異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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魔法、そして適性。あとブリッツボール。

 ワッカ達三人は「銀月」という宿屋で初任務達成の祝賀会を開いていた。この「銀月」という宿屋は食事付きで一泊の宿代が銅貨2枚。一角狼の討伐依頼で受け取った一人当たりの報酬が銅貨6枚なので、無一文だったワッカも野宿をせずに済むことになる。

 

「あんた、中々強いのね~」

 

 双子の姉エルゼがワッカを素直に褒めた。

 

「だから言ったろ~?」

 

ワッカが言葉を返す。

 

「ブリッツボール…だったかしら?あんな戦い方は見たことなかったし、オマケに魔法まで使えるなんてねぇ」

 

「あ、そう言えばワッカさんが使っていた魔法について、気になることがあるんですが…」

 

 双子の妹リンゼが口を開く。

 

「ワッカさんが使っていた魔法、火属性の攻撃魔法だったと思うのですが、私達が使う火属性魔法とは呪文が違っていたのですが?」

 

「何だと?」

 

ワッカは焦る。言われてみればリンゼは火属性魔法を放つ際「炎よ来たれ、赤の飛礫、イグニスファイア」と唱えていた。一方でワッカの場合は「ファイア」だけである。

 別にこのこと自体はおかしなことではない。ワッカが元いた世界での火属性魔法は基本が「ファイア」で、「ファイラ」「ファイガ」と威力が上がっていく。だがここは異世界だ。世界が変われば魔法も違ってくるだろう。

 

「あ、あ~なんて言やぁいいのかな…」

 

 ワッカはしばらく考えた後で言葉を続けた。

 

「オレの故郷では、アレで良かったんだよ」

 

こう答えるしか無かった。

 

「そう…なんですか?」

 

「そんな地域があるなんてねぇ」

 

「ま、まあオレの故郷って言ってもごく限られた地域にだけ伝わる秘術的なモンだ!知らなくっても無理はねえな」

 

 何とか誤魔化すことに成功したワッカだったが、この世界で活動を続けていく中でスピラの魔法ばかりを使うわけにも行かないだろう、と彼は思い始める。今は誤魔化せていても他の人に問い詰められた時にも上手く行くとは限らない。ならば、この世界の魔法も覚えておくに超したことはないだろう。

 郷に入っては郷に従う、私の好きな言葉です。

 

「そうだ!お前達が使っている魔法、オレにも教えてくれねえか?」

 

「私達の魔法を、ですか?」

 

「ああ、興味が湧いてきてな」

 

「そういうことならリンゼに教えて貰うといいわ。この子、魔法の天才だしね」

 

そう言ってエルゼがリンゼの肩をポンと叩く。

 

「そんな、天才だなんて…お姉ちゃんったら…」

 

「リンゼ、頼めるか?」

 

ワッカはリンゼの目を見つめながらもう一度頼み込む。するとリンゼは(ほお)を赤らめ(うつむ)きながら

 

「私で良ければ…教えます」

 

と答えた。

 

「も~リンゼったら、そんなに恥ずかしがらないの!良かったわね、ワッカ」

 

「ああ!ありがとな、リンゼ!」

 

ワッカの笑顔を見て、リンゼは再び頬を赤くするのだった。

 

 

 

 

 

 こうしてリンゼによる異世界魔法講座が始まった。場所は銀月の裏にある空き地だ。

 

「まず、ワッカさんがどの属性に適性を持っているのか確認しなければなりません」

 

「適正?」

 

「魔法は生まれ持った適正によって使えるかどうかが大きく左右されるんです。適性がない人はどうやっても魔法を使うことは出来ません。属性は全部で火、水、土、風、光、闇、無の7つの属性があるんです」

 

「火、水、土、風、光、闇、無…」

 

ワッカが復唱する。彼の世界でも似たような属性がある。火属性の「ファイア」、水属性の「ウォータ」、氷属性の「ブリザド」等々…。しかし土属性と風属性というのは対応する魔法が無いため、いまいちピンと来ない。

 

「氷属性ってのは無いのか?」

 

「氷属性は水属性魔法の一種です。今言った7つの属性は魔法を大きく分類したものですから。例えば光属性は別名を神聖魔法とも言って、治癒魔法もココに含まれます」

 

白魔法だな、とワッカは思う。

 

「闇は召喚魔法…契約した魔獣や魔物を使役することが出来ます」

 

「おお!召喚魔法来たな!!」

 

