異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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 まさか私以外にも「異世界はスマートフォンとともに。」の二次創作を、ハーメルンに現在進行形で執筆中の人がいるとは思わなかった…。負けないように頑張るぞー!


恐怖の報告、そしてイーシェンへ。あとブリッツボール。

「さて、『確認』も終わったし、次は『報告』ね」

 

 リーンが新しい話題を切り出した。正直ワッカには先程の「確認」だけでもういっぱいいっぱいだった。せめて「報告」はダメージの少ないものであることを祈るしか無い。

 

「これもシャルロッテから聞いたのだけど、貴方達は以前、『水晶の魔物』を倒したそうね」

 

「あ、ああ。倒したぜ?」

 

 ワッカは「水晶の魔物」との激戦を思い出す。強固な殻を持ち、魔法は吸収されるため効かない。何とかダメージを与えても、吸収した魔力を用いて体を再生する強敵である。あの時はまだユミナとビャクティスがおらず4人がかりだったこともあるが、かなりの苦戦を強いられた。

 

「その『水晶の魔物』がミスミドにも現われたのよ」

 

「マジか…?」

 

 リーンの「報告」を聞き、ワッカの身に寒気が走る。ユミナとビャクティス以外の3人も驚きを隠せないでいる。

 

「ミスミドの西側にあるレレスって町から急便が来たの。『町に異変が起こってる』という内容のね」

 

 リーンは紅茶を飲みつつ、詳細を語り始める。

 

「レレスの森の中に、小さい亀裂が空中に浮かんでいるのが発見されたの。亀裂には触ることが出来ない。にもかかわらず次第に大きくなっていったそうよ。流石に異常だってことで王都に報告が来たの」

 

「その亀裂から、『水晶の魔物』が出てきたってのか?」

 

「らしいわね。興味を持った私が戦士団1小隊と共に村に到着したときには、酷い有様だったわ。水晶の魔物が手当たり次第に村人達を殺して回る、蹂躙(じゅうりん)の最中だったんですもの。私と小隊も戦ったけど、まるで歯が立たなかった。剣は通じず、魔法は吸収され、何とか体を砕いても再生する…。まさに悪夢だったわ」

 

「でも、こうして生きてんだ。倒したって事だよな?」

 

「まあね。魔法で作り出した物理的ダメージなら有効だって分かったから。土属性魔法で重さ数トンの岩を作り出して、頭を砕いたら倒せたわ」

 

「アイツの攻略法を見つけ出すなんて、流石はリーンだな」

 

「褒められたことじゃないわ。結局、小隊の半数は再起不能、村は壊滅って結果ですもの。あの怪物のことを調べようと思ってシャルロッテに協力を求めたの。そしたらベルファストでも同じような魔物が現われてて、しかも倒したのがワッカだったと聞いたから驚いたわよ」

 

「ま、まあな。言っとくけど、オレ達も大分苦戦したんだぜ?」

 

「でも犠牲無し、でしょ?どうやって倒したの?」

 

「それは…」

 

 ユウナのガード時代の経験を活かし、ワッカも同じような攻略法は探り当てていたのだが、決定打を与えるには至らなかった。最終的に水晶の魔物を倒せたのは、無属性魔法「アポーツ」のおかげだったのだ。

 言っても良いモノか一瞬ワッカは悩んだが、リーンに自分の秘密がバレた以上、黙っておく理由は無い。それにどう考えても、この件に関しては情報の共有が優先事項だ。

 

「無属性魔法『アポーツ』を使ったんだ。それでヤツの赤い球を奪って、エルゼに破壊させたんだ」

 

「視界に入った小物を手元に引き寄せる無属性魔法ね。なるほど…」

 

「たまたま覚えてたんでな。一応言っとくけど、全部の無属性魔法を使えるとは言っても、全部の無属性魔法を知ってるわけじゃねえぞ。無闇に覚えても、無駄な選択肢が増えるだけだしな。あの時知ってた魔法の中にたまたま使える魔法があった。そんだけだ」

 

「賢明ね。無駄な選択肢は、戦いのジャマですものね」

 

