異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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 自分が思っていたより話の進むペースが遅いです…。
 頭空っぽで見れる、とネットで言われているいせスマですけど、実際に話を書いてみると、そうポンポン話を進めることは出来ないんだな~。


状態異常回復魔法、そして高額報酬。あとブリッツボール。

 ワッカとオルトリンデ公爵が公爵家2階のテラスでお茶を楽しんでいる。同じテーブルにエルゼとリンゼと八重も座っているが、彼女たちには公爵家にいるというプレッシャーが大きいようで表情が硬い。

 

「いやあ、この紅茶美味しいっすねぇ!なんつーか、今まで()いだこと無い香り(?)みたいなのがしますよ~」

 

「そうかね。ワッカ君が気に入ってくれたみたいで嬉しいよ」

 

ワッカと公爵の会話を聞き、三人の緊張感はさらに高まっていく。

 

「ちょ!言葉をつつしみなさいよ!」

 

「馴れ馴れしすぎますよ!ワッカさん!」

 

「無礼でござる~!」

 

 そんな声にならないツッコミを心の中で叫んでいると、スゥシィがテラスへと入ってきた。

 

「父上、お待たせしました」

 

彼女は出会ったときの動きやすそうな服装から、薄桃色のフリルが付いたドレスに着替えていた。

 

「おぉ!似合ってんじゃねえかスゥ!」

 

「ふっふーん、そうじゃろそうじゃろ」

 

ワッカの褒め言葉に鼻高々なスゥシィ。馬車での触れ合いを通じて仲良くなったこともあり、ワッカは既に彼女に対して敬語を使わなくなっていた。

 

「エレンとは話せたかい?」

 

「はい。心配させてはいけないので、襲撃のことは話しておりません」

 

そう言いながらスゥシィが空いている椅子に座ると、レイムが間を開けずに彼女の分の紅茶を持ってきた。

 

「エレン?」

 

「ああ、済まないね。娘の恩人に顔も見せないで。エレンは私の妻、スゥの母親だよ」

 

「なるほど、スゥには母親もいたんだな」

 

内心、ワッカはスゥシィのことをうらやましいと思った。ワッカの両親は、彼が物心つく前に亡くなっていたからだ。シンが跋扈(ばっこ)するスピラでは両親のいない子供は珍しくなかった。無論、シンがいないこの異世界ではそうでないことは彼も織り込み済みなため、その想いを口にはしない。

 

「妻は五年前に重い病にかかってしまってね。今は病から回復しているんだが、後遺症で目が見えないんだよ」

 

「目が見えないのでござるか?」

 

「そう言ってんじゃねぇか」

 

ワッカが八重にツッコミを入れる。

 

「魔法での治療はなされたんですか?」

 

「もちろん、国中の治癒魔法の使い手に声をかけたが、あいにく妻の目を治せる者はいなかった。怪我などによる肉体の修復は出来ても病気の後遺症を回復魔法で治すことは出来ないらしい」

 

「そうなんすか」

 

ケアル系の回復魔法と状態異常回復魔法である「エスナ」が別れているのと同じような物なのだろうとワッカは当たりをつける。

 

「お祖父(じい)様が生きておられたらのう…」

 

残念そうにスゥシィが(つぶや)く。

 

「そう言やあ、スゥはばあちゃんの家に調べ物しに行ってたって話してたよな?」

 

「そうじゃ」

 

「スゥの祖父、妻の父上は特別な無属性魔法の使い手でね。身体の異常を取り除くことが出来たんだ」

 

公爵が説明を引き継ぐ。

 

「今回スゥが旅に出たのも、妻の実家に行けばその魔法について何か分かるかもしれないと考えたからなんだよ」

 

「お祖父様の家に行けば、その魔法を習得できるかもしれぬと考えたのじゃが…。結局ダメじゃった。お祖父様の魔法ならば母上の目を治せるのに…」

 

「仕方が無いよスゥ。無属性魔法の(ほとん)どは個人魔法だ。同じ魔法を使える者など(ほとん)どいない。だが、諦めなければいつかは解決方法が見つかるさ」

 

悲しそうに話す公爵親子の会話を、ワッカは黙って聞くことしか出来ない。

 

「身体の異常を取り除ける魔法ねぇ…」

 

 どこかで聞いたような話だと思いながらワッカは紅茶を(すす)る。

 

「そうじゃねえ!さっきオレがエスナのことを思い出してたんじゃねぇか!」

 

「ワッカ君!?ど、どうしたのだね、いきなり大声出して」

 

「え?あ、いや~ははは」

 

自分に対してのツッコミが思わず口に出てしまい、苦笑いするワッカ。

 

「何か知っておるのかワッカ!?」

 

スゥシィが食いついた。彼女の期待のこもった眼差しを目にして、ワッカは後に引けなくなってしまう。

 

