異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~ 作:3S曹長
戦死した七人の兵士は近くの森に埋められることになった。墓作りをワッカ達も手伝う。七人の中には生き残った兵の兄も含まれていたらしく、弟兵が沈んだ顔をしながら墓の前で手を合わせる。その様子を見たワッカも感傷的な気持ちになる。自分と同じ境遇に陥った彼に対し、かける言葉が見つからなかった。兄か弟か、ワッカと弟兵の違いはそこだけであった。
黙祷が終わった後、老人が改めてワッカに礼の言葉を述べた。
「あなた方が来て下さらなければ、全滅は避けられなかったでしょう。なんとお礼を申し上げれば良いか…」
「まあでも、こうして生きてんだ。神様の
「全くでございます」
「それよりアンタ、立ち上がって大丈夫なのか?」
「はい、おかげさまで」
老人がピシリとした綺麗な姿勢で礼をする。
「お主には感謝しておるぞ!お主は爺の、わらわの命の恩人じゃ!!」
「お、おう」
老人の隣にいた少女も今はすっかり泣き止んでおり、元気な声でワッカに礼を言う。偉そうな言葉遣いではあったが、相手が年端もいかない少女であるため「おい!言葉をつつしめよ」とはワッカも流石に言わない。
「ご挨拶が遅れました。私はオルトリンデ公爵家家令を務めておりますレイムと申します。そしてこちらにおられますのが、公爵家令嬢スゥシィ・エルネア・オルトリンデ様でございます」
「スゥシィ・エルネア・オルトリンデじゃ!よろしく頼むぞ!」
爺改めレイムに紹介されたスゥシィが元気よく挨拶する。
「オレはワッカ。ビサイ…じゃなかった。ギルド所属の冒険者で紫ランクだ」
ワッカも自己紹介をする。「ビサイド・オーラカの選手兼コーチ」というワードはギリギリ言わなかった。
「そしてこいつらが…」
ワッカが仲間を紹介しようと横を向くと、三人全員が片膝を地面につきしゃがんでいるのが目に入った。
「なんで、お前らそんなに改まってんだよ…?」
「逆になんであんたはそんなに堂々としていられるのよ?公爵よ、公爵!」
「そういう問題じゃねえ!自己紹介はどうなってんだ自己紹介は!!」
ワッカの言葉で三人は名前を名乗り忘れていた事に気付く。
「あ、申し訳ございませんでした!エルゼ・シルエスカと申します」
「リンゼ・シルエスカと申します」
「
「あー、こいつらいつもはこんなんじゃ無いんだが…まぁ仲良くしてやってくれ」
「だから!ワッカも態度をつつしみなさいよ!!」
「何だ、そんなに偉い人なのか?」
「公爵は爵位の一番上です」
「コーシャク?シャクイ?」
ワッカの元いた世界であるスピラには爵位など存在しない。彼に言葉の意味が伝わっていない事を察したリンゼは説明を付け足す。
「公爵の地位を与えられるのは基本的に王族のみです」
「お、王族!?」
スピラに王は存在しないが、人民をまとめる者として王という単語があることはワッカも知っていた。
動揺したワッカは反射的に
「何なのよ!そのわけ分かんない踊りはぁ!」
エルゼがツッコミを入れる。
「えっとスゥシィ様、この度は大変な無礼をしてしまわられ、申し訳ございませられ…」
「普段の言葉で良いぞ!」
慣れない敬語を使おうとするワッカに対し、スゥシィが言う。シーモアと初めて話したときも同じような会話をしたことをワッカは思い出した。
「他の者もそんなにかしこまらなくてよい!お主らはわらわの恩人なのじゃ。本来、礼をしなければならぬのはこちらなのじゃぞ?」
公爵令嬢の言葉を受けて三人も立ち上がったが、表情や姿勢は固いままだった。
「ところで、なんでこんな所に公爵令嬢?…だかがいるんっすか?」
「お
「あの召喚士に心当たりとかあるんすか?」
「分からぬ、本来ならば捕まえて洗いざらい吐かせたいところなのじゃが、殺されてしまってはどうしようも無いのう」
「拙者のせいでござる。申し訳なく候…」
ワッカに言われた事を公爵令嬢にも指摘され、八重が深々と頭を下げる。
「気にするな。お主には感謝の言葉しか無い!よくぞ敵を倒してくれたの!」
「あ、ありがたきお言葉…」
八重はそう言って再び頭を下げるのだった。
