異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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「異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~」最終回前話記念 
今まで当作品を続けてきて使いやすかった語録ランキング

~ワッカの台詞部門~

1位「おい!言葉をつつしめよ」
理由:注意を促す時、相手を威圧する時、仲間内でのノリ等、圧倒的な汎用性があった。「言葉」の部分を別の二字熟語に変更しても「あ!元ネタはあのセリフだ」と分かって貰える点も使いやすかった。

2位「教えはどうなってんだ教えは!!」
理由:困惑したとき、怒っているとき、相手の非常識さに呆れている時等、こちらも中々の汎用性を持っていた。「どんな教育受けてんだ!」「どうしてそんな間違った知識を持ってるんだ!」的な意味合いを持たせられる点も、「異世界はスマートフォンとともに。」世界で使いやすかった。

3位「なあんだ、ハラヘリかぁ?」
理由:相手が空腹なのを察した時に使うこともあったが、「ハラヘリ」の部分を別のカタカナ4文字に変換することで汎用性がグンと上がった。上記2つのセリフに比べて若干知名度が劣っているのが難点か。元はビサイド島に流れ着いたティーダの空腹を察した時のワッカのセリフ。



~ワッカじゃない人の台詞部門~

1位「わりい、やっぱつれえわ」
理由:FFXVの主人公、ノクティスのセリフの中でもっとも有名であろう語録。使うだけで何となく面白くなってしまう不思議なセリフ。ワッカと同じファイナルファンタジー出身な点もポイントが高い。ちなみに実際に使われていたシーンは、到底ネタに出来ないガチシリアスなシーンである。

2位「ウボァー」
理由:FFⅡのラスボス、バラメキア皇帝の断末魔。相手が倒れるときによく使っていた。個人的には結構汎用性が高いと思っていたのだが、感想欄でもここすき(仮)でも読者に一切触れられた事が無かったため、ウケていたのかは微妙なところ。

3位「お労しや、兄上」
理由:「鬼滅の刃」の登場人物、継国縁壱(つぎくによりいち)のセリフ。当作品ではベルファスト王国の国王に対しての専用セリフになってしまっている。弟のオルトリンデ公爵が国王を「兄上」呼びしている点と、国王が残念な人物だった点が奇跡的に噛み合った結果、当作品で使われる運びとなった。もし公爵が国王を「兄様」呼びしていたり、国王がしっかり者だったら使えなかった。


決闘、そしてワッカの憂鬱。あとブリッツボール。

 翌朝、ワッカは自室の扉を叩き破るかのようなドバンッ!という大きな音で叩き起こされた。

 

「ぬおぉ!?な、何だぁ!?」

 

慌ててベッドから飛び起きた彼が目にしたのは、腰にガントレットを吊るしたエルゼの姿だった。

 

「ちょっと話があるんだけれど…」

 

「お、おう…?」

 

「付いてきて。ブリッツボールを忘れないでね」

 

 寝ぼけていたワッカは、訳も分からずエルゼの後に付いていく事になった。

 エルゼがワッカを連れてきた場所は、王国軍の第三訓練場である。ワッカの屋敷から近く、エルゼとレオン将軍が訓練の場としてよく使っていた場所であったため、本来は部外者である彼女も顔パスで通れることになっていた。

 そして訓練場の中にはもう1人、別の人物が彼を待ち受けていた。

 

「八重?どうしてお前がココに?」

 

「ワッカ殿を待ってござった」

 

そう答えた八重の手には刀が握られている。

 ココに来るまでの間に、ワッカは完全に眠気から脱していた。これから何が起こるのか、2人の様子を見た彼は大体察することが出来たが、一応尋ねるだけのことはしておく。

 

「で?オレをこんな所に呼び出して何の用だ?」

 

「……リンゼをユミナと同じように恋人候補として扱うんだってね?」

 

エルゼが射貫くような視線をワッカに向ける。

 

「聞いたのか?まあ、そういうことになったな」

 

