雇われ掃除人形417   作:ムメイ

3 / 51
その2

基本的に私の狙撃任務は完全なソロ。

支援は望めないし具体的な狙撃ポイントなんて当然誰にも漏らしてない。

漏らす相手も居ないというのが正しいか。

 

「ぶるーんぶるーん……この辺で良いかな」

 

今回の狙撃ターゲットは3人。

新興カルト宗教のボスとその取り巻き。

その本拠地として特定されたのがこの雑多ビル。

そう、くっそ人通りのある中だから狙撃ポイント確保するのは大変よ大変。

まぁ許可とか取るわけねーし適当に空きテナントとかに侵入するのさ。

この辺はもう慣れた、こうでもしないとまともに仕事できないし。

仕事出来なきゃ私が死ぬし、だいたいカルト宗教って良いイメージないから殺るのに抵抗はない。

ターゲットが居る雑居ビルの正面ガラスを狙える高層ビルにバイクを停めて……っと。

ウェポンコンテナは取り外して持ち上がる。

肩掛けハードケースになるようには改造してるから便利便利。

今回持ち込んだのはWA2000、精度と射程が欲しかったんだよね。

専用設計で作られてるセミオートスナイパーライフルの方が精度は出る。

 

「調べりゃ出てくるあくどい商売とかねぇ、まぁ狙撃依頼が来るって事はそういう事だし」

 

基本的には残り少ない人間から金を搾取しようとかしているとんでも集団だからね。

放ったらかしにしたらタダでさえ少ない人間が更に減ってしまう。

人形がその穴埋めに回されるとか色々とマズイんだよね。

私みたいな感じで人形になっちゃうパターンもあるかもしれないけどさ。

こんなの稀だからな?

 

「ピッキングにハッキング、手慣れたもんだよねぇ……ほい、解錠っと」

 

物理的な鍵と電子ロックの合せ技な施錠が多い。

けれどもその何方も私は割りと解錠できる。

そういうパッケージオプションが入っているからだけど。

セキュリティが一流な企業はハッキングも一流ってわけですよ。

マスターキーパッケージ、当然表立っては販売されてないパッケージオプションです。

いわゆる裏オプションで他にもラインナップがあったりはするらしい。

まぁこのマスターキーパッケージは解錠に特化した物なのでガチなハッキングには使えない。

 

空きテナントにこうして侵入した私は悠々と狙撃準備に入る。

ウェポンコンテナを開けてWA2000を引っ張り出す。

今回は何発もぶっ放すものじゃないしスペアの弾薬は2セットのみ。

コンテナに格納されているのは当然ながら高倍率スコープもセット。

武装のアレコレは基本的にこのコンテナで完結させている。

WA2000用に調整されたスコープを取り付けてっと……

 

「レーザー測距……うん、距離は350m」

 

風速はあまり無かったから弾道計算はいい。

あとは銃の調整をしてしまえばすぐにでも仕事に取り掛かれる。

当然サイレンサーも取り付けて……よし、完璧かな。

とんでもないヤツはアイアンサイトで頭を打ち抜くらしいけど、私はそういうの無理なんで。

若干打ち下ろしのロケーション、アジトの応接間が良く見える。

情報によれば今日は重要会議があるらしくその会議を利用して始末しようってワケ。

 

「……ん、入ってきたね」

 

まずは偵察、双眼鏡で目測してからだ。

ターゲットの一人、資金面を一挙に受け持っているハゲ男が入ってきた。

仕立ての良いスーツを着ていて如何にも金を持っているってアピールしている。

正直嫌いなタイプ、排除するのに良心が傷まないから助かる。

電話片手に怒鳴り散らしているのが見える、おぉ怖い怖い、ハゲ頭に血管浮かんでるじゃん。

 

このビルと相手側のビルに防犯カメラとかのシステムが入ってないのが残念だなぁ。

防犯カメラにアクセスしてターゲット位置とか割り出せたら楽だったんだけどね。

 

「まぁ良いか、せっかちさんばかりで助かったよ」

 

首尾よく残りの二人も早々に揃った、偵察はもうおしまいだ。

ここから会議を始めるんだろう……おぉバイザーを降ろしたか、良いね良いね。

でもまぁそれならそれで全然良いんだけど。うっすらと見える影だけで十分。

窓を開けてからコンテナを土台にバイポッドを展開。マガジン装填、コッキングハンドルを引いて初弾を叩き込む。

スコープを覗いてから350m先、ターゲット3匹がどっかり座るオフィスを見る。

ここからは戦術人形の本領発揮、狙撃に必要な手ブレ抑えとかは完璧。

弾道計算もやったし後は……逃げられる前に、ささっと3匹の頭に鉛玉をプレゼントしたらいい。

 