「い、いや~その、自分、似たような魔法持ってるんで、その、それで何とかなるかもしれないな~、なんて…」

 

「本当かね!?」

 

公爵が椅子から立ち上がる。

 

「是非、エレンに会ってくれないか!?」

 

「い゛っ、いいっすけど…、治るかは分かんないっすよ?」

 

「構わない!可能性があるなら試さない手はないじゃないか」

 

「そうっすよねぇ、ははは」

 

仕方なくワッカも立ち上がる。

 

「こおーなったらヤケクソだッ!」

 

 そう言い放ち、公爵の後を追う。スゥシィ達四人も後に続いた。

 

 ベットに腰掛けている公爵夫人のエレンは、まさにスゥシィが大人になったような姿をしていた。親子は似るものなのだと二人を見比べてワッカは思う。

 

「あら、お客様ですか?」

 

エレンが口を開く。お転婆(てんば)なスゥシィとは異なり、言葉一つ取っても上品さが感じられる。瞳は開かれているが、視点は定まっていない様子だ。

 

「は、初めまして。ワッカと言いますどうも」

 

「初めまして。あなた、この方は?」

 

「旅に出たスゥがお世話になった人でね。君の目を見て下さるのだそうだ」

 

「私の目を…」

 

「母上、じっとしていてくだされ」

 

 ワッカはエレンの前に立ち、手をかざす。どうか上手く行ってくれ、と祈る気持ちで呪文を唱えた。

 

「エスナ!」

 

 改めて説明すると、「エスナ」はスピラの状態異常回復魔法だ。睡眠、暗闇、毒、石化等々あらゆる状態異常を回復できる。

 さて、ワッカが手をどけると、先程まで定まっていなかったエレンの視線が徐々に定まりだした。(またた)きを数回したかと思うと、彼女は公爵の方に顔を向ける。

 

「あなた…見えますわ…。目が…見えるようになりましたの!」

 

彼女の目から涙がこぼれ落ちる。

 

「本当なのか…エレン……。良かった、本当に…良かった……!」

 

「うっうっ…母上えぇー!」

 

公爵とスゥシィも泣いてエレンの回復を喜ぶ。

 

「良かったですね…本当に…!」

 

「良かった、ぐすっ…」

 

「良かったでござるよ~」

 

三人もつられて泣き出してしまう。一方のワッカはと言うと

 

「ふぃ~、良かったぜ」

 

と安堵の息を吐く。どうにか恥をかかずに済んだ、と安心しきると今度は涙が出そうになる。周りにつられて、と言うのも理由の一つだが、親のことを知らない彼にとってこういう場面を見るのはどこか(つら)いモノがあるのだ。

 泣き笑いする親子三人に背を向け、ワッカは言う。

 

「おい、さっさと帰るぜ」

 

「…ワッカ殿?」

 

「ワカッテンノカ?この場にオレ達がいるのは()()ってモンだろ」

 

そう言って立ち去ろうとするワッカに対し、公爵が声をかける。

 

「待ってくれワッカ君。君には大変世話になった。礼をしなければならない。来賓室(らいひんしつ)で待っていてくれ。少ししたら必ず向かうから」

 

何か言うと泣いてしまいそうなので、ワッカは公爵の言葉にサムズアップで答える。部屋を出て行くワッカの後を三人も追った。

 

 廊下にいたメイドに来賓室の場所を教えて貰い、そこに向かうワッカ一行。その一人リンゼがワッカの服を引っ張り小声で話しかける。

 

「ワッカさん、ちょっと良いですか?」

 

「ん、どした?リンゼ」

 

「ワッカさんならスゥシィさんのおじいさんの魔法、使えたんじゃないですか?」

 

「まあ、そうかもしれねぇなあ」

 

ワッカは周りを見渡し、他の誰も聞いていないことを確認した後言葉を続ける。

 

「でもあれだ。オレが無属性魔法を全て使えるってことは黙ってた方が良いだろ」

 

彼は文字の勉強に使っている無属性魔法の本を思い出す。あの本だけでも数え切れない量の無属性魔法が掲載されている。一見使い道の分からないあの大量の魔法も、どこかの誰かが必要としているかもしれない。加えて他にも、スゥシィの祖父の魔法みたいな便利なモノが存在するのだ。それら全てをワッカが使えることが知れ渡れば、どんな混乱が起こるか想像もつかない。ワッカは目立つことは嫌いでは無くむしろ好きな人間ではあるが、自分が原因で大きな騒動になるのはごめんだった。

 

「なるほど、確かにそうですね」

 

リンゼもワッカの言わんとすることを察し、賛成の意を示した。

 

「だろ?そういうことで頼むぜ、リンゼ」

 

「分かりました。ワッカさん」

 

二人は再び来賓室へと向かうべく歩き出したのだった。

 

 来賓室でしばらく待っていると、約束通り公爵がやってきた。

 

