今回の仕事も無事完了、残っていた住民はまぁ少ない方だった。
当然ながら出入り口付近は真っ赤っ赤の血の池地獄。
逃げ出した富裕層も血を浴びていて真っ赤、他にゾンビ化した元住人達もブチ転がしてっと……
キレイに掃除は終わった、後はクライアントのPMCと助けた富裕層への面会かぁ。
予定時間は少々余裕がある……ホテルを借りて身綺麗にするだけは出来るかな。
隣町のホテルまで来て……ようやく吐ける。バイクは駐輪場に停めコンテナは持ち上がり……
チェックインを済ませて部屋に駆け込むと洗面台に手を突いて……
「ゥッ……ゲブッ……ぉぇえええ」
良心の呵責は捨てたとは言ったがね、人間性をぶち壊してる訳じゃない。
時間差でこう、ボディーブローの様に精神に来るんだよ。結局は捨てきれてないってだけだけどさ。
助けた命があるだけマシ、PMCの上層部は区画まるごと浄化してしまえって思考だったらしいしな。
あぁクソ、本当にクソったれな気分だよ。仕事を選びたいもんだよ……クソが。
ゲーゲー吐いてからスッキリ……はしてねぇな。
死んだ目がいくらかマシになった程度だよ、ひどい顔してる。
「ふぅっ……今回のPMCの社長はどうかなぁ、G&Kの急成長を羨ましがっては居たけど」
気持ちを切り替えてお仕事モード。
前回あった何度も顔合わせしている童貞君とはちょっと違ったハズ。
割りと強面でG&Kのクルーガー社長とも面識があったはず。
人員へのストレスを考えて私に処分を命じてきたと思う。
口頭での説明は何度かされていて以前にも暴徒鎮圧で駆り出されてその時に面会はしている。
私の容姿、実力ともに一度は見ていて性能評価は上々だったと記憶する。
となればこの仕事は第二次トライアルといった所か?
「とりあえず、脱いで身綺麗にしないと」
硝煙の臭いが染み付いているし汗だってかいている。
上着なんて脱いでから嗅いでみたら臭う、ちょっと自分で萎える位には臭う。
まぁ替えの衣類はコンテナにブチ込んでるんだけどさ。
ホテルの個室、ロックはかけて脱ぎ散らかしても大丈夫大丈夫。
それに腐っても戦術人形、普通の男相手に後れを取ることは無い。
……まぁホテルだから変な気を起こすヤツは少ないと思うけどね。
いつだったっけかなぁ、ホテルマンが宿泊客の女を強姦したっていう事件があったような。
セーフハウス以外ではあんまり安心出来ないんだよね。
特に荒廃してしまった大戦後の今の御時世だとね。
「冷たっ!?」
もう十分に温まってるだろうと思ったシャワーは冷たかった。
クソッ、このホテルのボイラーぶっ壊れてるのか?
こういう所でしか温かいシャワー浴びれないっていうのにー!!
身ぎれいにして整えた後面会の待ち合わせ場所までバイクを走らせた。
同じ街の中でも一等高級とされるテナントビルの中。
今回のクライアントであるPMCのオフィスも入っているビルだ。
1階部分をまるっと借り取っていて巨大な車庫にしてるな。
旧式とは言え装甲車両を持っているのは中々大きいね。
兵員輸送車両もあるし……羽振りは良さそうだ。
受付もまぁ割りと美人さんを雇っているし……この地区では高嶺の花という訳か。
案内された応接間はまぁ中々広そうだ。今回助けた富豪さんは5人だっけ?
ソイツ等ともここでご対面って事かな?
「ここでお待ち下さい」
「あ、はい……うわ、無駄に広い」
大会議室って言っても良い感じ。
この御時世によくまぁこんな応接間を用意できたものだよ。
富豪とのコネが強いからかな?
家具もまぁ見た目は相当いいし座ってみると中々良い。
I.O.P本社工場のリラクゼーションルームのソファーと同レベルだ。
世界で指折り数えるトップ企業と同レベルのかぁ……稼いでるねぇ。
そしてしっかりと消費もしている……消費の矛先にI.O.Pの人形はどうだろう?
「ん、もう来ていたか……早いな、人形」
「どうも、今回も依頼はしっかりとやって来ましたよ、社長さん?」
一応狙撃屋の名前は教えているんだけどねぇ、G&K内部でのコードネームである417も教えてる。
けれども人形と呼んで居るのは個人的な何か抱えているモノがあるのかな?
