異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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 よく考えてみたら、名探偵ワッカ編って国王暗殺の話じゃないか!時期的にギリギリだったんだなぁ…。
 でも個人的見解を述べさせて貰うと、フィクションの世界に現実の事件を持ち込むこと自体がナンセンスだと思うので、時期的にぶつかっていたとしても前書きで断りを入れて話を進めていたでしょうね。


竜の死体、そして監視者。あとブリッツボール。

 黒竜討伐後、ワッカ一行はエルドの村へと急ぎ、村人達の援助をして回った。リンゼは水属性魔法で火災を消火し、ワッカは怪我人に回復魔法をかけ続けた。他の者達は、倒壊した建物から人を救助したり、怪我人が残っていないかを見て回るなど、村中を奔走していた。騒ぎが一段落したのは、夜が明け、日がすっかり昇った後になってしまった。

 

「くはぁー、さすがに疲れたぜぇ」

 

 ワッカが草むらに仰向けになって倒れる。朝日がまぶしかった。ワッカ達が村に早く到着したこと、そして黒竜を村から遠ざける作戦を実行したことが幸いし、死者は出なかったが、村は壊滅状態だ。それでもやれるだけのことをやり終えた満足感が彼にとっては気持ちよかった。

 

「ワッカ殿、ここにいましたか」

 

 寝転がっていたワッカの側に、リオンとガルンがやって来た。

 

「おう、2人ともご苦労さん」

 

「しかし、たった四人で竜を仕留めてしまうとは…。驚きを通り越して呆れてしまいます」

 

「呆れられてもなぁ…。つーか、あの竜は若くて未熟な個体だったみたいだぜ。お陰で上手く行ったんだな、ハハ」

 

リオンの賞賛なのかよく分からない発言に対してワッカが気楽に言葉を返す。そんな彼にガルンが尋ねた。

 

「それでワッカ殿、あの竜のことなんだがどうする?」

 

「『どうする』って何だよ?まさか『死体の後始末もやれ』なんて言うんじゃ無いだろうな?」

 

ワッカが苦い顔をする。

 

「いやいや、そうでは無い。竜の死体は貴重な資源になるのだぞ?」

 

「死体が資源?」

 

「ああ。鱗や爪、角、牙などは加工して武器や防具の素材になるし、肉はとても美味なのだ。故に、竜の死体は余すこと無く高く売れる貴重品と言うわけだ。あの大きさならば王金貨10枚は下らないだろう」

 

「はぁー、知らなんだ」

 

「で、それらをどうするかは竜を倒したワッカ殿に決定権がある。どうするかと聞いたのはこのためだ」

 

「なるほど…」

 

 ガルンの説明を聞き、ワッカは考えを巡らせる。確かに竜を倒したのは自分なのだから、あの死体をどうするかは自分の勝手である。だが一方で、彼には壊滅的な被害を受けた村の惨状を忘れることが、どうしても出来なかった。復興には多大な費用が必要になるだろう。片や自分の(ふところ)には、ギルドに預けてある多大な金銭がある。竜の死体を売りさばいて得られる王金貨10枚がどちらに必要なものかは、火を見るより明らかだった。

 

「別にオレは良いよ。村の復興のために使ってくれ」

 

「な、正気か!?」

 

「ワッカ殿、分かってますか!?もの凄い価値がある素材なんですよ?王金貨10枚ですよ!?」

 

「しつけぇなー、良いっつってんだからインだよ!お前らそれでも国の兵士か…ってヤッベエエエエエエェェェ!!」

 

「ど、どうしたんだワッカ殿!?急に大声出して」

 

「あの黒竜倒すのに、毒を使っちまったんだよ!肉は売りモンにならねえかもしれねえ!!」

 

「な、何と!?」

 

「ま、まあ、黒竜を倒すためだったならば仕方が無いでしょう」

 

リオンがそう(なぐさ)めたが、本当は全く仕方ない事では無い。あの「ステータスリール」は、頭に血が昇ったせいで使ってしまった余計な一撃に他ならない。アレを使わずトドメを刺すことは幾らでも出来たはずだ。

 