 そう同調しながら、リーンは(ふところ)から1枚の紙を取り出した。

 

「これが私達の戦った魔物の姿よ。簡単な絵だけどね」

 

「ん?」

 

絵を見たワッカは顔をしかめた。描かれていた魔物の姿が、蛇のような姿をしていたからだ。

 

「オレ達の戦ったのと違うな…」

 

「そうなの?」

 

「オレ達が戦ったのは…」

 

 ワッカは紙と筆記用具を持ってきて、記憶を辿りながら魔物の姿を紙に描く。

 

「こんな感じで、6本の足が付いている姿だったぞ。そうだよな、お前ら?」

 

エルゼ、リンゼ、八重の三人も頷いた。

 

「そう…」

 

「他にも違いがある。ソッチのは空間の亀裂から出てきたって話だったが、オレ達の場合はベルファストの旧王都で発見した地下遺跡にコイツが眠ってたんだ。探索用の光属性魔法『ライト』の魔力を吸って目覚めたってワケだ」

 

「ふうん…」

 

 ワッカの報告を聞いたリーンは、顎に手を当てながら何やら考え事をしているようだった。

 

「オレ達の知っていることはこれで全部だ。地下遺跡も崩れちまったし、他の情報は調べてねえんだ」

 

「危機感が無いのね?」

 

「いや、次出てきても『アポーツ』で瞬殺だなってカンジで」

 

「貴方なら、そうでしょうね」

 

 ワッカを責めるワケでも無く、リーンは言葉を続けた。

 

「昔、私がまだ小さかった頃に一族の長老から聞いた話があってね。どこからともなく現われた『フレイズ』という名の悪魔がこの世界を滅ぼしかけたとか……」

 

「お前が小さかった頃って600年前ってことか?」

 

「「ろ、ろっぴゃくぅ!?」」

 

エルゼと八重が驚きの声をあげる。知識を仕入れるタイプのリンゼとユミナは、妖精族が長寿だということも知っていたのか、あまり驚いてはいないらしい。

 

「言ってなかったかしら。ちゃんとした年数は数えてないんだけど、とりあえず私の年齢は612歳ってことにしといて。話を続けるわよ」

 

しれっと言いつつ、リーンは話を続ける。

 

「その『フレイズ』って悪魔は半透明の体を持った不死身の悪魔だったそうよ。結局『フレイズ』達は現われたときと同じように何処かに消えていき、世界も何事も無かったかのように戻った。なんてオチなワケだけど」

 

「その『フレイズ』ってのが『水晶の魔物』と同じってことか?」

 

「それは分からないわ。長老がこのおとぎ話を聞いたのも子供の頃だって話だし、その長老もすでに亡くなってしまっているし。それに妖精族が外部と関わりを持ったのも、ここ百数十年のことだから」

 

「結局、詳しいことは分からず終いか…」

 

ワッカはソファにもたれかかりながら、大きく息を吐いた。

 ふと彼の脳内に、異世界に来る前の神との会話が再生された。「これから行く異世界にもシンと同じような脅威があるのか」というワッカの質問に対して、神は「ある」と答えたのだ。その言葉を聞いてワッカは「シンと同じように、異世界の脅威を打ち倒す」という決意を胸に、異世界転生をしたのだった。

 

「この世界の脅威ってのは『フレイズ』のことだったのか…?」

 

「何か言った?」

 

 ワッカの呟きにリーンが反応する。

 

「い、いや、何でもねえよ。分かんねえのは不気味だなって感じただけでよ」

 

「そう…」

 

リーンはそれ以上は聞こうとせずに、カップの紅茶を飲み干した。

 

「とりあえず『報告』は以上よ。他に情報が無いのなら、これ以上この話題を続けるのは時間の無駄ね」

 

 そう言って彼女は、屋敷に来た理由の2つ目を終わらせた。

 

「『確認』と『報告』が終わったってことは…」

 

「そ。ワッカにお願いがあるのよねえ」

 

 リーンがイタズラっぽく言う。嫌な予感しかしないが、聞くほか無い。

 

「…言ってみ?」

 

「まず貴方、『リコール』って無属性魔法は知ってる?」

 

