【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~   作:独身冒険者

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もう開き直って、キリがいいところまでは一気に投稿してしまおう(ヤケ)

さぁ……奴の登場だ!


最強の冒険者

 フィンさん達と協定を結んで1カ月。

 

 俺達は……特に何もなくいつも通りダンジョンに挑んでいた。

 

「ふっ!」

 

 ダンジョン16階層。

 俺はライガーファングの右脚をすり抜けざまに斬り飛ばす。そしてすぐさま身を翻して、バランスを崩したライガーファングの首を斬り落とす。

 

 そのまま足を止めずに走り、周囲を囲んでいたヘルハウンドの群れに突撃する。

 二振りの刀を順手逆手に持ち替えながら、ヘルハウンド達を一太刀で斬り伏せていく。

 時に火を吹こうとした奴の顎を蹴り上げて自爆させたり、刀を突き出しながら全力で突っ込んで2匹同時に貫いて倒す。

 

 更に新たなライガーファングが猛スピードで迫って来た。

 俺は直前で跳び上がり、頭を足場に更に高く跳び上がる。体を捻って、左手の刀を全力で投擲して真下のライガーファングの頭を貫く。

 視界の端にヘルハウンドが火炎を放とうとしていたのを捉えたので、右手の刀も投擲してヘルハウンドの開けられた口奥に突き刺した。

 

「【鳴神を此処に】!」

 

 魔法を発動して雷を纏いながら天井に足を着けて勢いよく蹴る。

 

「はああ!!」

 

 雷が如く落下し、ライガーファングの背中に踵落としを叩き込んで焼き潰す。

 そのまま足を止めることなく、高速で動き続けてヘルハウンドの群れを一撃で屠っていく。

 

 移動中に地面に落ちていた刀二振りを回収し、引き続きヘルハウンドを倒していった。

 

 ええ、もうお分かりでしょう。

 

 

 俺は今、モンスターの大量発生―【怪物の宴(モンスターパーティー)】に遭遇しております!!

 

 

 ハルハ達?

 大量発生を確認した瞬間に撤退を命令して、俺が囮になった。

 ……多分、暴れてるだろうけど。

 

 とりあえず、俺は大量発生の中心で暴れ回っている。

 ライガーファングとヘルハウンドばかりだけど数が多すぎる! 

 ミノタウロスがいないだけマシだけどさ!

 

 それでもかなりギリギリだ……!

 

 こんな時に限って、ドットムさんは上層で正重とディムルの指導に付いて行ってるんだよなぁ……!

 

 全っっ然! いつも通りじゃない!!

 

 魔力もヤバいけど、刀の消耗もマズイ。

 替えの武器は巴が持ってるから補給が出来ない。

 

『ヴヴォオオオオオオオ!!』 

 

「げっ……!?」

 

 この声は、ミノタウロス……!?

 

 頬を引き攣らせると同時に、下の階層へと繋がると思われる通路からミノタウロスの集団が雪崩込んで来た。

 

 勘弁してくれよ……。

 

 俺はヘルハウンドの首を蹴り折りながら、離脱するかどうか考える。

 でも、下手したらハルハ達にミノタウロス達が行くかもしれないし、上層に引き連れかねない……!

 他の冒険者に押し付けるわけにもいかん。絶対に怪物進呈はしたくない。

 

 せめて半分は倒したいところだが……!

 

 短期決戦だ……!

 

「【鳴神を此処に】!」

 

 俺は魔法を()()()()()()

 最近気づいた【パナギア・ケルヴノス】の特性。付与の重複だ。

 もちろん消費魔力も体への負荷も倍増するが、十分すぎる切り札にはなる。

 

「おおおおお!!」

 

 俺は一息に群れの先頭にいるミノタウロスに接近し、鋭く首に雷閃を振るう。

 

『ヴヴォオ!? ヴォオオ!!』

 

「ちぃ!」

 

 ミノタウロスは首から血を噴き出し悲鳴を上げながらも、腕を振るって反撃してきた。

 俺は舌打ちしながら後ろに下がろうとしたが、

 

 横から火炎が襲い掛かってきた。

 

 ヘルハウンドの火炎攻撃!?

 くそっ! どっちかは当たる!!

 

「くっ!」

 

 俺は火炎に向かって突っ込み、直撃の直前に刀を全力で振り上げて()()()()()()()()()

 

 だが、そんな博打が上手く行くわけもなく、雷と反応して爆発した。

 それでも無理矢理に突っ切って、ミノタウロスの拳を躱す。

 

 ミノタウロスは怒りに吠えながらも、その体を黒灰に帰す。

 俺はヘルハウンド達を先に倒そうと思ったが、仲間を倒されたミノタウロス達が雄叫びを上げて俺に向かって一斉に突撃してきた。

 

 ああ! くそっ! 最悪に絶望的だな!

