ぶちのめしたクシャルダオラを掻っ攫われた! 全力で名誉挽回せよセイハク! しかし、逃した報酬を前に、新たな脅威が立ち塞がる! 叩きのめせ、英雄王! 剛・気刃斬りよ、兜を割れ!
《英雄王セイハク》
「迷宮のプリズナー」
FINAL STAGE 承認!
『「蟹」:これが勝利の鍵だ!』
「あ、セイハクくん、おはよ~」
「お、お早う。……りんご飴、1個くれるか?」
「いいよ~」
今日も今日とて、りんご飴を買う。コミツの笑顔を見る為に。
……よぉ、俺だ、まだまだハンター見習いのセイハクだ。
前回はせっかく狩ったクシャルダオラを何処かの誰かに横取りされたせいで、結局クエストは失敗に終わり、ミノトさんへの賄賂は通じませんでしたとさ。チャンチャン♪
ふざけるなよ、貴様ァアアアアアッ!
何処の誰かは知らんけど、絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛!
――――――まぁ、それはそれとしてだ。
「クエスト下さ~い」
「おや、コミツちゃんを物に出来なかったセイハクくんではないですか。クエストに精を出すのも良いですが、家の手伝いはどうしたんです?」
「げぶはぁあああ!」
ミノトさんの意地悪ぅっ!
「……いえ、真面目な話、貴方はまだ子供なんですよ? 青春の燃やし方は少しは考えるべきです。どうせ玉砕するでしょうし」
「追い打ちを掛けないで……」
ホントにこの人、ヒノエさん以外には辛辣だな。クールって言うか、ツンドラなのよ。誰か助けて。
「コミツちゃんの事を想うなら、尚の事ですよ」
「………………」
それを言われると弱いんだよね。
コミツの両親は居ない。何年も前に行方不明になっているのだが、おそらくは生きていないだろう。この世界ではよくある事だし、そこに奇跡や偶然など有り得ないのである。
だから、俺の親も、里の皆も、彼女の事を娘のように可愛がっている。コミツは謂わば、カムラの里のマスコットなのだ。茶屋の看板娘はヨモギちゃんね。あの子も面白い子だよなぁ。ヘビィボウガンを持つと人が変わるけど。トリガーハッピー過ぎる……。
「まぁ、良いでしょう。強さとは、全ての男の子が憧れる物ですからね。では、こちらなど如何ですか?」
はぁ、と一息吐いた後、ミノトさんはクエストを渡してくれた。流石は受付嬢、ハンターを慮ってくれて嬉しいです、ハイ。
さーて、今回のクエストは何かな~?
●クエスト名:【夜の湿地で化かし合い】
●クエスト内容:オオナズチ1体の討伐
●クエスト報酬:コミツちゃんとのデートチケット1枚
「アヴォオオオオオンッ!」
「男は皆ジンオウガですね」
何と言われようと、俺はこのクエストを成功させてみせるぞ。前回の雪辱を果たす為にも、必ず勝つ!
……でも、同じミスは繰り返したくないから、現地の“新鮮な
◆◆◆◆◆◆
「水没林」。
元は完全に水没した「沼」と言った方が正しい有様の土地だったが、後に気候の変化や地殻変動により水が引き、昨今は陸地の方が多くなった、若干名前負けしているフィールドである。
だが、陸地が増えたと言っても元来は水浸しだった上に、岩場以外は複雑に絡まり合った木の根に泥が固着しただけの“見た目だけ”の足場なので、歩き心地は最悪と言っていい。穴とか掘ったら雁字搦めになりそう。やらないけど。
さらに、水辺に棲むモンスターが多い為、必然的に水属性やられ状態に為り易くなる。そうなると体力がガンガン削られるので、早急に回復したいところ。逆にモンスターを操竜で水属性やられにし易いという事でもあるから、ようは頭の使い方次第だろう。ついでにコロガシ系統で雷どころか、氷属性やられに出来るし。何なんだろう、このフィールドは。
そんな鬱蒼としたジャングルに、俺は来ている。何時もの半纏姿で。正直蒸し暑いし、汚すと母ちゃんから怒られるけど、これしか持ってないから仕方ない。当たらなければどうという事は無いのだよ。
さーて、早速オオナズチに会いに行く……前に、ちょっと寄り道しよう。「エリア4」か「エリア8」の高台……いや、「エリア2」のピラミッド辺りに居るかなー?
