【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~ 作:独身冒険者
転生した男はダンジョンに夢を持てなくなった
遥か昔、神々は下界へと下り立った。
天界が退屈だったから。子供達の近くにいたかったから。
理由は様々だが、多くの神が『己が神の力』を封印して下界の土を踏んだ。
そして、神々は自分を信仰してくれる子供達を集めて『
神はその恩恵として、子供達の身体に『ステイタス』を刻み、世界に溢れるモンスターと戦う力を与えた。
眷属達は『レベル』『スキル』『アビリティ』『魔法』など超常的な能力を成長させるために、迷宮へと挑んでいく。
モンスターを倒して得られる富、未知への探求心、栄誉を求めて、冒険へと赴く。
人々は彼らの事を冒険者と呼ぶ。
…………
………
……
千年前、ある神によって世界に溢れていたモンスター達は地下ダンジョンへと封印された。
神はダンジョンの上に【バベル】という巨塔を建て、ダンジョンを管理することにした。
その後、他の神々は【ファミリア】を率いてダンジョンへと挑む様になる。
時に競い、時に手を組み、時に蹴落とす。
次第にダンジョンの周囲に人が集まりだし、いつしか都市へと発展した。
迷宮都市【オラリオ】。
世界で唯一ダンジョンがあり、世界で最も神々と冒険者が集う都市。
多くの者がこの地に夢を抱いて訪れ、夢を追い求めて足掻き、夢に破れて絶望を知る。
それが千年。未だにダンジョンを完全攻略した者はいない。
……………
…………
………
……
俺は転生者である。名前は多分ある。
いや、生まれたばっかでまだ分からんのよ。
とりあえず、地球の日本で生きていた記憶があるから転生したのは間違いない。
何で死んだかは知らん。憶えてない。
最後の記憶は残業を終えて会社を出たところまで。ちなみに30歳の独身でした。彼女は直前にいなくなった、と思う。
まぁ、転生した以上何で死んだかなんて考えてもどうしようもないか。
今の問題はどんな世界に生まれ変わったのかってことだ。
一つ分かってるのは、地球じゃない。
だって、今俺を見下ろしている女性の耳が長いんだもの。
エルフである。まごうことなきエルフである。
そして、その反対側から覗き込んでいる男の頭には猫耳がある。
獣人である。まごうことなき獣人である。
……なんで最初の猫耳が男なのか! 断固抗議する!!
「おぎゃーー!!」
「おぉ!?」
「アンタ怖いみたいよ。ほら、さっさと離れなさい。あの2人に怒られるわよ~」
「ぐぅ……! 流石に親馬鹿になったあの2人には勝てねぇ……」
ふははは! 勝った!
そして、どうやらこの2人は俺の両親ではないらしい。
「けど、本当に大丈夫なのか? ファミリアの方は」
「まだ話し合い中みたいね。こればっかりは、ね……」
……ファミリア?
「違うファミリアの冒険者同士で結婚することは暗黙の御法度。しかも【ゼウス・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】での結婚。流石に何の処分も無いってのは難しいんじゃないかしら……」
「だよな……」
「まぁ、オラリオ追放ってことはないでしょうけどね。最悪ファミリア追放はありえるかもしれないわ」
ちょちょちょい!
なんか聞き覚えがある単語がポロポロ出たぞ?
ファミリア? ゼウスにフレイヤ? オラリオ? 冒険者?
おいおいおいおい!
まさか……ここ……【ダンまち】の世界なのか!?
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』。
アニメ化、漫画化、ゲーム化されている人気ライトノベル。
俺は小説は途中まで読んで、アニメも見てはいた。
活字なんてメールと会社の資料だけで十分だと思うようになったから小説は途中で断念したんだ……。
だから、働き始めてからはアニメメインで作品を見てた。
……俺が見たのは三期まで、確か四期が放送決定したはずだったな。
いや、それはいい。
アニメと同じ人物達がいるかどうかなんて分かんねぇし。
それに【ゼウス・ファミリア】がある時点で、本編の時間軸より前なのは間違いない。
だから、主人公達はまだいないはず。
問題は2人が言っていたように違うファミリア同士での結婚と出産だ。
人は一度に一柱の神の恩恵しか授かれない。
だから、もしその子供が冒険者になる時に、取り合いにならないように同じファミリアの者同士か、一般人との結婚が暗黙の了解になっている。
一応『改宗』は出来るはずだが、この状況だと確実に遺恨を残す。
しかも【ゼウス・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】ってオラリオ内でもトップ中のトップのファミリアじゃねぇか。
そんなファミリアが『なぁなぁ』で終わらせるわけがない。
特にフレイヤは自分の
……嫌な予感しかしねぇぞ、新たな人生!!
どうやら俺はダンジョンに出会いどころか、夢さえも持てないらしい。