異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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 更新が遅くなってしまった分、今回の話は少し長めです。

 イーシェンを治める9領主の名前は原作の通りです。どうして大友がいないんだろうなぁ…?戦国時代版「終末のワルキューレ」でもハブられてたし、嫌われてる?
 大友氏をハブる輩には南蛮菓子(カステラ)の裁きが下されようぞ!多分…。


連鎖、そして役割分担。あとブリッツボール。

 戦場に向かったワッカが「ゲート」から負傷した徳川兵を連れて戻ってきたので、待っていたエルゼ達はビックリした。

 

「ちょ、ワッカ?誰なのよ、その人!」

 

「な、こ、ここは…?」

 

エルゼと徳川兵が驚きの声を発する。

 

「ちょっくら戦場に行ってきてな。徳川兵を1人連れてきた」

 

 ワッカはエルゼに簡単な説明をし、次に徳川兵に説明をする。

 

「ここはカワゴエの砦近くにある峠だ。ほら、あそこに砦が見えんだろ?」

 

そう言って攻められてる最中の砦を指で指し示す。

 

「あ、貴方達は一体?急いで合戦場に戻らねば!」

 

未だに混乱中の徳川兵を尻目に、ワッカは八重に目線を向ける。

 

「ほら、挨拶」

 

「え?あ、せ、拙者は徳川領領主、徳川家泰(とくがわいえやす)が家臣、九重重兵衛(ここのえじゅうべえ)の娘、九重八重でござる!」

 

「な、重兵衛様の…ご息女ですか!?」

 

徳川兵が八重に驚きの目を向ける。

 

「そういうことだ。で、オレ達は八重の仲間だ」

 

ワッカはようやく、徳川兵に自分の素性を明かした。

 

「オレ達は八重の父さんと兄ちゃんを助けに来たんだが…、っとその前に足の怪我を治してやるか。ケアルラ!」

 

 ワッカは徳川兵の怪我をしている足に手を(かざ)し、魔法を唱えた。たちまち傷は治り、徳川兵は立てるまでに回復した。

 

「か…、かたじけない!」

 

「良いんだよ。これからちょっくら協力して貰うからな」

 

「協力?」

 

「オレ達はカワゴエの砦に入りてえんだが、あの戦場を突っ切んのは危険すぎる。アンタ、砦の中には入ったことあるか?」

 

「そ、ソレはもちろん…」

 

「なるほどね」

 

 会話を聞いていたリーンが口を開く。

 

「この兵士の記憶を読み取り、『ゲート』で直行ってワケね?」

 

「そういうこった」

 

「確かに、それなら危険は無いでしょうね。でも、素性を明かすのが遅すぎじゃ無くて?彼、不安がっていたわよ」

 

「まあすぐに自己紹介しても良かったんだが、怪しまれても困るしな。八重が最初に自己紹介してくれた方が都合が良い。それでも怪しいってんなら、八重の道場に戻って身元を証明することも出来るしよ」

 

「あの…」

 

 徳川兵が口を開く。

 

「貴方達が我が軍を助けて下さると言うのは(まこと)か?」

 

「おう!そのためにもまずは、砦の中に入らなきゃならねえ。協力してくれるか?」

 

「も、モチロンでございます!」

 

 徳川兵の了承を得たところで、ワッカは彼に「リコール」で記憶を読み取る一連の動作を説明する。結果、無事に砦の中の様子を記憶することが出来た。

 

「ゲート」

 

ワッカは徳川兵から読み取った記憶を元に、砦の内部に繋がる「ゲート」を開いた。

 

「八重、この兵士を連れて先に行ってくれ。状況の説明を頼んだ」

 

「承知したでござる!」

 

八重は徳川兵を連れ、「ゲート」に入っていった。

 

 カワゴエの砦内部では1人の青年が、突如出現した魔法の扉に困惑していた。程なくして、扉から八重が姿を現した。

 

「な、何者だ!?」

 

「わわ!兄上、拙者でござる!八重でござるよ!」

 

「八重?本当に八重なのか!?」

 

「はい!兄上、よくぞご無事で!」

 

八重が青年もとい兄の九重重太郎(ここのえじゅうたろう)との再会を喜ぶ。

 

「あ、ああ…。だが何故八重がココに…?」

 

「話は綾音から聞いたでござる。父上と兄上の危機だと知り、助太刀に参った!」

 

「ダメだ!戦場(ここ)は危険すぎる。今すぐ帰るのだ!」

 

