異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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 皆さんに重要なお知らせがございます。
 50話以上にわたって続けてきた「異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~」ですが、()()()()()()()()()()()()()()()する予定です。
 急なお知らせになって申し訳ございません。こう聞くと「打ち切りかな?」と思う方もいるかもしれませんが、それは違います。
 当作品は元々、「異世界はスマートフォンとともに。」のアニメ一期の範囲で完結すると宣言した上で連載をスタートさせました。あと3話でアニメ一期の範囲が終了する、ただそれだけの理由です。私がこの作品でしたかったこともほぼほぼ描き終わってますので、打ち切りではございません。
 そんなわけで残り少ない話数ではありますが、ワッカの異世界での物語をどうか最後まで楽しんで下さると幸いです。


ユミナの怒り、そして正直な気持ち。あとブリッツボール。

 フランシェスカをバビロンの空中庭園へと強制送還させて一人きりになったワッカは、自室のベッドに寝そべりながら物思いに浸っていた。

 ワッカの脳内では、異世界に転生する前の神との会話が再生されていた。神から異世界転生について提案された際、ワッカは「転生先の世界にもシンと同じような脅威があるのか」と尋ねた。それに対して神は「いる」と答えたのだ。その答えを聞いたワッカの答えは次の通りだった。

 

「オレはその別の世界ってのに蘇って、その世界の脅威を打ち倒すことにするぜ!」

 

 レジーナ・バビロン博士の話を聞いた今、ワッカは確信する。神の言っていた「異世界の脅威」というのは水晶の魔物、つまり「フレイズ」のことだったのだ。

 加えてもう一つ、怒りから落ち着いたワッカは「あること」に気が付いていた。博士はワッカの活躍を見ていたと言っていたにも関わらず、旧王都でのフレイズとの戦いについては一言も触れていなかった。話の流れからして、知っていたのならば言及しないのは不自然である。つまり、博士は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだと思われる。

 だがもしそうならば「なぜ博士は『バビロン』をワッカのために遺したのか」という新たな疑問が思い浮かぶ。単純にワッカを応援したかったから、という答えでも不正解では無い気はするのだが…。

 と、そこまでワッカが考えた時のことだった。深い思考の海から彼を引き上げるかのように、部屋の扉がノックされた。

 

「ワッカさん、ユミナですけど…」

 

「んおっ!?あ、ああ、分かった!」

 

 扉越しのユミナの声を聞き、ワッカは思考をリセットする。そう、今の彼には()()()()()()()()が残されているのだ。ひょっとすると先程までの長考は全て、現実逃避のために行われていたのかもしれない。

 ワッカは扉を開け、ユミナを自室に入れる。ユミナが中央のソファに腰掛けたので、ワッカも彼女の向かいに移動させた椅子に腰掛けた。彼自身は特に悪いことをしていないハズなのだが、何とも気まずい雰囲気が部屋の空気を重くしていた。

 ユミナは初めて出会った時と同じように、青と緑のオッドアイでワッカに視線を送っている。

 

「………ワッカさん」

 

「…なんスか?」

 

「私、怒ってますよ?」

 

「俺は怒られるようなことはしてねえハズだぞ?」

 

ワッカの堂々とした言葉に対して、ユミナは眉間にしわを寄せ、頬を膨らませる。

 

「私だってまだキスしてもらって無いのに、先に2人にも奪われるなんて!」

 

「そっちかよ!」

 

 ユミナの意外な怒りの矛先を知り、ワッカは驚きの声をあげる。その瞬間、彼の堂々とした態度は崩れてしまった。

 

「リンゼの告白に対して怒ってたんじゃねえのかよ!?告白したのは私が先、的なよぉ」

 

「何でですか?リンゼさんがワッカさんを好きなのは見てれば分かるじゃないですか」

 

「知らん。そんなことはオレの管轄外だ」

 

「この際だから言っておきますよ!」

 

ユミナは頬を膨らませたまま、人差し指をたてて言い聞かせるようにワッカに言葉をぶつける。

 

