帰る片手間、自分が襲われない為にってハニートラップ同然に潜入して壊滅させた盗賊団。
まぁ何かしらの裏がある組織に人員を売っていた様子だ。
それが生きている人間だろうが人形だろうが関係なしにね。
そんな爆弾情報抱えてなんとかスラムに戻ってきた私だ。
狐耳と尻尾もシッカリ付けて……さて、スラムでの仕事を探すか。
ハッカー共は今案件抱えていて接触厳禁。
ヘタに接触しようものなら……何をされるかねぇ?
スラム中にいらん情報をばら撒かれるだけじゃ済まないわな。
変な機械をハックして嫌がらせされたりとか……識別を壊されてスラムの往来が出来なくなったりとか。
まぁ文明の利を削減されるのは間違いない。
あと私の場合はメンテナンスベッドをハックされてえらい目に遭うかもしれない。
真正面からゴリゴリのゴリラプレイしたらあっという間に殲滅できるけど。
それをするメリットも無いし触れず騒がず……っと。
「ハックナードも缶詰中だし私個人で探すかぁ……」
スラム内での問題事もあるだろうし……ソレ以外の仕事でもいいよ。
なんなら本気で娼婦になっても良いし。
武装は……護身用のMk-23とM37で良いか、これ見よがしに担いでたら絡むバカは居ないだろ。
徒手空拳で勝てる相手じゃないのはもう分かってると思うし。
酒場にでも行けば何かしら情報は入るだろうなぁ……
人が屯する場所としては酒場が一番だし。
「ん?あぁ、ボスからか……どれどれ」
私の端末にメッセージが……確認してみるとスラムのボスからだ。
相変わらずドコから確認してるんやら……まぁ良いけど。
内容はスラムの電力を担う発電機の1基がおかしい、メンテナンスしてみてくれないか?
ふーむ……エンジンメカニズムに詳しいと一回話したコトあったと思うけど……
発電機は馬鹿でかいディーゼルエンジンだったと思うが……まぁ見れなくはない。
私が主に扱っていたのはガソリンエンジン……しかも高パフォーマンスの物だけど。
基本的な組み立てから逆算してってのは全然出来るけど……まぁ見てみないとな。
詳細スペックも送られてきて……場所とアクセス権限か。
よし、じゃあ見て見るだけみてみようか……っとその前に工具がねーと。
工具のアテはあるからそこで入手して……それからだな。
うん、スラムの露店から少し外れた……人間性に難ありな職人共が集まる場所。
それぞれ何かしら作ってはいたけど会社の倒産、大規模解雇の際に巻き添えを食らった……
技術はあっても人間性がダメではじき出されたりと……まぁそんなヤツが屯している。
当然道具を製造しているヤツもいてソイツらの閉じたコミュニティに供給している。
物は良いんだけど……ね。
「よぉ、やってる?」
「帰りな、人形なんざにやる道具はない」
開口一番これだ、まぁ背景的にしかたない所はある。
ここでの解雇された理由の大半は……機械人形に生産力を奪われたって所がある。
だからこの手の人間はほぼほぼ人形に対しての恨みつらみってのを抱えている。
憎しみって言っても良い、即座に殴ってきたり解体してやるってやんねーのが有情。
ただこの中でエンジンメカニックは正直居ない。
居るには居るけど各個人で使うような小型の……60ccクラスの家庭用発電機クラスしか扱えない。
それも前時代的なキャブ式のこってこての機械式のヤツな。
このスラムを支えているのを扱うとなるとキャパオーバーだろ。
私でも怪しいけどな、ECUが死んでたら流石にねぇ……
「まぁまぁ、ココの発電システムの心臓が不調なんだよ……メンテすんのに道具が必要なワケ」
「……ならストロークキッド共に」
「7000ccクラスのディーゼル機関、イジれんのか?イジってた爺は去年亡くなったんだっけか?」
スラム構成に欠かせない要素だけど手入れするヤツが去年ドンパチに巻き込まれて死んでいたらしい。
だから私にお鉢が回ってきたんだがな。
指摘してやるとこれまた分かりやすく苦虫噛み潰してくれて。