うーん、こっちを見る目が非常に冷たい、鋭いねぇ。
「フン、仕事はしっかりと出来るようだな」
「えぇ、まぁ。お仕事ですから、きっちりとやりましたよ?」
「……教育の手間がないとはいえ、民生から毛が生えた人形ごときに」
おう、聞こえてるぞー。その民生から毛が生えた程度の人形一人に何人殺させたんだテメー。
こめかみに青筋が走るけど営業スマイル営業スマイル、笑顔は最強のポーカーフェイス。
I.O.Pからも催促があったんだろうね。おう検討しろやボケって。
……おう、堅物で偏見モチな感じなくせして目線はおっぱいか。
下の方も固くなってそうだな?あぁ?
「ともかく性能はよく分かった、前回の暴徒鎮圧の際の無力化もまぐれでは無かったということか」
「I.O.P社が自信をもってお送りする自慢の第2世代戦術人形の性能、お理解りになられましたか?」
「うむ、数体導入を決めた。お前の名前も添えてな」
「ありがとうございます」
私の名前も出したって事はI.O.Pからのお褒めが来るってことだけど……
これをイイ出したのは何かあるな?身構えておこう。
「少し良いか?」
「はい?なんでしょう」
「追加報酬を払うからこの後貴様と面会する富豪に接待をしてくれないか?」
「……接待と言いますと?」
「酒を交わしながら今後の事を話すのだが……清涼剤が欲しいのだよ」
「……性的な事は認可出来かねますが、それでもよろしいでしょうか」
「チッ……まぁ良いだろう」
コイツ、こっちに基本的な人権ってのが無いのを良いことにキャバ嬢みたいなのをしろってか。
報酬を弾んでもらわないとなぁ……I.O.Pとも話を通してもらって……
追加報酬金額は私が決めてっと……これで向こうが頷かなければその話はナシ。
「ふむ……むぅ」
「当地区のキャバレーで一晩飲み食いするよりは良心的であると思いますが?」
「……足元を見て……良いだろう、この金額で頼む」
「毎度ありがとうございます、では戦術人形の417は一旦接待人形のシーナとなりましょう」
営業スマイルを浮かべたまま深々とお辞儀……まぁなんだ。
愛妻パッケージとかの内容を引っ張り出せばいいだろうさ。
そうやって自分を偽るのは慣れたもんだ。
その後ぞろぞろとやってきた富豪達は……少年から老人まで揃っていた。
最年少は14歳の起業家で最年長は76のとある軍需産業の株主サマ。
他は社長の子供だったり……投資家だな。
「ほぉ……この少女が戦術人形とな?」
「こんな身体で戦闘を?はっ」
揃って男ばかり、女の富豪はもうとっとと逃げていたらしいからなぁ。
居座っていたのは甘い蜜を吸い続けたいヤツとE.L.I.Dの事を甘く見ていたヤツ。
あとは陰謀論者か……まぁそんなのは良い。
こっちを見る目は自分達を除いて感染者を残らず排除した人形とは思ってない。
バカでかい胸や小柄な身体を見て軽んじている。
さらには給仕としてワインとワイングラスを配膳したから完全にメイドか何かと思っている節がある。
「オイ、オレにもワインをよこせ」
「……未成年ですので承服しかねます」
14歳サマも何かと大人と同じものを飲みたがって突っかかってくる。
ちらっと社長の方を見ても首を横に振っている。
「では、今後の皆様の延命プランについてお話を始めます……オイ」
「コチラの資料を……」
その後の説明はまぁ、E.L.I.Dへの変異の抑制投薬、他地区での生活……そして近辺警護のプランニング。
並行して近辺警護の人員として私と同じく第2世代戦術人形を購入する事が立案されている。
この富豪達ならポンと一体は買える。
なんなら3体くらいまではオプション盛々でイケるだろうさ。
「おっと」
「……お戯れは程々にお願いします」
「ほほほ、老いぼれはこうだからなぁ、悪い悪い」
株主サマがワザと手を滑らせて胸を鷲掴みにしてきやがった……
まぁ一回は見逃そう……俺も元男だ、そういうのに理解はある。
だが許すのは3回までだ、その後は容赦なく張り手を食らわしてやるからな?
「ふむ、乳房も上等じゃのぉ……」
他の野郎が生唾を飲み込んで胸を見てくる……
分かりやすいなぁ……男としちゃ健全だけどよぉ。
「I.O.Pでは多様なオプションを取り扱っていましてお客様の望みのままの人形を製造できます」
「理想の女を?」
「左様です」
目の色が変わったな……フッ、この商談も貰ったな。
おい、それぞれ一回揉んでいってんじゃねぇ、キレるぞ?
社長に抑えられてキレられなかったし張り手も食らわせられなかった……クソが。
胸だけで済んだのは幸いだけどさぁ、俺のおっぱいは安くねぇんだが?
……このクソ説明会が終わったら依頼はちょっとボイコットするか。
セーフハウスでのんびりしてぇ……