「ああぁぁ……。知ってりゃあんなことしなかったのによ…」

 

「「………」」

 

後悔に頭を抱えるワッカに対してかける言葉が2人には見つからなかった。

 

「…ま、そういうわけだ。肉は使い物にならねえかもだが、残りは村にやってくれ、たのむぜ」

 

「あ、ああ、ではそのように伝えてこよう」

 

リオンとガルンはそれ以上何も言わず、その場を立ち去るのだった。

 それから数分後、ワッカの元に獣人の老人がやって来た。

 

「私は村長のソルムと申します。この度は竜を退治し村を危機から救って下さったこと、そして村の復興に多大な援助をして下さったこと、心より感謝を申し上げます。本当にありがとうございました」

 

「ああ、どういたしまして。その…」

 

「しかし、本当によろしいのですか?竜の死体を全て(ゆず)って下さるとは。せめて角の一本くらいは…」

 

「いやいや、気にしねえで全部貰ってくれ。逆にオレの方こそ悪かったな。勝手なことをしたせいで肉をダメにしちまってよ」

 

「気にしないで下さい。竜を倒して下さっただけでも、こちらとしては大きな恩が出来ているのです。その上で肉をダメにしたことを責めようとする者など、何所にいるでしょうか」

 

村長の言葉を聞き、ワッカは罪悪感を払拭することが出来た。

 

「そうか?そう言ってくれるんなら、嬉しいぜ」

 

「そうでした、貴方にこれをお返しします」

 

村長が手渡したのは、一挺(いっちょう)のナイフだった。

 

「これは…」

 

「竜の眼に刺さっておりました。黒竜を討伐した貴方達の物では?」

 

「あんた達の物じゃねえのか?」

 

「いえ、このようなナイフは見たこともございません」

 

「そ、そうか…。じゃ、貰ってくぜ」

 

そう言ってナイフを受け取ったワッカだったが、彼にも心当たりは無かった。だがもしかしたら仲間の誰かの所有物であるかもしれないので、一応貰っておく。

 深々と頭を下げる村長に別れを告げ、ワッカは馬車へと戻った。中を覗くと、エルゼとリンゼ、八重の三人が眠っていた。黒竜と戦い、その後は村の援助と大忙しだったのだ。眠たくなるのは当然だろう。気持ち良さそうに寝ている三人の姿を見て、ワッカにも急な眠気が襲ってきた。

 そんな彼の内心を察するかのように、ユミナが毛布を差し出した。

 

「お疲れさまでした、ワッカさん」

 

「ユミナ…、何だかオレ、とても眠いんだ…」

 

「そうでしょうね。ゆっくりお休みになって下さい。まだ出発はしませんから」

 

「そっか。じゃ、遠慮無く…」

 

ユミナから毛布を受け取ったワッカは、そのまま眠りに落ちてしまった。

 

 ワッカが目を覚ますと、青空とユミナの顔が目に飛び込んできた。

 

「ん…お…?」

 

「お目覚めになりましたか?」

 

「あ、ああ…。あ?」

 

何か後頭部に柔らかい違和感を感じる。彼は今まで、このような感触を味わったことが無い。

 慌てて飛び起きて辺りを見渡し、ワッカは状況を把握する。彼はユミナの膝枕で眠りについていたのだ。周りの村人や護衛兵達がニヤニヤと生暖かい目を向けてきている。

 

「うわっ!おい!お前ら!見せ物じゃねえぞコラ!」

 

ワッカは周囲の人々を睨みつける。ユミナの勝手な行動で赤っ恥をかいてしまい、穴があったら入りたい気分になる。嬉しさは微塵も感じない。(よわい)23になる男が12歳の少女の膝枕で眠っていたという事実が、ただただ恥ずかしかった。

 

「あら、お目覚めのようねぇ」

 

「よーく、眠ってましたね」

 

「気持ちよさそうでござったな~」

 

 声が聞こえた方に振り向くと、エルゼ、リンゼ、八重の三人が腕組みをしながら笑顔で立っていた。しかしどうにも、彼女達の笑顔からは何かしらの違和感を感じる。

 

「お、お前ら…、ど、どしたん?」

 