「おーい、クスネさん、居るかーい?」
『おー、セイハクかぬー。何だぬー?』
そうして一声叫びをしてみれば、デスギア装備のメラルーが顔を出した。髑髏の仮面が左眼孔周辺しか残っていない、独特な仕様だ。
彼女はクスネ。世界を股に掛ける大泥棒(自称)である。実際は金にガメついコソ泥だが。ついでに怠惰でドライという割とどうしようもない奴だ。
ただし、実は歴戦のニャンターでもあり、滅茶苦茶強かったりもする。その実力は単騎で超大型の古龍を狩る程であり、界隈では“命をくすね取る死神”なる異名で畏れられているんだとか。何それ普通に怖い……。
そんな普段と臨戦時のギャップが凄まじいクスネさんだが、世界中を旅している関係上、様々な情報に詳しく、報酬さえ渡せば結構色々と教えてくれる。
「……今現在のモンスターの配置と、動向を教えて下さい。このクエストは失敗したくないんですよー」
『お前さては、またミノトの用意した餌に釣られたぬー? まぁいいさぬー。だが、情報量はちゃんとあるんだろうぬー?』
「こちらの「炎龍の宝玉」3セットなど如何でしょう?」
『何で宝玉をそんなに持ってるんだぬー』
「この前倒したテオ・テスカトルから取れました」
『サラッと古龍を斃すなぬー。それも普段着でー』
「ハッハッハッハッ、褒めても龍宝玉しか出ませんよ」
ちなみに、これはクシャルダオラが落として逝きました。ほら、昼なのに星が瞬いてる。きっとあれが彼の魂なのね。
『――――――とりあえず、今の所は流れのオオナズチが「エリア13」に陣取ってるくらいで、後はジュラトドスとアンジャナフがうろついてる感じだぬー。ああ、それと最近、ルドロスたちのリーダーが挿げ替わったみたいだぬー』
「へぇ、ロアルドロスが代替わりしたのか」
人気スポットだから、入れ替わりも激しんだよね、水没林のモンスターって。
『……ただ、最近ここらじゃ見掛けないモンスターも居るみたいだから、そこは気を付けるぬー』
「見掛けないモンスター?」
『「ダイミョウザザミ」だぬー』
「ダイミョウザザミ……」
確か、主に密林や原生林に棲んでる、甲殻種のモンスターだっけか。何があったのか知らんけど、よくもまぁ、こんな極東の僻地まで来たもんだよ。
『他にも未確定の奴が居るから、くれぐれも油断するなぬー。お前の恰好じゃ、一発でお陀仏だろうからぬー』
「当たらなきゃ良いんですよ、当たらなきゃ。それじゃあ、ありがとうございます。また機会があれば会いましょう」
『おー、精々頑張るぬー』
そう言って、クスネさんはピラミッドを翔蟲で警戒に登って行ってしまった。カムラ人みたいな事しないでくれます?
まぁ良いや。クエスト用紙には乗っていない、貴重な情報が手に入ったんだ。クスネさんの言う通り、油断せずに行こう。
『プキャアアアアアッ!』
「……とか何とか言ってたら、早速お出ましかよ」
そして、この有様である。何で少しエリア移動しただけでかち合うんだよ。
『お、ご主人。難しい話は終わったかニャ……って、何じゃこりゃー!?』『ガヴォン!?』
「貴様ら今まで何処に行ってやがった」
ええい、あまりにも突発的だが、仕方ない。やぁってやるぜぇ!