「大丈夫でござる兄上。拙者には心強い仲間達が一緒ですので!」

 

「仲間…?」

 

 重太郎の疑問に対し、八重と一緒に来た徳川兵が口を開く。

 

「戦場で怪我をした私を救って下さいました。足を治してくれただけではなく、このような移動魔法をお使いに」

 

「拙者の仲間達なら、この窮地を救ってくれるハズでござるよ!」

 

「そ、そうか。助太刀は非常にありがたい。頼めるか?」

 

 2人の説明を聞いた重太郎はワッカ達の侵入を許可した。

 八重のゴーサインを確認し、ワッカ一行はカワゴエの砦内部へと足を踏み入れた。

 

「オレはワッカ。八重とはギルドの冒険者仲間だ。よろしくな」

 

「拙者は八重の兄、九重重太郎と申す。お見知り置きを」

 

ワッカと握手を交わした重太郎に、八重が問いかける。

 

「兄上。父上はご無事でござるか?」

 

「ああ、無事だから安心しなさい。今は家泰様の警護をしているから後で会いに行くといい」

 

「良かったな、八重。父さんも兄ちゃんも無事でよ」

 

 そう言いつつ、ワッカは砦の中を見渡す。そこら中に負傷した徳川兵がうずくまっていた。中には重傷の者もいたが、彼らの手当ても応急処置に留まっていた。

 

「随分やられたみてえだな?」

 

「ああ。敵兵の約八割は、鬼の面を付けた不死身兵だ。ヤツらのせいで、戦況は悪化するばかりだ」

 

「オレも見たぜ。アイツは何なんだ?」

 

「分からない。ただヤツらは、顔に付けた鬼の面を壊すまでは、例え槍で刺されようと、腕を切り落とそうと動きを止めない。まるで生きた屍だ…」

 

重太郎が重い口調で答える。

 鬼の面を壊せば良い、と聞くと簡単な相手に感じるかもしれないが、物事はそう単純では無い。普通の人間なら傷を負えば、痛みによって多少なりとも隙が生じる。しかし不死身兵にはその隙が存在しない。更に言えば、不死身兵には死への恐怖そのものが無いのだ。命の奪い合いをする戦場において、痛みも恐怖も感じない敵は厄介きわまりない存在となるだろう。

 砦の中には多くの負傷兵、外には多くの不死身の敵。二つの問題に目を向けながら、ワッカは頭を悩ませる。

 

「『負傷兵は回復させる』、『武田兵は倒す』。両方やらなくっちゃあならないってのが、つれぇところだな…。覚悟はいいか?やっぱつれぇわ…」

 

「何ブツブツ言ってんのよ!」

 

ひとりごとを口走るワッカに、エルゼがツッコミを入れる。

 

「ちょっと黙っててくれねえか?今どうすりゃ良いか考えてんだからよ…」

 

()()()()()()()()()()()

 

 悩むワッカにそう言い放ったのはリーンだった。

 

「不死身の敵を倒しながら、負傷兵を回復させればいい話でしょう?」

 

「あのなぁリーン、そんな都合の良い方法が…」

 

「あるのよ。そんな都合の良い方法が、ね」

 

リーンはハッキリと言い切った。

 

「ポーラを見れば分かると思うけど、無属性魔法『プログラム』は重ねがけが出来るのよ」

 

そう言う彼女の足下で、ポーラが「オレを見ろ!」と言いたげにアピールする。

 

「…みてえだな?」

 

「まあクイズをやってるような場合でも無いし、ズバリ言うわよ。貴方の持っているボールに『鬼の面を破壊した後、別の鬼の面を破壊しに向かうプログラム』をかければいいのよ」

 

「え?」

 

「そうすれば、一つ鬼の面を壊せば自動的に他の面を壊しに向かうでしょ?さらにその破壊がトリガーになって、別の面を壊しに向かう。ボールが勝手に鬼の面を壊して回ってくれるのよ。その間に貴方は負傷兵を回復させれば良い。どう?」

 

「な、なるほど~!んな方法があったとは!」

 

 ワッカが舌を巻く。流石は200年もの間ポーラに「プログラム」をかけ続けた女性だ。発想が違う。

 ワッカは早速、ブリッツボールを取り出した。

 

「味方の兵に当たらないように、『障害物を避ける』指示も忘れずにね」

 

「お、おう」

 

リーンのアドバイスを聞きつつ、ワッカはブリッツボールに「プログラム」をかける。

 

