【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~   作:独身冒険者

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連投その5
まずはラブコメから


双槍を掲げる騎士エルフ

 翌日。

 

 俺達は引き続き休暇となった。

 ハルハの傷もミアハ様の薬であっという間に完治したが、今日は大事を取ってスセリ様が無理矢理休ませている。

 

 まぁ、武器もないのでダンジョンにも行けないのだが。

 

 今はスセリ様がハルハの部屋に入り浸って、2人で酒宴を行っている。

 まぁ、怪我は治ってるからいいんだけどね。大事を取って休みって名目なのにいいのか?ってツッコミたかったけど、ツッコんだら巻き込まれるのは目に見えてるので何も言わない。

 

 一応酒宴するだけの理由もあるっちゃある。

 

 昨日の狼人との戦闘で善戦したからなのか、ハルハが【ランクアップ】を果たしたのだ。

 

「Lv.3以上と思われる相手と戦ったのは初めてだったしねぇ」

 

「闇派閥相手の殺し合いというのも大きかったのじゃろうな」

 

 だが、それはそれだけハルハにとっては、狼人に勝てなかったのが屈辱だったということだ。

 俺にとってのゲーゼスと同じように因縁が出来たということか。

 

 

 

フロル・ベルム

Lv.2

 

力 :H 136 → H 151

耐久:H 101 → H 118

器用:H 109 → H 121

敏捷:H 163 → H 189

魔力:H 118 → H 142

狩人:I

 

《魔法》 

【パナギア・ケルヴノス】

・付与魔法

・雷属性

・詠唱式【鳴神を此処に】

 

《スキル》

(【輪廻巡礼】)

(・アビリティ上限を一段階上げる。)

(・経験値高補正)

 

疾風迅雷(ミョルニル・ゴスペル)

・『麻痺』に対する高耐性。

・雷属性に対する耐久力強化。

・被雷時に『力』と『敏捷』のアビリティ高補正。

 

 

クスノ・正重・村正

Lv.1

 

力 :C 651 → C 655

耐久:C 631 → C 634

器用:C 699 → B 702

敏捷:D 505 → D 508

魔力:I 0

 

《魔法》

【】

 

《スキル》

獅子吼豪(キングハウル)

・周囲アビリティ値一定以下の対象を威圧。

・『力』と『耐久』の高補正。

・一定範囲内の対象の獣人族の全アビリティ高補正。

・威圧・補正効果はLv.に依存。

 

 

ハルハ・ザール

Lv.1 → Lv.2

 

力 :A 832 → A 837 → I 0

耐久:A 819 → A 825 → I 0

器用:B 795 → B 799 → I 0

敏捷:B 783 → B 793 → I 0

魔力:E 441 → E 452 → I 0

拳打:I

 

《魔法》

【スリエル・ファルチェ】

・攻撃魔法 

・風属性

・詠唱式【今宵も鎌が死を喰らう。舞え、血潮の紅華(はな)。散れ、闘争の火花(はな)。高潔なる魂を汚し、悪辣たる罪を洗い流せ。堕落せし(ともがら)を想い、赫き月を血涙(なみだ)で満たせ】

 

《スキル》

【】

  

 

 

 ハルハは発展アビリティに『拳打』を選んだ。

 『狩人』も出ていたらしいが、『拳打』の方が体術での攻撃に『力』が補正されるらしいので、そっちのほうが戦闘スタイル的に合っているらしい。

 

 まぁ、ハルハはそっちの方がありがたいのは確かだよな。

 

 で、正重はずぅ~~っと鍛冶をしていた。

 あの騒動の合間も鍛冶に集中してて、気づかなかったらしい。

 

「………スマヌ」

 

「いやいや、正重。何も悪くないって。そもそも俺達が声をかけなかったのが悪いんだから」

 

「そうじゃな。闇派閥の襲撃と分かっておったのなら、まずはちゃんと仲間を集めるべきじゃ」

 

「な? だから、謝るのは俺達の方だよ。次はちゃんと声をかけるから、一緒に戦おう」

 

「うむ」

 

 正重の本分は鍛冶なのだから気に病む必要はないんだけど、団員が少ないし、ダンジョンでは頼りにしてたから、ちょっと申し訳なかったな。

 

 だが、今は正重が一番活躍している。

 

 ハルハの新しい大鎌や、俺の武具の手入れとグレードアップを行ってくれているからだ。

 だからこそ、戦闘は俺達がって想いもある。

 

 さて、ということで俺も今日は休暇なのだが……。

 

 

