英雄王セイハク   作:ディヴァ子

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ついに我らの待ち望んだ、最強の英雄が爆誕した!
最新の製鉄技術を活かした驚異の武器を手に、今世紀最強の英雄譚を紡ぐ新作品!

「英雄王セイハク!」

FINAL STAGE 承認!

※?????:「全て嘘です!」


英雄王誕生!

 「大社跡」。

 それは栄枯盛衰の残骸。数々の怪奇現象、神々の齎す恵みと滅びにより、全てが終わってしまった土地。現在は緑と水の溢れる豊かな大地と化しており、過去の遺物は苔生した廃墟くらいしかない。

 

「………………」

 

 そんな栄光の墓場とも言える大森林の最中に、1人の少年が立っていた。

 

『バヴォオオッ!』

 

 そして、その前にはドデカい熊型のモンスター。蒼と黄色が混在した体毛に全身が覆われており、背中と腕には甲羅のような鎧を有している。

 彼の名は「アオアシラ」。「青熊獣」とも呼ばれる、牙獣種の中型モンスターである。ハチミツと魚が大好物で、森の中で腰を下ろしながら、美味しそうに食べる様が度々目撃されている。ついでに臆病で逃げ腰という可愛い一面もある。

 そう言った愛嬌のある仕草から、一部ではマスコットのような扱いを受けているが、実際はしっかりとした化け物(モンスター)だ。その剛腕は人体を容易に砕くし、甲殻は並みの武器なら簡単に弾き返してしまう。

 

「………………」

 

 むろん、アオアシラの眼前に立つ少年も例外ではない筈なのだが、何故か彼は全く動こうとしない。ただ黙って、身の丈以上の太刀を構えるのみ。

 

『ゴァアアアッ!』

 

 と、痺れを切らしたアオアシラが、少年に襲い掛かる。力任せの引っ掻き攻撃(通称「シャケクロー」)で一気に仕留めてしまうつもりであろう。

 しかし、それは叶わない。

 

 

 ――――――キィイイイイン!

 

 

『バヴォッ!?』「………………」

 

 完璧なタイミングで放たれた居合抜刀斬りでカウンターを食らったからである。

 少年の持つ太刀は「蒼星ノ太刀【舞龍】」。相手の視界を真っ白に染め上げる程の切れ味と滝壺の如き会心の一撃を持ち合わせた水属性の業物で、並みのモンスターでは到底太刀打ち出来ない。それを使い熟せる技量があれば、の話だが。

 だが、彼は振り回される事なく、気刃の連撃を振るっている。次々と繰り出される攻撃に、アオアシラは全く反撃出来ず、その間も刃に練気が蓄積されていく。これだけでも、少年の実力が窺えるだろう。

 しかし、彼の本領が発揮されるのは、太刀ではない(・・・・・・)

 

『グヴォォッ!』

「………………」

『バグォ……!?』

 

 踏み込んだ二連撃からの気刃大回転斬り、特殊納刀、見切りの居合と決めて、鉄糸蟲技「桜花鉄蟲気刃斬」で切り抜けて背後に回り込み、一瞬だけ手元を見てから、反撃しようと必死なアオアシラに別の鉄糸蟲技「兜割り」を叩き込む。最後に見せた技は「疾替え」と呼ばれる技術で、手元にある「疾替えの書」という特殊な図式や図柄の書物による暗示効果により、本来なら使い勝手の違う別の構えや鉄糸蟲技を使えるようになるのだ。

 さらに、その際に一瞬だけ意識がクリアになる為、一度限りだが神速の回避性能を発揮する副次効果があって、そちらは「先駆け」と呼ばれている。

 ……呼ばれていると言っても、それらはまだ少年と彼の師匠しか使えない特殊な技術なのだが、何れはどんなハンターでも使えるようにしたいとは思っている模様。

 ともかく、少年は独自の技術をフルに発揮し、アオアシラを昏倒させると――――――真後ろに翔蟲を放ち、大きく後退した。途端にアオアシラが怒りのパワーで復活し、凄まじい勢いでシャケクローを繰り出して来る。もちろん少年は後退しているので、掠りもしない。

 

「ハッ!」

 

 そして、そこに突き刺しておいた巨大な弓「蒼世ノ龍弓【天翔】」を掴むと、慣れた手付きで構えて、拡散式の矢を怒涛の勢いで放つ。こちらもまた上級の装備であり、幾ら水属性に強いアオアシラと言えど、耐えられるような代物ではない。

 

(セイ)()(クウ)ッ!」

『バヴォァアァ……!』

 

 さらに、翔蟲で上昇して空中から矢を放つ鉄糸蟲技「飛翔にらみ撃ち」でアオアシラに止めをさし、少年は颯爽と着地した。討伐に至るまでのダメージはゼロ。一切の被弾を許さず、一方的に倒した事になる。

 

「……おい、お前ら、飯の時間だぞ」

 

 一先ず素材の剥ぎ取りを終えると、少年は木陰の物陰に向かって声を掛けた。オトモアイルーだろうか?