「ねえ、あんたはリンゼのことをどう思っているの?本当に好きなの?」

 

「そこについては聞いてなかったのか…」

 

「答えてよ」

 

「昨日リンゼにも言ったが、アイツのことは『仲間』という意味では大切に思っている。でもオレはアイツを恋愛対象として意識したことは無い。そんな状況でアイツの告白に対して返事することは出来ねえだろ?だからアイツにも『ユミナと同じようにこれからオレを惚れさせるよう頑張れ』って言ったんだ」

 

「それをあの子は受け入れたの?」

 

「なんじゃねえのか?」

 

 ワッカの煮え切らない答えを聞き、エルゼはため息を吐く。頭をガシガシと掻きながら、イライラした様子で地面を蹴り続けている。

 

「昔っからあの子、そういう所あったのよね…。普段はびくびくと怯えているくせに、ここぞというときは大胆で、私と全く逆なのよね…」

 

「拙者も似たようなものでござる。何かきっかけが無いと踏ん切りが付かない性分でござってな…」

 

 そう言いながら、エルゼと八重は戦う姿勢を整え始めた。

 

「ワッカ、あんたにはこれから私達と戦って貰うわ」

 

「やっぱりな。そんなこったろうと思ったぜ」

 

エルゼの言葉を聞いたワッカはニヤリと笑みを返す。そしてブリッツボールを手に取った。

 

「私達が勝ったら、言うことを一つ聞いて貰うわ。その代わり、あんたが勝ったら…」

 

「いや、必要ねえよ」

 

 エルゼの言葉をワッカが遮る。

 

「オレが勝ったときの褒美なんざ必要ねえ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ハッキリと言い切った彼の言葉を聞き、2人のイライラが増していく。

 

「拙者達では相手にならない、ということでござるか?」

 

「具体的なことは分からんが、お前らは何か不満があんだろ?その不満を解消するためにオレと戦いてえんだろ?」

 

 そう返すワッカの脳内に、在りし日のビサイド島での記憶が蘇る。

 

「なんでなんスか!?オレはこんなにキーパーをやりたいと思っているのに…」

「お前はキーパーには不向きだ!そうオレが思ったからだ」

「そんなの、やってみなきゃ分かんないじゃないスか!」

「い~や、分かるね。長年ブリッツボールを続けてきたオレが言うんだ。間違いねえ」

「くっ!こ、こうなったら、力づくで認めさせてやるっす!!」

「おーし、上等だ!ドンと来い!!」

 

あれは誰との(いさか)いだっただろうか…。そんな過去の追憶から離れ、ワッカは現実と向き合うことにする。

 

「懐かしいな、選手兼コーチ時代を思い出すぜ」

 

「この刀は拙者の知り合いからお借りした物で、刃を落としているでござる。斬って死ぬことは無いでござるが、骨ぐらいは折れるでござるよ…」

 

 刀を見せながら言う八重に対し、ワッカも言葉を返す。

 

「オレも通常モードのブリッツボールで戦うぜ。一応、お返しとして言っておくが、ボールだからって甘く見るなよ?当たったら普通に痛えからな。獣王との試合を見てただろ?」

 

 ブリッツボールという競技は水中で行われる。水中でも選手同士でパスが出来るように、ボールはしっかりとした密度で構成されているのだ。そんなボールを水の抵抗が無い地上で使用すれば、本格的な投擲武器へと成り代わる。

 しかし、そんなブリッツボールの危険性については、ワッカとの付き合いが長いエルゼと八重も承知済みである。

 一切臆する事無く、エルゼが言葉を返した。

 

「あ、あと魔法は禁止ね。私も『ブースト』は使わないから」

 

「構わねえよ。それくらいしなきゃ、すぐ終わっちまうよな?」

 

 ワッカは悩むこと無くそう答えたが、一つの疑問が頭に浮かぶ。

 

「そう言やこのブリッツボールには、オレの手元に自動的に戻ってくるよう『プログラム』の無属性魔法がかかってるんだが…。解除した方が良いのか?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()わよ」

