異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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 「いせスマの二次創作を書いている内に、いつの間にかアニメニ期が楽しみになってきてしまっている自分がいる。続報が待ち遠しい」という内容をいつか前書きに書こうと思っている内に、アニメニ期の詳細が発表されるとは…。
 ファイナルファンタジーXの舞台化も発表されましたし、両作品の動きが活発な時期にこの作品の執筆を行っているなんて奇跡的だなぁ、と勝手に思っている次第です。

 元はと言えば、「ワッカがブームになってるし、『異世界オルガ』のワッカ版があったら面白そうだなぁ」という考えから書き始めた作品であって、狙ってたわけでは無かったのに。


メイドの事情、そして激辛。あとブリッツボール。

 ワッカ達を追跡していた犯人は、屋敷で働いているメイドのラピスとセシルだった。六角形の紋様の仮面の正体がラピス、楕円形の紋様の仮面の正体がセシルである。

 

「なんで、屋敷(ウチ)のメイドが、オレ達を監視してたんだよ…?」

 

ワッカは呆然とする。

 彼女たちの正体は何なのだろうか。少なくとも、メイドが本業で無いことは確かだ。あの身のこなしは只者では無い。メイドは仮の姿で、本職はワッカ達を監視する事にあるのだろう。

 一体誰がターゲットなのだろうか。王女であるユミナか、それともこの世界のイレギュラーであるワッカ自身か。あるいは双子や八重にも何かしら隠している事情があって、それ関係なのかもしれない。

 

「いかんいかん…、疑心暗鬼になっちまってらぁ」

 

 一旦頭をリセットし、再び逃げることが無いように2人を縛り上げることにする。ロープの(たぐ)いは持ってないので、彼女達が着ている黒いローブを代わりにする。案の定、2人がローブの下に着てるのはメイド服では無く、動きやすさを重視した黒い衣類だった。2人の体型が如実に分かるピッチリとした衣類で、スピラでは見たことの無いモノだ。

 2人を隣どうし密着させるようにして座らせ、2人の両手首をラピスのローブでキツく縛り上げる。

 

「ん…、うっ」

 

2人の両足首をセシルのローブで結んでいたところで、ラピスが目を覚ました。

 

「よう、ねぼすけ。もう逃げらんねえぞ」

 

「あ、だ、旦那様…!」

 

ワッカとラピスの声を耳にしたのか、セシルも目を覚ました。

 

「ふあ~あ…、あ…、やっちゃったみたいです~」

 

「な~にが『やっちゃったみたいです~』だコラ!!観念しろよお前ら!洗いざらい吐いて貰うからなぁ?」

 

 ワッカがわざとらしく手の指をポキポキ鳴らしてみせる。もちろん、彼に暴力を振るう気は無い。抵抗する意志を削ぐための、単なるアピールだ。

 流石に抵抗は諦めていたようで、ラピスが正直に白状する。

 

「我々は『エスピオン』。ベルファスト王国国王陛下直属の諜報員です」

 

要するにCP9みたいなものだった。

 

「あの国王のか?」

 

「はい。現在は王女様の身辺警護を命じられています」

 

「それでずっと付いてきてたってのか?ベルファストからミスミドまで?」

 

「それが任務ですので」

 

「すげえな…」

 

 とりあえず、暗殺とかの物騒な案件では無かったようで、ワッカは胸をなで下ろす。同時に国王が平気で王女(むすめ)を預けた理由にも納得する。諜報員の存在があるから、自分の目の届かない場所に行かせても安心というわけである。それで安心と言って良いのか、という問題は別として。

 

「で、その任務に就いているのはお前らだけか?」

 

「いえ~、あと数人いますよ~。みんな女の子ですけど~」

 

 セシルが答えた。普段のホワホワした口調は演技では無いらしい。

 

「ま、ユミナの着替えとかも監視してんなら女だろうな…。じゃあ、次の質問だ。黒竜との戦いでナイフを投げて援護したのもお前らか?」

 

