今回の任務で使用するのは私の愛銃、HK417。
この前の新興カルト教団のオフィスみたいな所ではない。
ターゲットはG&Kの小基地の中に居る。
当然狙撃可能な窓なんてものは無い、監視の目もすごい数に登る。
程々に離れた場所にバイクを停めソコから歩きで狙撃ポイントを探していく。
相手は人間、ずっと一箇所に留まるのなんて無理なことだ。
ましてや……小賢しくあちこち手を広げ保身をかけようとしている男がじっとしているなんて無理だよ。
「今日の入場者リスト……こいつとの面会は使えそうかな?」
物的証拠が無いから黙っていたようだけど……もう相手先とかは割れている。
武器の横流し先、人形の横流し先、近隣地区に出没している盗賊。
どいつもこいつも悪党だよ、金と暴力と性欲に狂ってる連中。
そんなのと取引しているヤツって事で解雇したかったらしいけど……
証拠がなければ規約的に解雇が難しく私にお鉢が回ってきたってワケだ。
「となると……この辺りが良いかな?」
まぁ排除にかける時間の指定は無い。
言ってしまえばココで数日キャンプしつつ機会を伺うのも良い。
そのための装備も持ってきている。
私の愛銃417の他にバックパックを背負ってきている。
バックパックの中身は一般的なキャンプ用品がぎっしり。
基地の一部が見下ろせる丘の上に陣取って見る。
事前情報通りで中々の警備体制、侵入してっていうのはちょっと厳しそう。
双眼鏡を用いて見てみると各所の櫓に監視員が居るな。
現在は夜、真っ暗闇にまぎれて中々近づいてもバレそうには無いけど……
まぁ用心しておくことに越したことはない。
相手も夜中だからこそやましい事の取引時間にしているんだろうしね。
普通の業務的な事は日中に終わらせてしまうだろうさ。
「ん、あのテールランプ……」
高倍率の417のスコープに切り替えて覗く。
高級車にカテゴライズされるソイツは基地に入っていき……一人降りてきた。
ふむ、運転手は乗ったまま……いや、あの感じは人形だな。
顔を認識してみると……ふむ、事前情報で調べた人形闇市のオーナーか。
何処に出没するか分からなくI.O.Pの製品を不当に売っているヤツ。
デッドコピー品も売っていてブランドイメージに打撃を与えているから排除要請が来てる。
I.O.Pの職員はコイツにカンカンらしい。
オプションで出来得る限り苦痛を与えて殺せってあるんだからね。
「精度チェックに使っても良いかもだけど……まぁそれは後々」
今回のマストターゲットはあくまでもこの少基地の指揮官。
不正の温床を叩き潰す事がお仕事なので。
ふむ、残念ながらターゲットが出てこない。
顔見せくらいしてくれても良いのにねぇ、排除が楽で助かるんだけど。
用心深いって事でしょうなぁ、会談に使う場所も基地内部の奥深くだろうから……
最悪は潜入して排除になるかなぁ。
「配属人形は揃って大量生産されている汎用品……一部にG&K指定のハイエンドか」
汎用機械人形を用いた戦術人形はコストが安い代わりにその戦術性はゴミに等しい。
使い潰す肉壁程度にしかならないとすら言われる。
ただ手持ちの銃器によって性能は左右されないため余り物の軽機関銃なんか持たせると中々面倒くさい。
弾幕を張る能力だけは一丁前だから被弾が避けられなくなる。
ちょっとの被弾なら良いけど……耐弾性とか考慮されてないボディだからなぁ。
そして最も厄介と言えるのが片手で数える程度にしか配備されていないハイエンドモデル。
G&K内部でのコードはそれぞれ……M37、MicroUzi、M590か。
逆らおうとは思えない連中かな、諭しはするだろうけど……
他にも配属された後行方がわからなくなっている人形も居る。
そいつらは売られたんだろうなぁ……と推測はされるね。