 

「うし、ならOKだ」

 

 試合に関するルールが定まった所で、3人とも本格的な戦闘態勢に入る。

 

「じゃあ、覚悟は良いわね」

 

「いや、最後に言わせてくれ。戦いを挑まれた以上、オレは手加減しねえ。仲間だから、女だから、そんな理由で手加減して貰えるとは思うんじゃねえぞ?」

 

「当然よ!本気でやらないと一生許さないわよ」

 

「泣くなよ?オレが気まずいからな」

 

「ワッカ殿!お覚悟を!」

 

「うっしゃあ!ドンと来い!!」

 

 ワッカの大声で、戦いの火蓋が切られた。

 八重とエルゼは左右に分かれ、挟み撃ちする形でワッカに向かってくる。対するワッカが狙いに定めたのはエルゼである。八重に関しては獣王戦と同じように、刀を握る手にボールを当てれば無力化出来ると考えたからだ。

 後ろから迫り来る八重に気を付けつつ、ワッカはエルゼにブリッツボールを投げつける。エルゼは左手に装備したエメラルドグリーンのガントレットを、ボールから己の身を(かば)うかのように(かざ)した。

 すると、ワッカにとって予想外のことが起こった。彼の投げたブリッツボールがエルゼの体に当たる前に()れ、あらぬ方向へ飛んでいったのだ。

 

「私に飛び道具は通じないわよ!」

 

「なるほど、だからオレの『プログラム』もOKなのか」

 

ワッカは納得する。エルゼの装備しているエメラルドグリーンのガントレットには、飛び道具を逸らす風属性魔法が付与されている。このガントレットを購入した時にワッカは一緒だったのだが、すっかり忘れていた。

 別方向に飛ばされたブリッツボールは遠くの地面にバウンドし、ワッカの手元に向かって戻ってくる。その間、ワッカは無防備である。彼は八重とエルゼの攻撃を(かわ)しつつ、手元に帰ってくるボールにも注意を払う。1人で3つの対象を注視することは大変そうに感じるかも知れないが、ワッカにとっては造作も無い事である。ブリッツボールの試合中はもっと沢山の対象に気を配りつつ、勝つためのプレーを意識しなければならなかったからだ。

 

「じゃあ、今度はお前だ!」

 

 ボールを回収した後、ワッカは八重に攻撃対象を変更する。だが、彼が八重に向かって投げたボールは、刀ではじき返されてしまった。

 

「そんな直球に当たるほど、拙者は甘くないでござる!」

 

「ならコイツはどうだぁ?」

 

刀に弾かれたボールをキャッチしたワッカは、今度は回転を加えて八重に投げつけた。相手のペースを乱す変化球だ。しかし、八重はそれすら見抜いて刀でボールを遠くへと弾いた。

 直後、八重は腰の脇差(わきざし)を抜き、両手に刀を持つスタイルに変更した。

 

「へえ、そんなことも出来るのか」

 

感心するワッカに八重が突進する。右手に持った刀での逆袈裟(けさ)斬りをワッカはバックステップで回避した。

 しかし、この回避は八重の想定内だったらしい。彼女は回避直後のワッカに対して、左手の脇差を投げつけた。

 

「マジ!?」

 

 驚くワッカの元にブリッツボールが帰ってきた。八重の奇襲は一足遅かったのだ。

 ワッカの投げたブリッツボールによって、彼女の脇差は遠くへと弾き飛ばされてしまった。使い切りの飛び道具に対して、ワッカは圧倒的に有利である。相手の飛び道具をボールで遠くへ弾き飛ばしてしまえば、彼の手元にのみ武器が帰ってくるからだ。

 そんな一連の動きの最中、ワッカは八重の後ろにいるエルゼを見逃さなかった。隙を見て八重の背後から奇襲する作戦なのだろう。ワッカは脇差を弾き飛ばしたボールを自ら回収し、八重に向かって投げつけた。

 が、彼の投げたボールは八重の前方で急に左カーブし、彼女の体を避けつつ後ろのエルゼへと向かっていった。

 