 現在、腕を組んで仁王立ちしてるアーディの前で正座しております。

 

 

「言い訳は聞かないよ」

 

「……うん、いや、はい。申し訳ありませんでした」

 

 俺は正座したまま深く頭を下げる。

 

「すっっっっごく探し回ったんだからね。君が戦ったって目撃情報は一杯あったし、【ミアハ・ファミリア】の店に行ったって聞いたから怪我したのかな!?って、心配してたのに。お姉ちゃんに怒られても探し回ったんだよ!」

 

「いや、もう、誠に申し訳ございません……」

 

「なのに、君は団員の綺麗なアマゾネスさんと本拠に帰ったって、真っ暗になってから聞かされてさ。お姉ちゃんに拳骨喰らって、さっきまで謹慎させられた私はなんて可哀そうなんだろうって思わない?」

 

「心の底から申し訳ないと思っております。どうか贖罪の機会を頂きたく。アーディ様」

 

 そう、俺は現在【ガネーシャ・ファミリア】の本拠【アイアム・ガネーシャ】のホールで正座している。

 

 俺とアーディの周りでは、団員さん達が首を傾げながら遠巻きに見ている。

 

 いや、もう、100%俺が悪いんだけどね。

 俺もお姉様の拳骨喰らうから。お願い、機嫌直してぇ!

 

「じゃあ、今日は私に色々付き合うこと!」

 

「ハイ、モチロン」

 

「なら、許してあげる!」

 

 アーディ様は満足そうに頷く。

 

 なんか嵌められた気もするけど、心配させて迷惑かけたのは間違いないから大人しく言うことを聞こう。

 

 ……あんまり他のファミリア同士で仲良くするのは褒められた話じゃないけど……。

 まぁ、【ガネーシャ・ファミリア】だったら、まだ大丈夫か? オラリオの警邏を率先して受け持ってるファミリアだし。 

 

 ……いや、でも俺、一応団長だからなぁ。

 ……とりあえず、今回は仕方ないと思おう。

 

「じゃ! 行こう!」

 

「一応、神ガネーシャか団長殿に挨拶しときたいんだけど……」

 

「お姉ちゃんはパトロール中、ガネーシャ様は静かだから本拠にはいないと思う。会ったら挨拶すればいいんじゃない?」

 

「……いいのか?」

 

「いいのいいの! うちの神はそれくらいで怒らないし!」

 

 アーディは俺の腕を掴んで、引っ張っていく。

 

 俺は抵抗せずに大人しく付いて行くが……。

 

「ア、アーディが……デート、だと……!?」

 

「しかも、あいつ……【迅雷童子】じゃないか?」

 

「なんでアーディと【迅雷童子】が2人で出かけてるの? しかもなんかさっき【迅雷童子】、頭下げてたし」

 

「昨日団長に怒られたのと関係あるみたいよ?」

 

「……団長に報告しに行くか」

 

「そうだな」

 

「その本心は?」

 

「「「「俺達の可愛いアーディを、あんなマセガキに盗られてたまるか!!」」」」

 

 ……盗らないから。

 団長の妹を『改宗』させるとか、怖くて出来ねぇよ。

 

 それに……他ファミリアの子と恋愛する気はない。

 

 こればっかりは……絶対の誓いだ。

 

 俺は、俺のような子を、生み出すわけにはいかないんだ。

 

 

 

 

 街はいつも通りの喧騒、のように見える。

 

 昨日の今日だ。

 流石にどこか暗い空気が流れているし、瓦礫や木材を運んでいる人達が行き来していた。

 

「お姉ちゃんが褒めてたよ」

 

「ん?」

 

「昨日のこと。君が速く動いたから、君がいた通りは一般人の被害が少なかったって」

 

「……そうか……」

 

「嬉しくないの? お姉ちゃんが褒めるなんて滅多にないよ?」

 

「……間に合わなかった人も、いたからな」

 

「……そっか。……ごめんね」

 

「謝らないでくれ」

 

 嬉しい気持ちもある。

 一度無様を晒した人に褒められたんだから。

 

 でもやっぱり……テルリアさんの顔が浮かんでしまう。

 

 助けられたかもしれない人がいたかもしれない。

 

 どうしても、そう考えてしまうんだ。

 

「……アーディに会えて、元気づけられてるから。謝らないでくれ」

 

「……うん、分かった。じゃあ、早速ご飯食べよ!!」

 

「ああ」

 

 アーディは俺をもっと元気づけるように輝く笑顔で俺の腕を引っ張る。

 

