調整が終わりオフを言い渡された私はI.O.P工場内をブラブラ歩いていた。
今日一日は丁度いいし工場見学しておこうかなと……
人形工場を見学するなんて中々出来るものじゃない。
首から見学許可証をぶら下げてあっちへこっちへ……ちょっとの郷愁に駆られるな。
私が100%自然由来の身体で男だった頃もこんな工場のイチ作業員だった。
とある自動車メーカーのエンジン組み立てエンジニア……その中でも栄えあるマイスター。
……完全機械化された製造工程を眺めながらぼんやりと思い出す。
今は銃で命を刈り取る仕事をしている……元々のこういう工場員に戻りたいのだろうか?
誰かの役に立つ、自分が組み上げたエンジンが搭載された車が誰かを笑顔にしている。
そういう誇りある仕事に……戻りたいのだろうか?
この胸に宿っている哀愁とも言える感情は……今更戻れるわけはないのにね。
人形の製造過程を見るのは中々興味深い。
元々こういう工場の製造過程を見るのは好きな部類だった。
というかメカフェチな所があったんだろうな、メカの摺動部を見るのが大好きだった。
せっせと材料を運び込み製造ラインにセットしていくマシンアーム。
金属製と思っていたフレームは混合素材だな、接合部分とか強度が必要な部分は金属。
撓り等が必要な部分はカーボンとグラスファイバー……金属はなんだろう?
黒くなってるからカーボン加工はされてそうだな。
材料を投入され機械から出来上がっていく骨格はまんま人間のソレだ。
ベルトコンベアに載せられ流れていく機械製品な人骨達。
組立工程に入り……四肢が組み上がっていくな、両手両足。
骨と骨の間に駆動用のモーターが取り付けられ各種配線が……
こうして組み上がっていく所を見ると感慨深いね。
この製造ラインで作っているのは最低ランクの人形素体。
ダミーリンク用の人形らしい。最低ランクでこの骨格か……
金がかかってるなと思うんだが金属のランクとかが違うんだろうか。
それとも量産効果でなんだろうか?まぁそんなのは人形になった私が気にすることではないな。
組み上がった骨格はさらに別な製造ラインに流れていく。
ほほー、次の過程で各種センサーのアセンブリを装着して一個の製品とするのね。
細かい所は見れないな、まぁ当然か。そこを見せたらパクられかねないし。
細かい部品をつけた後は外皮の装着か、外皮は……これは低品質のシリコンだな。
肌触りもべったりとするし定期的にベビーパウダーとかでメンテしないと汚れまくるヤツ。
あぁ流石にコーティングはするんだね。それでガシガシ使ってもイイようにしてるのね。
組み上がったダミー人形は最後の最後、外装が抜かれた状態で保存されていく。
リンク先に合わせてその辺を合わせていくんだろうね。
「興味深かった……ただほぼ全自動化されてるから職にありつけそうではないね」
オートメーション化がすばらしいからほぼ人手が必要ない。
この工場で働くっていったら……設計とかそういうのだろうな。
工場内ではさらに製造が終わった人形の稼働チェックが行われていた。
できたての戦術人形は……ふむ中々な感じ。
検査ブースで精密な出荷前検査を受けているのは二体の人形。
片方は私と同じような髪色をした人形……与えられている服が軍隊チックだな。
もう片方もまぁ軍隊チックだが髪色が奇抜だねぇ、緑ときた。
胸もまたデッカイのなんの……勝手に親近感は持っておこう。
「……へぇ」
ASSTでマッチングしたのがHK416とG28か。
私の417とかなり縁が深い銃だ……416の方は私と顔立ちとかも似てたりするから……奇妙な縁だこと。
あぁもしかして……今度の鉄血工造の襲撃作戦の人形だろうか?
エリートAR……私とは違う華々しい街道を往く人形。
見下ろす私の顔は自分で分かるくらいにはグシャリと歪んでいた。
居た堪れなくなって工場から飛び出すくらいには……やってられなくなってはいた。
似た顔、似た銃にマッチした人形がエリート街道約束されて私は汚れ仕事だ。
酒でも飲まないとやってられないってね。
ふらふらと飛び出した街はたしかに治安が良さそうだ。
舗装1つ見ても荒れた様子が無い。行き交う電動自転車も洗練されたモノだ。
人間だってそこそこ見る……まぁその内何人が人形なのかって所だけどね。
ショッピングしようにもセーフハウスに戻れないんだし買ってもね……
あ、一応酒飲んでも良いかはペルシカに確認しておこう……メッセージを飛ばしてっと。
人形の駆動機関的にアルコールで不具合を起こす場合があるらしいし。
食物からエネルギーを抽出する内部機関だからね。
『そういえば耐アルコール性能を確認してなかったね、丁度いいから飲んでくると良いよ』
仕事的な意味で止められると思ったけれども意外な事にGOサイン。
というかアルコールとかのテストしてねーのかよ。
近場のリカーショップはどこだろう?