 ワッカのテンションが上がる。ユウナのことを思い出したからだ。彼女の召喚魔法によって呼び出される召喚獣であるバハムート、シヴァ、ようじんぼう等々には何度も助けられた。ワッカの世界では召喚魔法は召喚士と呼ばれる選ばれた人間にしか行えないものだったのだが、この世界では自分も出来るのだ。

 

「あのねぇ、盛り上がってるトコ悪いんだけど、そもそも属性の適性が無きゃ使えないのよ」

 

「そういや、そうだったな」

 

「それに、私では召喚魔法を教えることが出来ません…。私には闇属性の適性がありませんから…」

 

リンゼが落ち込んだ様子で言う。

 

「あ、ああ、そんなに落ち込まないでくれ!悪かったな、勝手に盛り上がっちまってよ!」

 

ワッカが慌てて謝罪する。

 

「そうよ、リンゼは3つも属性の適性があるんだから落ち込むこと無いじゃない!」

 

エルゼも妹を励ます。

 

「リンゼは何の適性を持ってんだ?」

 

「私が使えるのは火、水、光の3属性です。これでも珍しい方なんですよ?」

 

「やっぱりスゲぇんじゃねえか!もっと自信を持てよ、な?」

 

「は、はい!ううぅ…」

 

兄貴分ワッカの励ましを受け、リンゼの顔が真っ赤になる。

 

「そろそろワッカの適性を調べたら?」

 

 じれったくなったのか、エルゼが横から口を挟む。

 

「おお、そうだな。それで、適性ってのはどう調べるんだ?」

 

「あ、コレを使います」

 

そう言ってリンゼは袋から1センチほどの魔石を取り出す。魔石は全部で7つあり、赤、青、茶、緑、黄、紫、無色と全て色が違っていた。

 

「この魔石を一つずつ持って、石に意識を集中させ呪文を唱えます」

 

そう言って彼女は青い魔石を右手でつまみ、目を閉じる。

 

「水よ来たれ」

 

すると彼女の持つ魔石からツツーッと少量の水が流れ出した。

 

「適性があればこのように魔石が反応します。適性が無ければ何の反応もしません」

 

「ほうほう」

 

「先程の戦いでワッカさんには火属性魔法の適性があることが分かりました。なのでこの青い魔石を使って、水属性魔法の適性から試してみましょう」

 

 ワッカはリンゼから青い魔石を受け取り、リンゼと同じことをする。

 

「水よ来たれ」

 

魔石から水が出た。が、予想外だったのはその水量で、壊れた蛇口のように大量の水が出てしまった。

 

「げげえっ!」

 

ワッカは驚きの声を上げる。双子も唖然としていた。

 

「リンゼの時と水量が違うじゃねえか!教えはどうなってんだ教えは!!」

 

「ワッカさんの魔力量が(けた)違いに大きかったんだ…と思います…。こんな小さな魔石と呪文の断片でまさか…。信じられません」

 

「あんた魔法使いの方が向いてるわよ絶対!こんなの見たことない…」

 

「そ、そうか?ま、ブリッツボールの選手兼コーチだからな!こんくらい当然だろ!」

 

 驚く双子をよそにワッハッハと笑うワッカ選手。次は光属性の適性を試します。

 

「光よ来たれ」

 

魔石からカッと閃光が放たれる。光属性の適性もバッチリだ。つまりは回復魔法が使えるということで、これは非常に心強いことだった。

 

「闇よ来たれ」

 

 続いてワッカが闇属性の適性を試すと、魔石からブオォと黒いモヤみたいなモノが(あふ)れ出た。これで召喚魔法が使えることが分かったが、双子が闇属性の適性を持っていない以上、現段階で習得することは出来ない。そもそもユウナの使役した召喚獣はあちら(スピラ)の世界のモノなのだから、この異世界では召喚出来ないだろう。

 残すは土属性と風属性。ワッカの世界に存在しない属性だ。まずは土属性から試す。

 

「土よ来たれ」

 

すると茶色の魔石から砂がこぼれ落ちた。が、今までと比べると大分頼りない。砂時計の方が落ちる砂の量が多いだろう。

 

「あー、やっぱ土属性はダメだったか?」

 

「何言ってんのよワッカ」

 

エルゼがツッコミを入れる。

 

「適性が無かったら何も反応しないわよ。砂がこぼれ落ちたってことは適性があるってこと!これで5つ目の適性よ!」

 

「じゃあ教えてくれ!な、どうして今までに比べて出が悪いんだ?」

 

「適性がある魔法の中でも得意不得意があるんです。私の場合、火属性は得意ですが光属性は苦手です」

 

