表向きのバイトもしつつ防衛やら犯罪が起こればその対応に追われ……
S09に赴任してからしばらくした頃、本社命令でI.O.Pのラボに赴く事になった。
どうにも以前送ったヘルスチェックデータにマズイのがあったらしい。
なんのこっちゃ……と肩を竦めたが大人しく従ってコンカラーで乗り付けた。
バカでかいトラックだが……各地に陸送しているトラックと比べるとそこまでだな。
「……ふ」
情報端末をちょっとイジる……出てくるデータは私が密かに勝手にシンパシー感じてる女、416の事だ。
正確には……何かと世話を焼きたくなってる小隊、404の連中の事だけど。
同じ非合法、表向きの記録に残らない人形として情報は漁れたりする。
もちろんのこと……ヘリアン経由のミッション報告だったりするけど。
大分軌道にのって評価も挙げつつあるらしい。
416は……あの事件の中でM16と因縁が出来たらしく……あれこれと戦闘力を上げるために躍起になってる。
45はなんだろうね、あのオドオドしてた感じから一体何があったんだか……
ま、これを聞こうものなら私もあの場に居たのを明かさなきゃならないし、面倒になる。
ちょっと前に煽った気がするけど……まぁそれはそれ。私稼働年数は多いし、耳に挟んでてもおかしくはないワケでして。
アイツ等は今、鉄血に占領されたI.O.Pの研究施設からデータ回収をしているみたいだ。
ハイエンドモデルが防備を固めているらしいけど……ま、軽くクリアしてくるんだろ。
現地での作戦支援は無くあの4人だけか……ダミーもナシってのは私と同じか。
「ま、何かあったら私に依頼が飛んでくるか……私は私で検査だな」
指定ラボは……16Lab、ペルシカとリコのトコだね。
あとちょいと……私的に気になってるトコとかあるし……
その辺の相談とかも出来るから今回のはほんと渡りに船ってやつ。
「製造シリアルナンバー照会……どうぞ」
「はいはいどーも……」
流石I.O.Pの社員、全然こっちのおっぱいに見向きもしねぇや。
尻尾を揺らめかせながら一直線に16Labの方へ歩いていく。
できるだけさっさと終わらせた方が良いからね。
すれ違う職員もあまり変わり映えしないな……
十数分と歩かずにたどり着く、中からは相変わらずコーヒー風味のゲロ水の匂い……
ノックするまでもなく勝手に入れば……
『やぁ、シーナちゃん』
「おっすリコ、元気してた?」
『ペルシカのデスマーチ支援でヘトヘトだよ……どっかのネットワークに逃げ込みたいね』
「さいで……で、私の検査って何さ」
「それについては私がしっかり説明するよ……まぁ実験的な所で悪いけどね」
これまたひっどい隈を刻んだ残念女、ペルシカと……そのサポートにサーバーに住み着いているリコが出迎えてくれた。
コミュニケーション用のホログラムで出迎えてきたのは……ちょっと驚いた。
で、かいつまんで説明されたんだが……どーにも私のメンタルマップ……
いわゆる人格の部分にほころびがあるらしい、人形として稼働している間に欠損した所があるらしい。
まぁメンタルマップはストレスでだいぶ歪んでいるとは言う。
んで、その補修と内面的なアップグレードを図る……まぁ試みを私で実験しようって感じらしい。
元々人形用の修復プログラムであったらしいけどね?
「差し当たってキミの躯体のアップグレードもちょっとするよ?」
「へーへー……そのベッドに寝りゃいいの?」
まーた厄ネタが追加されんのかなー……と肩を竦めて……
メンテナンスベッドの中にごろ寝……
あーこの勝手に意識が堕ちていく感じ嫌なんだよなぁ……
こりゃ、なんだ?
夢を見ているんだろうか……あー……こりゃ、私の過去か?
……ハッとする。私……両親とかの顔を忘れていた?
いや、ソレだけじゃない……私の過去の一部の記憶が欠落してる!
