雇われ掃除人形417   作:ムメイ

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その42

再びG&Kに復帰した私はS09地区に居着く事になった。

ここの指揮官に顔を通そうかとも思ったが要らんトコロから情報が漏れるかもしれん。

バレた時にそっと身分証明だけして距離を置けば良いとは思っている。

 

で、私が抑えたセーフハウスは見事なボロハンター小屋。

一応鉄筋コンクリート構造だけど状態が悪く修復が必須だ。

当然セーフハウスとして活用するために必要な物も一切無い。

クソがよぉ……とペルシカにキレたのは言うまでもない。

まぁそんな訳で私の拠点はまたイチから作り直しみたいなものだ。

金はまぁスラムから出ることも無かったので結構ある。

G&Kの経費からも落とさせてるからいくらか補助もある……

抑えたはイイけど使えない……でも拠点が無いとってコトで考えた末に導入を決めたのが……

 

「納車っと、いやー早い早い……金に物を言わせただけあるわ」

 

新興メーカー、レイジングボア社が作っているオフロードトラック、コンカラー6x6。

全長は6.4メートル、全高2.1、全幅2.5の個人所有するにはデカい物。

通常の場合はそれで3リッターディーゼルターボ、5人乗りっていう代物。

だが私はこの車格、キャビンと荷台の合計容積に注目。

荷台には私のIMXがそのまますっぽり2台は並べられる程大きい。

その上さらにちょっと余裕もあるっていうかなりの物なので……コイツを改造、移動式ガレージにしちまえってね。

キャビンと荷台を大改造、一体式の巨大キャビンにした。

元々そういうカスタム品はあったからソイツを回してもらった上で色々してもらった。

幸い工場も閑古鳥が鳴いていたみたいで大喜びでやってくれた。

んで、運転席は左右オフセットから改造して真ん中前寄りに配置、運転席と後部キャビンは隔離。

運転席からアクセスできるのは大きなキャビン前方に作った寝台だけ。

運転キャビンには私の武器一式を荷掛けできるガンラック、冷蔵庫に衣類の浄化装置。

ダッシュボードには通信機器、PC、ナビゲーションシステム等を配備。

後部キャビンには壁に沿って前側に2x2の4人掛けの席を配置。

席天井には小物入れになる収納ボックス、アームレスト装備で立てればガンラックなる。

運転席側に立てられてるボードを下ろせばテーブルにもなる。

余った後部にはIMXの固定用アームと医療用品コンテナ、簡易手術も対応する2段ベッド。

天井にはハミングバードの固定アーム、底面はシャーシの合間に予備燃料缶20Lを6つ。

さらには人形整備用のメンテアーム、各種消耗品のコンテナ、整備工具一式。

 

パワーユニットも交換して4リッターV8を叩き込んでリフトアップと大型タイヤを装着。

43インチタイヤ、最低地上高も400ミリを確保、走破性もかなり良い。

EMP対策にサーマルビジョン等の装備もあって動く拠点兼快適な兵員輸送車ってトコロだ。

運転席へのアクセスは左右のドア、後部キャビンはでかいリアゲート兼タラップから。

また、外装には外付けロールバーにくっそ頑丈なバンパーにウィンチ……ゴリゴリだよ。

 

「発掘した高出力V8はどんなのかなー……っと」

 

コイツに叩き込んだV8は戦前のバリバリ高性能なガソリンエンジン車から発掘、オーバーホールしたらしい。

マニュアル通りにボンネットを開けて、バンパーに脚をかけて覗き込む。

おやおやおや、古巣のエンジンではないか。シルバーに輝く3本エンブレムが……

 

「はは……組んだマイスター……W.Ganzって俺じゃないかよ」

 

なんて数奇かねぇ……自分が組んだエンジンが巡り巡って自分の車の心臓にか……

そうなりゃ……勝手も分かるってもんだがパーツとかどうすっかねぇ。

 

「あのー……お客様?」

「ん?あぁ、お支払いはしたでしょ?なんか問題?」

「いえ……運転出来るんですか?失礼ですが……」

 

販売員の男が話しかけてきた。

あー……まぁ背丈はちっこいしデカパイが邪魔するって思ってんだろうな。

それを考えない私じゃないぞ、運転席は私の為だけに改造してんだから。

 

「ノウハウは分かるし脚も届く、ハンドルも跳ね上げ式、電動シートも突っ込んでイグニッションと同時にポジションを整えるんだ」

「……本当に大丈夫ですね?」

「んだよ疑うー?私人形だぞ?技術については間違いないよ」

「何かございましたらこちらに……またのご来店をお待ちしています」

「おう、個人的に会ったらお楽しみしてあげてもイイけど♪」

 

ボンネットを閉めて運転席に飛び乗る。

販売マンは……はは、私のショーツとかに目を奪われていたな?