 

『キャオキャオ!』『ギャーギャー!』『キュィイイ!』

 

 しかし、現れたのは朱色の羽毛を生やした小さな恐竜のようなモンスターたち。鎌状の尻尾を持つ事から「鎌鼬竜」の異名を取る鳥竜種、「イズチ」である。

 オサイズチという大型の個体をリーダーとした群れを作る事で有名だが、彼女たちは“はぐれ”と呼ばれる個体。即ち、何らかの事情で群れに留まれなくなった、劣化個体だ。

 つまり、彼女らは元々は別のグループに所属していたイズチであり、血縁関係も無ければ面識もない、完全に赤の他人だった奴らである。

 そんな彼女たちだが、群れを追われ弱っていた所で偶々少年と出会い、“とてつもない脅威”から呉越同舟で切り抜けた事によって、そこそこの信頼関係を結び、今ではこうしてお零れを貰うまでになっている。単に餌付けされてるだけとか言ってはいけない。

 

「おや、相変わらず仲が良いようだね、セイハク!」

「ウツシ教官……」

 

 そこへシュシュッと登場したのは、独自のジンオウガ装備に身を包む、凄腕のハンター兼新人の教育係である、ウツシ教官。彼が声を掛けた少年こそ先程まで無双をかましていた太刀&弓使いであり、名をセイハクと言う。

 2人はプリキュア……ではなく師弟関係で、セイハクに狩りの手解きをしたのが、このウツシ教官という訳だ。

 

『『『ペッ!』』』

「痛ッ!? いきなり何すんの君たち!? もっとやって下さい!」

『『『ペッ、ペッ、ペッ!』』』

「ありがとうございます!」

「……イズチの“礫唾”食らって喜ぶなよ」

 

 その実態は、天然ボケかつマゾっ気が強いという、残念なイケメンである。モンスターの鳴き真似が得意なおかげで、目の前のイズチたちどころか味方である筈のフクズク(フクロウとミミズクを足して2で割ったような小型モンスター。主に偵察で使われる)に攻撃されてしまう、哀れな男でもある。本人は喜んでいるので、別にどうでも良いような気もするけど。

 

「さぁ、今日の訓練も終了だ! 里に帰ろうか、セイハク!」

「はいはい……」

 

 その後、何事も無かったかのように里帰りを促すウツシ教官。流石はハンター、耐久力が一般人とは雲泥の差だ。頭がおかしいだけの可能性もあるが。

 

「じゃあな、お前ら。次来るまで死ぬなよー」

『キャオキャオ!』『ギャーギャー!』『キュピィ~ン♪』

「さらばだ、イズチ諸君!」

『『『ペァッ!』』』

「本当にありがとうございましたー!」

「早く帰るぞ、雄豚」

「素晴らしいぞ、愛弟子!」

「気持ち悪いなぁ……」

 

 そして、手の代わりに尾刃を振るイズチたちを背に、セイハクとウツシは翔り出す。彼らの故郷――――――「カムラの里」へ向かって。

 

『………………』

 

 そんな彼らを、赤紫色の眼が見つめていた。




◆イズチ

 竜盤目鳥脚亜目走竜下目狗竜上科イズチ科に属する鳥竜種。別名は「鎌鼬竜(「れんゆうりゅう」と読む。初見では絶対に解読不可能な読み方と言える)」。
 朱色の羽毛に包まれたディノニクスみたいな小型モンスターであり、尻尾の先端が鎌状の刃になっているのが特徴。これは武器にも道具にもなる便利な生体器官で、他の個体と連携した攻撃を得意とする。他にも胃石をブレスとして放つ事もでき、遠近共に隙が少ないモンスターである。小規模な群れを作り、リーダーの大型個体は「オサイズチ」と呼ばれて区別される。
 ちなみに、どう見ても肉食性だが、実は雑食だったりする(それでも肉食が強めだが)。
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