 ヘルハウンドの火炎が流石に何度も防げないし躱しにくい。

 

 だったら!

 

 俺はあえてミノタウロスの群れの中に高速で滑り込む。

 出来る限りすれ違いざまに奴らの脚を斬りつけるが、斬り飛ばすまではいかなかった。でも、動きは鈍らせることは出来ると思う。

 

『ヴヴォオオオオ!!』 

 

「おおおおおお!!」

 

 俺はミノタウロス四面楚歌という絶望的状況で刀を振るい続ける。

 くそっ! 群れの何体かは石で出来た『天然武器』を持っていて、強烈な一撃が嵐のように襲い掛かってくる。

 直撃はないが、流石に四方から攻められて逃げ場が少なく、何度か掠ってしまった。

 

 防具は簡単に吹き飛び、あちこちから血が流れている。

 刀も刃毀れが酷い。そろそろ折れるだろうな。

 魔法の維持も限界だ……! 本格的にヤバい……!

 

 でも、群れの外に出てもヘルハウンドの火炎の津波に襲われるだけだ。

 

「はぁ! はぁ! はぁ! はぁ!」

 

 これ! 地味にベル・クラネル達の中層初挑戦よりもハードじゃないか!?

 って言うか、これって中層で冒険者が死ぬパターンNo.1だろ!?

 

『ヴォオオオ!!』 

 

「マズッ……!」

 

 真後ろからのヘビースウィングに俺はギリギリで二本の刀で防ぐも、バギン!!と折れて俺は吹き飛ばされる。

 

「がっっ―――」

 

 息が止まる。

 

 意識が白くなる。

 

 上下が分からなくなる。

 

 そして全身に衝撃と激痛が走る。

 

 最後に背中に衝撃が走って、硬い地面に横たわる。

 

 ……壁に、叩きつけ……られた……のか?

 ……手足の感覚は、ある……よく、生きてる…な……。

 魔法も、解除されたか……。

 

「ぐっ……!」

 

 俺は身体に活を入れて起き上がる。

 

 まだ……体は動く!! 

 

 俺は立ち上がると同時にその場から駆け出す。

 直後、火炎が俺の背後を走り、壁に直撃して爆発する。

 

 ヘルハウンドの火炎だ。

 そして、ミノタウロス達が武器を振り被りながら走り迫ってくる。

 

 俺は痛みに耐えながら全力で足を動かして、奴らを撹乱するように逃げ回る。

 

「どうする……! どうする……!?」

 

 武器はない。魔法も品切れ。体力も限界。左手の動きが鈍いし、胸が痛い。骨が折れ―いや、砕けてるかもな。

 敵はわんさか。しかも中層最悪の組み合わせ。 

 

 回復薬は壊れた。仲間は来ないし、来てほしくない。

 逃げるのも仲間や他の冒険者を巻き込む可能性が高い。流石にヘルハウンドやライガーファングから逃げ切れるコンディションじゃないしな。ミノタウロスまで来たら、闇派閥扱いされてしまう。

 

 八方塞がりにも程がある……!

 

 だが、諦めるつもりは無い。

 死んでたまるかよ!

 

 何とか活路を見出そうとしていた、その時。

 

 ミノタウロスの群れが現れた通路から、桁外れな気配が近づくのを感じ取った。

 

 な、なんだ……!?

 

 俺が視線を向けた直後、通路から黒い突風が吹いたかと思うと、モンスター達が一瞬で切り刻まれた。

 突風が吹いた先には、槍を握る黒髪で黒い猫耳を持つ猫人の男がいた。

 

 あれは……まさか!?

 

 俺が目を見開くと、更に通路から猫人のソニックブームとは比べ物にならない衝撃波が通路の入り口を吹き飛ばしながらルームへと吹き込んできた。

 

 一瞬でルームに溢れていたモンスターの群れが半分以上消えた。

 

 ……なんて、力だ。

 

 

 そして、通路から現れたのは、大剣を担ぐ猪人の巨漢。

 

 

 ……やっぱり【フレイヤ・ファミリア】……!!