「いや、知らねえな」

 

「他人の心を読み取って記憶を回収する魔法なの。これと『ゲート』を併用すれば、行ったことの無い場所でも、行くことが出来るようになるのよ」

 

「はえ~、そいつぁ便利だな」

 

「それでお願いって言うのは、全ての無属性魔法を使える貴方に東の果て、()()()()()()()に連れて行って欲しいのよ」

 

「イーシェンつったら確か…」

 

「拙者の生まれ故郷でござる!」

 

八重が反応した。

 

「まさか、拙者の心を読み取るって話になるんじゃないでござろうな?」

 

「そのまさかよ。貴女がイーシェンの生まれだって事は、名前と服装で分かるもの」

 

「ちょ、ちょっと待つでござる!ワッカ殿に拙者の記憶を見られるのでござるか!?」

 

「心配しないで良いわよ。『リコール』は渡す方が許可した記憶しか回収出来ないから、見られたくない記憶までは読まれないわ」

 

 リーンは平然とそう言ったが、それでも八重は難しい顔をしている。女性なのだから当然だろう。

 彼女の乙女心を知ってか知らずか、リーンは言葉を続ける。

 

「無属性魔法『リコール』は相手に接触して心に触れ、その記憶を自分の脳に回収する魔法よ。接触にはなんと言っても口づけが一番ね」

 

「「「「うえっ!!?」」」」

 

「冗談よ」

 

「おい!冗談をつつしめよ」

 

 ワッカが抗議の声をあげるが、リーンはニヤニヤと笑って平然としている。どうやらワッカ一行を(いじ)るのを楽しんでいるらしい。

 

「はいはい、ワッカと八重はこっち来て対面で立って。そして両手を握る」

 

リーンが仕切り始める。ワッカと八重は仕方なく彼女の指示に従う。

 

「2人とも目をつぶって。八重は頭の中にイーシェンの風景をなるべく鮮明に思い浮かべる」

 

「分かったでござる」

 

「ワッカは八重とおでこを合わせて『リコール』を発動させて」

 

「おでこって…、本当に正しいんだろうな?」

 

「本当よ。さ、早く」

 

ワッカは言われるがまま、魔力を集中して八重とおでこを合わせる。

 

「リコール」

 

 ワッカが魔法を唱えると、彼の脳内に映像が流れ込んでくる。大きな木の下に赤い鳥居、小さな(ほこら)の左右には狛犬の像が向かい合っている。

 

「お、見えた」

 

「み、見えたでござるか?」

 

「ああ。大きな木と小さな祠、あと赤い門みてえなヤツと犬の石像が二つ。間違いねえか?」

 

「鳥居と狛犬でござるな。間違いござらん」

 

「んんっ!」

 

「「うおお!?」」

 

 ユミナがわざとらしく咳払いをする。ワッカと八重はおでこを付けたままだったことに気付き、慌てて離れた。向かい合っていた恥ずかしさから、2人とも目を背けてしまう。

 

「イーシェンが見えたのなら『ゲート』を開いて欲しいのだけど、いいかしら?」

 

リーンがニヤニヤしながら要求する。ワッカは眉をしかめながら魔法を唱えた。

 

「ゲート」

 

 6人と1匹は「ゲート」をくぐる。その向こうには、ワッカが先程見たモノと同じ風景が広がっていた。

 

「これが…、2人が共有していた風景、なんですか?」

 

「ああ、全く一緒だぜ…」

 

リンゼの疑問にワッカが答える。

 

「間違いござらん。ここは拙者の生まれ故郷、イーシェンでござるよ」

 

八重も驚きながら、魔法の成功を確認した。

 

「イーシェンの、どこなのかしら?」

 

「実家のあるハシバの外れ、鎮守の森の中でござる」

 

 こうしてワッカ達は、八重の故郷である神国イーシェンへと足を踏み入れたのだった。




 次回から本格的にイーシェンでの冒険が始まります。Party(パーリィ)の始まりだ!Are You Ready?

 ちなみにいせスマの正式名称は「異世界はスマートフォンとともに。」です。句点が付きます。
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