英雄王セイハク   作:ディヴァ子

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勇気ある英雄諸君に、最新の情報をお届けしよう!

暴走する深雪の冰龍、イヴェルカーナ! 通りすがりのクスネたちと共に、世界を凍て付かせる古龍を打倒せよ! その胸に秘める、憤りを刃に変えて!

《英雄王セイハク》

「DRAGON」

FINAL STAGE 承認!

『「クスネ」:これが勝利の鍵だ!』


DRAGON

 前回までのあらすじ!

 苦労に苦労を重ねて得た、コミツとのデートは仕組まれた物だった!

 何故かウツシ教官とアヤメさんを加えた、寒冷群島でのダブルデートとなるも、寒空の向こうに龍識船を襲撃する古龍の姿を目撃してしまう!

 このままでは危険が危ない、立ち上がれセイハク!

 

「……という事で、共闘してくれませんか、クスネさん」

『いや、どういう事だぬー?』

「それは俺が聞きたい」

 

 誰か助けて。お願いだから。

 具体的に言うと、寒冷群島に引っ越して来た、“命をくすね取る死神”こと、“世界を股に掛ける大コソ泥”クスネさん。報酬はタンマリあるからさ。それに採集場を荒らされるのは、そっちも困るでしょ?

 

『――――――色々言いたい事はあるが、とりあえず寒冷群島に古龍がやって来そうなんだぬ?』

「そういう事です」

『報酬は?』

「今回の古龍の素材、全部持って行って良いですよ」

『うぬぬぬー』

「ついでに前に採れた古龍の大宝玉もあげます」

『良いだろう。少しばかり手伝ってやるぬー』

「心強い限りですよ、クスネさん」

 

 交渉成立ってね。

 

『……ちなみに、古龍の大宝玉なんて、どっから持って来たぬ?』

「この前斃したオオナズチから出て来ました」

『マスターランクの個体だったんかーい』

 

 本当にそれな。勘弁してよ、マジで。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 そんなこんなで、オトモンたちに跨り、降臨予測地点まで移動する俺たち。今回は完全にデートのつもりであり、真実を知っても尚諦めが付かなかった為、ギャレオンたちを連れて来ていないので、非常に有難い。

 ちなみに、クスネさんのオトモンは2匹で、1体はギルドでは未発見扱いな“クルルヤック亜種”の「ヤックル」と、もう1体はお化けガーグァこと“グラガグァ”の「ガアラ」だ。

 クルルヤック亜種は主に源泉の湧く山岳地帯に棲んでいるようで、原種よりも慎重かつ狡猾な性格をしており、基本的に人前には出て来ないらしい。爪や嘴に硫黄由来の毒を持ち、不意打ちで敵を弱らせてから、武器の岩などで甚振るという、割と陰湿な戦い方をするのが特徴である。生態的な立場も完全な捕食者で、卵を食べる事もあるが、それは親を殴り殺した後のデザート感覚でしか頂かないという。

 もう一方のグラガグァは発生条件が極めて特殊であり、殆ど幻の存在と言われている。何せ活性化した超電雷光虫を幾度も取り入れた、選ばれしガーグァにしか至れない棘の道だ。天敵であるジンオウガに正面切って勝てる筈もないので、ダウンした隙にハンターや大型モンスターの目を盗んで超電雷光虫を摂食出来る知恵と度胸がなければ始まらない。そうした苦難を乗り越え、どうにかこうにか成長したグランガァは、無尽蔵の体力と強力な雷ブレスを吐く、恐ろしいモンスターに化ける。そのタフネスとパワーはマガイマガドですら音を上げる程で、ある意味こいつこそ本当の化け物である。

 そんな奴らを従えるクスネさんは正真正銘の怪物であり、その彼女たちが味方というのは、とても心強い。古龍が相手でも負ける気がしないぜ。

 

『コォォォォ……!』

 

 おっと、ようやくお出ましか。

 

