雇われ掃除人形417   作:ムメイ

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その17

至上稀に見る醜態を晒した。

この身体、アホみたいにアルコール耐性がない。

対策を考えるとかペルシカは言ってたが……正直な所絶望的らしい。

私の身体を構成している生体部品がそもアルコール分解とかを苦手としているらしい。

簡単に言えば毒に非常に弱い、麻痺毒も作用する。

完全に麻痺ることは無いけれどもパフォーマンスは一気に落ちる。

 

「とりあえずソイツに酒を飲ませるのはやめろ」

「仰る通りです」

 

さらに言えば私達の電脳は意図的に酔っぱらえるように設計されている。

私の電脳は元々は人間の物だ、人間が酔っ払いたい時に酔えなけりゃ意味がない。

アルコールを検知すると意図的に思考能力が落ちるように設計されている。

それ+に身体的なアルコールの弱さが加わって酷い酒癖が出たんだ。

目が醒めた時はI.O.Pのラボでこのアルコール耐性のなさをペルシカが笑っていた。

酒場で偶然見かけて回収してくれたG&K指揮官には感謝するしかない。

回収してくれなかったら私は今頃安宿かラブホでハメ潰されていた所だ。

しかもハメられたらセクサドールとしての機能がアクティベートされてしまう罠まである。

 

指揮官の顔を見てみればゴリゴリのスラブ系だな。

このI.O.Pの所在地的にありふれた顔だ。

そも新ソ連の土台はロシア連邦だからだ、バリバリのスラブ民族国家だ。

わが祖国ドイツも現在は東ドイツが統合を果たし新ソ連の仲間というべき存在。

……西ドイツはどうしたことか、精強な機械製品を作っていたと思うが。

 

「それでそちらの指揮官が何故まだ居るの?」

「ん?俺がキミの潜入指揮を執るからだよ」

「……なるほど、ARの正規部隊とは別口?」

 

誰かの指揮下っていうのは初めてになると思うんだけど……

恩人ならまぁ素直に聞き入れられるね。

私達はおそらくは何かあった時のフェールセーフ的な所があると思う。

製造されて現在調整中のAR人形達は出来たてホヤホヤ。

実践的な経験が少ない傾向にある、ソレに対して私は先行して稼働している。

実戦経験は狙撃しかなくCQB戦はこれからって所だが……

 

「もしかしてCQB戦の依頼?」

「そう、ココ最近調子にのってウチの商品トラックを襲ってるPMCの本部を潰すんだ」

「なるほどねー……バレルとかの切り替えは?」

「ASSTの関係上ダメ、キミのASSTは20インチモデル限定だよ」

 

武器の選択はHK417かM82バレットしかない。

M37イサカを持ち込みたかったがそれは無理だしなぁ……セーフハウス内だ。

他にもWA2000とかあれば振り回しやすいけれど……フルサイズの417だとねぇ……

狭い通路では取り回しがし辛い面があるからなぁ……

 

「作戦決行日は?」

「明日、キミのオフが終わった後」

「クソがっ♥」

「笑顔で中指を立てるな、行儀悪いぞ」

 

ペシンと頭を叩かれた……フラッシュバックするのは厳格だった父が俺によくやった事。

癇癪を起こした俺を叱りながら……そうした。

……やめてくれよ、そういうのはクるんだよ。

 

「お、おう?」

「……なんでもねぇ、世話になったし言うことは聞く。作戦時はよろしくな」

「どこへ行くんだい?」

「どこだろな、当てはねぇよ……」

 

オフ2日目、今日もちょっとアンニュイだな。

 

 

あても無く歩いていると案外……子供が多いことに気がつく。

マップを見てみると納得も納得、ここは孤児院、託児所等が密集している地域だ。

公園もあって……家族連れ、保育園児達の群れ……ここだけ見ているとすごく平和だ。

大戦後荒廃して治安が激烈に悪くなっていっている一方だというのを忘れられる。

公園の中に入ればその数は増える……ベンチに腰掛けて眺めている。

 

(俺が撃ち殺した連中にもこういう家族が居たりもしたんだよな)

 

親、兄弟、子供……家族が何かしらの形であったはずだ。

俺の親もまさか電脳盗難で息子が死ぬとは思ってなかっただろうな。

幸いなのは兄や妹がしっかりと子孫を作ってくれていたことだ。

俺の直系じゃなくても……きっと今もどこかで血縁が生きてる事だろう。

……ふと気になる、かつて生きていた生活圏の現状。

WW3は大規模な核戦争になったと聞く……近くに核シェルターはなかったはずだ。

父は、母は……どうなったんだろう?

