異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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OP「コネクトが全く気付かないうちに気持ちよすぎだろ!」(ニコニコ動画 sm40633010)


世界の壁、そしてサムライ。あとブリッツボール。

 無属性魔法「ゲート」を使えばワッカの世界に帰れるのではないか、というエルゼの提案を聞き、ワッカは言葉を失う。

 その方法は思いつかなかったから、では無い。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。神様は「元の世界に生き返らせることは出来ないルールだ」と言っていた。神でさえ曲げられないルールをどうしてワッカが曲げることが出来るだろうか。

 だが、エルゼがこのような考えを抱いた原因は間違いなくワッカにあるのだ。彼は「自分は遠くから飛ばされてここに来た」とは説明したが、「自分は異世界から来た」とは説明してない。彼の言った「遠く」というのが異世界を指すと想像できる人などいないだろう。普通は()()()()()()()()()()だと思うはずだ。むしろそう思わせるようにわざと話したのだ。

 

「そ、それはだな…」

 

 ワッカが言葉を詰まらせているとエルゼが追い打ちをかける。

 

「私、ワッカの言ってたブリッツボールって球技に興味あるのよね」

 

「あ、じゃあ私はワッカさんの故郷の人達が使う魔法を見てみたいです」

 

リンゼも姉に呼応する。

 どう誤魔化すべきか、頭を悩ませるワッカ。いっそ全てをココで話すべきだろうか。ワッカの魔法適性の異常さを見た後の二人なら全てを話しても信用してくれるのではないだろうか。(いな)、正直に言ったところで冗談だと思われるだけだろう。ここは()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 

「そうだな…。うっし!いっちょやってみっか!」

 

ワッカが声を上げる。考えてみればワッカを間違えて死なせてしまうような神だ。こういう抜け道はあるかもしれない。それに神は「元の世界に戻るな」とは一言も言っていない。もしも帰れるならばそれに超したことは無いではないか。またティーダやユウナ、他の仲間達にも会えるのだ。エルゼにブリッツボールの試合を見せてやることも、リンゼにルールーを紹介することも出来る。ここまで考えるとやらない理由を探す方が難しかった。

 ワッカは再び無色の魔石を持って目を閉じる。そして故郷のビサイド島の砂浜を思い起こす。初めてティーダに会った場所、ビサイド・オーラカのメンバー達と練習に汗を流した場所…。

 

「ゲート!」

 

 空気が静まり返る。「ゲート」は発動しなかった。やはりスピラに帰ることは不可能だったのだ。

 

「ダメ…だったんですか?」

 

「そう…みたいだな…」

 

 リンゼの問いかけに対し、ワッカが力無く答える。彼の落ち込んでいる姿を見て、姉妹も失敗が本当だったことを察する。

 ワッカは一度深呼吸し、こう結論付けた。

 

「ま、シンの力がそれだけ強力だったってこったな!」

 

「『ゲート』が通じないほど遠くに飛ばされたってこと?」

 

「シンって魔物はそんなに強力だったんですか?」

 

リンゼの問いかけにワッカが答える。

 

「ああ、そりゃあ強かったぜ。アイツのせいで、何人もの人間が犠牲になった…」

 

シンの犠牲者。ワッカはそのワードから()()()()を思い出さない訳にはいかなかった。

 

「俺の弟もな、シンに殺されちまった…」

 

そう言ってワッカは口を閉ざした。

 そんな彼の様子を見て、エルゼに後悔の気持ちが芽生える。自分が余計な提案をしなければワッカに変な期待を抱かせることも辛い記憶を思い出させる事も無かったのに、と後悔した。

 

「ご、ごめんなさい!!私が変なこと言わなかったら、ワッカをこんなに傷つけることも無かったのに!」

 

 深く頭を下げて謝罪するエルゼに対し、ワッカは頭を上げるよう(うなが)す。

 

「別に謝ることなんてねえよ!エルゼはオレのためを思って提案してくれたんだろ?それがたまたまダメだった、そんだけのことだ。お前はこれっぽっちも悪くねえよ!」

 

「ワッカ…」

 

「それに…」

 

 ワッカは二人の姉妹に目を向ける。

 

「オレはお前達に感謝してるんだぜ。こっちに飛ばされて、知っている人が誰もいなかった。そればかりか字も読めねえしオマケに無一文。そんなオレにお前達は親切にしてくれたじゃねえか!どれだけ心強かったか、分かったもんじゃねえ!」

