異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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 「ファイナルファンタジーX」「異世界はスマートフォンとともに。」「魔法少女まどかマギカ」「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」の四作品で声優かぶりがほとんど無いのって奇跡では?おかげで中の人ネタが出来ないだろ!
 もうこの四作品で異世界カルテットやれよ…(普通に面白くなりそう)。


初めての王都編
暴食、そして引き寄せ。あとブリッツボール。


「そ、そんなの悪いでござる!見ず知らずの人に、(ほどこ)しを受けるわけにはいかないでござる」

 

 ワッカの気の利かせた言葉に対し、八重は断りの返事を返す。

 

「気にすんなって!満足に戦えねえぐらいにはハラヘリなんだろ?」

 

「そうではあるが…」

 

「じゃあよ、お前の故郷のイーシェンって所の話、聞かせてくれよ。その代わりに飯食わせてやる。それでどうだ?」

 

「そ、それならばお言葉に甘えて…」

 

こうしてワッカ達は八重を連れて食事処へ入っていった。

 よっぽど空腹だったのか、八重は席に着くやいなや次々と料理を注文し、運ばれてくる料理をペロリと平らげていった。

 

「へえ、八重さんは武者修行の旅をしてるんですか」

 

「もぐもぐ、いかにも。我が家は代々武家の家柄でござる。家督は兄上が継ぎ、拙者は己の腕を磨くため、武者修行の旅に出たのでござるよ」

 

「その、ブケだかってのは修行の旅をしねえといけないモンなのか?」

 

「そうでござるね、もぐもぐ。強くならねば治めている土地や民を守れぬゆえムグムグ、若いときから己の腕を磨かねばならぬのでござるよ。ごっくん」

 

「なるほどね-。苦労してるのねアンタ」

 

ワッカにとって武家という言葉は初耳だったが、話を聞く限り土地を治めるお偉いさんの家系なのだろうと考えた。そして武者修行の旅というのは召喚士が旅をするのと同じようなモノなのだろうということで納得する。最も、旅の終わりに待ち受けるのは全く違うモノなのだが。

 そんなことより、ワッカは八重が話をしながら食事をしていることが気になっていた。確かにイーシェンの話を聞かせて欲しいと言ったのは自分であり、こっちから八重に話しかけているのも事実なのだが、いい加減切り替えらんねえのか。

 

「で、八重はこれからどうすんだ?目的地とかあんのか?」

 

「ハフハフ、ずずーっ王都に、ずるずるゴックン、父上が昔世話になった方がおられるので、そこを訪ねて見ようと思ってるでござるよ、ずるずる~」

 

ワッカの質問に対し、きつねうどんを食べながら答える八重。武家では「人の質問にはものを食べながら答えなさい」という教訓でもあるのだろうか、と眉をひそめるワッカ。親の教えはどうなってんだ、教えは。

 

「奇遇ね。私達もこれから王都に行くところなのよ。良かったら私達と一緒に来ない?」

 

「まことで、もぐもぐ…ござるか?しかし、むぐむぐ拙者などが…もぐもぐ、よろしいのでござるかゴックン?」

 

「構わないですよね?ワッカさん」

 

「あ?ああ、そりゃもちろん構わねえが…」

 

 ワッカはテーブルに並べられた皿を見る。八重は一人でもう8品以上は頼んでいる。いくら空腹だったからと言ってこれは食べ過ぎだろうとワッカは頭を抱える。旅費も無限に湧いてくる訳では無い。いくら魔獣討伐依頼で金を貯め込んでいたとは言え、毎食これだけ食べられては金が無くなってしまう。「何か食わしてやる」と言ったのが自分である以上、文句を言うのは筋違いかもしれないが、先程からの態度と言い、彼女の振る舞いには無視できないモノがあった。

 ここは年長者として一言もの申すべきだと決心するワッカ。彼女と旅を続けるならなおさらだ。

 

「おい!暴食をつつしめよ!」

 

「むっ!こ、これはとんだ無礼をいたした!拙者としたことが、ワッカ殿の厚意に甘えすぎていたでござる!」

 

我に返ったかのようにテーブルに手をつき頭を下げてワッカに詫びる八重。ワッカは腕を組んで息を吐いた。どうやら素直な娘のようだと安堵(あんど)する。ここで「何を言うか、食べさせてくれると言ったのはそちらでござろう」などと言おうものなら、流石に旅には連れて行けなかった。

