I.O.P本社に出向くのは何ヶ月ぶりだろうか。
製品として生産されチェックされ……戦術人形として再設計されたのがもう相当昔に思える。
さて、移動手段はいつもどおりのバイクだ。
バイクで移動してくる人形はそうそう居ない……そもそも自走して来るとか稀。
大体は輸送されて来るものだ、本社工場でないと修理不可能なレベルにぶっ壊された人形とか……
あとはかなり大規模なアップグレードを実施する場合とか。
大凡の人形は生涯に何度あるかないかってレベルのものだ。
ぶっ壊されたら普通はデータだけ移植して新品躯体って言うもんだし。
「つーいたついた、駐輪場は……無いよねー」
まぁ無理もない、私の移動手段はくっそマイナーな移動手段だし。
普通はトラックか輸送ヘリだしね、駐輪場なんてモノは存在しない。
仕方なく駐車場の一角を借りてそこに停める。
ASSTの調整も入るから武装まで持ってこさせられている……
当然入り口でえーらい時間を食われるんだよね。
何をされるか分かったもんじゃないし正直帰りたい。
それに通信上ではおっかなくて渡せない辞令とかも飛んでくる可能性だってある。
厄ネタの宝庫と言っていいよ、クソがよぉ。
まぁ拒否ったら解雇コース入りかねないので受けるしか無いんだけどさー。
「これが持ち込み品だね?」
「そうでーす、今日精密検査予定のシーナです」
「照会するからシリアルナンバーをこれに入力してくれるかい?」
「はいはーい」
417入の武装コンテナを預けて受付、守衛さんが懇切丁寧に案内してくれるよ。
終始にこやかにしていて当たりが良いです事。
照会に使うのは人形のシリアルナンバー……これは製造時に付与されるもので正規品にしかつかない。
電脳の中に各種電子証明書と一緒に書き込まれる。
桁数がアホみたいに多いので偶然でっていうのはまずまずありえない事。
人形用の通信プロトコルで接続して速攻入力、照会も秒で終わる。
「ん、それじゃあ入っていいよ。キミは……Lゲートで検査だね」
「はーい」
Lゲートって言うと……うわ工場内でも隔離気味の所じゃねぇか。
守衛も怪訝な顔してたし……こわー、何されるんだか。
Lゲートをくぐって中に入るとうわーこれまた大人数で……
みたこと無い部品も転がっていて間違えたか?と首を傾げるレベル。
電子マップを開いて視界上にオーバーレイしてもうん、今いるのがLゲート。
普通ならここに詰まっているのは検査用のポッドなんだけどー?
「素体が来たぞー、作業にかかれー」
「ちょっと待て、素体ってどういうこっちゃ。精密検査じゃないの?」
「そんなの二の次だ」
あーくそ、騙されたのか!いやーな予感してたけどさぁ!!
わらわらと押し寄せる人形技師の連中にあっという間に拘束されてポッドの中に押し込まれた。
コイツらの持ってるIDに人形の抵抗を抑制する権限が割り振られていて抵抗出来ないんだよ!
こんなシステム作ったやつ後でぶん殴ってやるゥ!!
-警告:システム強制終了-
-メンテナンスモードに移行します-
パツンと堕ちていく私の意識……眠るのとはまた違う、切り離されていく感じ、好きになれない。
リブートされて目が覚める……まだ調整ポッドの中みたいだ。
特に液体が詰まってるわけじゃない、ロボアームで全身バッラバラにもできるってだけなんだけど。
再起動させられたってことは概ねの作業が終わったんだろうか?