「……え?」

 

「ちょっ、きゃあ!?」

 

 思わぬ攻撃に左手のガントレットによる防御が間に合わず、エルゼの体にボールがヒットした。八重とエルゼの奇襲作戦を逆手に取った、ワッカの変化球攻撃が成功したのだ。

 八重の視線がエルゼに釘付けになっていることを、ワッカは見逃さない。彼女の右をスライディングで抜け、ボールをキャッチする。

 

「しま、ぐわっ!!」

 

 下方から投げられたボールを八重は避けることが出来なかった。

 八重にある程度のダメージを与えたところで、ワッカはエルゼに狙いを定める。

 

「くっ!」

 

向かってくるブリッツボールに対し、エルゼは左のガントレットを翳す。案の定、ボールはエルゼに当たる前に曲がって逸れた。

 しかし、この軌道の変化をガントレットのお陰だと思ってしまったのがエルゼの失敗だった。ボールはガントレットに軌道を変化させられたのでは無い。()()()()()()()()()()()のだ。無論、ワッカの投球術による軌道の変化である。故に軌道の変化の仕方を知っていた彼は、ボールの来るであろう位置に予め移動を完了していた。

 ガントレットの妨害による軌道の変化と、投球術による軌道の変化では当然、ボールの動きに大きな違いが出る。後者の方は、ワッカにとって都合が良いように動くからだ。

 

「隙ありだぜ!」

 

「うそっ、きゃあ!!」

 

ガントレットによって逸らしたと思い込んでいたボールの思わぬ動きに困惑したエルゼの隙を、ワッカは逃さない。彼女の防御が間に合わぬ内に、攻撃をヒットさせた。

 

「うう、くっ…!」

 

「つ、強い、でござるな…」

 

 エルゼと八重はワッカの強さを再認識することになった。一方のワッカは、まだまだ余裕を崩していない。

 

「言っておくが、オレはこれがバトルだと思っちゃいない。お前らの強さとオレの強さにどれ位の差があるのか教えてやる。これはセミナーだ」

 

「ば、馬鹿にしないでよぉっ!!」

 

「ここで諦めるわけにはいかんのでござる!!」

 

 ワッカの挑発によって、2人は更に闘争心を高める。しかしその後の展開も、ワッカの一方的な状態が続いていた。

 ワッカは、エルゼに対してはトリッキーな変化球を駆使して攻撃を仕掛ける。たまに変化球と見せかけた単純な攻撃も挟むため、エルゼは思い通りの防御が出来なかった。

 

「きゃあ!!」

 

 一方、八重に対しては獣王戦のような戦法は止めにし、彼女が刀を落とさないような場所へと攻撃を仕掛ける。八重をエルゼの視線を遮る壁として利用したかと思えば、今度は彼女自身へのストレートな攻撃。八重もまた、ワッカの攻勢に翻弄されるがままだった。

 

「ぐわっ!!」

 

 エルゼも八重も、十二分な強さを持っている。現在ギルドの青ランクであるのも、決して過大評価では無い。しかし、それでもやはり、シンを倒すところまで行ったワッカとの間には、絶対的な差という物があったのである。普段はひょうきんな兄貴分であるワッカだが、本来なら「伝説のガード」と呼ばれてスピラ中の人々の尊敬を集めるはずであった、超人的な戦闘能力を持っているのだ。

 そんなワッカも、単に「売られた喧嘩を買った」という理由で2人を攻撃しているワケでは無い。彼は2人に()()を経験して欲しかったのだ。

 常に命の危険を強いられる前衛を任せている2人には、更なる成長をして欲しい。挫折は人を大きく成長させる。負けん気の強い彼女達なら、挫折に心を砕かれ成長を止めてしまう心配は無かった。思えば今まで行動を共にしてきた中で、彼女達が挫折を経験したであろう状況には出くわしたことが無い。ならば命の危険が無い今こそが、彼女達を更に成長させる良い機会だと考えたのだ。