「プログラム開始

/移動:障害物に当たらぬよう、最初に鬼の面を壊したときと同じ速さで、半径一キロメートル以内で最も近い位置にある別の鬼の面を破壊しに向かう

/発動条件:鬼の面を壊したとき

/プログラム終了」

 

「良い感じね。近くに破壊できる鬼の面が無ければ、指示の無いボールは別の何かに当たる。そうすれば既にかけている『プログラム』によって、ワッカの手元に自動的に戻ってくるハズよ」

 

「うし、ちょっくら行ってくる」

 

 ワッカはブリッツボールを手に砦の外に出る。

 

「ブースト」

 

そしてエルゼの十八番(おはこ)である身体強化魔法(ブースト)を発動して駆けだした。

 今までは、ブリッツボールが手元に戻ってくるように投げるのに力の加減が必要だったため、「ブースト」をかけた状態での投擲(とうてき)は不可能だったのだが、手元に自動的に戻ってくる「プログラム」をかけた現在はその心配は要らなくなった。「ブースト」で身体強化をした状態での投擲が可能となったのは、純粋な強化である。

 ワッカは砦のすぐ側まで迫っていた、1人の不死身兵に狙いを定める。

 

「おぉらあ!!」

 

不死身兵の顔に付いている鬼の面に向かって、力いっぱいブリッツボールを投げつける。彼の豪腕から放たれたボールは、面を容易く破壊した。そしてボールは、近くにいた不死身兵の面に向かってもの凄いスピードで飛んでいく。瞬く間に二つ目の面を破壊したボールは、また別の面に向かって飛んでいった。

 

「うし!成功だな!」

 

 プログラムの成功を確認したワッカは「ゲート」で砦へと戻っていった。

 

「どうだった?」

 

帰ってきたワッカにリーンが尋ねる。

 

「大成功だ!ありがとよ、リーン!」

 

「まあね」

 

リーンはツインテールを右手で払いながら、得意げに笑う。

 

「軍師様とお呼びなさい?」

 

「おう、そうさせてもらうぜ」

 

 そう言いながら、ワッカは負傷した兵士達の元へと向かう。

 

「ケアルガ!」

 

ボールが不死身兵を倒している間、彼は負傷兵の回復に専念できるのだ。

 

「私達も黙っていられないわね!」

 

 エルゼがガントレットを打ち鳴らす。戦いたくてウズウズしているのが見て取れた。

 

「おい、エルゼ!オレはここを離れられねえんだぞ。『ケアルガ』は1人ずつにしか、かけられねえからな」

 

「ボールが倒しているのは不死身の敵だけなんでしょ?生身の敵も何とかしなきゃじゃない!」

 

「まあ、確かにな…。しゃあねえ、行ってこい。ただ、ムチャはするんじゃねえぞ」

 

「分かってるわよ!」

 

「拙者もお供するでござる!」

 

八重もエルゼに同調した。

 

「八重!危険だ!」

 

「大丈夫でござるよ兄上。拙者はこれまでの旅のおかげで、家を出た時分より何倍も強くなっているでござる!」

 

「だが…」

 

「ま、兄ちゃんとしては心配だよな?」

 

 ワッカは重太郎に同情しつつ、八重に手を(かざ)す。

 

「リジェネ!」

 

八重の体を淡い光が包み込んだ。

 

「ワッカ殿、これは…?」

 

「この魔法が効いてる間は、少しの傷なら自動的に回復してくれる。でもデカい傷はすぐに治らねえからムチャはすんなよ?」

 

「承知!」

 

「よし、エルゼにもかけてやっからな」

 

「ありがと、ワッカ」

 

 エルゼに「リジェネ」をかけた後、ワッカはユミナの方を振り向く。

 

「ユミナ、お前は(ここ)に残ってろ!」

 

 今回、ワッカ達は屋敷の応接室から直接イーシェンに来てしまった。流石に、ラピスやセシルら「ユミナを陰から見守り隊」も来られてはいないだろう。この状況でユミナの身にもしものことがあれば、ワッカは2人に顔向けが出来ない。

 

「そう言うと思いましたよ、ワッカさん」

 

 ワッカの命令を聞いたユミナは、反発するでも、ふて腐れるでも無くそう言った。

 

「ですから私も、私が出来ることを考えてきました!闇よ来たれ、我が求むは誇り高き銀狼、シルバーウルフ」

 