 俺の腕を掴む手が、少しだけ力強くなったように感じるのは、きっと気のせいじゃない。

 

 

 

 アーディ行きつけの酒場で昼食を食べ、屋台を見て回った俺達はオラリオ西の一角を一望できる高台へとやってきた。

 もちろん、全部俺の奢りです。

 

「ここって意外と穴場なんだ。まぁ、オラリオの端っこで、ギルドとか冒険者御用達の店が多いからか、人があまり近づかないんだろうね」

 

「ふぅん……」

 

 俺達は手すりに座って、この前のように屋台で買った果物を齧る。

 

 昨日、あんなことがあったというのに、天候は晴れ、そよ風が心地よく、どこかホッとしてしまう。

 

 しばらく街の喧騒と、果物を齧る音だけが響く。 

 

「……私さ」

 

「ん?」

 

「『アルゴノゥト』って英雄譚が好きなんだぁ」

 

「『アルゴノゥト』……。確か、英雄になりたい青年が王女を救う物語だっけ?」

 

「そ。別に特別な力があるわけじゃないのに、色んな人に支えられ、騙されて、傷ついて、なんだかんだで王女様を救うの。よくあるカッコよく助けるお話じゃないんだけどさ。でも、なんでか好きなんだぁ」

 

 詳しい内容は知らない。

 でも、アニメではティオナ・ヒリュテがベルの事をそう呼んでいた。そして、ベルのスキルの名前でもある。

 

「なんでかなぁ……? なぁんか他人事じゃないからかな? 私達冒険者も似たような感じじゃん? まぁ、神の恩恵があるけどさ」

 

「ふぅん……まぁ、なんとなく想像は出来るな」

 

「後は……すっごく考えさせられるんだよね」

 

「考えさせられる?」

 

「『正義』って何だろうって。他にも、アルゴノゥトは『喜劇』を演じ続けて、人々を笑顔にするために戦った。……今のオラリオを見たアルゴノゥトはどうするのかなって」

 

「……」

 

 『正義』。

 

 それは多分、今後のオラリオにおいて最も議題となる言葉だろう。

 

 

 『正義』と『秩序』を掲げる【アストレア・ファミリア】。

 

 

 暗黒期を駆け抜け、悲劇をもって暗黒期を終わらせる者達。

 

 そして、ベルを導くヒロインの1人、リュー・リオンが追い求め、苦しめられる言葉。

 

「……『正義』をこれだって決めるのは無理だと思うな、俺は」

 

「どうして?」

 

「その時その時で、人々を苦しめる『悪』が違うからさ」

 

「『悪』が違う?」

 

「今は闇派閥だ。でも、少し前まではどちらかと言えばモンスターだったり、日々の生活の苦しさだった。倒すべき相手が違えば、戦い方も変わる。だから、人によって『正義』は変わると思う」

 

「……」

 

「だから、アルゴノゥトは『喜劇』を演じたんだ。少なくとも、人々を笑顔にすることは『悪』じゃない。笑顔は人に元気を与える。アルゴノゥトはそれを『正義』にしたんじゃないか?」

 

「……そっかぁ」

 

 まぁ、ホントの所は分からない。

 俺は『喜劇』を演じ続けるなんて出来ないと思う。

 

 もちろん、救えるならば皆救いたい。けど、俺にそんな力はない。

 だから、手が届く範囲で、絶対に守りたいと思う人を守りたい。

 

「じゃあ、私はどうすれば皆を笑顔に出来るのかってことだね」

 

「……アーディはそのままでいいと思うけどなぁ」

 

「え?」

 

「いや、なんでもない」

 

 いかん。口にしてたか。

 

 するとアーディは聞こえていたのか、意地悪い笑みを浮かべて俺の顔を覗き込んできた。

 

「ねぇねぇ、今なんて言ったの? なんて言ったの? ねぇねぇ」

 

「何も言ってない。なんにも言っておりません」

 

「え~~絶対何か言ったぁ」

 

「幻聴が聞こえるなんて疲れてるんだな」

 

「じゃあ、その疲れは君のせいだよね。昨日はずぅっと君を探してたんだし」

 

「……」

 

 墓穴堀った。

 まぁ、もう言う気はないけど。

 

 俺は果物を食べ終えると、手すりから降りる。

 

「そろそろ帰るよ。あまり遅くなると、酔っぱらったうちの主神から拳骨を浴びかねないし」

 

「え~、もう?」

 

「まだスセリ様にアーディのことを伝えてないんだよ。そっちだって神ガネーシャに伝えてないんだろ? いくら神ガネーシャが奔放で優しき神とは言え、流石に問題だ。一応、俺団長だし」