「神々しい見た目してんなー」

 

 こうしてハッキリ見据えると、本当にふつくしい。

 基本的な体形はクシャルダオラに似ているが、如何にもドラゴンと言った姿のあちらと違い、嘴状の口や羽毛のような甲殻など、何処か鳥類(特に猛禽類)を組み合わせた、スタイリッシュな容姿をしている。

 さらに、所々が蒼く染まった深雪色の鎧で全身が覆われており、鋭角的なシルエットと併せて、非常にカッコいい。体格もクシャルダオラやテオ・テスカトルよりも大柄(約25メートル)で、まさに大怪獣と呼ぶに相応しい古龍と言えるだろう。

 見るからに氷属性を操りそうだが、実際に甲殻の隙間から冷気が溢れ出ているので、俺の予想は多分当たっている。この見た目で炎を吐いて来たら詐欺だと叫びたい。

 

『こいつは冰龍「イヴェルカーナ」。新大陸で目撃例のある、氷属性の専門家だぬー』

 

 あ、やっぱり氷属性の使い手なのね。

 と言うか、わざわざ新大陸から来たのか、こいつ。何で?

 

『知らんぬー。ともかく、来たなら斃すまでだぬー』

「それもそうですね」

『クォァアアアッ!』

 

 俺たちが構えると、イヴェルカーナも宣戦の咆哮を上げた。狩猟開始だ。

 

『コォォォオオオオッ!』

『散開!』「了解です!」

 

 早速イヴェルカーナが氷ブレスを放って来たので、ばらけて回避する。成り行きでクスネさんとヤックル、俺とガアラの2手に分かれる事になったが、このままやるしかないだろう。古龍は待ってくれないからな。

 

『カォオオオオッ!』

 

 ほら、突進して来た!

 骨格がドス古龍だし、何より体形がクシャルダオラに似た鎌首をもたげるタイプだから、絶対に突っ込んで来ると思った。

 

『コァアアアォッ!』

 

 そして、急停止からの振り向き様に薙ぎ払い氷ブレス。やはり動きがクシャルダオラに似ている。肉弾戦よりも遠距離攻撃を得意としているらしい。

 ただし、全く不得手という訳でもなく、槍のように尖った尻尾で突き刺したり、翼で薙ぎ払って来たりする。四肢は細めなので、翼と尻尾を活かして敵を引き剥がしつつ、ブレスで止めを刺すスタイルのようである。

 しかし、全体的に動きが大振りで分かり易く、尻尾にさえ気を付ければ、そこまで苦労はしない気がする。事実、さっきから見切りや桜花鉄蟲糸気刃斬が上手く決まっているし、動きをよく見ていれば、手痛いダメージを受ける事はないだろう。

 まぁ、俺は防具を着ていないので、食らったらどんな攻撃でもアウトなのだが……。

 

「おらぁっ! 滅鬼刃、弐ノ型「既朔」! そして弐弐ノ型「二余月」からの拾壱ノ型「余月」!」

『クォアアアッ!?』

 

 だが、当たらなければ、どうという事も無いのだよ!

 翼の薙ぎ払いを見切りつつ、鋭く踏み込んで顎を下から斬り上げ、頭に刃を振り下ろす。やはりドス古龍骨格、頭部がやわやわだな。

 

『くたばれ』『コカカカカッ!』

『クゥゥゥ……!』

 

 さらに、イヴェルカーナが立ち直る前に、鬼人化【獣】状態のクスネさんと武器を抱えたヤックルの援護攻撃がヒット。ダブルネコサイスによる鬼人空舞からの螺旋斬が唸り、氷塊のジャンピングプレスが炸裂する。氷はまだしも龍属性は通りが良いし、そもそもモンスターの靭力で放たれる一撃は単純に威力が高い。実際に食らったイヴェルカーナもダウンこそしていないが、一瞬怯んでいはいる。

 