 

「まだまだぁ!」

 

「「ぐふぁ!!」」

 

 しかし、ワッカは元より仲間を大切にする性分だ。2人を攻撃するのは内心(つら)く感じていた。それでも彼女達の成長のためにと、心を鬼にして攻撃を続ける。

 

 3人が戦い始めて、1時間以上が経過した。もう十分だ、とワッカは考える。彼の一方的な攻勢によって、エルゼも八重も既にボロボロであった。成長の(かて)とするにはもう十分であった。

 

「どうだ?オレの強さが分かったろ?」

 

「はぁ、はぁ、確かに分かったわよ…、はぁ、あんたは強いわ…」

 

「今まで戦いを見てきたが、はぁ、これほどまでとは思ってなかった、はぁ、…でござるよ…」

 

「うし!ならそろそろ降参…」

 

「「それはダメ!!」」

 

「え?」

 

 ボロボロな2人が戦う意思を崩さないので、ワッカは困惑する。

 

「私達には、絶対負けられない理由があるのよぉ!!」

 

「絶対!諦めるわけにはいかんのでござるぅ!!」

 

「おいおい、まだやる気かよ…。どうなっても知らねえぞ!」

 

 闘志を燃やすエルゼと八重だが、心の持ちようで戦況が変わるような場面では無いことをワッカは知っていた。故に、彼は少し手加減をしながら、彼女達の口から「降参」を言わせるための攻撃にシフトチェンジした。

 だが、幾ら時間が経っても、幾ら攻撃を当て続けても、2人は一向に降参を宣言しない。ワッカにとっては予想外の出来事だった。負けのルールをしっかり定めておくべきだったと彼は後悔した。

 

「もう、良いだろっ!!さっさと降参しろぉ!」

 

更に一時間が経過しようかという所で、ワッカが大声を上げる。これ以上、無闇に仲間を攻撃したくは無かった。

 

「ま…、まだよ…」

 

「まだ…で…ござる…」

 

 2人はもう、息も絶え絶えな状態だ。気絶するまで戦いを止めようとはしないのだろう。

 

「仕方がねえ…。使いたくなかったが…」

 

苦心の末、ワッカはブリッツボールを八重に投げつける。対する八重にはもう、ボールを避ける力も残されていなかった。

 

「ぐふ…、ぐぅ……ぐぅ……」

 

 攻撃を受けた八重が寝息を立てて突っ伏したので、エルゼは驚きの声をあげる。

 

「ちょ、今の『スリプルアタック』じゃない!魔法は禁止って言ったでしょう!?」

 

「エルゼ、『スリプルアタック』は魔法じゃねえ。オレの特技だ。詠唱が無かっただろ?それが証拠だ」

 

エルゼはこれまでを思い返す。確かに、初めて出会った時も、獣王戦でも、ワッカは「スリプルアタック」の際に詠唱を行わなかった。時たま彼が技名を叫びながら攻撃するので、魔法だと勘違いしていたのである。

 だからと言って許せる気にはエルゼはなれなかった。

 

「そ、そんなの知らないわよ!いい加減に…」

 

「いい加減にするのはお前達の方だろっ!!」

 

 ワッカは突然、大声を張り上げた。

 

「もう勝負は目に見えてるだろうが!なのに、負けのルールが無いのを良いことに、お前らはいつまでも、戦いを続けようとしやがって…」

 

絞り出すような声で、ワッカは言葉を続ける。

 

「オレがどれだけ!辛い思いをしてると思ってんだぁ!!」

 

「ワッカ……」

 

 ワッカの心からの叫びを聞き、エルゼは返す言葉を失ってしまった。

 

「だから、もう…、良いだろ?」

 

ワッカの投げたボールは、エルゼを深い眠りへと(いざな)った。

 

「お姉ちゃん!!」

 

「ワッカさん!!」

 

 エルゼが眠らされた瞬間、外野からの声がワッカの耳に届いた。

 

「お前ら…、来てたのか?」

 

