異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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効果モンスター
星1/地属性/天使族/攻 0/守 0
(1):このカードはモンスターゾーンに存在する限り、
「デストーイ」モンスターとしても扱う。
(2):このカードはモンスターゾーンに存在する限り、
「デストーイ」融合モンスターカードにカード名が記された
融合素材モンスター1体の代わりにできる。
その際、他の融合素材モンスターは正規のものでなければならない。


妖精師匠、そしてプログラム。あとブリッツボール。

 クマのぬいぐるみに見つめられ、ワッカは言葉を失っていた。相手の高さは50センチほど。人のように動いている点以外にはコレといっておかしな特徴は見られず、言葉も発しない。

 

「お、おい…、何だよ…。何か言えよ…」

 

奇妙な状況と静寂に耐えられず、ワッカは言葉を投げかける。するとクマのぬいぐるみは、くいっくいっ、と手招きを返してきた。

 

「付いてこい、ってコトか?」

 

 ワッカの質問に答えるかのように、ぬいぐるみはトコトコと歩き始める。ワッカは奇妙なぬいぐるみの後を追うことにした。

 ぬいぐるみはパーティー会場から少し離れた場所にある部屋の前で歩みを止めた。器用にジャンプしてドアノブを回して扉を開け、中に入れと言いたげに手招きする。

 部屋の中は薄暗く、綺麗な月明かりが部屋の中を照らしていた。部屋の隅には本棚が有り、床には様々なぬいぐるみが転がっている。そして月明かりを背に受けるようにして一人の少女がソファに座っていた。

 黒いドレスに黒のヘッドドレスのゴスロリ衣装を身に纏い、白い髪をツインテールにまとめている。歳は見た感じ、ユミナやアルマと同じくらいだ。そして何より、蝶のような半透明の羽根が背中から生えているのが特徴的だった。

 

「あら?奇妙なお客さんを連れてきたわね、ポーラ」

 

少女がクマのぬいぐるみに話しかける。

 

「いや、奇妙なのはそのぬいぐるみだろうがよ!」

 

 ワッカはツッコミを返した。

 

「その反応は正しいでしょうね。それで、あなたは誰?」

 

「オレか?オレはワッカ。よろしくな」

 

「ふうん…。今日のパーティーに来ているとウワサの竜殺しね?」

 

「まあ、そうだが…。で、お前の名前は?」

 

「あら、ごめんなさい。私は妖精族の(おさ)、リーンよ」

 

「お、長ぁ!?その歳でか?」

 

ワッカが驚きの声を上げる。

 

「こう見えても貴方よりずっと年上よ?妖精族は長寿の種族だから」

 

「妖精族?はあ、どーりでそんな羽が生えているワケだ。つーか、年上ってどんくらい?」

 

「どれくらいかしら…?600は確実に超えていると思うけど…」

 

「ろ、ろっぴゃくぅ!?」

 

「面倒だから612歳ってことにしといて」

 

「おいおい、なんか投げやりだな…。ってかその見た目で600歳ってことは1万年くらい生きるってことか?」

 

「……違うわよ。妖精族は一定の年齢になると成長が止まるの。普通は人間の見た目で言う20代前半くらいで止まるのだけど、私の場合止まるのが早かったのよ」

 

リーンは唇を尖らせながら、呟くように答えた。そんな彼女の頭をクマのぬいぐるみが慰めるようになでる。

 

「あー、そういうことだったのか。悪かったな、気にしてるトコにツッコんじまってよ」

 

「別に構わないわ。貴方、妖精族に会うのは初めてみたいだし」

 

 言葉通り、リーンに怒っている様子は見受けられない。ちょっとしたことですぐにへそを曲げるエルゼ達と比べると達観しているな、とワッカは思った。伊達に600年以上生きているのでは無いらしい。

 

「それで、その召喚獣を使って俺をココに呼んだのは何でなんだ?」

 

 話題を変えようと、ワッカは疑問を投げかける。

 

「ポーラは召喚獣じゃないわよ。正真正銘、ただのぬいぐるみ。気に入った人間がいたらこの部屋に連れて行くようプログラムしておいたのよ」

 