 

「ワッカ…」

 

「ワッカさん…」

 

心の内をさらけ出し、ワッカは二人に右手を差し出す。

 

「ありがとよ。そしてこれからもよろしくな!エルゼ!リンゼ!」

 

「うん!よろしくね、ワッカ!」

 

「私も、よろしくお願いします、ワッカさん!」

 

一人の異世界人と双子の姉妹が握手を交わす。沈む夕日が三人を赤く照らしていた。

 

 

 

 

 

 翌日から三人は宿屋「銀月」を拠点に行動をすることにした。ギルドに向かい、魔物討伐の依頼を探す。「ゲート」は一度行った場所にしか行くことが出来ない。なので依頼の指定場所へは行きは歩いて向かい、帰りは「ゲート」でギルドへ直接向かう。ある程度行ける場所が増えたら、一度行った場所に近い地域の討伐依頼を選び、行きも移動時間を短縮する。こうすることで効率よく依頼を消化していった。

 ワッカの読み書き問題にも進展があった。最初は二人の持ってくる依頼書を見ることで文字を覚えようと悪戦苦闘していたワッカだったが、やはりそれだけで覚えられるほど簡単なことではない。少し恥ずかしかったが、思い切って二人に頼んでみることにする。

 

「二人にお願いがあるんだなぁ~」

 

「な、何よいきなり…」

 

ワッカのこの頼み方は、エルゼにはまだ抵抗があるらしい。

 

「オレに読み書きを教えてくれねえか?」

 

「ああ、そのことね。確かに、依頼書も読めないんじゃ不便だもんね」

 

得心がいったかのようにエルゼが言う。

 

「そういうことならリンゼに教わると良いわ。この子、頭良いから教えるのも上手だし」

 

「そ…そんなことないけど…私でよければ…」

 

「そうか!ありがとな、リンゼ!」

 

こうして夜にリンゼがワッカに文字を教えてくれることになった。勉強にあまり自信の無いワッカだったが、意外にもスラスラと文字を覚えることが出来た。これも神の賜物(たまもの)だな。

 

 

 

 

 

 そうこうしている内に三人のギルドランクが黒から紫へと上がった。元々戦闘力の高い三人がパーティを組んでおり、「ゲート」での移動時間短縮により一日にいくつもの依頼をこなしていたのでランクが上がるまで時間はかからなかった。これで紫の依頼書も受けられるようになる。

 初の紫依頼に選んだのは王都への手紙配達だ。交通費支給で報酬は銀貨7枚。3人で割り切れない一枚は打ち上げの時に使うことにした。

 

「王都ってのは片道どれ位かかるんだ?」

 

「んー、馬車で5日くらい?」

 

「結構かかんなー」

 

「でも『ゲート』があるんだし、一度王都に行っておけば何かと便利よ?」

 

現在ワッカが拠点にしている「銀月」がある場所は、ユーロパ大陸の西方に位置するベルファスト王国のリフレットという町だ。目的地の王都はベルファスト王国の王族が住まう場所でもあり、それだけに国で最も栄えている場所ということになる。

 依頼受諾後は旅の準備だ。依頼主の元へ行き、手紙と交通費を受け取る。移動手段である馬車を手配し、食料や必要な道具を買いそろえる。

 買い出しの途中で、リンゼが本屋に行きたいと言い出す。道中の暇つぶしだろうかと思うワッカ達だったが、そうでは無いらしい。

 

「これは過去に存在していた無属性魔法についてまとめられている本です。この中にワッカさんが使える無属性魔法があるかもしれません。それに、この本でワッカさんに文字を教えることも出来ますし」

 

本屋から出てきたリンゼがそう説明した。

 旅の準備が完了し、三人を乗せた馬車は王都へ向けて出発した。馬の御者(ぎょしゃ)は姉妹が交代で務める。チョコボと馬では扱い方が違うので、ワッカは荷台で揺られることになる。エルゼが御者台にいるときはリンゼに文字を教えて貰い、リンゼが御者台にいるときは自習の時間だ。

 道中、様々な町を通過することになったが、その多さにワッカは驚くことになる。シンは人々が技術を発展させた場所を狙って襲うという性質があるため、スピラには町と呼べるような場所が数えるほどしか無かったからだ。

 

 ベルファスト王国を出発してから二日後、三人はアマネスクの町という場所に到着した。

 

「今日はここで宿をとりましょ」

 

