雇われ掃除人形417   作:ムメイ

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その39

スラムに戻ってきた私は暫くは実務的な掃除は控えることにした。

それとなくハッカーのナードくん達に聞いてみると……うん、まぁそうだろうなって感じ。

電子の海では断片的ながら法外な値段で捜索要求出されているのが居た。

銀髪、ちんまいヤツでデカい胸を持った女。

十中八九私のコトだ、狐耳までは流石に伝わってないらしい。

緊急回線が本当に数個の暗号を送るだけで良かったよ。

銀髪ロリ巨乳となると候補は結構な数になるから私が特定されるってことはまぁ……多分無いと思う。

しかし狙われるのは間違いない。大人しく隠匿するのが吉だろ。

スラム内でできる仕事なんてのは限りがあるが……無いわけじゃない。

まぁ簡単な狙撃掃除、エロ仕掛けでのお掃除……そしてハッキングでの電子的なお掃除だ。

あとはまぁ、このスラムの電力事情を支える発動機のメンテナンス作業か。

 

「あーあ、難儀なこった……」

 

ぎぃ……と椅子を軋ませてつぶやくのはスラム内部の私の部屋。

フリフリと尻尾を揺らしながらつぶやく。

向こうは向こうでこのスラムの中にも浸透していそうだぁ……

コーラップス系の話はこのスラムでも聞くっちゃ聞く。

どっかでE.L.I.Dが出てもおかしくねーし……嫌だなぁ。

 

「ま、ハッカーのマネごととかして稼ぐかぁ?」

 

幸い私にはハッキングプログラムがインストールされている。

それも世界的権威な研究者二人の謹製のヤツな。

……ん、待てよ……ここは私の端末のセキュリティを見直すか。

時間はくっそあるし金も……まぁ数ヶ月は食っちゃ寝できるっちゃできる。

戦闘を考えると補給に金を使うからあんま余裕ないけどさ。

だから稼げるときは稼いでおきたいよねー……あと仕事の幅がありゃ万が一って時にもイイしねー。

総合セキュリティ担当とかに据えられるほどになったら……安泰っちゃ安泰か。

 

「んっしょっと……キーボード叩き辛ぇぇ……」

 

まぁーこの118バストが邪魔クセェ、キーパンチしようにも体勢無理させないと辛い。

超前屈みで自分の太ももに胸が乗る始末だし……ホロキーボードでも買うか。

ま、このキーパンチ感が好きなのもあるから専用にデスク組むのもありかなぁ?

 

「……うぇ、なんか気持ち悪いな。私の思考ルーチンなのに別人の思考が混ざってる感じがする」

 

パソコンと睨めっこしてセキュリティプログラムの構築をし始めるとなんか私の考えなのにまるで違う……

私の脳を間借りしている何かが介入する感じがしてきもっちわるい。

制御権限は私がしっかり握ってるはずだが……プログラムのプの字もしらねー女がなんでこんな……

ちっとリソース管理を見てみるか……ぁん?なんだこのプログラム。

……あー、設計がリコ、開発がペルシカになってるな。例のハッキングプログラム……じゃない。

あぁそっか付属プログラムを入れてたっけか?

ずーっと張り付いてたけどこりゃ……ワークスペースのデータを見ると何かを組み上げ続けていたのか。

ふーん?思考ルーチンくせーな、あぁこれが干渉していたのか。

原因が分かりゃまだ気持ち悪さは軽減するな……有用に活用させてもらおう。

 

 

 

ガチガチにセキュリティ組み上げるのに推定2日は見てたけどまさか4時間程度で終わるとは。

高性能CPUもあるだろうけど……このヘンテコなプログラムの補助が結構デカい。

 

「ん?何?」

『し、シェーナちゃんのPCにアクセス出来なくなったんだけど……』

「……堂々とハッキングしてた宣言かよ、見上げた根性だな。セキュリティを見直したんだよ」

 

ヴーヴーと胸元でバイブが……おもちゃじゃない、携帯端末だ。

通話が飛んできていた……送り主は家主のナードくん。

私のPCをハックして覗き見していたらしい……ひでー話だ。

最低限の情報しかやってなかったから良いけどよ……

 

『そんな、シェーナちゃんの特大バストにマッチする下着や衣装をプレゼントしようと思ってたのに!!』

「普通にサイズ聞けやクソボケ」

 

今すぐとなりに殴り込んでしこたま説教してやっても良いな。

ん、待てよ……後で押し入ってパイズッてからPCパーツ強奪してもいいか。

まぁコイツが聞いてきてもあんま答えるつもりはねぇけどさ。

 

「んで、そんなバカ話するためだけに電話したわけじゃねぇだろ」

『うん、キミに仕事だよ。スラム内部で強盗やって暴れてるバカ集団が居るから殺して黙らせろって』

「……あいよ」

 

