異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~ 作:3S曹長
まあ、今回の改変も単なる私の趣味に過ぎないんですけどね。
「真玄殿は既に無くなっており、重臣である武田四天王も高坂殿以外は地下牢に投獄されている…とのことだ」
「なんと……」
密書の内容を要約した家泰の言葉を聞き、重兵衛が絶句する。
「だが、どうして高坂殿は捕まってないのだ?」
「高坂様は完助に従うフリをして武田奪還を考えておられます」
「なるほど」
「高坂様の望みは、徳川軍に完助の暴虐を止めていただくことです。そのために、忍である私を遣わせました」
「ではやはり、松永に関する噂も本当なのですか?」
「そのことに関してだが…」
重兵衛の質問を受けた家泰は、何故か椿に目線を向ける。
「椿、と言ったな?何故、この密書は松永に関して『山本完助の背後には松永ダンジョーがいると考えて間違いないが、確証は無い。』という要領を得ない書き方をしているのだ?」
「それは、松永との関連を示す物証が一切無いからです」
「やはり松永は証拠を残さなんだか…」
「では何故松永が背後にいると?」
「完助が時折口走るのです、『全ては松永の
確かにこれでは、松永が裏で糸を引いている、とは断言出来ないだろう。額面通り受け取れば松永が関係していると言えるだろうだが、一方で
「そもそも…」
ここで、今までの話を聞いていたリーンが口を挟んだ。
「山本完助って人は何者なの?元々武田軍にいた人間なの?それとも、ある日突然武田軍に現われたの?もしそうなら、完助は松永の手先とも考えられるけど?」
「いえ、山本完助は元々武田軍の軍師です。優れた人物で頭も良く、軍師として申し分のない男でした。しかし彼はある時、悪魔の力を宿した宝玉を手に入れてしまい、それから様子がおかしくなったのです。人を平気で殺すような残虐な人間になり、口調も別人のようになってしまいました」
「その宝玉を手にした理由が、松永と関係しているのかしら?」
「そうですね…」
少し口ごもっていた椿だったが、意を決して言葉を続ける。
「我々は徳川軍に助けを求めている身です。なのでお話ししてしまいますが、真玄様は数ヶ月前から病に伏せっておりました。この事実を隠していたのは、武田の弱みを他の領主に知らせるわけにはいかなかったからです」
「であろうな…」
家泰が納得したように呟いた。
「いよいよ真玄様のお命が危ないとなった時、武田の今後を最も
「だが、完助と松永が実際に会っていた証拠は無い、と」
「そういうことです。私の知っていることは、これで全てです」
「なるほどな…」
椿の話を聞き終えた家泰は、リーンに意見を求めた。
「軍師リーン殿は如何に考えておいでか?」
「だから軍師じゃ無いわよ…。まあでも、その宝玉については色々聞きたいことがあるわね」
そう言ってリーンは椿に目を向ける。
「ねえ、その宝玉を完助はドコにしまっているのかしら?」
「
椿の答えを聞いたリーンは、確信がいったと言わんばかりに微笑んだ。
「もう一つ質問。宝玉を手にしてから完助の口調が変わったって話だったけど、ソレってもしかして、他人のことを『○○ボーイ』とか呼んだり、語尾に『デース』とか『マース』とか付けたりとかしてない?」
「な、何故その事を!?」
椿は
「た、確かにその通りです。先程、完助が『全ては松永の賜物だな』と口走ると言いましたが、それも正しくは『全ては松永ボーイの賜物デース』と。ふざけた言い方なので再現はしなかったのですが…」
「ビンゴ、ね」
「何か分かったのか、リーン!?」
ワッカが問いただす。
「松永については知らないけど、鬼面兵の謎は分かったわ。『
聞き慣れない単語を耳にした一同から、次々と困惑の声が上がる。
「アーティファクトは由来が不明な物が多いのだけど、『トゥンの黙示録』は由来が分かる数少ない例外として知られているわ」
そう言ったリーンが語り始める。
「遙か昔、トゥン・クロフォードという名前の高名な隻眼の
「知ってたか?リンゼ」
「いえ、聞いたこともありません。リーンさんは物知りですね」
リンゼの褒め言葉には微笑みで返して、リーンが話を続ける。
「『トゥンの黙示録』を義眼として使用すれば、トゥン・クロフォードと同じように死者を操る力を手に入れられる。でもその代償として彼に精神を乗っ取られる。強すぎるアーティファクトには制作者の怨念や執念が宿る、とも言われてるけど、その代表例ね」
「なるほど…。流石は軍師殿だ」
「……もう良いわ」
リーンは諦めたように吐き捨てた。
「それで、いかがなさいます?」
重兵衛が主君の家泰に決断を仰ぐ。
「正直に言えば、徳川には武田を助ける理由が一切無い。しかしこのままでは徳川軍が完助の鬼面兵にやられてしまうだろう。何とも情けない話だが、全ての決定権はベルファストから来た客人達にあるようだ」
「どうします?ワッカさん」
家泰からユミナへ、ユミナからワッカへと決定権が託された。