「再起動完了、気分はどうだ?」
「いや、特に……なんとも」
身体の方は停止信号が入っていて動かせない……ただスペックの方は確認でき……
ん、んん?ちょっとおかしい物が見えてる気がする。
「ちょっと待て、この内部機関軍事用モデルじゃねーか」
「ん?そうだとも。キミはもう十分のPMCへのプロモーションはやった、次は正規軍向けのプロモーションが任務だ」
「聞いてないんだけどー……」
「ついさっき決まった事だ、ちょうど軍部からいくつか商品発注があってな……正式採用も狙っている」
「お前が注文したドローンも軍事グレードだ、喜べ」
喜べねーよ馬鹿野郎、どう見ても厄ネタじゃねーか。
軍向けってなると耐久性とかのテストもあるしどれだけ長い期間良好なスペックを発揮できるかが鍵になる。
つまるところ私もそういうのが求められるわけで……今でもブラックなのにさらにってか?
「今回追加搭載したのは試験運用が終わり評価段階に入った新作のジェネレーターにフォースフィールド発生装置だ」
「前者はまだ分かるとして……後者はなぜ?」
「そりゃお前にはこれから交戦距離が近いCQB戦もやってもらう予定があるからだ」
あっけらかんに言ってくれる、本来ならば搭載されることなんてありゃしない装置が入っている。
これがどれだけイリーガルな事か……まず公的機関とっ捕まりでもしたらバラバラにされる。
バレちゃまずいもんだ……出力制限もかかってないからパワー供給出来る限りはいくらでも張れる。
戦車砲の直撃も数発なら耐えれる計算だ……ただのCQB戦でそんなの必要ないだろ。
絶対に何か裏がある……口頭では説明されてないパッケージオプションも入ってるし……
うわーマジ何をさせるつもりだよI.O.Pの連中ぅ……
「追加でもっと火力が欲しいって言ってたからM82の受領も認める、持ってけ」
「……マジなにさせるつもりなん?」
おっそろしくて受け取りたくねぇー……これで何撃てっていうんだ。
クマ撃ちとかならまだ良いけどそうじゃねぇだろ……
ドローンとの連携もあるし私一人で軍隊やれって言ってんのかなぁ……
ポッドから降ろされると身体のレスポンスに驚かされるな。
これが軍事モデルスペック……元々の民生モデルスペックでも人間に負ける気しないのに。
プロモーション用とは言えこういうの作っても良いんだろうか?
試作品番号とかも割り振られてないし……うーむ。
「このドローンなんか変形するの?」
「ソイツは背中にくっついて戦術機動補助するんだ」
戦闘機型ドローン……いやーオーバースペックにも程があろう。
あとは軍事モデル御用達のレーザーとか持てば一端の軍用人形だな。
持ってる武器が旧世代の火薬武器だからギリ許されてる感あるな。
ドローンの武装もロケットだけ、誘導兵器はない。
ソフト面の更新も入ったしハッキングソフトも入ったし……私一人でやれる事増えすぎちゃう?
戦々恐々とするアップグレードが入って、ついでに精密検査も行われた。
精密検査の結果は躯体良好、各機能正常に稼働可能。
んで、帰ろうと思ったら呼び止められて今度は別な……ラボ?に連れ込まれてる。
ドアには16Labとか書かれていたと思う、詳細は不明。
情報端末とか起動しっぱなしで放ったらかしにされてるから見たい放題だが?
あれか、早速ハッキングしてみろってヤツか?
「新規プロダクト……へぇ、こんな大規模作戦が……」
「そうそう、キミにも参加してもらう予定の作戦だよ」
「……うぉ、すっげぇ隈」
コーヒーの匂いに振り向けば……そこに居たのは白衣を着たボサボサな女。
女としては良いものを持っているのに尽く残念な感じがする……
特に目元に刻まれたドギツい隈が魅力をぶっ殺していると思う。
「よっこいせ……コーヒー要る?」
「……頂きます」
どっかりとチェアーに座ると私に向き直ってことの詳細を話し始めた。
「キミには鉄血工造の主要技術者の保護任務に当ってもらうよ、ある人物の指揮下でね」
現在進行形で進んでいる作戦のバックアップとして入ることになる。
複数の人形で構成した突入部隊で鉄血工造の工場を襲撃……ってマジ?
蝶の羽ばたきが直ぐ側に