声のする方へと振り返ると、リンゼ、ユミナ、リーンの3人が立っていた。

 

「安心なさいな。2人がワッカと決闘する気だったってコトは、私達も知っているわ」

 

 リーンが穏やかな声をワッカに投げかける。

 

「どうしても戦わなきゃいけないって、お姉ちゃんが…」

 

「八重さんからジャマはしないで欲しいと言われていたので、今まで黙って見ていました…」

 

「リンゼ…、ユミナ…」

 

 ワッカは何と返事をするべきか分からなくなってしまう。思いのほか戦いに夢中になっていたらしく、3人が観ていたことには全く気付かなかったのだ。

 

「まぁ、貴方の勝ちは予測出来てたし、『止めときなさい』とは言ったのだけどね…」

 

 そう言ってリーンは、ボロボロの体で眠っているエルゼと八重に視線を向ける。

 

「そこまでして挑んだのに、可哀想にね…。言いたいことがあったのでしょうに…」

 

「オレが…悪いってのか?」

 

「え?」

 

リーンが振り返ると、ワッカは拳を握りしめ、体を震わせていた。

 

「手加減せずに、こんなになるまで戦った…、オレが悪いって言うのかよ!?」

 

「ちょ、ワッカ!私はそんな意味で言ったんじゃないわよ!?」

 

「そうですよ!お姉ちゃん、本気の戦いをしたい、って言ってましたから!」

 

「ワッカさんは何も悪くありません!!」

 

「……ふっ、そうかよ…」

 

 3人は正直な考えを口にしたつもりだったのだが、ワッカは何かを諦めたような口ぶりで答えた。

 

「わりいな…、しばらく1人にさせてくれねえか?」

 

 ワッカは3人の答えも聞かずに走り去ってしまった。

 

 

 

 

 

 人目に付かない路地裏にワッカは座り込んでいた。

 彼の心を(むしば)んでいるのは強い憂鬱。昨日からのいざこざのせいで、エルゼ達と行動を共にする自信を、ワッカは失いかけていた。年下の少女との付き合いがこんなに大変だとは、今まで思いもしなかった。

 思い返せば、同じような年頃のリュックとは、アルベド族絡み以外でのイザコザは皆無に等しかった。良い娘だったのだと改めて気付かされる。

 ユウナ一行の性別バランスが絶妙だったことにも気付かされた。男4人に対して女3人。実にバランスの取れた男女比である。対する今は、少女4人に対して男はワッカ1人だけ。明らかにバランスが取れていない。その自分が最年長であることも地味に辛く感じてきた。

 アーロンのような頼れる誰かに、自分の悩みを相談したかった。しかし、自分の側にはそんな相手がいないことにワッカは気付いた。公爵や国王は頼りにならない。レオン将軍や家令のライムはユミナに味方するだろう。ワッカ一行を総体的に見てくれる年上の人間が、彼の知り合いにはいなかったのだ。

 否、1人だけいた。だが彼は()()()()()()。そもそも会いに行く手段が無い…。

 そこまで考えていた彼の脳内に、ふとビャクティスの言葉が思い起こされた。

 

『以前、主からは何か高位の力を感じるとお伝えしましたね?同じモノを、あのボールからも感じ取ることが出来るのです』

 

 馬鹿馬鹿しい考えがワッカに浮かぶ。きっとスピラに帰ろうとした時のように失敗に終わるだろうと苦笑した。だが、もしかしたら…?

 ワッカはブリッツボールを見つめる。左手にボールをしっかりと持ち、目を閉じて()()()()を思い浮かべる。

 

「ゲート」

 

 予想を裏切り、「ゲート」は無事開かれた。ワッカは魔法の扉の向こうへと足を踏み入れた。




 長くなってしまいましたが、この話は切るべきでは無いと考え、強行突破しました。

 次回、「異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~」最終回です。ワッカの告白とは一体!?ワッカの行き着く先をその目でお確かめ下さい。
 あと、「素敵だね」はセルフサービスでお願いします。
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