リンゼが解説する。

 

「でもワッカはそんなこと気にする必要無いわよ、これだけ適性があるってだけで十分異常なんだから!さあ、最後は風属性の適性よ」

 

 エルゼに(うなが)され、ワッカは緑の魔石をつまむ。

 

「風よ来たれ」

 

結果として魔石から風は吹き出した。が、コレも大分頼りない。適性の有無を確かめるために双子が魔石の(そば)に手を近づけなければならなかったほどだ。だが、ワッカに6属性全ての適性があると分かった今、二人にとってはそんなことは些末事(さまつごと)らしい。

 

「6属性も適性があるなんて…。ワッカって何者なの?」

 

「そう言われてもなぁ…」

 

ワッカも返事に困る。

 

「生まれ持っての適性なんだろ?そういうことだと納得するしかねーじゃねぇか」

 

「まあ、それは…そうね…」

 

本当はワッカは原因を知っている。間違いなく神の仕業だろう。だが、それを二人に言うことはしないでおいた。

 

「それはそうと、無属性ってのは何なんだ?」

 

 ワッカはリンゼに問いかける。字だけ見れば130位が飛びつきそうだが、ワッカにはイメージが思い浮かばない。

 

「無の魔法は特殊で、これといった呪文が決まってないんです。魔力の集中と魔法名だけで発動します。例えばお姉ちゃんの身体強化だと『ブースト』と唱えれば発動します。その他に筋力を増加する『パワーライズ』、珍しいモノだと遠くに移動出来る『ゲート』なんていうのもあります」

 

「そりゃあ便利だな!」

 

ワッカの世界には遠くの場所まで移動出来る魔法は存在しない。もしそんなモノがあったなら召喚士の旅はだいぶ違うものになっていただろう。

 

「でも、自分がどんな無属性魔法を使えるかなんて、どうやって分かんだ?」

 

「あるとき何となく魔法名が分かってくるのよねぇ」

 

エルゼが自分の経験から答える。

 

「一応、この無色の魔石を持って何か無属性の魔法を使おうとすれば、適性の有無は分かります。魔法が発動しなくても、魔石がちょっと光るとか、震えるとか、何かしらの反応がありますから」

 

そう言ってリンゼがワッカに無色の魔石を渡す。

 

「うし、いっちょやってみっか!」

 

ワッカは魔石を持ちながら、再び「ゲート」という名の移動魔法に思いをはせる。もし自分が「ゲート」を使えたならば、魔獣討伐の依頼に使う移動時間が短縮できる。そうなれば一日に多くの依頼を達成でき、報酬もたくさん貰える…。

 

「ゲート!」

 

彼が呪文を唱えると魔石から光が放たれ、淡い光を放つ半透明の壁というか板のようなモノが現われた。

 

「出来ちまったみてぇだな」

 

「……そうみたいですね」

 

ワッカの言葉にリンゼが呆然と答える。エルゼはもう、一々反応することに疲れてしまったようだ。

 ワッカは現われた「ゲート」に顔を突っ込む。すると、彼の視界に入ったのは見たことのある森だった。

 

「あれ、見覚えがあるな」

 

「ココって一角狼の討伐をした森じゃないですか?」

 

気付くとワッカの横から双子の姉妹も「ゲート」に顔を突っ込んでいた。森の方から見ると、三人の生首が浮かんでいるように見える。幸い誰もいなかったために騒ぎにはならなかったが。

 

「どうして東の森に繋がってんのよ?」

 

エルゼが疑問を口にする。

 

「そりゃあアレだな。『ゲート』の魔法を思い浮かべる時に、ソイツがありゃぁ討伐依頼で一々移動せずに済むな、とか考えてたからだな」

 

ワッカはそう答えてゲートから首を引っ込める。姉妹も後に続いた。

 三人が首を引っ込めると「ゲート」は自然消滅した。ワッカはふぅと息を吐いた。

 

「ま、とりあえずコレでオレの適性が分かったな!全魔法に適性有り!ただし土属性と風属性は苦手!こんなもんか」

 

「全属性の魔法に適性があるだけで十分信じられないことなんですけどね…」

 

ワッカのまとめに対してリンゼが言葉を返した。

 

「…ていうかさ」

 

 エルゼがワッカの顔を見て口を開く。

 

「この『ゲート』があれば、ワッカの故郷に行けるんじゃない?」




魔法の適性検査だけで5000字近くなってしまった。何でだよ!(ナンデダヨ!)

次回は三人目のヒロインを出したい!…です。
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