まぁイイけど、シコるネタが出来たね?ウィンドウ越しに投げキッスしてやるとイグニッション。

電磁クラッチが元気にカチ回ってV8ツインターボが吠える。

いい音ぉ……これでちょっとオナれるかも……

っと、シートベルトして、ポジション合わせたら……シートにつけてもらった乳房固定アームを取り付けて。

よし、これで運転出来る……っと電話連絡、G&Kの担当か。

 

「もしもーし?」

『G&K上級代行官、ヘリアントスだ。417で間違いないな?』

「間違いないよ、お仕事かい?」

『そうだ、この仕事を終えたらセーフハウスに物資を納入してやる』

 

仕事の情報は入ってきた……ほ、単騎で鉄血の司令人形を潰してこいとな。

それもS09にほど近い鉄血に占領された生産工場……

 

「タダ働きはしないよ、私は高いんだぞ?」

『それは成功させてからだ、報酬も考えている。成功報告を期待して待っている』

 

……ハン、一方的に通話を切ったな。

仕事自体はまぁ出来なくはないが……報酬がしょぼかったら割に合わねーな。

ま、コンカラーの試運転やら新しく受領している武器のテストも兼ねて……かるーく捻り潰して来ようか。

狙撃で全部終わらせられたらいいけどそうは行かねぇしな。

 

「向こうのプロトコルはよく理解ってるし……やれるやれる」

 

セレクターをDにしてアクセルを吹かす。

低く吠えるV8サウンドを響かせながら目的のエリアまで行こう。

ひゅー、はっや……この巨体で出る加速感じゃないよ。

 

 

 

 

近場までコンカラーで接近した後に武器をいくつかピックアップして工場に肉薄する。

相手もバカじゃない巡回に加えて監視カメラなどもしっかり接続しているだろうさ。

 

「ま、相手が悪かったってヤツだよね」

 

こっちの中身は生みの親みたいなやつが半ばインストールされてるようなもんだ。

相手のセキュリティはペラ紙より薄いも同然。

当然の権利のように侵入してハッキング、私の侵入している痕跡を消しながらぺったりと外壁に張り付く。

胸やら尻尾やらで思わぬ発見に繋がることはあるだろうが……できる限りスニークスニーク。

 

今回持ち込んだのはM37イサカ。

相手の主戦力は鉄血人形のベストセラーの一つ、ここで生産されているヴェスピド。

見事に接近戦に特化している人形でマッチングしている武器はSMG。

暴徒鎮圧に小型E.L.I.Dの排除等に使われている物だ。

ソフトスキンだがその頑強さは折り紙付き。生半可な銃撃では返り討ちにされる。

それ故にG&Kの民生改造戦術人形は手こずる。

弱点の共有化などはされているだろうけれども躯体の最適化、指揮系統とのマッチングが終わってなかったらな……

じゃあSMGの有効射程外から叩けばいい?まぁそれはそうだが……工場内部で戦闘することを考えるとライフルは不向き。

SMGのアセットは持ち合わせてない……私が持っている中で一番室内戦に向いた物がイサカだった。

 

「ぶっつけ実戦だが……まぁ何とかなるだろ」

 

長らく使ってなかった12ゲージ弾を叩き込みながら外壁に備えられている非常口を蹴り破る。

 

 

 

 

 

 

人類に対して反旗を翻す、そう上位AIに伝達されてもう数ヶ月。

この地域の生産工場を統括、守備するように言い渡されたのは数日前。

前任者のデストロイヤーはとてもではないですが……統括できる人形ではありませんね。

かと言って私が十全に出来るかと問われれば怪しい所です。

現在ロールアウトされている鉄血工造の上級モデルにそういった統率がとれる人形が少ないのも問題ですが……

エージェント、ジャッジ、ドリーマーはそれぞれ役職があって量産されては居ますが前線に出ることができません。

指揮能力を持ち統率も出来て前線で使い潰しが利くということで私、スケアクロウが受け持つ事が大半です。

ドリーマーは防衛するのに戦闘人形を湯水の如く使い潰し戦力をイタズラに消耗する気があり……

ジャッジは本部より出ることが出来ません、エージェントは高みの見物をしているドクズ、口先だけ。

私が実績を積み重ねればあの駄メイドの立ち位置とは交換になるかもしれませんね。

 

「次は……補給路の確保」

 

こちらの軍勢は日増しに増強され人間の生活圏を侵食していっています。

もう少し理知的に動けば良いものを一時の感情に任せて右往左往するグリフィンのゴミからありがたくその土地、資源を使わせて……

 

ドカン、ドカン。工場内部で大騒ぎが。

デストロイヤーが癇癪を起こして統括に復職しようとしているんでしょうか?

痛むはずもない頭がズキズキと来る。

吐くことも多くなったため息を一つ、管制コンソールから離れ戦闘・鎮圧用ビットを従えて通路に向かう。

同時に鉄血内の通信、オーガスプロトコルで暴れている人形に警告。

一方通行な事も多いため通達だけしてさっさと鎮圧し理解らせ――――

 

通路と私の管制室とを隔てる重い扉が吹き飛んだ。

身構えるも次に飛んできたのは……この工場で生産されたばかりの戦闘人形、ヴェスピド。

何事かと両目をそちらに向ければ……

 

「シッ―――!」

 

えらくデカく揺れ弾む胸と力場でガードされた拳が目の前に躍り出ていた。

あ、死んだ。




新しい足がポンと生えてきました。
詳細スペック等は追々……需要があれば。
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