その事実に気がつくこともなかった……とはな。
幼少期から青年……うわ、社会人になるまでの記憶が一気にさいせ……
『ルー、悪いねぇ……いつも車の調子を見てもらって』
『……オレがエンジンマイスターになるのを応援してくれた礼だから、気にすんな』
『ありがとねぇ……』
ルーは……私の……俺の愛称だった。
よく私は職として誇りにもってた車のエンジン……それだけじゃない、車の全体的な整備をしていたな。
母の、父の……あとは従兄の家庭の車とかも見ていたか。
なんで私……あぁそうだ……凄く単純で私は……近親者の助けになりたいその一心でエンジニアになったんだった。
今の私みたいな……凶暴だったり性に溺れているのは、違う。
私は……この身体になってから忘れたり失ったものが多いな?
……今の私がするなら……何ができる?
いや、仕事は変わらない……変えられないけれど……
狩りを楽しむような事は辞めよう、性はまぁ……施しと思えばそれはそれで良いけど。
あぁうん……目が醒めた感じだ……
私が何をしたいかって言ったら……んー……結局は……博愛というか、暴力とは正反対で居たかったか。
メンタルマップ修復完了、そのシステムメッセージと共に目が醒める。
メンテナンスベッドから起き上がる……
「随分目つきが柔らかくなったね?」
「ん、そうかな……そうかも」
破損したメンタルマップの修復をしたらしいけど……私的には原初の部分が補修されたっていうかな?
「私が何でアレコレ身銭を切ってまでこの脳にしたのかとか……思い出したんだ、ありがとペルシカ」
身体の方は……射撃管制装置チップの増設か、これでよりクイックに射撃ができるようになる。
あとは致命傷も与えやすい……まぁ苦しめずに一発で仕留めれると思えばいいか。
……困ったな、イロイロ思い出したは良いけど私の今の性癖がそのまま好みのヘンタイジャンルだった。
あは……余計にレイプとかされるのが加速しそうかも。
「それで……ちょっとリクエストなんだけど。私のダミーって」
「出来ないよ、デザインとか全部一点ものって契約で」
「……その契約さ、私が買い取るってできる?」
「出来なくは……ないね、もしかして」
「買うよ、ついでに404の連中にダミー人形を送り届けようかと思うんだけど……仕事として組めない?」
「それはヘリアンに回すよ……リコ、頼んだよー」
……リザーブにまわしていた私の貯金がまるまるぶっ飛ぶけど……それは構わない。
私のダミー人形や……
「……これで私と同デザインの人形が少々生産されたりしたら隠れ蓑にはなるよね」
さ……私はヘリアンに熱烈なコールしておかないとね。
私の原動力は……自分のためじゃない、誰かの為に施す事。
今なら……人の生息圏の確保の為鉄血人形を排除して今を生きている人間に捧げましょう。
私は過去の人間だけど、やれることはまだまだあるんだから……ね。
本来のメンタルアップグレードとは毛色は違う、長い間稼働し続けていたシーナのメンタルの歪は大分矯正された。
その有様はメンタルアップグレードというよりはメンテナンスだ。
修復の結果、生来の柔らかい奉仕と慈愛、寛容な性格の色が出たのだ。
小さくも大事な想い、小さなノイズが積み重なった結果メンタル不良を引き起こしていた。
その結果躯体に悪影響を及ぼしていた……のかもしれない。
世界の荒波に呑まれ続けた結果が今の荒んだシーナであったのだ。
「メンタルマップに欠損が出てたから憶測でデータをリペアしたけど……ここまでとはねぇ」
「シー……まぁでも、彼女にとってはいい結果だったみたいだから結果よしなんじゃないかな?」
「まぁね、強ち間違いなデータは入れてないから」
真実を知ったら……苦笑いで済ますのかペルシカに平手打ちが飛んでくるのか……
その真相は不明である。
ぼちぼち完走させようかと思います