PMCアーク、それが今回殲滅する対象。
アーク自身は身の潔白を声高に宣言しているが実態はもう黒々真っ黒。
ダークマターと言って良い位には黒色無双している。
戦災孤児を死亡判定として違法組織に売り渡す、難民はとっ捕まえてバラして臓器売買。
E.L.I.D患者も同じく……そうして得た違法な金で設備を増強。
その金の膨大さ、出所不明の機械設備等から危険視されている。
他にも人間用の麻薬を製造していたりチープアタック用のRPG等を製造しているデータがある。
襲撃となれば当然ながら……真っ昼間ではなく夜中。
夜の帳が降り月まで隠れる曇りに決行……この辺りの用意がクライアントの殺意の高さが伺える。
「見事なまでにクソね」
「だがまぁ設備に頼りすぎて中身がクソ雑魚っていうデータもある、気楽にな?」
「分かってる、人形には人間はどうあがいても勝てっこないから」
幸いアークは弱小も弱小だった為この小さいコーラップス汚染地域のみが担当。
他には一切ない……コーラップス汚染から身を守る事とバケモノ相手に有効なレーザー兵器を持つことが許されている。
かなり限定的ではあるけどイチPMCに持たせるには破格の武装がある。
ただレーザー兵器は人間が扱う事は不可能。
動力と一緒になるパッケージングが必要になる、人形だったら高出力の機関がある。
ついでに言えばレーザー兵器はかなりの重量物になる。
内部構造が煩雑でかなりの電力を受ける、発熱もスゴイから強制排熱もしなきゃならん。
そのための機械構造も煩雑でとにかく大型化しやすい。
人が担げるモノではなくなる……人サイズの物に致命傷をあたえようと思えばクソデカくなる。
「設備は壊すなよ、調査する必要がある」
「分かってる、そっちは自分の身をしっかり守って隠れていてよ?」
「おう」
今回の任務では指揮官が私につく、前線帰り……名前はシコルスキーと教えてもらった。
E.L.I.D殲滅隊上がりだから前線帰りという愛称がつけられている。
強化外骨格を装着し火炎放射器とかで焼き払っていたバリバリのフロントアタッカー……
ただこの外骨格は重装甲で並のE.L.I.Dだったらなんとかなるが……って所。
対人戦闘にはまったくの不向き、機動力が最悪だし耐弾性にはすぐれない。
今回一緒に……って事にはならない、対人戦闘なんかは人形の独断場だよ。
私を運搬し、尚且つ現場指揮を執るために軽装甲機動車を持ち出してくれた。
アンティークもアンティーク、装甲車の始祖とも言えるAMD.35なんてのを引っ張り出してる。
正確にはAMD.35の車体をベースに改造した指揮車両、戦闘用のターレットなんかは外されている。
だから私も問題なく入り込めたんだよね……そうじゃなかったら私はタンクデサントしなきゃならなかった。
迷彩ネットを被せて潜伏しながら無線で私とやり取りする。
武装もしっかり持った、PMCアークの戦闘員は20名程度……生死問わず。
「作戦開始、行ってくる」
ここからは徒歩での侵入だ、監視カメラに引っ掛からないように熱光学迷彩マントを被りながら基地兼本社に近づいていく。
各種ステータスは良好、尻尾の通信アンテナも感度良好。
盗聴の危険性があるから常には繋げられないけどね。
軍事グレードにアップグレードしたおかげで電力にかなり余裕が持てる。
今まではバッテリー駆動の暗視装置……NVに頼っていた。
しかし今回は私もついにIR……熱線映像装置を使用する事に。
光源がなかろうが相手が放つ遠赤外線域で熱放射が行われる。
そいつを増幅して映像化させるって物だ、言ってしまえば物体とかをよりクッキリハッキリ見えるようにする。
特に熱放射が強いものは白く浮かび上がる……人間だったり人形だったり……
弱点としては装置自身が巨大化しやすいのと排熱が問題だ。
今回のもスコープ部分は双眼鏡だが……その他の演算等は私がやっていたりする。
「マインか……なるほどね」
IRを薦めてきた理由が分かった、たしかにこれじゃないと見落とすかも。
対人地雷が埋め込まれてる……地面に微かーに噴出しているガスが見える。
コーラップスのエネルギー放出とは出方が違う。
他にも埋め方が甘い対人地雷が頭を出している……警告的な意味合いもあるんだろう。
ギチギチにしないのは連鎖爆発なんかしたら地雷原の意味がなくなる。
それに野生動物なんかが踏みつけて起爆なんてのもありえるしね。
指揮官もその辺分かってたなら言えばいいのに……
『悪い、伝え忘れていたがそこらへん地雷原だ』
(分かってるっつの……)
微妙に抜けているな……こんなのが指揮官として役に立つのか?