召喚魔法を唱えた彼女の影から、シルバ率いる5匹のシルバーウルフが姿を現した。

 

「この子達に、負傷している兵士達を(ここ)に運んできてもらいます」

 

「おお、良いじゃねえかユミナ!頼むぜ!」

 

「はい!じゃあ皆、徳川()の色の甲冑を着た負傷兵を運んできてね」

 

 ユミナの指示を聞き、シルバーウルフは戦場に向かっていった。

 

「私は光属性は苦手ですが、少しの傷なら治せます。なので、ワッカさんのお手伝いをしますね」

 

 リンゼがそう進言する。

 

「助かるぜ、リンゼ!ビャクティス、お前はブリッツボールが(ここ)に近づいてきてたらオレに伝えろ!」

 

 ワッカによって「プログラム」がかけられたブリッツボールは、彼の手元に戻ってくる際にかなりのスピードを出す。ボールの位置を把握できるビャクティスが予め知らせてくれれば、誰かが怪我をするリスクを抑えられるのだ。

 

『かしこまりました』

 

「よーし、頑張るぜ皆!」

 

 ワッカの鼓舞を皮切りに、各人が自分の役割に向かっていった。

 

「なるほどね…。中々良いチームワークじゃない」

 

一行の様子を見ながら、リーンは満足そうに微笑んだ。

 

 数十分後、ビャクティスがワッカに報告する。

 

『主、ブリッツボールが戻ってきます』

 

「分かったぜ、ビャクティス」

 

ワッカは作業を中断し、砦の外に向かう。そして飛んできたブリッツボールをキャッチした。

 ワッカが戦場に目を向けると、おびただしい数の武田兵が倒れていた。ただし、別の方角にいる不死身兵は倒せていない。ワッカは最初にボールを投げた場所とは反対方向に向かい、不死身兵の面に向かってボールを投げつけた。

 ワッカが砦に戻ってくると、倒れているリンゼの姿が目に入った。

 

「リンゼ!?大丈夫か?」

 

急いで彼はリンゼを抱きかかえる。

 

「わ、ワッカさん…。大丈夫…です…。魔力を使いすぎた…だけですから……」

 

「大丈夫じゃねえじゃねえか!もういいから休んでろ!」

 

「でも…、皆頑張っているのに…私だけ…」

 

「無理しちゃダメだっつったろ?」

 

「ダメじゃない、ワッカ」

 

 そう言ったのは、今まで様子を見ていたリーンだった。

 

「せっかくやる気を出してる子の、やる気を削ぐような事をしちゃ」

 

「リーン?」

 

「少しどきなさい」

 

そう言ってリーンは、リンゼの両手をとった。

 

「トランスファー」

 

 リーンが魔法を唱えると、リンゼの手を握る彼女の両手がボンヤリと光り始めた。

 

「あ、あれ…?魔力が回復してきてます!?」

 

リンゼが驚きの声をあげる。

 

「何したんだ?リーン」

 

「自分の魔力を他人に与える無属性魔法『トランスファー』よ。シャルロッテと修行をするとき、あの子の無くなった魔力を回復させて、また魔力が無くなるまで修行をさせて、なんてことを続けたわ。懐かしいわね」

 

何気に恐ろしいことをリーンが口にする。弟子にならなくて良かった、と思いながらワッカはリーンに抗議する。

 

「おい!オレはリンゼにそこまでさせる気はねえぞ?」

 

「私も、弟子でも無い子にそこまでする気は無いわよ。大事なのはこの子の気持ち、でしょう?」

 

 そう言ってリーンはリンゼに顔を向ける。

 

「私、まだまだ頑張れます!やらせて下さい、ワッカさん!」

 

「そうか…。じゃあ、まだまだ頼むぜ!リンゼ」

 

「はい!」

 

ワッカとリンゼの会話を聞き、リーンは再び微笑んだ。

 

 ワッカ一行の活躍の結果、戦況は徳川軍の優勢へと傾いていく。彼らが来てからは、徳川軍の犠牲者は目に見えて減っていった。一方の武田軍はと言うと、不死身兵はもの凄い勢いで倒されていき、日没前には全滅。残りの生身の敵兵も撤退していった。

 カワゴエの砦防衛戦は、徳川軍の勝利で幕を閉じたのだった。




 次回、本筋に影響を与えない範囲でオリジナル要素を含んでいきます。かなり私個人の趣味が入ったオリジナル要素ですが、ご了承下さい。どうしてもやりたいんだもん。
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