私が化けれる人形は居なさそうだし潜入するにしても完全にステルスって感じかなぁ。
見つかったら即アウト、リスキーすぎてやってられないヤツ。
「んー……長丁場になりそうだし、イスでも組み立てるか」
テントまで張るかどうかはこの後の奴さんの動き次第かなぁ。
あー無線傍受パッケージとか欲しくなる。基地内部にハッキング出来たら動き探るのに便利だけどなぁ。
一旦銃は置いてバックパックからコンパクトに折り畳めるチェアーを取り出して……
ぱぱーっと組み立ててから座ってのんびりと双眼鏡で偵察偵察。
こういうのは焦れたほうが負けなんだよね。
あ、いけね……レーザー測距……距離補正っと。
数時間に及ぶ談義が終わったのかほくほく顔の男が二人出てきた。
イスから立って銃を再度構える。
膝立ちでしっかりと構えてっと……胸が邪魔だなぁ。
「ターゲット視認、ようやく御出座しか」
てくてくと歩いていって……ん?あれは使えそうだな。
設備保全をケチってるな、貯水タンクの足が折れそうだ。
相対距離、落下予測を計算……んぁー専門外だからか演算に結構CPUを食われるな。
あ、出た出た……後は……
「ちょっとの痕跡は残せ、か……」
どんな痕跡を残そうかねぇ……まぁ良いや、始末してから考えよう。
痕跡残したほうが狙って排除されたっていうのが分かりやすいからだろうね。
排除されたのを見て同時にG&K社内報か何かで宣伝するんだろうねぇ……
っと、そろそろか……息を深く吸って……止める。
パスッ……
一発の7.62mm弾が真っ直ぐに外部貯水タンクに向けてすっ飛んでいく。
支えとなっている足に着弾して火花が散る。もう一発必要かな?
と思いきや……ちょっとの時間差で足が崩壊。
推定200Lはあろうかというタンクがゴロゴロと転がり始めた。
巡回中の人形、物品を巻き込みターゲットとおまけに向かって転がっていく。
当然ターゲットもバカじゃないから逃げる……けれども真っ直ぐ導線上を逃げる。
本能的な行動だね、驚異からは真っ直ぐ逃げようとする。
パスパスッ、カランカラン
追撃で二発ぶっ放す。空薬莢が跳ねて地面で鳴り合っている。
スコープで覗く先では憐れな男二人が足を撃ち抜かれて倒れている。
程なくして……大質量で転がってくる貯水タンクに轢き潰されて……排除完了。
一応手出ししたから痕跡にはなるだろうけど……追加で痕跡残しておくかな。
……お、騒ぎを聞きつけて飛び出してきた人形がいる。
M37だね、おぉおっぱいがぶるんぶるん揺れてる……大急ぎで飛び出してきた感じ。
「ちょうどいいや、キミには目撃者となってもらおうかな」
ぺちゃんこになった指揮官を見つけてへたり込んでいる所を悪いけど……
おまけの闇市オーナーの死体に何発か鉛玉を追加でブチ込む。
突然の着弾にビックリしているけどスグに臨戦態勢に入ったのはイイネ。
ま、悪いけど小賢しい事をしていた指揮官を呪ってよね。
イスは片付けて……さっさと撤収するに限るよ。
「うひょぅ!?何々!?あーやったらめったら撃ってやがる」
チュィン!と近くを鉛玉がすっ飛んでいって何事!?とビックリして伏せる。
ビックリしたけど続けてババババババっと軽機関銃の射撃音が。
恐る恐る双眼鏡で覗くとMicroUziが転がっていた軽機関銃ぶっ放してるんだ。
……ふぅん、慕われる指揮官ではあったんだね。
じゃあ人形の横流しとかに手を出すなよ……バカだねぇ。
「ま、仕事は仕事……悪く思わないでよね」
撤収作業を終えてさっさとずらかる。
地区脱出までスピーディーに出来たから怪しまれることも無くとんずらこけたぜ。
さーでも……次のお仕事がどうせ入ってるんだろうなぁ……
ちょっと遊ぶ余裕がほしいよね。