異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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オエド、そして武田勢進軍。あとブリッツボール。

 神国イーシェンへと到着したワッカ一行は、八重の案内の元、彼女の故郷である「オエド」を目指す。

 

「これが拙者の故郷、オエドでござる」

 

 鎮守の森を抜け、オエドが見渡せる小高い丘に来たところで八重が言う。眼下にはワッカが今まで見たことの無い日本風の城。城の近くには人々の住む町や水田が広がっていた。オエドは城塞都市で、周りが長い堀と、白く高い城壁に囲まれている。城壁の上には歩哨(ほしょう)が立っており、所々に建つ(やぐら)の中には弓兵もいる。彼らがこの城塞都市を守っているのだ。

 

「つーか、肝心な事を聞き忘れてたんだが、リーンはイーシェンに何の用があるんだ?」

 

 丘を降り、町へと向かう道中でワッカがリーンに尋ねる。

 

「言ってなかったかしら?イーシェンにある古代遺跡が目的地よ。そこで手に入れたいモノがあるの」

 

「その古代遺跡の場所は?」

 

「分からないわ。ただ『ニルヤの遺跡』という名前だということしか知らないの」

 

「おいおい…。八重、何か知ってるか?」

 

「聞いたことがあるような、無いような…。父上なら知っているかもしれないでござる」

 

「んじゃ、とりあえず八重の実家に行くとするか。いいよな?」

 

「構わないでござる。『帰るな』とは命じられていない故」

 

こうして一行は、八重の実家を目的地と決めた。

 

「そういえば、イーシェンには国王はいるんですか?」

 

 今度はユミナが八重に尋ねる。

 

「一応いるのではござるが、今は名ばかりの存在で、主立った地方の領主9人が実権を握っている状態でござる」

 

「そうなんですか…」

 

「島津、毛利、長宗我部、羽柴、織田、武田、徳川、上杉、伊達の9人でござるな」

 

「大友はどうなってんだ大友は!!」

 

 ワッカは伊達だろ、というツッコミはさておき、9名の領主は度々の小競り合いこそすれど大規模な戦に関してはここ数十年起こっていない、と八重が補足する。乱世では無いということだ。そして八重の父親は、徳川の領主に仕えているのだった。

 そんな話をしている内に、一行はオエドの町へと到着した。

 

「あそこの人、木の靴を履いてますよ?」

 

「あそこにある、綺麗な音がするモノは何ですか?」

 

 下駄や風鈴など、初めて見るものに興味津々な女性陣は次々と八重に質問をする。ワッカもはしゃぎこそしなかったが、初めて見るものには目を惹かれるばかりだった。

 

「うわぁ!何あれ!?人が何か(かつ)いでるわよ!?」

 

 エルゼが一際大きな声をあげる。

 

「あれは駕籠(かご)でござるな。担いでくれる人達に金を払えば、駕籠(アレ)に乗って移動出来るのでござる。馬車の代わりでござるな」

 

「何で馬では無く人が…?馬車の方が速いのに…」

 

「イーシェンは道が整備されておらぬ故、馬車で起伏の多い道を進むのは大変なのでござる。それにイーシェン(ここ)では馬は貴重品なのでござるよ」

 

「文化の違い、ってヤツだな」

 

八重の説明を聞き、ワッカが納得する。

 

「面白そう!乗ってみましょうよ!」

 

駕籠(あれ)に乗ろうってのか?まさか、イーシェンの毒気にやられたんじゃないだろうな?」

 

「歩いて行ける距離でござるよ?」

 

「思い出作りよ!」

 

「でも…、あの駕籠には2人乗るのが限界でしょうね」

 

「「「「え?」」」」

 

リーンの言葉を聞き、他の女性4人が固まる。

 

「じゃあ駕籠は四つ必要ってワケだな」

 

「誰と誰が乗るのか、が重要じゃないの?」

 

リーンがニヤニヤしながらワッカに言う。

 

「んなもん決まってんだろ」

 

「「「「え?」」」」

 

女性4人が一斉にワッカに注目する。

 

「だ、誰よ!?」

 

「誰なんですか!?」

 

「せ、拙者は、その…!」

 

「私とですよね?ワッカさん!?」

 

「んなワケねえだろ、ユミナ。オレはビャクティスとだ」

 

「「「「ええ~!?」」」」

 

「何だよ、その反応は?当たり前だろぉ?オレは体がデカいんだから、他の人と乗ったらキツキツだろうがよ。ポーラはリーンと乗るだろうしよ」

 

