異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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 第五話「世界の壁、そしてサムライ。あとブリッツボール。」の前書きで紹介した「コネクトが全く気付かないうちに気持ちよすぎだろ!」が、全く気付かないうちに削除されていました。悲しいなぁ…。
 でもあの動画は流石に悪ふざけが過ぎたか…?


武田の噂、そしてくノ一。あとブリッツボール。

「まずは此度(こたび)の助太刀、心から御礼申し上げる」

 

 そう言ってワッカ達に頭を下げた人物は、見た目が40代と見られるちょび髭を生やした男性だった。彼こそが、徳川領の領主である徳川家泰(とくがわいえやす)その人である。

 彼らは今、砦の天守閣にて互いに正座をしながら向き合っていた。

 

「いえ、こちらに出向いたのはたまたまのことです。それに、仲間である八重の家族及びその主を助けるのは、私共としても当然のことです。どうかお気になさらず」

 

そう答えたのはユミナだった。

 ベルファスト王国の王女である彼女が、立場が偉い人との会話を得意としていることはミスミドの件で知っていたので、ワッカは領主との会話を彼女に任せたのである。ワッカ一行はユミナ王女の護衛という(てい)を取ることにした。

 

「それにしても、八重がベルファストの王女の護衛になっているとは…、全く驚いたな」

 

 そう言ったのは、家泰の隣に座るもう1人の男性、九重重兵衛(ここのえじゅうべえ)である。彼は八重の父親であり、現在は徳川家の剣術指南役を務めていた。

 

「して、此度の防衛戦の(かなめ)となった彼は…?」

 

 家泰が興味津々な目線をワッカに向ける。

 

「この方はワッカさんと申しまして、私の護衛……というか、」

「おい!言葉をつつしめよ」

「はい、護衛です、はい」

 

 本当は「未来の旦那様です」と口走ろうとしていたユミナだったが、小声でワッカに釘を刺されてしまったので、素直に諦めた。

 

「ども、ワッカっす」

 

「ワッカ殿。此度は我が兵士達の命を救ってくれたばかりで無く、武田の鬼面兵も討ち取ってくれたこと、感謝の言葉も見つからぬ。心から御礼申す」

 

 そう言って、家泰が手を床に付けながら頭を下げるので

 

「いやいや、ユミナ…姫の言ったとおり、オレらは当然のことをしたまでっすから!そんな硬くならず…」

 

とワッカは慌てて言葉を返す。ユミナ王女の護衛という立場を取っていながら、彼女を普段通り呼び捨てにするところだった。

 

「と、ところで、オレらは『ニルヤの遺跡』っつー場所を目指してイーシェンに来たんすけど、何か知りません?」

 

 ワッカは無理矢理、話題を変えようとする。せっかくユミナに会話を任せていたのに、これでは台無しである。

 

「ニルヤ…?ニルヤ…ニルヤ……。む、もしかして『ニライカナイの遺産』がある遺跡のことかな?」

 

 しばらく考え込んでいた家泰が言葉を返す。

 

「なのか?リーン」

 

「語感も似ているし、その遺跡でしょうね。地方や時代の違いで名前のズレが生じるのはおかしくないでしょうし」

 

ワッカに問われたリーンは、そう結論付けた。

 

「そ、そちらの方は…?」

 

 ワッカ一行の中で最も年下に見える女性が思慮深い発言をしたので、家泰はリーンに興味を向け始めた。

 

「彼女はリーンっつって、オレらの軍師っす!」

 

「ちょ、ワッカ!?さっきの発言は冗談よ!?」

 

ワッカの紹介に対してリーンは慌ててツッコミを入れる。

 彼女が焦った姿を見せたのは初めてだったので、ワッカは新鮮な心持ちになった。

 

「私は詳しいことは存じないのだが…、重兵衛はどうだ?」

 

隣の剣術指南役に家泰が問いかける。

 

「確か、島津の領域にあったかと。しかし、あの遺跡は海の底にあるのですぞ?入ることすらままならないと思いますが……」

 

「マジでかぁ~…?」

 

 重兵衛からの情報を聞いたワッカは唖然とする。ブリッツボールの選手である彼は、水中に長時間潜っていることは得意なのだが、それでも限界というモノはある。せめて浅瀬に遺跡があることを願う他無かった。

 さて、目的地も判明したのでこれにて失敬…、と言うわけにはいかなかった。今日は武田軍を退ける事に成功したが、これから先、相手がどの様に行動してくるかは分からないからだ。

 

「武田軍は、あれで諦めるのか…?」

 

 ワッカが疑問を投げかける。

 

「分からぬ。また態勢を整えて進軍してくるやもしれぬ。鬼面兵を更に増やし、大砲などを持ち込んで攻めてくる事も考えられる…」

 

家泰は腕を組みながら眉間にしわを寄せる。

 

「せめて、あの鬼面兵の謎さえ分かれば…」

 

「あの鬼面兵は、敵の無属性魔法か、あるいは()()()()()()()()でしょうね」

 

 そう言葉を発したのはリーンだった。

 

「アーティファクト?」

 

「古代文明の遺産、強力な魔法道具のことよ。ワッカの持っているブリッツボールもアーティファクトなんじゃないの?変形してたし」

 

「んあ?ああ、ああ、そうだな!その通りだ!オレの故郷に伝わるシロモノでな!」

 