「仕事道具を買いに来たんだよ、なぁ……工具、売ってくれや」
「断る」
「……ふーん、あっそお?じゃあ押収するわ、メガネレンチとラチェットレンチに……」
「貴様……!う"っ」
売ってくれないなら力付くで行くまでだよ、仕事遂行の道具が入手できりゃいいんだよ。
平和的に交渉してたのにクソボケ老害みてーにかったい頭しやがって。
憎しみで視野が狭まってんだろ、クソボケが。
軽く商品棚のセーフティはハックして解除、物色してると乗り出してきたから……
まぁ順当にその首根っこ掴んで地面に張り倒す。
「良いか、私ぁボスにオーダーされて見ようってなってんだ……この意味分かるよな?仕事中なんだわ」
人形ってのは割れてる、私の顔もこのスラムでは割れてる。
狙撃、暗殺はボカしてるけどそういう汚い仕事をしているのはバレてる。
銃の扱いもかなり得意なのもバレてる。
だから改めて仕事中っていう言葉が脅しにもなる。
仕事の邪魔をするなら容赦なく殺すって意味合いだ。
道具を作るヤツが消えたら困る?あぁそりゃそうかもしれないが……コストがかかってでも他から取ってくりゃ良いんだからな。
そういうツテが無いわけじゃない、それにスラムの無法者らしく強奪しちまえばいい。
言外に言っても分かんねぇやつが居るから目に見える威圧でショットガンを鼻先に突きつけておく。
まぁ身動き取れねぇわな、向こうも息を呑んでる。
「もう一度聞くわ、道具、売ってくれや」
流石に肝が冷えたかガクガクと首を縦に振ってくれた。
ま、対価はしっかり払ってやるから……ここの頑固物共の製品は表のと遜色ないレベルで洗練されてるからな。
電子決済でっと……20%マシで払っておいてっと……
「じゃ、仕事してくるわ。お前の道具でな」
ベルトに吊るせるタイプのポーチに必要になりそうな工具類を詰めて……
更にトルクレンチとボルトが舐めてる可能性もあるからインパクトドライバー等もっと……
ま、保険は多いに越したことないし。
数年ぶりのエンジンマイスターとしての仕事か……腕が鳴るね。
日常点検、整備メニューから紐解いていって結局問題は燃料噴射装置の故障。
ポンプ類の分解整備、再度組み立て……ってコイツ私の過去所属していた自動車会社のヤツだ。
パイプがかなり細くて根詰まり起こしやすいので悪評があったなぁ……
んでポンプが異常稼働しがちで壊れるってね。
コイツ一年ノーメンテでよく動いてたよ……
「もしもし、ボス?終わったよ……何とか再稼働したから向こう数ヶ月は安心していいと思う。ついでに分解整備もしておいたから」
焼締めは擬似的にしか出来てないけどね。
バーナーまで完備されてたら流石にやらないとね。
いやー、久し振りに一人で組み立てまでやると楽しい。
……私、どうしたいんだろう?メカニックとして生きがいを感じていたあの頃に戻りたいのか?
「ま、それじゃ……次の仕事取りに酒場に行くか……っと、悪い悪い」
出てからブツブツつぶやいて考えながら歩いてると思いっきり誰かにぶつかった。
謝りながら見上げると……うわ。
「ほーぅ……この辺歩いて仕事を探してるって、その気になったか?」
「ぁー……まぁ、それでいいよ。割のいい仕事くれる?」
娼婦の仲介人だ、私に割りと熱烈にアプローチしていた人だ。
そっか、この辺繁華街というか、売春宿や公衆フェラ便所とか……性的サービスの提供エリアだったな。
私のデカパイとか美少女っぷりが男共に熱望されているのは分かってる。
軽くでも兼業でも全然いい。割のいい副業として考えてくれっていうのが向こうの言だった。
だから、まぁ……私の本心を知るのに軽くで良い。軽くで良いから体験してみてもいいよね。
「そりゃいい!早速……」
「とりあえず一人ね?一人……」
強引だなぁ、手を引いて引っ張っていく仲介人。
苦笑いしながらも私の内心は割りとワクワクしていた……
「ついでにシェーナ、キミに依頼があるんだ」
「ほぅ?」
……ただの売春では終わらなさそうだなぁ。