『――――――バヴォオオオオオッ!』

『クォアッ!?』

「怖っ……!」

 

 そして、晒した隙を見逃さず、ガアラが口から極太ブレスを浴びせ掛けた。グラガグァがそういう奴だって事は知っていたけど、やっぱり生で見ると迫力が違うな。威力がもうラージャンなのよ。ヤバい、怖い。

 

『グヴゥゥゥ……!』

 

 立て続けに手痛い攻撃を受けたイヴェルカーナが、息を荒げる。古龍は疲労しないと言われているが、完全なスタミナ切れを起こさないだけで、瞬間的に息は切れるのだろう。直ぐに回復するだろうし、何よりそこまで追い込む事自体が難しいのだろうが……。

 よしよし、このまま押せ押せで行くぜ~♪

 

『コァアアアォォッ!』

「おっと、怒ったか!?」

『いや、「氷纏い状態」だぬー。こっからが奴の本領だぬー』

 

 と、高が人間とメラルー(とオトモンたち)にボコられたのが気に食わなかったのか、甲殻の隙間から膨大な冷気が溢れ出し、イヴェルカーナの姿を変貌させる。

 

『コォホォォォ……!』

 

 それは氷の鎧だった。全身に氷を纏い、冷気を漂わせる様は実にふつくしい。シルエットの変化も著しく、細身だった身体はテオ・テスカトル並みにビルドアップし、頭には氷柱の1本角が聳え立っている。樹海や密林に生息しているという、エスピナスのように立派な物だ。

 こう言った形態変化を起こす奴は、戦闘スタイルもガラリと変わる物だが、こいつはどうなのだろうか。ともかく、クスネさんの言う通り、ここからがイヴェルカーナの本領発揮なのだろう。

 さぁ、どんな攻撃を繰り出してくるのか、見せて貰おうか!

 

『カォオオオオオオッ!』

「それはヤバいですね!?」

 

 だからって、MAP兵器みたいな氷ブレスを吐くのは無しだと思うんだ。その上、隆起した氷が壁になって、視界や行く手を妨げてくるし。

 

「ハッ!」

 

 しかし、カムラの住民を舐めて貰っては困るな。外界の一般ハンターたちであれば、壁を壊して進むしかないのだろうが、俺たちには翔蟲が居る。こんな氷壁程度なら易々と飛び越えられるのさ!

 

『コォオオオォ……!』

「ヤバいねぇ!?」

 

 と調子こいていたら、思いっ切り出待ちでブレスを吐かれた。こいつ、俺たちみたいなワイヤーアクションを出来る奴と戦った事があるのか!?

 

『……クァッ!?』

「あ、危ねぇ!」『世話が焼ける奴だぬー』

 

 だが、直撃する寸前に飛んできたクスネさんに救われ、ヤックルがイヴェルカーナを怯ませてくれた。流石は死神、古龍とも戦い慣れしている。

 

『ゴァアアッ!』

『コォォォッ!?』

 

 さらに、ガアラの捨て身タックル。全体重を乗せた、自分にもダメージが入る技だが、グラガグァは元々体力自慢なので、自傷ダメージ程度で倒れる事はない。

 

『クァアアッ!』

『グヴォァっ!?』

 

 しかし、流石に古龍の反撃には踏ん張り切れないらしく、舞い上がるように体勢を立て直したイヴェルカーナの尻尾攻撃で吹っ飛ばされてしまった。空中で尻尾を叩き付け、そのまま突き出すように敵を貫く、多段ヒット技である。

 

『コォァアアアアアッ!』

『バヴォオオオオオッ!』

 

 とは言え、マガイマガドも音を上げるグラガグァがダウンする訳もなく、直ぐに起き上り、ブレス攻撃の競り合いになる。

 

『グラガァッ!』

『コァアォッ!?』

 