エルゼが提案する。丁度日も落ちてきたので、この町の宿に部屋を二部屋取る。ワッカの部屋と姉妹の部屋はもちろん別々だ。

 馬車を宿に預け、三人で夕食の場所を探していると何やら人(だか)りが出来ているのを発見する。道のど真ん中で揉め事が起こっていて、そこに野次馬が群がっているようだ。三人は興味本位で野次馬をかき分け、騒ぎの中心に辿り着いた。

 騒ぎは複数人の男達と一人の少女の間で起こっているようだ。男達は全員ナイフや鈍器といった物騒なモノを持っている。少女の方はワッカが見たことも無い変わった服装をしていた。ピンク色の和服に紺色の(はかま)、足には足袋(たび)草履(ぞうり)、腰には大小二本の刀があった。ユウナの服装に少し似ているとワッカは思ったが、少女の方が露出度はだいぶ抑えめだ。

 

「昼間は世話になったな、姉ちゃん」

 

「はて…?拙者は世話などした覚えはないでござるが?」

 

「とぼけやがって!俺らの仲間をぶちのめしやがって、ただで済むと思うなよ!」

 

「ああ、昼間警備兵に差し出した奴らの仲間でござったか。あれはあ奴らが悪い。昼間から酒に酔い、乱暴狼藉(ろうぜき)を働くからでござる」

 

「ふざけんな!やっちまえー!!」

 

武器を手にした男達が一斉に少女に襲いかかる。少女はその攻撃をひらりひらりと(かわ)し、一人ずつ男の腕を掴んで投げ、地面に叩きつける。力任せに投げつけているのでは無く、突撃してくる相手の勢いを利用して最低限の力で相手を無力化しているのだった。

 が、なぜだか急に少女の動きが鈍くなる。腹を押さえてうずくまってしまった。隙を見せた少女に男が襲いかかる。

 

「あぶねえ!」

 

反射的にワッカがブリッツボールを投げつける。ボールは男に命中し、ワッカの手元に戻ってくる。ボールを当てられた男はその場に倒れ伏し、寝息を立て始めた。

 

「てめえ、なにしやがる!」

 

そう言って仲間の男達がワッカに突っ込んでくるが、その男達にもワッカは臆せず次々とスリプルアタックを決めていく。

 

「ああもう!厄介事に首を突っ込んで!」

 

そう文句を言いながらエルゼも参戦するが、言葉に反してその顔は笑っていた。

 二人が男達を全員無力化したところで警備兵が駆けつけて来た。後は任せることにし、ワッカ達は和服の少女を連れてその場を離れることにした。

 人目の付かない路地裏まで来た後、少女は頭を下げて礼を言う。

 

「ご助勢、かたじけなく。拙者、九重(ここのえ)八重(やえ)と申す」

 

「もしかして、イーシェンの出身?」

 

八重の名前を聞いたエルゼが尋ねる。

 

「いかにも。ヤエが名前でココノエが家名でござる」

 

キマリが名前でロンゾが家名みたいなものか、とワッカは思う。そして自分も自己紹介をすることにした。

 

「オレはワッカ。ビサイド・オーラカの選手兼コーチだ」

 

「ビサイドオーラカ?」

 

戸惑うヤエを見て、エルゼがワッカを肘で突く。

 

「ちょっと、その自己紹介やめなさいよ!初対面の人には意味不明じゃない!」

 

「じゃあ教えてくれ!な、何て自己紹介すりゃいいんだ?」

 

「普通に『紫ランクのギルド所属冒険者』でいいと思いますが?」

 

「そ、そうか…」

 

リンゼの提案を聞き、今度からはそう名乗ることにしようとワッカは思う。

 

「グ~ギュルギュルギュル」

 

 突然異音がし、八重がその場に膝をつく。

 

「どうしたの、八重!?」

 

「うぅ、恥ずかしながら拙者、道中で路銀を落としてしまい…」

 

八重の不調の原因を察したワッカは彼女に声をかける。

 

「なあんだハラヘリか?おっし、何か食わしてやる」




サ○○大戦の主人公に似ていると言われている九重八重ですが、原作初登場回の彼女の挿絵は全く似ていませんでした。あの挿絵からなんで今のソックリ外見になっちまったんだよ…?教えはどうなってんだ教えは!!ワカッテンノカ?チートスが打ち切られたのはキャラクターの意匠、設定等が他作品との類似性を持って表現されていたせいだろうがよ!
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