 

「こ、此度(こたび)の食事代は、命に代えてでも必ずお返しするでござる!」

 

「あぁ、いやいや!そんなこたぁしなくていいよ、食わしてやるって言ったのはオレだしな」

 

「し、しかし…」

 

「オレが言いたかったのは、もう少し節制ってモンを覚えろってことだ。ソイツを分かってくれんなら、今日の所はオレが支払っておくから」

 

「何という慈悲…、かたじけなく!」

 

「あぁ後、モノ食いながら話すのはやめとけ、な?」

 

「承知したでござる!」

 

 こうしてワッカや双子も腹を満たし、四人は食事処を後にした。ここでワッカは一つの疑問を八重に投げかける。

 

「そういやお前、今日どこに泊まんだ?」

 

「あー、えっと、野宿するでござる」

 

「野宿とか…、私達の宿に来なさいよ!」

 

「いやいや、そこまで世話になっては申し訳これなく…」

 

 エルゼと八重の会話を聞き、気まずい思いをするワッカ。さきほどワッカに叱られたばかりの八重ならばこの反応は当然だろう。だからと言ってこのまま彼女を野宿させるのは心が痛む。しかしこの場で「遠慮すんなって」とワッカが言った所で八重は断る姿勢を崩さないだろう。お手上げだった。

 

「八重さんの分の宿泊代を私とお姉ちゃんに支払わせて下さい。先程ワッカさんが食事代を出しましたので、私達も何かしませんと…」

 

ワッカは心の中で「ナイスフォローだリンゼ!」と叫ぶ。

 

「しかし…」

 

「八重は馬の扱いは得意?」

 

「それに関しては…、イーシェンにて徹底的に教わったでござる」

 

「なら明日の私達が乗る馬車の御者は八重がやってよ。それでおあいこ、ね?」

 

「そ、そうでござるか…?」

 

「さ、そうと決まれば宿へ行くわよ!案内するわ」

 

「わわ、ちょっとエルゼ殿!?」

 

エルゼが半ば強引に八重の手を引き、宿へと駆けていく。どうやら女子勢は仲良くやっていけるようだ。微笑ましい場面を見せられ、腕を組みながら満足げに微笑むワッカなのであった。

 

 翌日、ワッカ達四人を乗せた馬車はアマネスクの町を出て北へ向かう道を出発した。アマネスクの町を出た後は急に人家がまばらになり、すれ違う馬車の数も減っていった。

 昨日の約束通り、御者は八重が務めている。おかげでリンゼはワッカの文字習得勉強に付きっきりになることが出来た。丸一日リンゼとお勉強出来たことで、ワッカも次々とこの世界の文字を習得していった。勉学の賜物(たまもの)だな。

 この日は小さな村で宿を取ることにする。八重は翌日の御者も買って出た。宿代を出して貰う代わりということなのだろう。

 その晩、ワッカはリンゼを連れて村の外れで()()()()を試みる。目の前に何も無いことを確認し、リンゼに呪文を教えて貰う。

 

「水よ来たれ、清冽なる刀刃、アクアカッター」

 

リンゼが呪文を唱えると、水の刃が飛んでいった。それを見たワッカは彼女の真似をする。

 

「水よ来たれ、清冽なる刀刃、アクアカッター」

 

同じように水の刃が空を割いていく。それを確認し、ワッカは別の呪文を唱える。

 

「ウォタラ」

 

三度水の刃が飛んでいく。これまでの実験を踏まえ、ワッカは自分が()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()ことを確信する。最も実戦では隙を少なくするために文字数の少ないスピラの呪文を使うことになるだろうが。なお、ワッカはリンゼに対して「オレの使う攻撃呪文はオレの生まれ故郷の人間で無いと使えない」ということで納得させている。魔法の先生(リンゼ)が物分かりのいい娘だったのでワッカは助かっていた。

 閑話休題(かんわきゅうだい)、ワッカはもう一つ魔法に関する実験を試みる。

 

「ブースト」

 

彼は呪文を唱え、前方に飛ぶ。そして空中で一回転し、地面にかかとを叩きつける。バゴオォという音が鳴り響き、地面が大きく陥没した。無論、呪文無しではワッカと言えどこんなことは出来ない。身体強化魔法「ブースト」のおかげである。

 