「言っただろ?ツツジガサキの館に潜入するってよ!フクローだかモクジだか知らねえが、その決断に変わりはねえ!」
「だそうです」
「感謝します」
椿はワッカに頭を下げた。
「つっても、潜入すんのにこの大人数で行くのは良くねえな。潜入役はもちろん、オレとリーンと椿の3人で行く」
ワッカがそう告げたが、反論の声は上がらない。ユミナを始めとする女性陣も、危険をわざわざ増やすようなワガママを口にはしなかった。
唯一ポーラだけは地団駄を踏んで怒りを全身で表現していたが、そもそもクマのぬいぐるみを敵陣に連れて行く理由は無いので、リーンも文句は言わない。この光景を目にしたワッカは、ポーラの意思はリーンと繋がっているワケでは無かったのか、と驚いた。
もうすぐ日が落ちようとしている。潜入するのにうってつけの夜時間はすぐそこまで迫っていた。残り少ない時間の中、ワッカは出来る限りの行動を起こす。
まずは八重の実家である道場に戻り、重兵衛と重太郎の無事を報告する。
次にベルファストの屋敷に戻って、潜入に参加しない女性陣を帰宅させた。唯一八重だけは帰宅を嫌がり、父や兄と共に砦に戻ると主張した。ワッカは彼女の意思を尊重することにした。
そんなことをしている間に日は落ち切り、イーシェンに夜がやって来た。
ワッカは早速、椿の記憶からツツジガサキの館の情報を抜き取る。
「リコール」
脳内に流れ込んできた情報を元に「ゲート」を開いて、ワッカはリーンや椿と共に、ツツジガサキの館を真下に見落とせる崖の上へと移動した。どこに敵がいるかも分からない館の内部にいきなり行くよりも一度様子を見渡せる場所に行ってからの方が良い、というリーンの意見を採用したのだ。
「あそこになら3人隠れられそうだな…」
ワッカは崖の上から屋敷の様子を見下ろしつつ、隠れるのに都合の良さそうな庭木の茂みに目を付けた。
「ゲート」
さっそく魔法で出した光の門を潜り抜けようとする。しかし、彼が光の門に足を踏み入れても目的地に移動することは出来ず、ただその場で文字通り大きな一歩を踏み出しただけだった。
「ありゃりゃ?こんなの今まで無かったぞ!?」
「護符による結界ね。それが『ゲート』の転移を阻んでいるんだわ」
「何だよそりゃあ!?」
「王城の宮廷魔術師が魔法による進入を防ぐのに使用している結界と同じよ。まさか知らないの?」
「そういやあ、そんなモンもあったっけな…」
ワッカとリーンの会話を聞いていた椿が口を開く。
「恐らく完助の仕業でしょう。私が忍び込み、護符を破壊してきます」
「止めときなさい。結界を破壊すれば使用者本人にバレてしまうから。犯人が分からなかったとしても、警戒されるのは良くないわ」
そう忠告しつつ、リーンは再びワッカに向き直る。
「そもそも私を連れてきたのは光属性の魔法で姿を見えなくさせるためじゃないの?まさか、屋敷に侵入してから使わせる気じゃ無かったでしょうね?」
「あ…、わりぃ、先走っちまった」
「全く…」
リーンは呆れつつ、自分の考えを口にする。
「そもそも
「かしこまりました」
リーンの作戦で行くこととなり、さっそく彼女は魔法を唱える。
「光よ歪め、屈曲の先導、インビジブル」
ワッカとリーンの足下に魔法陣が浮かぶ。魔法陣は上へと昇っていき、魔法陣を通過した場所から2人の姿が消えていった。
「消えた……」
椿が驚きの声をあげる一方、ワッカの視点からは自分の姿もリーンの姿も消えていなかったので不安になる。
「オレらの姿が見えてっけど、効果がねえのか?」
「当たり前でしょう?自分達の姿まで見えなくなってしまったら不便で仕方ないでしょうに。他の人からは見えてないから安心なさい」
「あ、声は聞こえるのですね…」
2人の声を聞いた椿が安堵する。
と、ここでリーンはニヤリと笑ったかと思うと、忍び足で椿の背後に回り始める。そして後ろからいきなり、椿の胸を
「ふひゃあああぁぁぁぁ!!?」
「ちょっとワッカぁ?見えないからって何してるのよー」
「は、はあ!?」
「わ、ワッカさん!?」
「ちげえよ!オレじゃねえ!リーンの仕業だっ!いい大人がンな馬鹿みてえなコトするか!ってリーンの方がオレより何倍も年上じゃねえか!教えはどうなってんだ教えは!!」
絶叫するワッカを尻目に、リーンは更に激しく両手を動かす。
「ちょっ、やめ、そんなにハゲしく…はぅんっ!」
「以外と大きいわね…。着痩せするタイプなのかしら?これはなかなか…」
「いい加減にしやがれ!」
「あいたっ!」
イタズラを止めようとしないリーンの頭に、ワッカが手刀を振り下ろす。
「ワカッテンノカ!?魔法で姿を消したのは敵にバレないように侵入するためだろうがよ!!」
大声を出すワッカの側で、椿は
「スマンな、ウチの軍師様がよ。叩いて言うこと聞かすんで…」
「お尻を?」
「おい!言葉をつつしめよ」
悪びれず冗談を口走るリーンに対し、ワッカは大声で叱責を続ける。椿は本気にして「ひえええ」と声をあげた。
これから潜入を行うとは、とても思えない3人なのだった
これが私のどうしてもやりたかったことだ…。下らないだろう?ちなみに最後のリーンのイタズラは原作通りです。