 あの人が……現オラリオ最高の冒険者、【猛者】オッタル。

 

 【猛者】は俺を一瞬一瞥すると、すぐにモンスター達に視線を戻す。

 

「……恨みはない。だが、俺の前に立ち塞がるならば――容赦はせん」

 

 そう告げた【猛者】は、まるで虫を払うかのように全く力む様子もなく大剣を薙ぐ。

 

 

 手加減とも呼べぬ程に軽く振られた一撃は―モンスター達にとっては死神の鎌に等しかった。

 

 

 たった二振り。

 俺にとっての絶望は、【猛者】にとって正しく虫けら扱いだった。

 

 これが……今の『頂点』か。

 多分、今はまだLv.6辺りだろうけど。それでもフィンさん達とは比べ物にならないほどの存在感だ。

 あの猫人は多分『都市最速』と云われるアレン・フローメルだ。……レベルまでは分からないけど、あの速さは【パナギア・ケルヴノス】を使っても追いつけるかどうか分からない。

 

 でも【猛者】は駄目だ。

 どうやっても()()()()()()()()。勝てる可能性が見つけられない。

 

 通路からは更に団員達と思われる冒険者の集団が現れる。

 遠征帰り…か?

 

 【猛者】は大剣を背中に仕舞い、俺に視線を向ける。

 

「……【迅雷童子】か」

 

「ああ? あんなチビが? はっ、この程度で死にかけるなんざ、世界記録持ち(レコードホルダー)も大したことねぇな」

 

 猫人の男が俺を見て、嘲笑しながら蔑む。

 

 ……ちょっとイラっとしたが、不甲斐ないのは事実だ。だから言い返したりはしない。……仕返しに礼も言わないけどな。

 

 その時、

 

「フロル!!」

 

 【フレイヤ・ファミリア】が来た通路とは反対側の通路から、そこそこ傷だらけのハルハ達が駆け込んできた。

 ……良かった。死んでなかったみたいだな。どうやらミノタウロスまでは出なかったみたいだ。

 

 ハルハ達は俺のところに一直線に来て、俺を庇うように【フレイヤ・ファミリア】と向かい合う。

 

「ったく、勝手に囮になったのをぶん殴ってやろうかと思ったのに! ようやく見つけたと思ったら、【フレイヤ・ファミリア】と睨み合ってるんじゃないよ!」

 

「それと悪ぃな! こっちの回復薬は品切れだ!」

 

 ハルハの鎌、刃が折れてるな。

 アワランや巴の手甲も砕けてるし、ツァオの盾もあちこち欠けてる。リリッシュはローブがボロボロだ。

 ここに来るまで大分無茶をしたらしいな。

 

 ……嬉しいけど、今は喜んでる場合じゃないな。

 

「武器を下ろせ、皆。こんなボロボロで【フレイヤ・ファミリア】と戦っても勝てるわけがない。無駄な抗争はするな」

 

 俺はハルハ達に臨戦態勢を解くように言う。

 ハルハ達は顔を顰めるが、自分達が限界なのは嫌という程理解していたんだろう。

 文句を言わずに武器や拳を下ろす。

 

 それに猫人の男が不快気に眉を顰める。

 

「ふん……腰抜け共が」

 

「止めろ、アレン」

 

「うるせぇ、指図すんな。腑抜けを腑抜けと言って何が悪い」

 

 【猛者】はアレンの言葉に小さくため息を吐くと、腰に手をやって何かを取り出して、そのまま俺達にそれを投げ渡してきた。

 ハルハが受け取り、それを見ると目を見開く。

 

「エリクサー……!?」

 

「「なっ……!?」」

 

 俺達も驚きに目を見開き、【猛者】に視線を戻す。

 

「……何のつもりだい?」

 

「お前達の団長に使ってやれ」

 

「……貸しでも押し付けようってのか?」

 

「そんなものはいらん。俺はただ、団員のために囮となった長と、他の者達を巻き込まないために逃げ出さずに戦い続けた戦士に、敬意を払っただけだ」

 

 【猛者】はそう告げると、団員達に顔を向け、

 

「行くぞ」

 

 淡々と告げた【猛者】は歩み始め、他の団員達は何も言わずに彼の後ろに続く。

 アレンは舌打ちするも、それ以上は何も言わず、俺達を見ることなく【猛者】達の後に続いた。

 

 彼らを見送った俺達は、息を吐いて身体の力を抜く。

 

 そして、ハルハは瓶の蓋を外して、俺の頭からエリクサーをぶっかけて来た。

 

「ぶっ……! ちょっ、ハルハ……!」

 

「せっかく貰ったんだから使っときな。実際、もう限界だったんだろ?」

 

「う……」

 