 神からのプレゼントである、とは当然言えないので、ワッカはその場のノリで嘘をついた。

 

「う~む、その知識の深さ。流石は軍師殿だな」

 

「だから軍師じゃないって…」

 

重兵衛が感心しながら言うので、リーンは呆れてしまう。

 

「その鬼面兵と言い、突然の侵略と言い、訳が分からぬ…。此度の武田軍の動きは、領主の真玄(しんげん)殿らしくない。やはり、あの噂は本当なのだろうか…」

 

「噂、とは?」

 

 家泰の呟きにユミナが反応する。

 

「真玄殿は病によって(すで)に亡くなっている、という噂だ。そしてその死体を操り、武田軍を意のままにしているのが闇の軍師、山本完助(やまもとかんすけ)であると。更に完助の裏にはあの松永(まつなが)もいるという噂なのだ…」

 

「松永…」

 

家泰の言葉に八重が(つば)を呑む。

 

「なあ、その松永ってのはドコのドイツなんだよ?」

 

 新たな登場人物の名前を耳にし、ワッカはたまらず質問する。

 

「松永ダンジョー。イーシェンの大悪党でござる」

 

八重がそう答え、父親の重兵衛が補足を始める。

 

「松永ダンジョーは元々、織田の領主に仕える武将だった。名前が特殊なのは、親のどちらかがイーシェンの生まれでは無いからだそうだ。ヤツは文武の両方に優れた武将だったのだが、ある日突然、謀反(むほん)を起こしたのだ」

 

「裏切りモンか…」

 

「あの織田の領主を裏切っておきながら生きているだけでも十分凄いのだが、この謀反はヤツの悪行の始まりに過ぎなかった。イーシェンの先々代国王の暗殺、トウダイ寺院の焼き討ち、他にもヤツの悪行を挙げればキリが無い」

 

「目立つ悪行をしておきながら、事件後は誰にも見つからず平然と姿を消す…。イーシェンの人々はヤツのことを、畏怖を込めて『イーシェンの(ふくろう)』と呼んでいるでござるよ」

 

「闇夜に(まぎ)れて爪を立てる梟、だなんて中々シャレの効いた通り名ね」

 

九重(ここのえ)親娘(おやこ)の解説を聞いたリーンはそう言葉を漏らした。

 

「でも、そんな危険人物なんて武田の人達も警戒するのでは…?」

 

 今までの話を聞いていたリンゼが疑問を呈する。

 

「その通りだ。だから噂なのだよ。此度に関しても、ヤツは証拠を残してはいないだろうな…」

 

家泰はそう答えた。

 松永ダンジョー。彼の存在は不気味だが、いずれにせよ徳川軍の危機を黙って見過ごせるワッカでは無い。

 

「そのフクローだかはとりあえず置いとくとして、闇の軍師をナントカすりゃあ良いんだな?」

 

「さっき言ったことは全て、噂に過ぎない。それに完助は武田の本陣、ツツジガサキの館に籠もって出てこないらしい。まさかコッソリ忍び込んで捕まえてくるわけにも…」

 

「そのまさかっすよ」

 

 悩む家泰に対し、ワッカは自信満々に答えた。

 

「何と…?」

 

「リーン?お前の羽根を隠してる魔法って、他の人間の全身を隠すことって出来るか?」

 

「出来るわよ。光を迂回(うかい)させて対象物を見えなくする魔法だから、触られるとバレちゃうけど」

 

「十分だぜ!後はそのツツジガサキの館の場所が分かりゃあパーペキだな!八重は行ったことあるのか?」

 

「いや、ござらん。父上は?」

 

「ワシもないが…。待て待て、一体何だと言うのだ?」

 

「目的地に行ったことのある人さえいれば、ワッカ殿は魔法でそこに行くことができるのでござるよ」

 

「「なんと…!」」

 

重兵衛と共に家泰も驚いた。

 その家康も、ツツジガサキの館に行ったことは無かった。行った経験のある人間を兵士の中から探そうか、とワッカが考え始めたところで、不意に声が聞こえてきた。

 

「ツツジガサキへの案内、私が務めましょう」

 

「誰だ!?」

 

その場にいた誰もが、聞いたことの無い声に戸惑いを隠せない。

 突然、天井から1人の女性が降ってきた。

 

「私は武田四天王が1人、高坂政信(こうさかまさのぶ)の配下、椿(つばき)と申します」

 

女性が自己紹介する。

 

「忍び…くノ一か!」

 

重兵衛が声をあげる。彼の言うとおり、椿は忍者特有の黒装束に身を包んでいた。しかしスピラには忍者が存在しないので、ワッカは「ユミナの監視をしていた時のラピスとセシルにソックリな服だなぁ」という感想を抱いた。

 椿は膝をつき、(ふところ)から出した書状を床に置いた。

 

「我が主、高坂様より徳川家泰様宛の密書をお預かりしております」

 

 床に置かれた密書を最初に手にしたのは重兵衛だった。何も異常が無い事を確認した彼は、家泰に密書を手渡す。

 密書を目にした家泰の表情が、驚きから(けわ)しいものへと変わっていった。

 

「殿、密書にはなんと!?」

 

「噂は本当だったらしい。武田軍は今や、山本完助の傀儡(かいらい)の軍と化しているようだ…」




 本当はもう少し続けたかったんですが、まだまだこの場面でやりたいことがあるので、一旦区切ります。次回はツツジガサキの館に侵入すっから!
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