『プキャキャキャァッ!』
「蟹の癖に前へ歩くな!」
と、早くもダイミョウザザミが攻めて来た。
ダイミョウザザミは別名が「盾蟹」とあるように、赤い蟹のような姿をしたモンスターで、盾の如く肥大化した鋏が特徴である。この鋏は最強の盾であると同時に矛でもあり、ガッチリとガードを固めつつ、隙を見てカウンターを狙って来るなど、割とテクニカルな攻撃を仕掛けて来る。その上、妙に軽快で前歩きも出来るなど、見た目よりもアグレッシブなモンスターだ。
また、最大の弱点と言える背面の軟らかい腹部を「ヤド(という名のモノブロスの頭骨)」で覆い隠しており、背後に回り込む敵に対する盾となるだけでなく、質量攻撃としても利用される。何処まで行っても矛盾した奴である。更には泡状の水ブレスで飛び道具も完備していて、遠近共に隙が無い。
だが、ガードが固く、軽快で隙の少ない攻撃が繰り出せるという事は、操竜した時には頼もしい味方となる事も意味している。是非ともオオナズチ狩りに役立てたいところ。
「無駄無駄無駄ァ!」
『ギチチチチ……!』
とりあえず、前歩きからの鋏ぶん回し、蟹歩き水ブレスを全て見切り、操竜待機状態にする隙を伺う。
『アシナンボン!』
「キェアアアッシャベッタァアアア! ……えっと、蟹だから8本?」
『チィガーヴッ!』
「Dethヨネー!」
誤答が死に直結するのはデスゲーム過ぎるやろ。
「……とうっ!」
『ギュキュキュキュ……ッ!』
よし、蟹問答付きの降竜拳を文字通りに斬り抜けた、今がチャンス――――――、
「……緊急回避ィ!」
何か嫌な予感がして飛んでみれば、
『トルゥウパァアアアアッ!』
何時の間にか背後に「ショウグンギザミ」が居て、辻斬りアタックをかましてきた。忍者じゃないのに汚い!
つーか、何でショウグンギザミが居るんだよ!?
ショウグンギザミと言えば、ダイミョウザザミと対を成す「鎌蟹」で、その名が示す通り、鋏が死神のような鎌となった、青い蟹型モンスターだ。この鎌に斬られると“裂傷状態”になってしまい、事ある毎に体力を削られるエグイ傷を刻み込まれる破目になる。
まぁ、ハンターは皆モンスターなので、少し動かないだけで勝手に治ったりするんだけど。
余談だが、ダイミョウザザミがモノブロスの頭骨を背負うのに対して、ショウグンギザミはグラビモスの頭骨を背負いたがる。ダイミョウザザミはヤドも武器に使うが、ショウグンギザミは完全な鎧として纏っている為、用途に合わせて選んでいるのだろう。
『カニカマオイシイ!?』
「お前も喋んのかよ!? つーか、お前は鎌蟹だろ!?」
『イグザクトリー!』
「正答なら何で斬り掛かってくんだよ!?」
どういう、事なの……?
『頑張れ、ご主人♪ シンメトリカル・ダンシングニャ♪』『ワンワン!』
「お前ら死ねよや! 今すぐ鎧を裂かれて矛ごと砕けろ!」
どいつもこいつも好き勝手のやりたい放題しやがって。何がシンメトリカル・ダンシングだ。鯖折りにしてドッキングしたろか、貴様ら。
しかし、嫌な状況になっちまったな。操竜でお手軽に済ませようかとも思ったけど、流石に蟹が2匹は辛い。ここは一旦退くべきか?
「……ん?」
あれ、何か急に靄が掛かって……まさか!?
『……ペロリ』
「何でだよぉおおおおっ!」
騒ぎを聞き付けて来たのか、オオナズチまでもが姿を現した。
『ペェエッ!』
「きたねぇ!」
そして、早速口から毒液の塊を吐いてくる。
オオナズチと言えば、「霞龍」という別名の通り、霧を撒いて姿を霞ませる能力が有名だが、毒を吐く事でも知られている。その威力は凄まじく、かの紫毒姫にも匹敵する超猛毒であり、フロギィやプケプケの物とは比べ物にならない。攻撃事態のダメージも相俟って、食らった時点でアウトと言っていいだろう。
『ヘイガニ!』『シザリガー!』
その為には、この2蟹が明らかに邪魔なのだが。ええい、仕方ない!
「お前は動くな!」『シビレガニィー!?』
という事で、先ずは意外とアグレッシブなダイミョウザザミを音爆弾で怯ませつつシビレ罠で拘束。
「ギザミの力、お借りします!」『カニザンマイィー!?』
その隙にショウグンギザミを操竜待機状態にして、ライド・オン。オオナズチに嗾けた。
「食らいやがれ! 無限X編攻撃!」『チョッキンナーッ!』
『ホォオオン!?』
ショウグンギザミは大技こそ隙が多いが、こうしてちょこちょこ斬り付けるだけなら、絶え間なくダメージを与える事が出来る。最初は小技で嵌めて、態勢が整ったら一気に攻める。格闘技の基本だね。
『ショァァァ……ホァアヴォッ!』
『「あばばばばば!?」』
だが、相手は古龍種。持ち前のタフネスで無理矢理反撃して来た。狂ったように毒ブレス吐くの止めろ。
とは言え、毒を食らうのはギザミだし、大技の後に隙が生まれるのは向こうも同じ。こっちの大技も決めたらぁ!