「それはセシルです。あの時、王女様の身辺警護は私が引き受け、彼女には旦那様方の警護を任せておりました」

 

「オレ達も警護対象ってことか?」

 

「旦那様は一応、王女様の結婚相手候補ですので。最優先はあくまで王女様ですので、常に監視しているわけではありませんが。しかし黒竜討伐(あの)時は大きな危険が予測されたので、万が一の事態に備えて投げナイフの達人であるセシルを、と」

 

「えへへへ~。それほどでも無いですよぉ~」

 

相方に技量を褒められたセシルは照れながら頬を染める。

 

「それで、お前らこれからどうする気なんだ?」

 

「今まで通り、陰からユミナ様をお守りします」

 

「だろうな。まあ、アイツは王女様なワケだし、仕方ねえだろうよ」

 

 ワッカは素直に彼女たちの追跡を認める。自分だけで王女様(ユミナ)を四六時中カンペキに守り切る自信がある、とは言えないのも確かなのだから当然である。

 

「ありがとうございます。そこで、1つ旦那様にお願いがあるのですが…」

 

 言いにくそうな口調でラピスが頼み込む。

 

「何だ?言ってみ?」

 

「私達の護衛のことは、王女様にはくれぐれもご内密に…」

 

「姫様に護衛の存在がバレてしまうと~、国王様が姫様に怒られてしまうんですよ~」

 

「んだよ、なっさけねえなあ国王(アイツ)…。まあ、分かった。お前らの正体については、アイツらには内緒にしといてやるよ。でも、ビャクティスにだけは話すぞ。追跡者の存在を気にしてたからな」

 

「了承しました。ありがとうございます」

 

「ありがとうございます~」

 

 彼女たちの頼みも聞き入れたところで拘束を解こうとしたワッカだったが、()()()()()()()を思い出す。

 

「待てよ…。オレ達を監視してたってことは、オレの魔法についても知ってんのか?」

 

「はい~。知ってますよお~」

 

「…言ってねえだろうな?王族の連中によ」

 

ワッカが問い詰める。王城にはシャルロッテがいる。国王に自分の魔法が知られるということはすなわち、彼女にもバレると言うことだ。

 

「それは、まだ話しておりません。旦那様が内緒にしたい事柄だとも知っておりましたので」

 

ラピスがキッパリと答える。彼女の返答が正しいことは、王城から何も反応が無いことから確信出来た。が、彼女の答えの中にあったワードを聞き逃すことはワッカには出来なかった。

 

「まだ…?」

 

「まだ、と言いましたのはその…、万が一王女様の身に危険が及ぶような魔法や、国の存亡に関わる魔法があった場合は、流石に報告しなければなりませんので」

 

「ンなことオレはしねえよ!いいか?オレがお前らのことを言わない代わりに、お前らもオレの魔法については黙っておけよ。でないと…」

 

 少し考えて、ワッカは()()()()()()()()()()()()()()をする。

 

「ユミナを置いて、オレ……消えっから!よろしく!」

 

ワッカの発言を聞き、ラピスとセシルが青ざめる。自分達の正体及び存在がワッカにバレた事自体、彼女達にとっては大失態である。加えて自分達のせいで王女様の結婚話が水の泡になってしまったとあらば、どれだけ重い責任を問われるか想像もつかない。「話せば命は無い」という似合わない脅しをするより、よっぽど効果的で、よっぽどリアリティがあった。

 

「わ、分かりました!絶対に話しません!話しませんから…!」

 

「ど、どうか、姫様を置いていくことだけは~!」

 

 ラピスとセシルが必死に頼み込む。脅しの効果は確認できたが、ここまで怯えられると流石に申し訳なく思えてくる。それにワッカは昨晩、リーンに対してミスをしたばかりだ。他人に強く当たることは適当では無いとも思う。

 

「あ、ああ、悪かった!お前らが言わなきゃそれで良いんだ。簡単だろ?」

 

「「は、はい!」」

 

「うし、お前らを解放するぞ」

 

 謝罪をしつつ、ワッカは2人の拘束を解いた。

 