「あーもう、なんでああいうのが目に入っちゃうかな」
治安がイイんじゃなかったのか?
路地裏に連れ込まれていく女性が見えたじゃないか。
眉間を揉みながら……見捨てるのは胸糞悪いしで私もその路地裏に入り込んでいく。
ほーらほら聞こえてきたビリビリと衣服を破く音。
護身用のハンドガンも置いてきてるしまーたCQCプログラムに頼る事になるな。
「お楽しみだねー、違法行為じゃなければよかったけど」
「「あァ?」」
まぁそこそこ筋肉質な男2人組か。女性が抵抗するのは辛いかな。
民生人形でもちょっとつらいか、自重で抵抗出来なくもない?わかんね。
私が声掛けてみれば怪訝そうな顔してこっちを振り返った。
女性は……うーん、顔がけっこう芋っぽいな、田舎から都会に来た新入社員とか?
いや違うな、社員証がぶら下がっている……新規に製造された戦術人形だな。
銀髪にパープルのメッシュ、洒落てるじゃん。
「このアイドルとちょっとお楽しみって所だったけどよォ……コイツも食っちまうか」
「良いねぇ」
アイドル?あぁ確かに着ている服も洒落てるしそういうお仕事から転向した感じか。
性能がいい人形はそういう転職も出来るからねぇ……アイドルからって言うのはよく分からんけどさ。
で治安が良いハズのI.O.Pのお膝元でファンにレイプ未遂か……不運だねぇ。
私までまとめてブチ犯そうって算段みたいだけど……
「へへ、後ろががら空きだぜ」
「ッ!」
おっとイライラしていて警戒が疎かになってたか。
戦場じゃなくて良かった。なるほど真っ黒の衣服で隠れてやがったか。
複数人で計画的にやってるね……無遠慮に胸をむにむに揉んでくれる。
こういう目に遭うと必ずと胸を揉まれるなぁ……あ、ホックが外れたな。
「あちゃぁー流石にこりゃマズイんじゃ……なんか巻き込んでごめんねー」
「……」
相手は特に武装しているわけじゃないな。
少し経験を詰んだ戦術人形なら何ら問題なく制圧デキそうだが……
いや、手元にあるな、デリンジャー?ほぉーそんなちんまいのを良く掘り出したモノだ。
感心するけどそれで女の子を強引に抱こうっていうのは褒められたものじゃない。
「おいおいコイツ見た目からして痴女だけどよぉ、フロントホックって誘ってんのか?」
「後悔するなよ、野郎共」
まぁ私の格好はジャパニーズカルチャーのアメスク衣装みたいなものだ。
胸元は相当開けていてブラジャーだって見えている。
痴女と言われてもおかしくない格好だし誘っていると言われても仕方ないよ?
ただそれを理由に強引に胸を揉まれてその上ブラを剥ぎ取られるなんてのはねぇ……
当然ブラウスからこぼれ落ちてヤロウと新米の眼の前にポロリといく。
目がそっちに奪われているスキにまずは背後の男の首を尻尾で締め上げる。
「グゲッ……ガガッ……!」
「ふんっ」
「テメぇ……」
まぁ適当に圧迫したら気絶したので放ったらかしにしてのっしのっしと歩み寄る。
相手の武器はたった二発装填のちっこいポークビッツ、恐るに足らず。
可愛い顔で睨んでも怖かぁないだろうけど……睨みながら一歩一歩詰める。
「ヤッちまえ!どうせコイツ人形だ!!」
トリガーが引かれるが銃口は……全然定まってないし私に対して当たる方向じゃない。
人形なのは正解だけど、なおさら良く狙えよ。
発砲音と同時に身を屈める、明後日の方向にすっ飛んでいく鉛玉。
男の顔が驚愕一色になるのを見て嘲笑って……
「う、うわぁが!?」
「ダニー!?うぉぼ……」
「うぇちょ、顔はタンマー!?」
ミリタリーグレードの脚力に物を言わせて大幅に跳躍して飛び蹴り。
人形とっ捕まえてるヤツは振り向いたら……胸が思いっきりヒットしてなぎ倒しちゃった。
……まぁ巻き添えにしちゃったけど人形は無事っぽそうね。
「……立てる?」
「うぇー……なんとか、サンキュ!助かったー……あ、そだ助けてもらったついでに一緒に自撮り良い?」
……大物になるな、コイツ。
肝が据わってること据わってること……
Q:イライラしたら注意力散漫になるの?
A:人形によると思います
Q:酒飲ませていいん?
A:416系譜ですよ?分かってますよネ?
Q:コイツいっつも胸揉まれてるな
A:まぁそっすね、そういう不運を持っているのじゃ