 

「う~ん……しかたないかなぁ」

 

「スセリ様と神ガネーシャが問題なければ、またこうして会えるさ。スセリ様だって治安維持を担う【ガネーシャ・ファミリア】と友好を深めることに文句は言わないと思う。うちだってオラリオを滅茶苦茶にされたら困るしな」

 

「だったらいいか。うん! またね!」

 

 アーディは輝かんばかりの笑顔で再会の挨拶をする。

 

 俺も笑みを浮かべて、

 

「ああ、またな」

 

 そう、挨拶した。

 

 

…………

………

……

 

 

「ほぉ~う。つまり、妾が団長であるお前の代・わ・り・に、ハルハを労ってやっておった合間。お前は他のファミリアの可憐な女子相手と逢引(でぇと)しておったと」

 

「いえ……それは、ですね……。その子には、少々、ご迷惑をかけたので謝罪をということででして……」

 

「その見返りが逢引(でぇと)であれば、お前はこれからもそれに応じるということじゃな?」

 

「……」

 

 今現在、俺はスセリ様の腕の中にいる。

 

 後ろから俺を抱いて、顎を俺の頭の上に置きながら追い込んできている。

 

 酔っぱらってはなかったけど、それはそれでこの状況は素で拗ねていることに他ならないので厄介ではある。

 

 ちなみにハルハは少し離れた場所で笑いながら酒瓶を傾けている。

 正重は鍛冶の真っ最中。

 

「まぁ、いいじゃないか。スセリヒメ様。団長とは言え、7つのボウヤなんだ。歳が近い子と仲良くなるのは悪い事じゃないと思うよ? 相手も【ガネーシャ・ファミリア】の子で、団長の妹って話じゃないか。悪いことにゃならないさ」

 

「ま~の~。ガネーシャの奴のとこならば問題はないじゃろうが~」

 

「聞いた限りじゃ、フロルもちゃんと団長として筋を通そうとしてたじゃないか」

 

「結局事後報告じゃがの~」

 

「はぁ……やれやれ、ホントにフロルには過保護だねぇ」

 

 まぁ、降臨された理由が俺ですからね。

 それに滅茶苦茶お世話になってますし。母親と言っても過言ではない。というか、もう母親なんだよなぁ。

 

「まぁ、ですので……一度スセリ様からも神ガネーシャに挨拶をしていただければ」

 

「しょうがないの。まぁ、お前とハルハは闇派閥の者と因縁があることじゃし、【ガネーシャ・ファミリア】と連携を密にするのは悪い事ではあるまいて」 

 

 ありがとうございます。

 

 だが、結局俺は朝までスセリ様の腕の中で過ごすことになるのだった。

 

 絶対にアーディにはバレたくないな……。

 

…………

………

……

 

 翌朝。

 

 装備も整ったので、ダンジョンに行こうと話をしていた時。

 

「失礼する! 誰か居られるでしょうか!?」

 

「ん?」

 

「客かの?」

 

 スセリ様と俺が出向き、ハルハは新調された武器を確認し、正重は葛籠を整理することにした。

 

 玄関へと出ると、そこにいたのは甲冑を身に着けたエルフと思われる女性騎士だった。

 エルフと分かる理由は顔上半分と頭を覆う兜から長い耳が覗いていたからだ。

 

 右手には長槍、左手には短槍を握っていた。

 

「神スセリヒメとお見受けします」

 

「いかにも。何用かの?」

 

「私、冒険者志望の未熟者なのですが、ギルドにて団員募集をしておられるファミリアを訊ねたところ、こちらをご紹介頂きました」

 

 へ? 団員募集してたの?

 

「スセリ様?」

 

「うむ。拠点も大きくなったし、一応ギルドの方にの。まぁ、それでもよっぽどのことがない限り、来ることはないと思っておったのじゃが……」

 

「それは何故?」

 

「一気に人が増えても面倒じゃからの。信用出来そうじゃが、厄介事を抱えておりそうな者を紹介してくれと頼んだんじゃ」

 

 厄介事って。

 言ってよ。

 

 昨日、アーディのことで怒ってたじゃないですか。

 

「妾じゃからの!」

 

「ですよね」

 

 まぁ、入団希望ならば面談しないといけないですね。

 

 俺達は彼女を応接間に案内する。

 

 もちろん、ハルハと正重にも声をかけて、同席させる。

 

 彼女はソファに座り、兜を外した。

 

 露になった彼女の素顔は、女神にも負けないほどの美貌だった。

 