「それでは…」

 

「あ、ちょっと待てよ。お前ら、帰りはどうすんだ?」

 

別れるギリギリで、ワッカはもう一つ重要なことに気付いた。

 

「帰り、ですか~?」

 

「オレ達は『ゲート』使って帰るんだぞ?お前らは10日かけて帰るつもりか?」

 

「え、ええ」

 

「ええって…、お前らが帰る間、屋敷にお前らがいない問題についてはどうすんだよ?」

 

「それは~、ライムさんが上手く言って下さるので~」

 

「アイツもグルだったのか…、ってそういう問題じゃねえ!流石に10日は無理あんだろうがよ!まさか、『行方不明です』とでも言うつもりだったんじゃ無いだろうな?」

 

「「………」」

 

 そこまで深くは考えていなかったらしく、2人とも黙り込んでしまった。素敵だね。

 

「しゃあねえなぁ。じゃあ、帰る時間になったらお前らのために先に『ゲート』を開いてやるよ。もちろん、ユミナ達にはバレないようにな」

 

「本当ですか~?」

 

「ああ。そうでねえと、オレもお前らも困るだろ?だからビャクティスが察知しやすい場所にいろよ?」

 

「かしこまりました」

 

「よし!じゃ、引き続きよろしく頼むぜ?」

 

「はい!」

 

「お任せ下さい~」

 

2人は素早い身のこなしで、ワッカの元を離れていった。

 

 ワッカがカラエ屋に戻ると、料理は既に運ばれてきていた。

 

「遅いですよ~ワッカさん!」

 

リンゼが文句を言う。彼女もユミナもワッカが来るまで食べるのを我慢してくれていたようだ。

 

「わりいな、遅れちまってよ」

 

「買いたい物は買えたんですか?」

 

「へ?ああ、いや、売り切れちまってた、ハハ…」

 

「後悔先に立たず、ですね」

 

「そうだな。ま、早いとこメシにしようぜ?」

 

「「はい」」

 

2人が「いただきます」の挨拶をする(かたわ)ら、ビャクティスが念話(テレパシー)でワッカに話しかけてくる。

 

『主、追跡者はどうなりました?』

 

「正体が分かったよ。ラピスとセシルだった」

 

『な、なんと…?』

 

「アイツら、ユミナの護衛が本職なんだってよ」

 

『そうだったのですか…』

 

「意外だよな?で、アイツらのことはオレとビャクティスだけの秘密にしておいて欲しいそうだ」

 

『分かりました』

 

「ま、危険は無いから安心して…」

 

「「辛ーーーーい!!!」」

 

 突然のリンゼとユミナの叫び声で、念話(テレパシー)が中断される。

 

「ど、どうしたんだお前ら。いきなり大声出して…」

 

「しゅ、しゅごい味でしゅた……」

 

「みゃだ、舌がピリピリしみゃしゅ……」

 

驚くワッカに対し、リンゼとユミナが真っ赤な舌を出しながら答える。

 

「まったまたぁ…」

 

 ワッカは笑いながらカラエを口に運ぶ。

 

「ムグムグ、んだよ、やっぱり大した、こ、と……」

 

彼の顔から大量の汗がにじみ出る。後から来るタイプの辛さだったのだ。

 

「か、(かれ)えええええええぇぇぇぇぇ!!!」

 

想像以上の辛さだった。少なくとも異世界に来てからは、ここまで辛いモノを彼は口にしたことが無い。

 

「なんじぇ、きょんにゃに辛いんだよ!?レシピはどうなってんだレシピは!!」

 

『だから食べるのはイヤだったのです…』

 

そう呟くビャクティスを尻目に、3人はコップの水を勢いよく流し込む。

 その後一行は、別の屋台で売っていた果実ジュースで口直しをすることで、ようやく辛さを忘れることが出来た。




 ミスミド王国編はあと2話で終了する予定です。次回、ミスミドに別れを告げます。本当ならこの話でそこまで行きたかったのですが、無理でした(いつもの)。
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