V8ガソリンエンジン独特のデロデロとした駆動音をBGMに車をひた走らせる。
運転席に据え付けられている通信機器及びパソコンに次々にデータが入り込んでくる……
『お前があの小隊に関与するのはどういう風の吹き回しだ?』
「何だって良いじゃない、それに向こうも想定外の装甲敵が出てきて困ってるんでしょ」
『まぁ実際そうだ……404の連中の支援及び回収を頼む』
「りょーかい」
現在の私の車の位置……コンカラーの位置と件の404小隊が防衛戦をやってる区画は結構離れてる。
そも、奴さん達は鉄血に占拠された人形製造メーカー……UAS、私の躯体の製造メーカーでもある会社の工場だ。
ユニバーサル・エニシング・サービス……私も耳にした事があるメーカーだ。
そ、私がまだ男で人間だった頃にも耳にしてる。
とっても高級なオーダーメイド人形を製造していたメーカーで私の古巣の自動車メーカーに近い雰囲気だった。
高級志向な人形市場は縮退、で……今はといえば一般向け大衆モデルを製造。
それまでのノウハウもあってトンデモでっかい企業に化けた。
なんでも今回回収しようとしてたのはペルシカ肝いり……42Labって呼ばれてた研究機構のデータも組み込まれた人形のデータ。
主にAIだったりするけど現在の鉄血はほぼ自律行動で動いている。
そんな自律行動の蓄積データとなればかなり話がヤバくなるのはわかる?
何十、何百時間という膨大なデータがそこにある。
それがヤツらに吸い上げられ最適化された場合は……まぁかなりよろしくない。
AI分野においては42Lab……いっちゃえばペルシカ、リコの二人がせっせか開発してたアドバンテージ盛り盛りなわけ。
その回収をいち早く、確実に、足がつかないように……ってなるとどーこもやりたがらない。
危険も危険だからね……大人数で行けばデータ破壊もしくは向こうに気付かれて吸い出される。
少人数で行くのは正直自殺行為も良いところ、それをやってのけてるのが404……
かなりの実力者であり度胸というか……頭のネジがぶっ飛んでる。
でも悲しいかな……それが通用するのはある程度の装甲対象まで。
大分類ではソフトスキンターゲット、いわゆる非装甲目標、軟装甲目標って言われる類のヤツだけ。
防弾ベストとかで武装した連中ならなんとかなると思う。
でもガチガチに装甲を重ねている相手にはとてもじゃないけど通用しないってワケ。
9mm弾にアメリカ大好きな45口径……5.56NATO弾に超ドマイナー4.73ケースレス弾
お互いの弾に互換性がなく貫通力は一番あっても5.56のモノ。
射程距離もあまり長くなく正直な所私が振り回す417と同じ7.62のマークスマンライフルにマッチした人形が欲しいよねとは思う。
採用してないのはそれでは強すぎるのか……それとも単に不要なのか。
「ミッションデータの転送は?」
『もうすぐそちらに届くはずだ、目を通せ』
「ん、了解。脇見運転にならない程度に読むよ」
まぁ、私みたく金で雇われるスナイパーが居れば……それで事足りるんだろうね。
ミッション概要を説明する。
要援護対象は4、敵勢力は装甲で固めた軍事規格人形だ。
相手は非常に分厚い装甲をしていて生半可な鉛玉では歯が立たない。
援護対象は囲まれていて籠城防衛戦を強いられている。
あまり弾薬も残ってないと推測される、素早く狙撃支援ないし狙撃排除を行い救援してほしい。
指定ポイントがちょうどいい狙撃スポットになると思う。そこに車も停めて援護対象を回収してほしい。
なんでも良い、援護対象と回収物を無事に持ち帰ってくれ。
45のヤツ、適当に嘯くのはもういい加減にして欲しいわ。
「チッ、ダメよ弾が弾かれる」
「榴弾の残りは?」
「あと5」
「ダース?」
「頭に叩き込んで欲しいならそう言って欲しいわ、遠慮なくブチ込んでやるわよ」
最初された今回の仕事の説明ではこの工場に居る戦力は防衛戦に長けたガトリングレーザー持ちばかり。
ハイエンドも過労死寸前のカカシが数体配備されている程度……だった。
それが蓋を開けてみれば装甲ガチガチに固めた暴徒鎮圧用の装甲人形にマンティコア……
四足歩行戦車まで出てくるとは思ってなかったわ。
一応マンティコアは45の作戦指示で煙幕、閃光のコンボで足止めしたあと私の榴弾で足のアクチュエータを潰した。
ダメ押しにG11がセンサーを潰したお陰で時間稼ぎも出来ている。
「大体45、アンタがヘマして警報を鳴らさなかったら……」
「違うわよ、向こうの電子戦AIが単に気付いただけよ」
「それをヘマって言うんでしょうが……!」
「45姉、こっちの軍勢ヤバい!!」
「ちょっと待って……このデバイスを……これでしばらく時間稼ぎできる?」
「さっすがぁ!まっかせて!!」
籠城し防衛戦をしている区画は工場の倉庫。
当然コイツらの資材があり反人形勢力の強襲等に対応した堅牢な作り。
さらには中にある資材運搬用の重機も独立操作されていて……その制御を45が乗っ取っている。
押し寄せてくる装甲人形を薙ぎ倒すだけの馬力はあり純粋な暴力として猛威を振るう。
ただそれも45の演算リソースを割いて使う有限のモノ。
十数体を轢き潰したら駆動系がどこかおかしくなって……続けてキャタピラ等が外れて使い物にならなくなる。
シャッター閉鎖、隔壁閉鎖等して時間稼ぎを続けているけど……それももう厳しくなってきている。
閉鎖タイミングは45が考えてやって、それに合わせて最大効率で榴弾で無力化していく。
「救援要請は?」
「さぁ?私達にそんなの期待できる?」
「チッ……」
最悪の事が頭に過る……改造を重ねていてコイツを見捨てていけば私一人だけでも生き残れると思うわ。
でも、その後がない。私は後ろ盾がなければただの違法人形。
直ぐ様に捕まってスクラップヤードのゴミになる。
回収要請は出ているでしょうけど……それまであと何分?
