、こうしちゃいられねえ!早く皆の元に帰らねえとな。ユミナも心配してるだろうしよ。ほらお前ら、シャキッとしろよ!」

 

3人に活を入れ、ワッカは「ゲート」を開いた。

 

 馬車の周りではユミナを始め、残された人達がワッカ達の帰りを今か今かと待ちわびていた。

 

「おーい!!」

 

「あ、今の声!」

 

「ワッカ殿だ!ワッカ殿が帰ってきたぞぉ!」

 

「本当ですか!?どこから?」

 

ミスミド兵の声を聞いたユミナが、息せき切って尋ねる。兵士の指した方向を見ると、ワッカ達がこちらに走ってくるのが確認出来た。ビャクティスは子虎の姿で抱きかかえられている。

 

「ワッカさん!!」

 

 ユミナもワッカに向けて駆け出す。そして愛する人(ワッカ)に思いっきり飛びついた。

 

「無事で良かったです!ワッカさん!!」

 

「おうユミナ!心配かけたな」

 

ぎゅっと抱きしめてくるユミナをワッカも抱きしめ返す。彼女に心配をかけた詫びとして、今回は引き剥がすようなことはしない。

 

「泣くぞ、すぐ泣くぞ、絶対泣くぞ、ほら泣くぞ」

 

「泣きませんよ!だって、ワッカさんが無事だって信じてましたからっ!」

 

「ハハハ、嬉しいこと言ってくれんじゃねえかコイツ!」

 

「でも…、もう少し早く戻ってきてくれても良かったですよね?」

 

「きびしいッスね」

 

「なぁんて、冗談です!」

 

「コォイツゥ!この!」

 

 そんな会話をユミナとしているワッカの元に、オリガ大使とガルン隊長も駆け寄ってくる。

 

「ワッカ殿、ご無事で何よりです!」

 

「おう、そっちはどうだった?何も起こらなかったか?」

 

「はい。幸いなことに」

 

「まさか、竜を倒したのか!?」

 

「ああ、バッチリ倒したぜ!」

 

ガルンの問いかけにワッカが自信満々で答える。

 

「本当なのか!?だが、どうにも早すぎるような…」

 

「え?あ~、まあ…」

 

首をかしげるガルンに対し、返答に困るワッカ。実際ワッカはビャクティスや「ゲート」に頼ったおかげで、この短時間での黒竜討伐を成し遂げたのだ。しかしガルンはこの二つの存在を知らない。(いぶか)しがられるのも当然だった。

 

「そこはまあ良いじゃないですか。無事に竜を倒せたんですし!」

 

「お、おう!そーだそーだ!」

 

 ユミナの出してくれた助け船に乗っかったワッカは、これ以上の詮索を防ぐために別の話題を切り出す。

 

「それはそうと、皆にお願いがあるんだなあ~」

 

「は、何でしょう…?」

 

「エルドの村の皆を助けてやって欲しいんだ。黒竜は倒したから危険は無えんだが、被害が結構大きいみたいでよ…」

 

「そ、それはもっともだ!」

 

 ワッカの要請を聞き、一行はエルドの村へと急ぐのだった。




 原作小説だと、望月冬夜は黒竜との戦いで武器を失ってしまい、後ほど自分の武器として銃剣を制作する事になります。
 別に彼がどんな武器を作ろうが問題は無いのですが、「銃を自作する」という現在最もデリケートな内容を、ブリッツボールのおかげで描写せずに済んでホッとしております。エボンの賜物だな。
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