「ぷろぐらむ?」

 

「『プログラム』は私の無属性魔法よ。無機質な物にある程度の命令を入力して動かすことが出来るの」

 

ワッカのオウム返しにリーンが答える。

 

「例えばそうね…。この椅子でやってみましょう」

 

 そう言ってリーンは部屋の隅に置いてあった、何の変哲も無い椅子を持ってくる。そして椅子に手を(かざ)し、「プログラム」の魔法をかけ始めた。

 

「プログラム開始

/移動:前方へ2メートル

/発動条件:人が腰掛けた時

/プログラム終了」

 

言い終わるとリーンは椅子に腰掛ける。すると椅子が独りでに前へと進み始め、2メートルほど進んで動きを止めた。

 

「速度の指定を忘れたわね。まあ、こうやって魔法による命令を組み込むことが出来るのよ」

 

「おお!めちゃくちゃ便利じゃねえかソレ!」

 

 ここで、ワッカの脳内にあるヒラメキが生まれる。

 

「うし、いっちょやってみっか!」

 

「え?」

 

ワッカは愛用のブリッツボールに手を翳す。

 

「プログラム開始

/移動:ワッカの手元へ一般人が受け止められるギリギリの速さで

/発動条件:液体もしくは固体に衝突した時

/プログラム終了」

 

彼はおもむろに部屋の窓を開け、ブリッツボールを外へと思いっきり投げつけた。しばらくするとブリッツボールが、時が巻き戻されたかのように彼の手元に戻ってきた。設定通り一般人が受け止められるギリギリの速さだったが、鍛えられているワッカにとってはこのくらいのスピードがちょうど良かった。ゆっくり戻ってこられても実戦で使いにくい。

 彼がブリッツボールにこのような「プログラム」を(ほどこ)したのはもちろん、先の黒竜戦を踏まえての事であった。「遠くに投げたブリッツボールが自動的に手元に戻ってきたら楽なのに」などと現実逃避をしていたのだが、そんな勝手を叶える無属性魔法を知ったのでは試さずにはいられなくなったのだ。

 

「おっし!成功だな!」

 

「貴方……今何やったの?」

 

 リーンが眼をパチパチさせながらワッカに問いかける。

 

「何って…、リーンがやった『プログラム』じゃねえか」

 

「貴方も『プログラム』の使い手だったの?」

 

「あ…」

 

 ワッカは自分がしでかした失敗にようやく気付いた。彼はこの世界の無属性魔法を、効果と名前さえ知っていれば何でも使うことが出来る。しかしこの事実が(おおやけ)になれば、どの様な事態が起こるか想像もつかない。(ゆえ)にこの事実は、彼の仲間4人と1匹以外には知らせていない機密事項なのであった。

 リンゼやユミナにもそのことを口を酸っぱくして言い聞かせておきながら、当人はこの思慮の浅さである。何とも自分が情けなくなりながら、とりあえず誤魔化さねばならないと思い立ち、リーンに言葉を返す。

 

「ああ、まあ、そういうこった!どうだ、ビックリしたろ!?ハッハッハ…」

 

「ふうん…」

 

リーンは怪しいものを見る目つきでワッカを見つめる。彼の体中を冷や汗が流れ出していた。

 

「まあ、色々聞きたいことはあるけど、今はやめておくわ。確かに、ポーラは面白い人を連れてきたわね。シャルロッテ以来の掘り出し物かもしれないわね、貴方」

 

「シャルロッテぇ!?」

 

 リーンの口から出てきた意外な人物の名前にワッカは驚く。シャルロッテと言えば、ワッカの魔法に興味津々なベルファスト王国の宮廷魔術師ではないか。

 

「私の弟子の一人よ。今はベルファストで宮廷魔術師をしてたわね、確か」

 

同一人物だった。

 

「はぁ~、あの有名人、シャルロッテ様の師匠だったなんてねぇ、こりゃビックリだ…」

 