それもまったく明かさないからストレスだわ……!
「コッチ、防壁が突破されそうよ……ッ!」
「あちゃぁ、向こうの復旧も早かったかぁ……マズったわねぇ」
呑気そうにつぶやく45の声が忌々しく思える。
防壁の向こうから顔を覗かせたのは……バレた際に大暴れしてきたマンティコア。
複数台は居なかったはずだから……この短期間で修復して自走してきた。
「クッ……」
「あぁ、でも……こっちも丁度到着したみたいよ?」
「何が!」
苛立ち混じりに45を振り見た。
――――――――ォォォォオン!!
横合いから飛来した超音速の鉄塊がマンティコアを張り倒していた。
次に聞こえてきたのは……いけ好かない私そっくりな幼い声だった。
『ビーンゴ、まだ生きてるかなー404の皆様がた~?』
さて、今回持ち出したのはー……メンタルアップグレードに合わせて受領したハミングバード接続可能なレーザーキャノン兼レールガン。
狙撃っちゃ狙撃な訳で、過剰火力と言えば過剰だけど……有り余る火力に困るってくらいが良いでしょ?
電力は私とハミングバードの内蔵電力、両方共に軍事ジェネレーターなのもあって連発できるくらいあるね。
「ま、一発で沈められたのは良いよね」
機械製品、AIとは言え意思を持ってるヤツは苦しめて壊すのは……私的にはイヤ。
それを思い出した、だから大火力で一発で沈められたのは個人的に大きいかな。
「ハミングバード、周辺警戒よろしく……さ、次はコレっと」
排熱中のレールガンはハミングバードにマウントさせて……っと。
足元に転がしてたM82を拾い上げて……ちょっと離れて小高いトコに建設されている送電施設の基から狙撃体勢に移行。
絶好の打ち下ろしポイント……一部遮蔽されていて撃てないけどそこは……
「45、聞こえてるかな?」
『勿論、感度良好。アンタがヒィヒィ喘ぐ時みたいに』
「あはは……えーっと戦術マップ上のEポイントが撃てないからそっちはなんとか対処してね」
向こうの皆様方におまかせしてっと……
セーフティ解除、弾倉はセット済み……チャージハンドルを引いて初弾装填。
相対距離はインプット済み……ゼロイン調整は完了してる。
いやー……慌ててレールガンの方使ったのはある意味正解だったかなぁ。
「頭を低く抑えててね、きっちり潰して撤退路は確保してあげるから」
『……何こいつ、頭でも打った?』
『知らない』
『なんでも良いよ~……助かったぁ』
引き金を引いてM82の号砲が唸る中聞こえてきたのは困惑混じりの無線通信。
……まぁそういう反応になっても仕方ないかぁ。
苦笑いしながら一体一体、確実に頭をぶっ飛ばしていく。
「回収物はしーっかり回収してるでしょ?さっさとそこからズラかる準備して、合流地点もヘリアンから入るハズだよ」
『もちろん、ほら皆お迎えが来たからさっさと行くわよー』
『……チッ』
『まぁまぁ416落ち着いて』
……うーん……416には嫌われてるねぇ。
ツンケンしてる姪っ子みたい、まぁ構い倒してもいいけど……後々だね。
ドンドンと撃って……スコープの先で黄土色の人形が屍を晒す。
その数は……私の右隣に転がっていく薬莢の数だけ重なって行っていた。