仕事が舞い込んでくるのは良いこった。

気持ち結構久しぶりに担ぐ気がする私の特別な相棒、417を引っ張り出して……さて、移動だ移動。

 

『あ、今回は別なヤツも参加していてソイツにブツの回収を任せてるから間違っても撃ち殺さないでね!』

「おう、任せろ……へぇ」

 

データも送られ……驚愕と同時にどろりと仄暗い感情が胸を占める。

同業者のデータは大半がマスクされている、G&K契約されている人形らしいがかなり特殊な事情を抱えていると。

……ハッ、特殊な事情ぅ?笑わせんな。

漏れた声はメチャクチャ低く冷え切ったモノだった。

 

「おめぇも私と同じで堕ちたか……クク……」

 

データに写っていたのは私がこうやってスラム住まいに追いやられた事件で処分されたと思っていた人形……416とUMP45

あぁそう、私と違って表舞台を悠々と歩いていくはずだったエリートだ……

416にいたっては左目に血涙のタトゥー……復讐か。

はは、は……面白ぇじゃねぇか……はは、は……

 

「……チッ、不愉快だ……!」

 

……訳分かんねぇ。

この気持ちは何だよ……俺と同じ所に落ちてくるんじゃねぇよってか……?

 

 

 

 

バカが暴れているのはスラムの中で研究をし続ける研究キチが集まる集落だった。

高い遮蔽物は無く比較的オープンだが……地下スラムの中ではって話だ。

対岸まで2キロもない本当にこじんまりとした集落だ。

そこの研究物資を持ち出そうとして暴れた所ココのまぁ暴力装置の怒りを買ったわけだ。

絶対に逃さんと各障壁は落ちている。逃げ場はないがやったらめったら銃を乱射しやがる。

M249にM60、MG3などの軽機関銃がメインだな。

 

「立て籠もりってぇ訳じゃないが……定点撃ちはよくねぇな」

 

私が陣取ったのはそんな集落を見下ろせる高層物件の屋上。

侵入する連中の侵入経路は知らねぇが流れ弾で死ぬようなバカじゃねぇよな。

あの鉄血のセキュリティシステム大暴走ん中生き延びたヤツに脱走してしぶとく生きてるヤツがいるんだ。

こんな豆鉄砲でくたばってもらっちゃ嘲笑っちまう。

ターゲットは屋内の窓から防弾板くっつけて弾をばらまいている。

鎮圧に向かう連中を近づけないように必死になっている。

防弾板も完璧じゃねぇから難易度は高いが貫通させられなくは無い。

ピンホールショットか繋ぎ目……もしくはそうだな……右か左かにやった所を跳弾させてバイタルエリアに刺す。

……ん?なんだ?天井を見れば視認が難しいワイヤーが垂れてきてる。

 

「あー……なるほど、その手があったか……連中も上は見てねぇか」

 

天井から音もなくラペリングしてくるとは思うまい。

支援ってなりゃ……ま、屋上に出てくるバカが居たらって感じか。

誤差修正はだいたい終わらせている。相対距離は大凡1キロから1.3キロ

風速なし、ちと有効射程的に厳しいが……当てりゃ怯ませるのは全然できる。

マガジン叩き込んでコッキングレバーを引く。

初弾装填、小気味いい音が私の耳に入る。

 

 

『スナイパーさぁん、聞こえてる?』

「……聞こえてる、I.O.Pの通信プロトコルか」

『……416、あんた?』

『違うわよ、それに私はこんなに幼い声じゃ無い』

 

無線通信が入る、同じI.O.P製品の通信プロトコル。

そういや受信設定ONにしたままだったな、傍受とかできるしいーやって思ってたけど。

向こうもまだI.O.Pのプロトコル使ってんだな。

応答してみりゃ向こうが困惑気味な感じ……ついでに顔も出すか。

 

「私は417、テメーらを一方的に知ってるタダの狙撃人形だよ」

『……顔まで似てない?』

『目が腐ったなら抉り出してやってもいいわよ、どう?ポンコツぺたんこ』

『あとでその鼻っ面凹ませてやるわ』

「……さっさと侵入しろ、ボケ女……ケッ、これでエリート街道行こうとしてたとか嗤うよ」

 

注意を引こう、このボケ女共に合わせてると死にそうだ。

M2HBの防盾にうまいこと当てて……うし、ヒット。

 

『ザァッ――――スナ――――ぅがっ』

 

……ぉ、いい具合に跳弾して当たったか。

 

「ほら、行けよ味方撃ちしたポンコツとオロオロしてた絶壁女」

 

耳に入った音はギリッという歯ぎしりと盛大な舌打ち。

楽しいねぇ、楽しいねぇ……ハハ。




☆書き納めでございます☆
皆様良いお年を
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