 先程「プログラム」の実験をリーンの前で行ってしまったことが、どれ程大きな失敗だったのかを知り、体の震えが止まらないワッカ。彼女が自身(ワッカ)の特異性に気付いていないことを祈るしかなかった。

 とりあえず何か別の話題を振らなければならないと思い、ワッカはリーンに疑問を投げかける。

 

「てってか、そのポーラだかってぬいぐるみ、まるで生きてるみてぇに動いてっけど、『プログラム』だけでそこまで出来るのかぁ?」

 

「もう200年近く『プログラム』を重ねてきてるからね。いろんな反応、状況から自分の行動を起こせるようにしてあるのよ」

 

「ほ、ほぉ…」

 

200年という長い時間をかければ、ぬいぐるみを生きているように動かせるという事実を知り、「プログラム」の便利さをワッカは再認識する。と言っても、ブリッツボールを生き物のように動かしたいとは思っていないのだが。

 

「ん?じゃあ、そのぬいぐるみは200年以上前の物ってことか?新品同然だが…」

 

「私の無属性魔法『プロテクション』をかけているからね。保護魔法の一つで、色々な対象からある程度、保護できるのよ。ポーラには汚れや劣化、虫食いとかから影響を受けないように保護しているわ」

 

「はぁ~、便利な魔法もあるもんだ…」

 

 この「プロテクション」という魔法を使えば、ワッカが着ている、この世界に一つしか無いビサイド・オーラカのユニフォームを保護することが出来るのだ。これで洗濯しなくて済む、などと考えるほど不潔では無いが、着ている年月を気にしなくて良くなるのは便利だ。帰ったら試してみようと彼は考え始める。

 

「ねえ、私からも一つ聞かせてちょうだい」

 

 不意にリーンが、ワッカの顔を見つめながら話しかけてきた。

 

「な、何すか…?」

 

「貴方、無属性の他には何の適性を持っているの?」

 

「適性!?」

 

 ワッカは言葉につまる。全属性使える、と真実を告げればリーンに怪しまれてしまう。かと言って、真っ赤な嘘をつくわけにもいかない。彼女はワッカの名前を聞いただけで、彼が竜殺しなのだと認識出来ていた。情報収集は怠らないタイプなのだろう。となれば、ワッカの戦闘スタイルについてどこかで調べている可能性も無いとは言えない。

 

「えと、火、水、光、闇、うんうん

 

苦手な風属性と土属性は濁すことにした。この二つは今までの戦闘でも(ほとん)ど使って無いのでバレる可能性は低いだろうと考えたからだ。

 

「ふぅん…」

 

 リーンはワッカの顔をまじまじと見つめる。何か珍しい物を見るかのような、否、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そんな目つきだった。

 

「う、う…」

 

リーンの黄金色の瞳に見つめられ、ワッカは言葉を失っていた。早く帰りたい、と心の中で必死に祈る。

 

「決めたわ」

 

 リーンが口を開いた。

 

「貴方、私の弟子になりなさい」

 

「………」

 

とりあえず断らなければならない。そう感じたワッカは言葉を返した。

 

(つつし)んで、お断りする」

 

 またベルファストの王族達が無茶ぶりをしてきた時のために(そな)えて覚えておいた言葉を、初対面の妖精族に使うことになるとは夢にも思っていなかったワッカなのだった。




 中途半端な終わり方に思える人もいるかもしれませんが、原作でも似たような終わり方だったので、これでいいのだ(バカボン)。

 異世界なのに、距離の単位がメートルで良いのか疑問に思う方もいるかもしれませんが、これもまた原作通りなので、これでいいのだ(バカボン)。ワッカも同じ単位を使っていることにしておきました。

情報、求む!
 「異世界はスマートフォンとともに。」アニメ8話において、リオンとオリガ大使のデートをストーキングするエピソードがあるのですが、小説家になろうサイト内の原作には、そのような話を見つけられませんでした。
 このエピソードは、アニメ一期より後の部分で実際にある話なのか、有料の本や漫画で追加された話なのか、それともアニメオリジナルなのか。知っている方がおられましたら、感想欄にてコメントして下さると助かります。
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