「やあ、待たせて済まなかったね」

 

「オレらに構わず、親子の時間を過ごしてくれてて良いんすよ?」

 

「そういうわけにはいかない。娘と妻、私の大事な二人が大変世話になった。君の働きに(むく)いねば、私は公爵として外を出歩くことが出来ない。しっかり礼をさせてくれ。レイム、例の物を渡してくれ」

 

「かしこまりました」

 

公爵の命を受けたレイムがワッカに袋を渡した。ジャラリと音がする。

 

「中に白金貨四十枚が入っている」

 

「「「「白金貨四十枚!?」」」」

 

ワッカ、エルゼ、リンゼ、八重の四人が同時に声を上げる。白金貨一枚は金貨十枚分、金貨一枚は銀貨十枚分、銀貨一枚は銅貨十枚分である。つまり白金貨一枚は銅貨千枚分であり、宿屋「銀月」の宿泊代が食事付きで一泊銅貨二枚なので…、要するに大金というわけである。

 

「こ、こんなに受け取れないっすよ…」

 

「そう言わず受け取って欲しい。それに君達がこれから冒険家として活動を続けていくならば、先立つ金が必要になるはずだ。そうじゃないかい?」

 

「な、なるほど。そこまで言うのなら、遠慮無く…」

 

考えてみれば異世界に来た時にワッカは無一文だったのだ。この大金があればあのような状況には二度とならないだろう。そう考え、彼は公爵からの報酬をありがたく受け取ることにした。無論、後で四人で分割するつもりだ。

 

「それと君たちにこれを送ろう」

 

 次にワッカが受け取ったのは細長い箱である。開けてみると、銀色のメダルが四枚入っていた。メダルには公爵家の家紋が彫られてある。

 

「我が公爵家のメダルだ。それがあれば検問も自由に通れ、貴族専用の店も利用出来るようになる。何かあったときは公爵家が後ろ盾になるという証だよ」

 

「な、なるほど。ありがたく頂戴(ちょうだい)しまっす!」

 

 報酬も貰ったところで、ワッカ達は公爵家を退出することにした。大金に気を()かれ、本来の依頼を忘れてはならない。

 公爵家の玄関を出たところで、スゥシィが後を追ってきた。

 

「スゥ!オレたちゃ帰るぜ!」

 

「うむ、また来るのじゃぞ!わらわは待っておるぞ、お主のいないこの屋敷でー!!」

 

こうしてスゥともしっかり別れを告げ、四人は公爵家を後にするのだった。

 

 公爵家の敷地を出た後、ワッカがボソリと(つぶや)く。

 

「しっかしまあこの大金、どうするべきよ?」

 

「ギルドに預けましょ」

 

「金の預かりをギルドでしてくれるのか?」

 

「はい」

 

「じゃあそうすっか。持ってるのが怖えからな」

 

「そう言えば…」

 

エルゼが八重の顔を見る。

 

「目的の王都に来たわけだけど、八重はこれからどうするの?」

 

「そっか、そういや王都が目的地だったな」

 

「拙者、もう心を決めたでござる」

 

八重が改めて三人に向き直る。

 

「拙者、ワッカ殿にこの身を(ささ)げるでござる!」

 

「は?」

 

「あわわ…、け、決してふしだらな意味では無くて…」

 

八重は慌てて言い直す。

 

「短い道中ながら、ワッカ殿の人となり、見させていただいた。強大な力を持ちながら決して(おご)らず、人助けの道を選ぶ生き方。拙者、感服いたした。だから拙者は修行のため、ワッカ殿と行動を共にしたい!」

 

「お、おう、そういう意味かなるほどな」

 

 彼女の決意をワッカは聞き入れた。

 

「そういうことならオレは構わねえが、お前達はどうだ?」

 

ワッカは双子の意向も尋ねた。

 

「良いんじゃない?私達と行きましょう!」

 

「八重さんがいてくれれば、私達も心強いです!」

 

「だそうだ。ま、お前達ならそう言うと思ってたけどな!」

 

「分かってて聞いたのぉ?」

 

「オレは大人だからこういうことはちゃんと聞くんだよ!とにかく…」

 

ワッカは八重に右手を差し出す。

 

「これからよろしくな、八重!」

 

「よろしくでござる、ワッカ殿!」

 

 二人の握手により、ワッカに新しい仲間が加わった。

 

「あーそうだ。八重に一つ言っときたいことがあんだ」

 

「何でござるか、ワッカ殿?」

 

「今度から自分の飯代は自分で払ってくれよ」

 

「も、もちろんでござる!!」




本来は原作にあったソードレック子爵の話も書きたかった(アーロンの話を交えて書く予定だった)んですが、長くなりそうなのでアニメと同じ短縮ルートでいきます。

次回予定:初めての王都編終了
次々回予定:「まるで将棋だな」編スタート
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