「はぁ……色々と言いたいことはあるけど、それは戻ってからにしようかね。流石にアタシらもこれ以上はキツイ」

 

「だな……。けどよ、この魔石、放っておくのか?」

 

 ルームには魔石やドロップアイテムが散々している。

 確かにもったいなくはあるが、全部運ぶのは無理だな。それに、

 

「これを倒したのはほとんど【フレイヤ・ファミリア】……というか【猛者】だ。猫糞するのは嫌だな。エリクサーまで貰ったし」

 

「なら、礼として回収して換金し、【フレイヤ・ファミリア】に届ければいい」

 

「……まぁ、それなら」

 

 リリッシュの提案に俺は文句はないが、そもそもこれを運べる袋がないんじゃ?

 

「私のローブと鞄の中に入ってる布を使えば、ギリギリ行けると思う」

 

 リリッシュはローブを脱ぎ、その下に背負っていた小さなリュックから大きい風呂敷を取り出した。

 あぁ……そう言えば、サポーター代わりとしてリリッシュにいくらかお願いしてたんだっけか。

 

「では、団長とハルハ殿は少し休まれよ。某達が魔石とドロップアイテムを回収してくる故」

 

「帰り道、2人に頼むことになる」

 

「そうかい。じゃあ、お言葉に甘えるよ」

 

 ハルハは俺の横に腰を下ろし、アワラン達が魔石などを集めに行く。

 俺も傷は大分治ってきて痛みも引いてきたが、体力的にまだキツイ。申し訳ないが休ませて貰おう。

 

 【猛者】のおかげでルームの壁がボロボロだから、ここでモンスターが生まれることはまだないだろう。

 

「はぁ……そっちはミノタウロスは出なかったんだな」

 

「まぁね。ヘルハウンドとライガーファングだけでも結構ギリギリだったから、出て来たらヤバかったね。15階層に逃げようにも絶対追いかけてくる感じだったからさ耐久型の3人と殲滅型魔導師がいて良かったよ」

 

 なるほど。ハルハが注意を引き、アワラン、巴、ツァオがリリッシュを守り、その隙にリリッシュが詠唱して魔法で一気に殲滅してたわけか。

 

 10分ほどすると回収も終わり、俺達は早足で上層へと戻る。

 荷物はアワランが持ってくれている。すまんね。多分今となっては俺が一番元気な気がするんだ。

 

「まぁ、体力的には問題ねぇよ。それにしてもエリクサーって滅茶苦茶効くんだな」

 

「その分、滅茶苦茶高いけどね。でも、今回の事を考えると、やっぱり回復薬はケチれそうにないなぁ。はぁ……うちも余裕があるわけじゃないんだけど……」

 

「ヘファイストスに借金あるんだったかい?」

 

「正確には正重にだな。正重の武器を担保に金を貸してもらったから」

 

「先々代村正頭領の武具とその主神の魔剣でありましたな。やはり極東の武芸者としては一目見てみたいものですな」

 

「然り」

 

「まぁ、正重がランクアップして上級鍛冶師になれば、それこそ村正の武具がお目にかかれるぞ」

 

「おお!」

 

 正重だって派閥から認められてないだけで、主神からは認められてたみたいだしな。

 

 

 

 

 その後、何とか無事に地上へと帰還した俺達は、ギルドで魔石とドロップアイテムを換金する。

 ちなみに俺達の取り分はリリッシュの鞄に入れてた奴で、アワランが持ってたのが【フレイヤ・ファミリア】に渡す分である。

 

「で、どうやって渡すんだよ。これ」

 

「申し訳ないが、スセリ様にお願いするしかない。俺達が行けば神フレイヤの『魅了』に耐えられず、何を言われるかも何を口走るかも分からん」

  

「そんなにヤベェの?」

 

「『美の神』だからね。特に神フレイヤの『魅了』はその気になれば、モンスターや神すらも虜にしちまうらしいよ。だから、アタシら下界の住民は自然に溢れてる神気だけでも目にするだけでやられちまうのさ。これまでも何度か他派閥の眷属を虜にして、騒動を起こしたこともある」

 

「うげぇ……」

 

「それは……」

 

「恐怖」

 

「でも興味はある」 

 

 やめてくれ、リリッシュ。

 お前はうちで唯一の魔導士なんだから。

 

 屋敷に戻った俺達は早速スセリ様に報告に向かう。

 先に戻っていた正重にディムル、ドットムさんも呼んで、俺は正座してダラダラと冷や汗を掻きながら一部始終を説明する。

 