「私はワッカさんが何十人と結婚をしたとしても、その子供達を不幸にしない限りは文句はありません。それも男の甲斐性(かいしょう)だと思っています。ですが!でーすーがー!!正妻である私より先にキスを奪われるなんて油断しすぎです!」

 

「ちょっと待て!!オレはお前と結婚するなんてまだ決めてねえ!」

 

「でも、一番最初に告白したのは私のハズです」

 

「それはそうだ!だがオレが結婚を承諾して無い以上、お前がオレの正妻を名乗る資格は無いハズだ!」

 

「そうですか!なら私が、自分がまだ正妻で無いことを認めたとしたのなら、ワッカさんもキスを奪われたのは自分の落ち度だと認めてくれますね!?」

 

「オレだってのかよ!?」

 

 あくまでもユミナの怒りの元凶がキスであることにワッカは呆れながらも、自身の空中庭園での振る舞いを思い返してみる。言われてみれば確かに、自分の動体視力ならば2人のキスを防ぐことは可能だったように思えてくる。

 

「オレだよなぁ…」

 

「そうです!しっかり防御して欲しかったですね!」

 

「わ、悪かった…」

 

 ワッカは思わず謝ってしまう。

 

「……抱きしめてキスしてくれたら許してあげます」

 

「………」

 

 ユミナの大胆な条件を聞き、ワッカはしばし考える。彼女が自分を好きでいてくれているのは確かだ。リンゼも自分のことが好きなようだが、最初に告白したのがユミナであるのは事実である。だとしたならば確かに、自分より先に他人にキスを奪われたのは不愉快だろう。いっその事、この場では素直にユミナの願いを聞き入れるべきなのかも知れない…。

 決心しかけたワッカの脳内に瞬間、ユウナのガード時代に起こった「シーモアとユウナの出来事」の場面が蘇ってきた。

 

「だ、ダメだ!!」

 

 ワッカは慌てて両腕を伸ばし、ユミナの前で両手を振った。

 

「…この状況で断るんですか?」

 

「そうだ!お前が何と言おうと、オレが結婚を認めていない以上、オレはお前とキスをする気はねえ!」

 

「リンゼさんにキスを奪われたのに、ですか!?」

 

「そうだ!ソレについては謝るしかねえ。でもキスは出来ねえ!」

 

そう言ってワッカは両手を膝に付き、深々と頭を下げる。

 

「もし不満だってんなら、お前はオレを許さなくっても構わねえ」

 

「………。はぁ…。顔を上げて下さい」

 

 ユミナはため息を吐きながら、ワッカに頭を上げるよう促した。

 

「どうしても私とキスをしたくない、というワッカさんの気持ちは理解しました。そう言えば以前に言ってましたね?『お互いがしっかりと了承した上で結婚しないとろくなコトにならないとオレは知ってる』と」

 

「言ったっけか?…言ったかもなぁ」

 

 確かにワッカは、ユミナと初めて任務に行った際にその話をしていた。あの時の彼の話を、ユミナはしっかりと覚えていたのだ。

 

「私とキスが出来ないのも、その出来事が原因ですか?」

 

「ユミナは鋭いな。その通りだ」

 

 ワッカは素直に肯定した。

 

「はぁ…、仕方ないですね。私がまだ、ワッカさんに妻として認められて無いというのも事実のようです。ここは引き下がるしかありませんね…」

 

「悪かった。でも、オレはお前のことを嫌っているわけじゃ無いぞ。お前のことは仲間として大事な存在だとは思っている。だが結婚相手としては見れてない。それが今のオレの正直な気持ちだ」

 

「分かりました。今はそれでも構いません」

 

 ワッカの正直な気持ちの吐露を、ユミナも素直に受け入れた。

 少しの沈黙の後、ユミナはワッカに問いかける。

 

「ワッカさんはリンゼさんをどう思っているんですか?」

 

「リンゼか?」

 

 しばらく考えた後、ワッカはリンゼに対する正直な気持ちをユミナに伝える。

 