「ほぅ……」

 

「おぉ……」

 

「へぇ……」

 

 灯りに反射する黄緑色のショートヘア、透き通った白い肌に翡翠の瞳。

 

 その美しさにスセリ様を始め、俺達も感嘆の声を思わず上げる。

 

 彼女は頭を下げる。

 

「顔を隠していた無礼を謝罪致します。私の名はディムル・オディナ。見ての通り、エルフの末席を汚す者です」

 

「【スセリ・ファミリア】団長のフロル・ベルムです」

 

「ハルハ・ザールだよ」

 

「クスノ・正重・村正」

 

「さて、オディナよ。オラリオに来て、冒険者を目指す理由を聞こうかの。言うておくが、嘘は通じぬぞ」

 

「存じております。……私の一族はかつてハイエルフに騎士として仕えておりました」

 

 え。それって近衛騎士って奴では?

 

「しかし、二代ほど前の当主が忠義に背き、我ら一族は追放となりました。以降、他の森に移り住み、静かに暮らしていたのですが、私は積み重ねた一族の武を廃らせたくはないと思い、冒険者として生きることを決めました」

 

「……ふむ。お主は騎士として仕えていたわけではないのだな?」

 

「はい。私は今の森に移り住んだ後に生を受けましたので、祖父や父から当時の話を聞きながら、武技を教わっておりました」

 

「なるほどのぅ。神に恩恵を受けていたこともないのじゃな?」

 

「ありませぬ」

 

「……話を聞く限り、何が厄介事なのですか?」

 

 俺は首を傾げて思わず訊ねてしまった。

 

 ディムルさんは目を伏せて、

 

「我がオディナの家名は、エルフにとって悪名なのです。王族を裏切った不忠の一族として、かの魔剣鍛冶師の一族『クロッゾ』にも負けぬほどに」

 

 ……なるほど。

 つまり、エルフがいない、またはエルフの入団の話がないファミリアはここしかなかったってわけか。

 

 だが、スセリ様は腕を組んで眉間に皺を寄せる。

 

「……ロイマンめ。押し付けよったな?」

 

「え?」

 

「いや、何でもない。さて、フロル。お前はどうじゃ?」

 

「俺は別に問題ありません。外ではオディナの名は隠してもらうことになるかもしれませんが」

 

「それは構いません。ファミリアに迷惑をかけることは本望ではないので」

 

「じゃあ、俺は大丈夫ですね。正重とハルハは?」

 

「スセリ様とあんたがいいなら、アタシも文句はないよ」

 

「俺、大丈夫」

 

「じゃあ、入団ということで」

 

「ありがとうございます……!」

 

 ディムルさんは深く頭を下げる。

 

 ところで……。

 

「兜を被ってた理由はあるんですか?」

 

「……我が一族が追放された発端がこの顔なのです」

 

「ふむ? あれか? その美貌で王族と恋仲になったということかの?」

 

「……はい。男でも似たような顔つきで、王女と駆け落ちしたのです。もちろん、王族の方々も美貌の持ち主ですので……」

 

「まぁ、子孫も同じ顔となってもしょうがなかろうな」

 

「オラリオに来るまで何度も襲われそうになり、女神にも嫉妬されてしまい……」

 

「なるほどのぅ。ならば顔を隠しておくべきじゃな」

 

「そういえば、オラリオにはハイエルフが1人いるけど、それは大丈夫なのかい?」

 

 ハルハの言葉に、俺はリヴェリアさんを思い出した。

 

「あぁ……リヴェリアさんか」

 

「……不安ではありますが……名を知られなければ……」

 

「まぁ、最悪リヴェリアにだけでも挨拶しても良いかもしれんの。あ奴は王族として畏まれるのが嫌らしいし。リヴェリアが許せば、オラリオのエルフはひとまず表立って騒ぐこともあるまいて」

 

「だといいですけどねぇ」

 

「最悪、妾がキレかけておるとでも言えばよかろうて」

 

 それもそれで騒動になる気しかしないなぁ。

 

 まぁ、バレたらバレたで考えよう。

 正直、ヴェルフ同様、先祖が問題なのであって本人は何もしてないんだし。

 

 

 ということで、ディムルさんは【スセリ・ファミリア】に入団したのであった。  

 

 

 




美少女と遊んで、美女神の抱き枕にされて、美女エルフを仲間にする……なんだあのショタ(嫉妬)
そしてディムルさんのモデルは、もちろんディルムッドさんです。ダンまちは英雄さんのオマージュキャラも出せて楽しいですよね

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