「死ねよやぁっ!」『カニバーサミ!』
『ホァアアァッ!?』
よし、ダウンしたな。お前はもう用済みだ、ギザミぃ!
「落とし穴!」『カニィー!』
なので、落とし穴で封印しておく。
「次はお前だぁ! ザザミの力もお借りします!」『ランページ!?』
さらに、シビレ罠を抜け出したばかりのダイミョウザザミにライド・オン。今度は無限
「やーっておしまい!」『キェエエエイ!』
『ホヴォオオァンッ!』
そらそらそらそらァ!
「最後はお前なんだよぉ!」『カーニバル!』『ホヒャァ!?』
だが、大技はしてやらない。このままオオナズチに乗り換えて、エリア移動するんだよぉ!
「壁にキスしてなぁ!」『コァッ……!』
そして、比較的広くて戦い易いエリア1で壁ドンをかましてダウンさせ、猛ラッシュを掛ける。こういう搦め手を使う奴は、好きにさせちゃいけないからな。イニシアチブは、俺が握る!
『ヒャッハァッ!』
「タフだなお前!?」
しかし、オオナズチはタフだった。あれだけボコボコにされたのに、まだそんなに暴れる元気があんのかよ。
『ホァタァ!』「岩ァーク!」
オオナズチが尻尾をビターンとして飛ばしてきた大岩を、見切り居合で迎撃する。
「……しまった!」
だが、そのせいでオオナズチの透明化を許してしまった。
――――――ゾワッ!
「うぉおおおっ! 拾禄ノ型「十六夜」!」『ホォオオン!?』
一瞬だけ嫌な予感がしたので、殆ど勘でカウンターしたら、成功した。後ろから嘗め回そうとすな!
『ゴバァアアアアアアアアアアッ!』
「跳んで飛んでフライ☆アウェイ!」
さらに、横薙ぎの毒ブレスも吐き散らかしてきたけど、それも翔蟲で回避。今度はこっちが背後に回り込んで、
「これで終わりだぁっ!」
『ポギャァアアアアッ!』
居合抜刀、アルティメットな剛・気刃斬りで、下がっていたオオナズチの頭を叩き割り、ようやく仕留める事が出来た。疲れた……非常に疲れたが、
「デートじゃあああああああああ!」
『良かったニャー』『キャンキャン』
得られた物も、大きかった。これで勝つるぞぉっ!
◆オオナズチ
古龍目霞龍下目ナズチ科に属するドス古龍種の1体。別名は「霞龍」、異名は「古の幻影」。
カメレオン+ドラゴンという不思議な形態の古龍で、見た目とは裏腹に馬鹿硬い紫色の鱗と団扇状の扁平な尻尾を持つ。その外見通り、湿潤な環境を好む。食性は不明だが、たぶん雑食。ハンターの持ち物やヒトダマドリの花粉を長い舌で盗む事も有るが、これは継戦能力を低下させる為であり、別に食べる訳ではない。
鱗は色素細胞となっており、普段こそ紫色だが、背景に合わせて自在に色を変化させる事が出来る。
さらに、角や尻尾から電磁場を発生させる事で光を屈折させる事が可能で、鱗の色素変化と組み合わせて、自らの姿を晦ませる特殊能力を持つ。湿度が高いと精度が上昇する為、自ら霧状のブレスを散布する事から、霞龍とも呼ばれる。
また、体内で猛毒を生成する能力も持ち合わせており、霧隠れで敵の背後を取り、毒を浴びせて弱らせる戦闘を得意としている。
まさに暗殺者のようなスキルをこれでもかと持っているが、三竦みの関係にあるクシャルダオラやテオ・テスカトルと異なり非常に大人しく、こちらから手を出さなければ、危険性は無いに等しい。縄張りを荒らされれば話は別だが。