「アイツに対して抱いている思いも、お前とは大差ねえ。確かに、アイツの方がオレとの付き合いは長いし、告白されて嫌なワケじゃ無かったが、お前と同じ大切な仲間ってカンジだな」

 

「好きか嫌いかで言ったら、どっちですか?」

 

「そりゃあお前…、好き、だろうな。嫌いだなんて言えねえよ」

 

 ワッカの答えを聞き、ユミナはニンマリと笑った。

 

「だそうですよ、リンゼさん」

 

「は?」

 

 ユミナが部屋の隅に向かって声をかけると、誰もいなかったはずの空間から顔を真っ赤にして(うつむ)いているリンゼが姿を現した。

 

「い、いたのかリンゼ!?」

 

「リーンさんに頼んで姿が見えなくなる魔法をかけてもらっていたんですよ」

 

驚くワッカにユミナが説明する。

 

「リーンの仕業かよ!まったく、ろくなコトしねえぜ…」

 

「ワッカさんが悪いんですよ?」

 

 リーンに悪態をつくワッカを、ユミナが(たしな)める。

 

「リンゼさんに何も返事をしないで部屋に閉じこもってしまうんですから。嫌われたって、リンゼさんずっと泣き続けていたんですよ。もうちょっとでエルゼさんが殴りに行くところでした」

 

「そうだったのか!?リンゼ、悪かった!!」

 

 知らずにリンゼを傷つけてしまっていたことを知り、ワッカは慌てて謝罪する。

 

「あ、あの、私の方こそ、あの時はすみませんでした。シェスカのキスを見たら、負けられないって、思ってしまって…、気が付いたら、あんなことを……。ワッカさんの気持ちも考えないで……、ごめん、なさい…」

 

リンゼも服の(すそ)を握りしめながらワッカに謝罪をした。目からポロポロと涙をこぼしている。

 そんな彼女の元にワッカが近づき、優しく頭を撫でてあげる。

 

「あ……」

 

「さっき聞いてただろ。オレはお前を嫌ってなんかいねえよ。だから安心しろ。ホントに悪かったな」

 

「ワッカさん……」

 

 リンゼが少し笑顔を見せたので、ワッカも一安心する。しかし同時に、重要なことはしっかり言い聞かせないとダメだとも思った。もう勘違いはこりごりである。

 

「でもな、リンゼ。さっき話した通り、オレはまだお前のことを恋愛対象としては見ることが出来てねえんだ。もちろん、大事な仲間だとは思っていて、その意味でお前のことは好きだ。でもな、恋愛の意味で好きかと聞かれたら、そうは言えねえんだ」

 

「はい…」

 

「言っとくけど、お前をフッたわけじゃねえぞ」

 

俯くリンゼに対し、ワッカはフォローを始める。

 

「これは初めてユミナから告白された時にも言ったんだけどよ、お前が誰を好きになるかはお前の自由だとオレは思っている。もちろん、オレを好きになるのも自由だ。そしたらユミナは、オレと行動を共にする2年の間に私に惚れさせる、って言ったんだ。オレはその挑戦を受け入れた。お前もオレへの恋を諦めて無いんなら、そうして欲しい」

 

「分かりました…、頑張ります」

 

 リンゼは涙をぬぐってそう答えた。

 

「良かったですね、リンゼさん。でも、ワッカさんを惚れさせるのは大変ですよ。私も今回はキスまで持って行けるんじゃないかと思ってたんですが、ダメでしたね」

 

 ユミナはリンゼを慰めながら、部屋の扉の前まで足を運ぶ。既に日は落ちていた。

 

「いきなり失礼しました、ワッカさん。リンゼさんのことも、結婚候補としてちゃんと見てあげて下さいね」

 

「ああ、約束するよ」

 

「では、おやすみなさい」

 

「おやすみなさい…」

 

 ユミナとリンゼは「おやすみ」の挨拶をして、ワッカの自室を後にした。その時の少し寂しげな顔をした2人の姿が、ワッカの脳内にこびりついて離れなかった。




 次回、ラスボス戦です。誰が何と言おうとラスボス戦です。
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