雇われ掃除人形417   作:ムメイ

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その30

今私が身を寄せているスラムは結局のところ自治区と言って良い。

他所程かっちりとした法はない。明文化されている物は片手で数えるほど。

しかし空気としてある法というのはあるよね……露店エリアで喧嘩をするなとか。

暴力には暴力の応酬があるとか……スラム内でも平気で殺人が起こっている。

スラム内部で勢力を持っているギャング同士の抗争もあったりするけど……

この前私が全滅させたギャングみたいに新興のクセして調子に乗ってるヤツとかはシメられる。

特にアレは悪質だったから全滅させたんだけどね?

まぁそんなスラムの維持には外から違法性があったり後ろめたい物資を掻っ攫ってくる必要がある。

当然ながらスラム内部の人間でその仕事をするわけだけど……

 

「それで私にお鉢が回ってきたワケね?」

 

メッセージでやり取りしているのはこのスラムのボス……

必要最低限しか出てこなくてドコにひそんでいるのか謎。

知っているのは近接戦闘のプロで正規軍の仄暗い特殊部隊出身者。

大凡のスラム住人はまともにやりあっても勝てない相手。

搦手使おうにも各種耐性が強すぎて逆に返り討ちにされるとか。

あくまで何処に居るか分からないし下手に暴れようものならつぶしに来るスラムの均衡を見る安全装置的な立ち位置だ。

だからスラムを離れる訳にはいかない……新入りの私に仕事を振ってスラムに貢献してもらうって考えもあるっぽい。

いかにもアウトローな仕事……今回の仕事はPMCが運ぶ輸送トラック車列の襲撃。

私は勿論の事狙撃して車列を襲う実働部隊の援護。

護衛車両に装甲車も考えられる……となれば対物ライフルの出番だな。

 

「襲撃プランは出来上がっていて……ふぅん、移動は各自でか」

 

襲撃に参加した人員に報酬が配られる感じだ。

参加するのは事前に申し込んで襲撃プランを受領する。

受領するだけして参加しなかった場合?あるらしいけどその場合は干される。

各員に配布されるリスト型電子デバイスでそもそも戦闘区域内に居るかがバレる。

あとハッカー集団が各所の監視カメラシステムをクラックする段階で絶対に発覚する。

だから乗ったら何かしらの形で貢献しないといけない。

 

「移動手段持ってるヤツ多いのかな……現地で見てみるか」

 

私みたいに自前の脚があるヤツが多いとは思わないんだけどね。

内燃機関バイクなんて表じゃ出回らない物だし。

都市区画のエネルギー基盤としてのエンジンはあるけど……

 

 

 

輸送自体は真っ昼間に行われている。

当然襲撃部隊も発見されやすいけれども……相手は大っぴらには護衛を頼めないブツもある。

それもそのはず、近頃人気を博している宗教団体への貢物だからだ。

人形崇拝団体だっけか、人形こそが新しい人類のあり方、救世のために地上に形なした者だと崇める連中。

あとはアレか、貢ぎに貢げばそのパーソナルを人形に転生することが叶い何の不自由もない生を全うできる。

そんな謳い文句だっけか……教祖は鉄血工造の元チーフメカニック。

電子頭脳などを手掛けていた人間でその技術力はWW3勃発前の物に匹敵すると言われている。

……そんなヤツが教祖になるとは思わないんだけどねー

裏で糸を引いているのはなんか別に居そうだ。

ま、そんなカルト宗教への貢物だから遠慮なーく強奪しちゃえばいいのさ。

 

「さってと……ポジションについたから、後は潜伏しながら待つだけか」

 

今回チョイスしたのはM82バレット、弾丸は元々スラムに持ち込んだ物だ。

弾倉は8しかない、大事に使わないとな。

.50BMG弾はマシンガン用の弾、数は多く入手ルートは多数あるけれどもスラムで手に入るとは限らない。

入手ルートを確保するまでは温存しておきたかったけどねぇ……まぁ仕方ない。

アクセサリーはレーザー測距付きスコープとバイポッドのみのシンプルなスタイル。

持ち込み品は移動用のIMX330、潜伏用のギリーマント……後一丁の対装甲兵器。

進行ルートは予め割られている、情報提供元は勿論の事ハッカー共だ。

 

「さて、どんな的が出てくるか……楽しみですこと」

 

足止め部隊が派手にRPGをぶっ放したりするんだろうか?

強奪すんのには護衛をちゃっちゃと潰してからトラックを止めるのが一番だよね。

ギリーマントを被って道路横の林に潜むのはなかなか怖いねぇ……

バレたら終わり襲撃部隊に誤射しても良くない。

狙撃手の基本、1SHOT-1KILLを心がけていこう。

 

 

耳に入ってくる重く地面を蹴りつけるタイヤの音。

スコープをそちらに向けると……うん、トラックの車列。

他の襲撃メンバーは居るんだろうか?軽く見渡しても居ないな。

まぁ見渡してバレる位置に居たら襲撃もクソも無いけどさ。

 

「作戦区域に入ったな、じゃあ……ちゃちゃっとヤッちゃおうか」

 

セーフティを解除、マガジン装填、チャージハンドルを引っ張って……M82に初弾を装填。

大まかな調整はしているけど当たるかなー……まずは一発目。

先頭をリードしているこりゃまたアンティークなFiat6616装甲車か。

頭の上に戦車砲を乗っけているから対人戦闘に置いてはかなり脅威。

目測で見る限りでは搭載砲は106mmの無反動砲、装填されるのは粘着榴弾かと思われる。

ソフトターゲットが多いコッチにとっては至近弾でも致命傷になりかねないな。

 

ドゥンッ!

 

照準は装甲車の運転席付近、トリガーを引いて発射。

大きなマズルエネルギーを受けて身体を揺らしながらスコープの先に見える的を見る。

大まかな調整はしていたけれど誤差はどんなものだ……

狙った箇所より下にずれ込み着弾、装甲車の側面に穴が。

音がしたコッチに主砲が向けられる。まだ発見されてはないな。

襲撃だというのは十中八九バレた、あとはアッチを潰すかコッチが狩られるか。

ん?向こうの廃屋から何か……ぅお。

 

「ヒュー……派手にやるねぇ」

 

軽装甲車両だから派手にキマっている。

どっから調達したのか分からないけどカール・グスタフ対戦車砲をぶっ放してる。

成形炸薬弾が反対側の側面に着弾、装甲板を破壊しながら内部に侵入。

内部で大爆発起こして戦車砲弾にも引火。びっくり箱だ。

まぁそうこうしている間にこっちは誤差修正して……トラックを狙おう。

まともに運転できなくしてもいいけど……それだと運搬がダルくなるので……

装甲車に邪魔されて減速しかかってるトラックの運転手にご退場願おうか。

 

「止まるかな……」

 

修正は完璧、狙い通りに運転席に穴が開いてガラスには血糊がべったり。

コントロールを失ったトラックが緩やかに失速していく。

安全装備もこういう時は役立ってくれるよね。

搭乗者が意識を失うなどしてコントロールを失った時に自動で止まる。

このトラックヘッドにもついていたみたいだ。

WW3以降減ってるかと思ったけど戦前と同程度にくっついているみたいだ。

 

「さてと……じゃあ次のトラックー」

 

まぁこの狙撃はターキーショットみたいなものだねー……

運搬のお手伝いはしておこ、サボってたなんて誹りは受けたくないし。

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