 しかも、ガアラが撃ち勝ってしまった。そんな馬鹿な。

 でもまぁ、どう見ても勢いはガアラの方があるから、順当な結果とも言えるが。だからって、古龍に押し勝つのが普通とは言わないけど。

 

『クォァ……!』

 

 すると、イヴェルカーナの1本角が砕け散り、大きく怯んだ末に大ダウンした。ドス古龍骨格が見せる、独特の倒れ方だ。こうなると、彼らは復活するまでに時間を有する。絶好のチャンスである。

 

「くたばりやがれ! 拾捌ノ型「居待月」からの拾ノ型「十日夜月」、給ノ型「九日月」、捌ノ型「八日月」の3連コンボだ!」

『死に晒せ』『クカカカ♪』『グラァッ!』

 

 という事で一斉攻撃。カムラ人とライダーの戦闘技術をこれでもかと込めた、壮絶なウルトラリンチがイヴェルカーナを襲う。氷の鎧が目に見えて砕けていき、もうすぐズル剥けだ。

 

『――――――クォアアアアアアッ!』

 

 だが、最後の意地なのか、氷纏を解除される前にイヴェルカーナが復活し、フラフラと舞い上がる。先程までの優雅さが微塵も感じられない、実に弱々しい飛び方である。限界が近い証拠だ。このまま逃げるつもりだろうか。

 

『……仕掛けて来るぞ! 「絶対零度(アブソリュート・ゼロ)」だ!』

「えっ!?」

 

 しかし、クスネさんの判断は違った。

 そして、その予測は的中する。

 

『カァアアアアアアッ!』

 

 ギロリと俺たちを見下ろしたイヴェルカーナが、グルリと1周するように氷ブレスを吐いて逃げ道を塞ぎ、その上で眼下の大地に極低温の冷気を垂れ流し、氷壁を次々と形成していく。

 

『ハァアアアアアォッ!』

 

 さらに、止めとばかりに巨大な氷塊を造り上げ、それを叩き付けた。衝撃で氷の壁も爆発四散し、凄まじい冰瀑の嵐が地表を走る。

 

「あ、危ねぇ……」

『だから言ったぬー』

 

 氷塊が落ちる直前に納刀して空中へ退避していなければ、キャンプではなく黄泉の国へ送られていただろう。あの飛翔は大技の予備動作だったのである。危ない所だった。

 余談だが、ガアラはシバリングで超帯電状態になった上で身体を丸めて耐え、ヤックルはそんな彼の内側に潜り込んでやり過ごした模様。グラガグァの体力高過ぎ。

 

「――――――って、あ!」

『逃げられたぬー』

 

 だが、大技の威力に目が行っている内に、イヴェルカーナを取り逃がしてしまったのだった……。




◆イヴェルカーナ

 古龍目冰龍亜目イヴェルカーナ科に属する、ドス古龍骨格の古龍種。別名は「冰龍」。
 新大陸に生息する、クシャルダオラ……というかメル・ゼナにそっくりなシルエットを持つ古龍で、冷気を操る程度の能力を持つ。尻尾の扱いに長けており、突き刺したり薙ぎ払ったりと、その使い方は多岐に渡る。とは言え、近縁種と目されるメル・ゼナと違い、あまり接近戦は得意でない模様。
 甲殻の隙間から極低温の冷気を放出するほか、口から「過冷却水」という“常温でも凍り付く”不思議な液体をブレスとして撃つ事も可能で、それらを組み合わせて有りとあらゆる物を氷結させてしまう。
 また、古龍としては珍しく“明確に縄張りを誇示する”プライド高い性格をしており、外敵は積極的に排除しようとする。
 ちなみに、今回カムラの管轄地に飛来したイヴェルカーナは、歴戦かつ新大陸の主人公たちと因縁のある個体で、ミラボレアスを討伐しに現大陸へ旅立っていた一行をしつこく追い掛け回してきた末に急襲、転落したウケツケジョーに止めを刺そうとやって来た、という事情がある。
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