ワッカの説明に、4人がガッカリする。その様子をリーンは面白がって見ていた。

 結局ワッカはビャクティスと、八重はユミナと、エルゼはリンゼと、リーンはポーラと駕籠に乗ることになった。駕籠に乗った一行は、時間をかけずに八重の実家である「九重真鳴流剣術道場 九曜館」に到着した。

 

「誰かいるか!」

 

 立派な道場の玄関で、八重が声を張り上げる。

 

「はいはい、只今……。まあ、八重様!」

 

「綾音!久しいな!」

 

奥から出てきた二十代くらいの女中、綾音と八重が握手を交わす。

 

「お帰りなさいまし、八重様!七重様!八重様がお帰りに!」

 

綾音が奥に向かって声を張り上げると、三十代後半くらいの、薄紫色の着物を着た女性がやって来た。

 

「母上!只今帰りました!」

 

「八重…。よくぞ無事で帰ってきましたね!」

 

 七重とは八重の母親のことであった。娘との再会を喜んだ後、七重が八重の後ろを見ながら問いかける。

 

「八重、その方達は?」

 

「拙者の旅の仲間達です。大変世話になっている方達でござるよ」

 

「ちわっす。ワッカって言いますどうも」

 

ワッカが代表として挨拶する。

 

「まあ、それはそれは…。娘がお世話になっております」

 

「いやいや。オレ達の方こそ八重には助けられてんで、ハイ」

 

 大人の挨拶を済ませた後、八重が母親に問いかける。

 

「ときに母上、父上はどちらへ?」

 

彼女の言葉に、七重と綾音は顔を曇らせた。

 

「父上は道場(ここ)にはいません。殿…家泰(いえやす)様と共に合戦場へ向かいました」

 

「合戦ですと!?」

 

八重が目を見開きながら、驚きの声をあげる。

 

「いったい誰と!?」

 

「武田です。数日前、北西のカツヌマを奇襲によって落とし、今はカワゴエに進軍している最中とのことです。武田の進軍を食い止めるために、旦那様と重太郎様がカワゴエの砦に向かわれました」

 

「兄上も戦場に向かわれたのか…」

 

 綾音の説明を聞きながら、八重は拳を握りしめる。ワッカとしては、出てくる地名こそチンプンカンプンだったものの、何やら重大な事件が起こっていることは理解できた。

 

「しかし分からぬ…。武田の領主、真玄(しんげん)殿は侵略を起こすような者では無かったはずでござるが?」

 

「最近、武田の領主に妙な軍師が付いたそうです。山本(なにがし)と言う者だそうで、色黒隻眼で不思議な魔法を使う人物だとか。その者に妙なことを吹き込まれたのやもしれませぬ。それと、これはあくまで噂なのですが…」

 

綾音は少し言いよどんだのか、続きを小声で話す。

 

「その山本某の裏には、あの松永が絡んでいるとも…」

 

「何と…」

 

八重が言葉を失った。

 

「それで戦況はどうなの?」

 

 それまで黙っていたリーンが綾音に質問を切り出す。彼女の問いかけに合わせるように、足下のポーラも首をかしげる。

 

「なにぶん急なことだったのもあって十分な戦力を集められず、このままではカワゴエの砦を落とされるのも時間の問題だという話です」

 

綾音の口から発せられた戦況に、八重は愕然とする。しかしそれは少しの間のことで、すぐに彼女の目に燃えるような決意の色が現われた。

 

「父さんと兄ちゃんを助けに行くんだな?」

 

 ワッカが八重に言葉をかける。

 

「ワッカ殿!カワゴエの砦近くの峠になら拙者は行ったことがあるでござる!どうか…!」

 

「モチロンだぜ!皆、準備は良いな!?」

 

ワッカの問いかけに双子とユミナが頷く。

 

「リーンはオレ達が帰るまで道場(ここ)で待ってるか?」

 

「あら、イジワルなこと言うのね。私も行くわよ」

 

肩をすくめてリーンが小さく笑う。ポーラもやる気を見せるかの如く、シャドーボクシングの動きを始めた。

 

「よし、全員で突撃だな!八重、その峠のことを思い出してくれ」

 

「分かったでござる」

 

 言って八重は目を閉じる。そしてワッカも目を閉じて、八重の手を取りつつおでこを合わせる。

 

「リコール」

 

 ワッカが魔法を唱えると、彼の脳内に砦の見える林の映像が流れ込んできた。

 

「うし、行くぜ!?ゲート!」

 

彼は八重から体を離して「ゲート」を開く。開かれた扉にエルゼ達は次々と入っていく。

 