すぅー……はぁー……

 

大きく深呼吸をしてから息を止める。

唯一のブレの原因だ、息を止めていられる時間は1分、まぁ余裕はあるさ。

 

パスッパスッ…パスッ

 

あちゃ、サンバイザーにちょっと血が飛び散ったな。

逃げる様子はなし、他のカルト宗教の職員にはバレてなさそう。

 

「お仕事完了かな、さてと……報告報告」

 

ココを使った痕跡を極力潰してコンテナに武器を格納してから飛び出る。

電子ロック、物理キーも再施錠してね!

 

報告の待ち合わせはたしか……うぇ、ホテルかぁ。

嫌だなー……嫌だなぁ……メチャクチャ渋面しながらバイクにコンテナを積み込んで現場を後にする。

 

数時間後、速報ニュースでカルト宗教のトップが殺害されたのが流れた。

これで仕事の信憑性もアップアップ。I.O.Pの戦術人形の性能アピールに繋がるワケですよ。

まぁ裏社会の横つながりでしかアピールされないんですけどねー。

 

 

 

報告を挙げたらホテルの電子キーを受け取った。

その部屋でクライアントから直々にお話があるって。

ホテルはまぁいわゆるビジネスホテル、豪奢ではないけれども清潔感は溢れている。

今回のクライアントはPMC事業に参入してかなり長く人間を雇っていた企業。

むさ苦しい筋肉モリモリマッチョマンが闊歩する安心感もあるがソレと同時に威圧感で市民が不必要に萎縮していた。

そこで性能トライアルとして私に色々と仕事を発注している。

まぁ私みたいなPR人形は他にも居る、それぞれ出どころが怪しいから表には出ないんだけどね。

あくまで企業がI.O.Pに持ちかけたら開示する感じ。

 

「こんばんは、417です」

「おぉ、入りたまえ……ぐふふ……」

 

指定された部屋はまぁそこそこ高層階。

オートロック付きで電子キーが無いと出入りは難しい。

室内に居たのはでっぷりと肥えたオッサン……ではなくガリガリの陰キャ君。

ただまぁ目つきがいやらしいし事あるごとに私を抱こうとアプローチしてくる。

正直めんどくさいしさっさとトンズラしたい。

営業スマイルを浮かべて室内に入るとこれ以上無くニッコニコなクライアント様。

 

「今回の仕事もパーフェクトだったよ」

「ありがとうございます、ひいてはI.O.Pの製品を導入するお考えは決まりましたか?」

「うんうん、でもまだトライアルは続くかなぁ……まだ試したい所があるし」

「はぁ……それは残念です」

 

営業スマイル+テンプレな営業をやるけどコイツ決める気ねーだろ。

決まってらぁ、最高級セクサドールの抱き心地を試したいんだろ。

目がずっと私の胸に突き刺さってんだからそうだ、そうに違いない。

いい加減I.O.Pもしびれ切らしてるしなぁ……どうしたら良いかなぁ。

童貞臭いしパイ揉み程度で満足するかな?試してみるか。

 

「試してみたいと仰言るのは、こちらの性能ですか?」

「お、おぉぉ……」

「私の出自はセクサドール、99%オーガニック素材で構成された人形ですのでこの触り心地です」

 

目の色変わったな、軽く胸に手を載せさせて説明してやると鼻の下がデレデレと伸びる。

おぉ面白い、99%オーガニック素材でのみ出せる触感と説明して……

さて、セールスはこれくらいでいいだろう、やるノルマはやった。

これでも渋るなら契約する気無しとして切るだけだろうし。

 

「き、キメた!契約する!!」

「ありがとうございます、担当も喜びます……では、狙撃屋の417は下がります。またのご依頼をお待ちしていますね」

 

ちょろいわー、おっぱい触らせるだけでコロッとマジで行きやがった。

営業スマイル浮かべたまま退出、もう二度と依頼してくんな。

セーフハウスに戻ってシャワー浴びて……それからまた任務だろうなぁ。

あーあ、だるっ……少しは私も遊びたーい。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。