「――と、言うわけで、ありましてですね。ス、スセリ様には、申し訳ないのですが、神フレイヤに、こちらをお渡しして頂きたく……」

 

「……」

 

 スセリ様は眉間に皺を寄せて目を伏せ、腕を組んで終始黙っていた。

 

 ……こ、怖い。

 他の面々も流石に茶化せないのか、ハルハさえも背筋を伸ばして横で正座してる。

 

「……はぁ~」

 

 スセリ様は大きくため息を吐いて、ちょいちょいとすぐ目の前を指差す。

 

 ……そこに来いと。

 

 俺は大人しく正座したまま目の前まで移動する。

 

 そして、スセリ様は俺の頭に手を置き、

 

 

 ギリギリとアイアンクローを喰らわせた。

 

 

「いいいいいっ!?」

 

「全くお前は……」

 

 スセリ様は俺の頭から手を離すと、連続で手刀を頭頂部に打つ。

 

「無茶を、して、強く、なっても、身には、ならんと、何度、言えば、分かる」

 

「いや、ホント、に、面目、次第、も、ござい、ません、です、はい」

 

 徐々に強くなっていく手刀。

 

「そんな、囮に、なって、こ奴ら、が、大人しく、逃げる、とでも、思うて、おった、のか」

 

「いや、ホント、に、面目、次第、も、ござい、ません、です、はい、ホント」

 

 

「ほんに、分かっておるのかぶぁっかもん!!

 

 

 最後に拳骨が落とされた。

 

 ぐふぅ!?

 

 俺は正座したまま額を畳に思いっきり打ち付ける。

 

「全く! まぁ、異常事態であれば仕方ないところではあるし、お前の過去を思えば理解も出来るが、それであの娘や団員達が納得するとでも思っておるのか? 妾からすれば、お前が死ぬくらいであれば、むしろフレイヤの子達に怪物進呈するくらいの方がまだ笑って許してやれるわ」

 

 ……ホントに申し訳なさ過ぎて、何も言えません。

 

「己を犠牲にして仲間を守る。それは確かに善であろう。確かに正義であろう。もっとも、『自己満足の』が頭に付き、他はだぁれも納得も認めもせぬだろうがな」

 

「……はい」

 

「言うたはずじゃぞ。死んでの栄誉なぞ、妾は喜ばぬし誇らぬ。例え周りからは惨めに笑われ、侮辱されようとも生き延び、次こそ誰にも馬鹿に出来ぬ栄誉を得られるように精進せよとな。己が弱さを受け入れられぬ者が、真の強さを得られる道理はない」

 

「……はい」

 

「他の者達もじゃぞ。無理と思うならば逃げよ。それが嫌なのであれば、地道に着実に精進出来るように考えるように」

 

 スセリ様の言葉に全員が頷く。

 

「フレイヤに関してはお主らの言う通り、妾が動くとしよう。あ奴は普段はバベルにおるらしいから、近々開かれる神会で会えれば、声をかけてみよう」

 

「お願いします」

 

「で、じゃ。フロル、お前は反省と休養、そして鍛え直しで2週間ダンジョンはもちろん、外出も禁止じゃ。ハルハ達との組手もなし。妾との組手か自己鍛錬のみ許す」

 

「………はい」

 

 大人しく受け入れるしかない、か。

 

「ハルハ、アワラン、リリッシュ、巴、ツァオも休養と装備を整える時間もいるじゃろうから、3日間ダンジョン禁止とする。今回の事態を顧みて、己を今一度見つめ直せ。ただし、本拠内での組手までは止めぬ」 

 

「ま、今回は仕方ないねぇ」

 

「うっす」

 

「問題ない」

 

「御意」

 

「承知」 

 

「正重、ディムルはお咎めなしじゃが、ダンジョンに行く場合は必ずドットムと共に行動するようにの」

 

「うむ」

 

「はい」

 

「ドットムも他の連中の相談になど乗ってやっておくれ」

 

「おう。そのつもりだぜ」

 

「では、今は身体を清め、休めると良い」

 

 解散となり、それぞれ自室に戻ったり、そのまま風呂に行ったり、鍛冶場に行く。

 

 俺もスセリ様と自室に戻り、装備を外して改めて全身を確認する。

 流石エリクサーだ。目立った傷はほとんどない。

 

 

 その後、俺は風呂に入って汚れを落とすと、部屋にいる時も、食事中も、そして寝る時も、スセリ様の抱き枕にず~~っとされるのであった。

  

 

 




いつの時代も奴は化け物なんだよ
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