「母上、少し行ってくるでござる」

 

そう言って八重も「ゲート」に飛び込む。ビャクティスを連れたワッカが最後だ。

 

「じゃあスンマセン。ちょっと八重の父さんと兄ちゃん助けに行ってきますんで」

 

「貴方は一体…?」

 

 七重は驚きの目でワッカを見つめる。

 

「八重の仲間っすよ。そんじゃ」

 

そう言ってワッカも飛び込み、「ゲート」は閉じられた。

 

 

 

 

 

 移動した先には、「リコール」で見たのと(ほとん)ど同じ風景が広がっていた。

 違うのは砦付近の様子である。カワゴエの砦は小高い山の頂上にあるのだが、その砦に攻め込もうと多くの人影が山を登っている。砦を守る兵士達は敵を防ぐのでいっぱいいっぱいという様子だ。

 

「あの赤い鎧が武田の兵でござる」

 

「マズそうだな。早いとこ砦に行かねえとな」

 

「待ちなさい!貴方、あの中に飛び込んで無事でいられると思っているの?」

 

 動き出そうとしたワッカをリーンが止める。彼女の言う通り、山の斜面から麓にかけて、徳川の兵と武田の兵が大勢戦っていた。あの中を突っ切って砦に向かうのは、歴戦の勇士ワッカさんと言えどもキツいだろう。しかし彼は

 

「まあ、そこは大丈夫よ。()()()()()()()()()。」

 

と笑って答えた。

 

「すぐに戻ってくっから、お前達はココに隠れてろ。ビャクティス、何かあったらすぐに知らせんだぞ」

 

『分かりました』

 

「え!?この子、喋るの?」

 

 驚くリーンを尻目に、ワッカは単身「ゲート」を開いて入っていった。

 彼が移動した先は戦場近くの林である。峠から見えたので「ゲート」で飛んだのだ。木の陰に隠れながら慎重に辺りの様子を(うかが)う。あちこちで雄叫びや怒号が飛び交い、火薬の臭いと血の臭いが混ざり合った臭いが彼の鼻孔に入っていく。

 ワッカの近くで、1人の徳川兵が負傷しながら戦っているのが彼の目に入った。足を負傷しているようで、姿勢を低くしながら赤い鎧の武田兵と戦っている

 

「せめて、こやつだけでも…!」

 

負傷兵はそう意気込んで、手にした槍を相手に向ける。槍は見事、武田兵の横っ腹を貫いた。ところが刺された武田兵は叫び声一つあげずに、槍から体を抜いて歩みを続ける。

 

「くそ…っ!」

 

「スリプルアタック!」

 

 木陰からワッカが乱入した。彼の投げたブリッツボールが武田兵に命中する。

 

「な!そなたは一体!?」

 

「アンタの味方だ!こまけえ話は後にしろ!」

 

「と、とにかくいけませぬ!そのような攻撃では…」

 

ワッカが振り返ると、「スリプルアタック」を当てたはずの武田兵が刀を振り上げ、攻撃を仕掛けようとしていた。

 

「あぶねえ!」

 

 ワッカは負傷兵を抱いて、武田兵の攻撃を(かわ)す。

 

「ヤツには普通の攻撃は効きません」

 

「なに?とにかくライブラ!」

 

負傷兵の言葉に驚きつつ、ワッカはスピラの魔法を唱える。

 

「不死身の体を持つ兵士。鬼の面を割ると倒せる。睡眠、毒、沈黙完全耐性」

 

「は?人間じゃねえのかよ?」

 

「顔に付けている鬼の面を壊さぬ限り、刺されても斬られても攻撃を止めぬのです!」

 

負傷兵が叫ぶ。とりあえず普通の人間で無いことは確かだと判断したワッカは、ブリッツボールに魔力を流し込む。ボールは、人間相手の通常モードから、相手を殺すことに特化した必殺モードへと変化する。

 

「そりゃあ!」

 

 ワッカは再びブリッツボールを投げつける。武田兵は避ける素振りすら見せず、ボールに直撃した。次の瞬間、武田兵の体は石化してバラバラに砕け散った。

 

「は?な…?え?」

 

「やっぱ石化は効くんだな」

 

「あ、アンタは一体…?」

 

「こまけえ話は後っつったろ?とりあえず付き合えよ」

 

 ワッカは困惑する負傷兵を半ば無理矢理木陰へと連れて行く。そして他の目に付かないように「ゲート」を開き、負傷兵と共に入っていった。




 じゃあソウリンちゃん。小説も書き終わったし、あそこの城みたいな建物で一泊しようか。
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