「「「別に~?」」」

 

拗ねたような声で答える三人に、ユミナが声をかける。

 

「はいはい、そこまでにしましょう?『役作りゲーム』は平等なんですから、恨みっこ無しです」

 

「分かってるわよ…」

 

「むー…」

 

「残念至極…」

 

詳しいことはワッカには分からなかったが、どうやら彼女達は「オーバードライブ・リール・カードゲーム」の役作りゲームで遊んでいたらしい。ユミナ以外の三人が不機嫌そうなのは、どうやらそこに原因があるらしかった。

 ワッカは困った顔をしながら、四人に反省を促す。

 

「あのなぁお前ら…。オレの寝ている間に何してたのか知らねえけど、勝手に行動して勝手に不機嫌になって…、ってそこまでオレは面倒見切れねえぞ!ワカッテンノカ!?」

 

「「「「はぁい」」」」

 

「ま、分かってねえなってことは分かった。休息も取ったし、さっさと出発しようぜ」

 

そう言ってワッカは馬車に乗り込んだ。 

 こうして、エルドの村で起こった黒竜との激戦は幕を下ろした。

 余談だが、ワッカ達が去った後、竜の肉はしっかりと火を通せば食べても問題ないことが判明した。結果として、エルドの村は黒竜の死体の恩恵を丸ごと受け取ることになったのだ。村人達は口々に「ワッカ殿の賜物(たまもの)だな」と言い、深く感謝したのだった。

 

 

 

 

 

 エルドの村を出発した馬車の中で、オリガ大使が改めてワッカ達に感謝をする。

 

「皆様。エルドの村を救って下さり、ありがとうございます。ミスミド王国の大使として、改めて感謝を申し上げます」

 

「ああ、いーっていーって。もう感謝の言葉は腹一杯だぜ。そんなことより、王都までは後どれ位かかるんだ?」

 

「王都ベルジュまでは、今日を入れてあと三日ほどで到着します。行程も半分以上過ぎましたが、引き続き同行よろしくお願いします」

 

「ああ、よろしくな」

 

頭を下げるオリガ大使にワッカが言葉を返す。

 大人の挨拶が終わると、訪れるのは暇な時間である。朝まで(せわ)しなく動いていたのが嘘のようだ。「オーバードライブ・リール・カードゲーム」で暇つぶしするのも(やぶさ)かでは無いのだが、先程の出来事のせいかそう切り出すのも何となく気が引けた。

 ワッカは村長から受け取ったナイフを取り出し、色々と観察してみる。片刃で刃渡りが20センチほどの黒いナイフだ。丈夫そうな作りではあるが、他に変わった特徴は見受けられない。このナイフに見覚えが無いか聞いて回るが、誰にも心当たりは無かった。

 

「一体誰のナイフなんだ…?」

 

『主よ』

 

 ビャクティスが念話(テレパシー)でワッカに話しかける。

 

「どした?ビャクティス?」

 

『黒竜と戦った際、林の中に何者かの気配を感じました。こちらへの殺気は無かったので村人の誰かかと思ったのですが…』

 

「いいや、どうやら村人の物じゃ無いらしいぜ」

 

『そのようですね。ということはつまり、我々を監視している何者かの物ということになるでしょう』

 

「ラングレーの町で話になった、監視者ってヤツの仕業か」

 

『はい』

 

「ったく、何だってんだぁ?オレ達をつけ回している敵かと思ってたが、あの時はオレ達を助けたってことか…?」

 

『いずれにせよ、警戒は続けるべきかと』

 

「だな。気持ち悪いことには変わり無えし、尻尾を掴んで全て吐き出させるって方針は変わらねえよ」

 

そんな会話を念話(テレパシー)で行いつつ、ワッカは謎のナイフをしまい込んだ。




 何とか、月曜日に2話投稿出来ました。複数話投稿は中々出来ないのですが、話の進みが遅いし、多少はね?
 今回でミスミド王国編の大きな山場である黒竜戦は終わりました。次回はミスミドの王都に到着します。カメラの下りも無いし、銃制作の下りも無いので、あまり話数はかからないと思うのですが…、どうなるでしょうね?
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