「どうやら…ワッカさんは名前と効果が分かれば全ての無属性魔法が使えるようですね…」

 

自分の方に戻ってくるワッカにリンゼが伝える。

 

「みてぇだな。まあたくさん覚えてもしゃあねえし、必要最低限の魔法だけ覚えとくことにすっか」

 

ワッカがそう答える。RPGでたくさん呪文や特技を覚えさせたは良いものの結局一度も使わずゲームをクリアしてしまった技がある、という経験があるだろう。それと同じ事である。ましてやワッカにとって実際に命のやり取りをする戦闘で無駄に選択肢があることは、返ってピンチを(まね)く事にもなりかねない。

 

「それにこの『ブースト』ってのは、どうやらオレには合ってないらしい」

 

「どうしてですか?お姉ちゃんの戦いに欠かせない魔法なのに…」

 

「ブリッツボールをオレの元に戻ってくるように相手に投げるってのは、割とテクニカルな要素が多いからな。筋力増強なんてしたら、手元が狂っちまう」

 

「なるほど…」

 

「まあ、『ブースト』はエルゼの専売特許って事で良いじゃねえか!」

 

「確かにそうですね、フフフ…」

 

「ワッハッハ!」

 

 こうして二人の笑い声によって、この日の魔法実験は幕を閉じたのだった。

 

 翌日も四人を乗せた馬車は王都への道を進む。昨日と同じように八重が御者台に座り、ワッカはリンゼと文字の勉強をする。エルゼは暇を持て余しているようで、どこかで戦闘にならないかとウズウズしていた。

 ワッカが文字の勉強に使っている無属性魔法の魔法書には、膨大な量の魔法が掲載されている。だがその(ほとん)どは「対象を異常なまでに犬に好かれるようにする魔法」だの「お茶の色を鮮やかにする魔法」だのと言った、使い道の分からないクソ魔法と呼ばれる魔法ばかりである。診療所送りにしたいような魔法ばかりの中、時々「ささくれだった木材を(なめ)らかにする魔法」のような用途が比較的分かりやすい魔法が紛れているが、別に大工になりたいわけでも無いワッカにとっては覚える必要の無いものであった。

 そんなわけで内容はあまり気にせず勉強を進めていたワッカだったが、一つ気になる呪文を見つけた。

 

「『アポーツ』、遠くにある小物を手元に引き寄せる魔法か…。こいつぁ何かに使えそうだな」

 

「試してみたらどうですか?」

 

リンゼに(うなが)され、ワッカは早速「アポーツ」を試してみることにする。ふと御者台に乗って揺られている八重が目に入ったので、彼女の刀で実験してみる。

 

「アポーツ」

 

しかし何もおこらなかった。ワッカの向かいにいたエルゼが声をかける。

 

「何を取ろうとしたのよ?」

 

「八重の刀だ。近くにあるモンでたまたま目に入ったんでな。刀だと小物に入らないってことか」

 

そう(つぶや)き、彼は別の物を標的に選ぶ。

 

「アポーツ」

 

「うわあっ」

 

八重が驚きの声を上げる。彼女の長い髪を結んでいた赤いリボンがワッカの手元に収まっていた。

 

「うし、成功だな」

 

「ですね。しかし便利そうな魔法ですが、恐ろしくもありますね」

 

「まあ確かに、ブリッツボールの試合で使うのはルール違反だろうな」

 

「そうじゃなくて、これってスリとかし放題って事でしょ?」

 

「なるほど、お金とか宝石とかも盗めるってことか。そう考えると怖えな」

 

「……やるんじゃないわよ?」

 

「……やらないで下さいね?」

 

「おい!言葉をつつしめよ」

 

オレがそんなことするわけねぇだろうが、とワッカが続けようとしたところで、八重が会話に入り込んできた。

 

「あのう~、早くそれを返して下さらぬか?髪がバサバサするのでござるが…」




 いろんな場面で「やれやれしょうがないなぁ」的な反応をする望月冬夜と違い、ワッカは思ったことはハッキリ口にするタイプです。この二人の違いは結構大きいと思います。

 ワッカが覚える無属性魔法は厳選します。「スリップ」を使う場面とか普通にブリッツボールでなんとかなる場面ばかりですしね。

 双子から「やらないでね」と言われた後の望月冬夜の返しはマジで鳥肌モンです(悪い意味で)。そんなだから(ネットの)みんなに嫌われるんですよ。
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