「ところで、ワッカ様に一つご相談したいことがあるのですが…」
レイムがワッカに言葉をかける。
「先程の戦闘で半数以上の兵が倒れ、このままでは再度襲撃が起きた際にお嬢様の命をお守りするのが難しい状況にあります。つきましては、ワッカ様に王都までの護衛を依頼したいのです。もちろん、報酬は到着後にお渡しいたします。お願いできますでしょうか?」
「オレは構わねえよ。丁度王都へ手紙を運ぶ依頼の最中だったしな!皆はどうだ?」
ワッカが三人の意向を尋ねる。
「もちろんよ!」
「私も賛成です」
「拙者は皆についてきている身である
「うし!決まりだな」
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
「ありがとうなのじゃ!お主がいてくれると心強いぞワッカ!わらわのことはスゥと呼んでくれ!」
こうしてワッカ一行は公爵令嬢護衛依頼を追加で引き受けることになった。生き残った兵の傷は回復魔法で癒えており、彼らは単騎で馬に乗って先導を行う。公爵家の馬車の後ろを守る形でワッカ達の馬車が続く。しかしワッカ本人は令嬢を直接守る役目として公爵家の馬車に乗ることになった。
その後襲撃は起こることなく、王都への道のりは今度こそ平穏そのものだった。
「『そして おまえたちは ここで しに わしは えいきゅうに いきつづけるのだ!』こうして光の戦士達とカオスとの最終決戦が始まるのだった!」
「おぉ!ドキドキするのう!」
ワッカの話を聞いたスゥシィが手を叩いて喜ぶ。何か面白い話をして欲しい、という彼女のリクエストを受けたワッカは故郷に伝わる
「ワッカ様、お嬢様。間もなく王都に到着いたします」
レイムが二人に声をかける。ベルファスト王国の首都でもある王都アレフィスはパレット湖の
「すっげええへええええ」
公爵邸の大きさに感嘆の声をあげるワッカ。馬車は玄関前で止まり、スゥシィが扉を開ける。
「お帰りなさいませ、お嬢様!」
「うむ!」
広い廊下の両端に多くのメイドが並び、一斉に頭を下げる。レイムに連れられ、ワッカ達も屋敷に足を踏み入れた。正面の階段から降りてきた一人の男性に向かってスゥシィが駆けていく。
「スゥ!」
「父上!」
この男性こそがスゥシィの父親、つまりオルトリンデ公爵その人である。彼は国王の弟であり、娘と同じ明るい金髪の、柔和な顔をした男性だった。
「良かった!無事で良かった!」
「わらわは無事だと早馬で伝えたではないですか!」
「ああ、手紙を読んだときは生きた心地がしなかったよ…」
娘との再会をひとしきり喜んだ後、公爵はワッカ達の方へと足を向ける。
「君たちが娘を助けてくれた冒険者達だね?」
「あ、自分ワッカと申しますでございますでっす…」
「ちょっとワッカ!敬語が変よ!」
「しょーがねーだろ。今まで生きてきた中で使った事なんてほぼほぼ無ぇんだからよ」
「敬語は使わなくて構わない。ぜひ普段通りの言葉で話してくれ」
「す、すんません。それじゃ、そうさせてもらうっす」
シーモア、スゥシィに次いで同じ会話を公爵とすることになったワッカ。
「改めて、君たちに礼を言わねばな。本当にありがとう」
公爵はワッカ達に向かって頭を下げた。
「いやいや、オレたちゃ当然のことをしたまでなんで…」
「そうか、君は謙虚なんだな」
そう言って公爵はワッカと握手を交わす。
「改めて自己紹介しよう。アルフレッド・エルネス・オルトリンデだ」
「オレはワッカ。ビサ…、ギルド所属の冒険家で紫ランクっす」
「君たちに茶を用意したんだ。二階のテラスに案内しよう」
「いやあ、悪いっすね」
こうして公爵はワッカを連れて階段を上っていく。後から付いていくエルゼにリンゼが小声で話しかける。
「お姉ちゃん、ワッカさんの公爵に対する態度ってアレでいいの?」
「もう、一々ツッコミたくないわよ」
エルゼは深くため息をついた。
ワッカさんって目上の人には「~っす」って言葉遣いになるよね。ティーダかな?
原作では望月冬夜が地の声やってるからスゥシィを指すとき「スゥ」だけで済むのに、この小説では一々「スゥシィ」って入力しなきゃいけないのトラップだろ!8回(suxusixi)キーボード叩かなきゃいけないから結構面倒くさいぞコレ。