気分が気分なだけにこんな考えばかり浮かぶな。オフで助かった。

 

「ねーちゃん浮かない顔してるな」

「……ん?」

「よっと……遊ばねーの?」

「……ちょっと考え事してただけだよ、そういうキミは遊ばないの?」

「辛気くせーねーちゃん居たら遊ぶに遊べねーよ」

 

まぁ道理といえば道理だな。

少年が隣に座ってきてこっちを見上げて……チラチラと下に視線が行くな。

 

「気になる?」

「うっ……」

 

そりゃ勿論のこと私の胸に気を取られてるんだろうな。

青少年には悪影響しかないわな、ははは……はぁ。

ちょっと揺らしながら聞いてみると思いっきり顔を背けられた。

耳まで真っ赤っ赤にしちゃってまぁ……可愛らしいこと。

 

「まぁそんなのよりねーちゃんの事だよ」

「……言っても面白くないよ?ほら行った行った私もすぐどこか行くから」

 

すごく良い子なんだろうな、こっちをまっすぐ見ながら親身になろうとしている。

私が突っぱねようとしても踏み込んでくる……強引だなぁ。

 

「んーじゃあ……親族ぜーんいん死別したようなものでさ」

「うんうん……あ、もしかして」

「……察しが良いね」

 

聞き上手な子供だな、と思いつつ話し出せば止まらなくて……

私が人形であることとかそういうのは伏せつつ耳や尻尾はコスプレって事で押し通した。

子供……リックくんも同じで戦災孤児、両親と過ごした記憶はしっかりとある。

だけども核戦争の後のゴタゴタ……金銭難から親はこの地域にリックくんを預けた後消息を絶っている。

私のこの胸の中に渦巻く哀愁も分かってくれる。

もし良かったら孤児院も紹介しようかと言ってくれたが……仕事にありついているから平気と断った。

 

「シーナねーちゃんみたいなキレイなねーちゃんが来てくれたらなーって思ったりもしたんだけど」

「……キレイな上におっぱいがデカいからじゃない?」

「ぶふっ」

「クスクス……いーよ、男の子がそういうの見ちゃうの分かってるから」

 

かつては同じ男だったというのは伏せて……ニコニコと微笑んで見せる。

反応が本当に可愛い、かつての妹を見ているような気分だ。

 

「また来るから、その時はリックくんの事をもっと話してよ?」

「ん、おう!」

「あ、そうそう……色々話を聞いてくれたお礼……ね♪」

 

……らしくない、とも思う。

だが考えより身体の衝動に身を任せてしまった。

幼気な子供の頬にキスをして……ウィンク。

……いかんな、私のほうが耳まで赤くなるじゃないか。

いや、これでも抑えたほうだぞ?衝動に完全に身を任せたら抱きしめてまで……

あぁこれはなんだ?母性?うぁー……よく分からん感情だ。

 

「……思っているより、内面まで女になってるのか?」

 

どこかで男の意識があると線を引いていたハズだが……

楽しんでるだけじゃない、もっと根本から女になりつつあるのかな?

……それも良いのかもしれないな。

 

 

英気を養えたとは思えないが……精神面ではちょっと落ち着けたかな。

次の仕事、PMC掃除に向けてメンタルを整えておこう。

私一人しか行かない、それでいてCQB戦……無茶を言うもんだよ。

まぁやるしかない、やれなかったら女スナイパーなんてぺろりと喰われる。

コレまで通り仕事をきっちりこなせばいい……

 

人差し指を唇に当て……クスッと笑う。

 

私の中のギアがかちりとハマった気がする。

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