第一ウェーブはとりあえず踏破できそうだ……さて、PMCアークの防衛ラインは如何ほどかな。
その後の侵入者対策というのは割りと穴だらけ。
地雷の配置はたしかにエグい事になっていたけどさ……
頑張れば登れそうな外壁に高圧電線のフェンス……電子扉。
電子扉ってのがイケないんだよね、ちょちょいと電子戦向けな人形が居たら……
「スノー、ディグアウト」
『了解』
熱光学迷彩マントは捨てて中に侵入。
電子扉は勿論の事ハッキングしてぶち破った。
スノーは私のコールサイン、ディグアウトは侵入完了の合図。
事前に決めていた暗号だ、CQB戦では不向きになるHK417だが……振り回せない訳じゃない。
腐ってもPMC、E.L.I.Dを相手取って戦っている連中の基地。
通路は広めに取られているし室内もまぁ割りと余裕が持たれている。
「はっきーんぐはっきーんぐ♪はーむれすはっきーんぐ……のっといんでんじゃー♪」
鼻歌うたいながら次は基地内部の回路にハッキングをかける。
ちょちょいとハッキング用のデバイスをくっつけて……カメラ回路の出来上がりってね。
監視カメラの位置等も映像から逆算して……ふふん?確かに大体の死角は潰してるね。
そうじゃないといけないんだろうけど……流石にE.L.I.D用のレーザー砲台には取り付けてねぇわな。
遠隔操作してるから砲台の砲身カメラはあるだろうけど。
お陰で基地のシステムとかにはアクセスできて実効支配もできそうだ。しないけど。
「戦術ネットワークに接続、アップロード……」
監視カメラの映像、位置などから敵勢力の配置を分析。
交代交代で監視している人員がいて5-5、深夜帯でデスクワーカーは全員寝ている。
戦闘員の残り10はといえば非番待機中で遊び呆けている。
監視カメラ室も視認……流石に窓はない。
『なるほどな、即応人員はたったの5か……ふむ』
「カメラ室を制圧後に寝首を掻きに行こうと思ってたけど」
『監視はある程度残しておけ、システム的に応答がなければ即アラートがなる』
「じゃあ非番組をどうにか潰す、戦闘員がたったの5とかふざけてるし」
『そうだな、遊び呆けているし……アクシデントに見舞われてもらおうか』
できるだけ暗殺していけってことね。騒がしく行くのも出来るけどそれはスマートじゃない。
カメラ回路には遠隔ダイブ出来るようにしてっと……私が通る付近では映像がループするように小細工しよう。
基地全体としては人員移動用のカーゴヘリ、大型トラック……IFVなどが揃えられている格納庫。
収容人員が寝泊まりしている大型宿舎……そして今回お掃除対象が詰まっているPMCアーク本社。
大型宿舎に近寄ると耳をつんざく悲鳴が聞こえている……アーク以外に何か居るな?
おそらくは人間を買ってる連中がここに詰まってるな……
『そいつらは後だ』
『分かってる、今スグにでもブチのめしたいだろう』
『だが今じゃない』
……ギリッと歯軋りする事で自分を抑えつけた。
行き場のない怒りはこうするしかないんだよ。
コイツら危機管理というか……色々とガバガバだな。
本社の裏口は閉じられていたが窓が思い切り開いている。
軽くピッキングしてやると簡単に開いてすんなりと入り込めた。
入り込むとむさ苦しい男の臭い、汗臭さが充満している。
こいつら風呂入ってねぇのかよ……鼻が曲がるな。
姿勢を低くして物陰に隠れながらカメラアクセス……まだ無線は繋がっている。
流石に距離があって画質はよろしくない……侵入にバレた様子もない。
馬鹿騒ぎしていた非番組はそれぞれ分かれてるな。
一番近いのは……シャワーに向かってるヤツだな。
今私が潜伏しているのが休憩室B。
奴らが馬鹿騒ぎしていたのはレクリエーションルーム。
シャワールームであれば監視カメラは無いし静かに殺せる。
CQB戦というかもうコレ暗殺ミッションだよね……
『あー……おかしいな、普通の人形だったら次どうするとか聞いてくるし止まるんだがな?』
(私が特殊な出自だからだと思うけど、まぁ慣れてくれや)
指揮官は勿論の事困惑していた。だって指示なしにトントン拍子に侵入したんだもの。
『まぁいい、侵入さえできちまえば後は暴れてもいい』
『基地を実効支配できれば外に出すことも出来なくなる』
よし、じゃあ……派手にやっても良いんだ?
まぁ……それは後のお楽しみにしておこう。
潜入してからがドンパチ開始ですわ。