【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~   作:独身冒険者

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いてまえ!その2


己を見つめ直す

フロル・ベルム

Lv.2

 

力 :F 358

耐久:G 291

器用:G 269

敏捷:E 422

魔力:G 225

狩人:I

 

《魔法》

【パナギア・ケルヴノス】

・付与魔法

・雷魔法

・詠唱式【鳴神を此処に】

 

【】

 

《スキル》

(【輪廻巡礼(エクセリアキャリア)】)

(・アビリティ上限を一段階上げる)

(・経験値高補正)

 

疾風迅雷(ミョルニル・ゴスペル)

・『麻痺』に対する高耐性

・雷属性に対する耐久力強化

・被雷時に『力』と『敏捷』のアビリティ高補正

 

 

 

 

 めっちゃ伸びてるけど、流石に前と比べてバラつきが出てきたな。

 まぁ、最近武器は刀とかばっかりだったし、魔法もそんな使ってるわけじゃないしな。ダメージも前よりは負わなくなってきたって言うか……無謀な戦いをすることがなくなったからだな。

 ハルハ達が仲間になったからというのも大きいだろう。

 

「やれやれ……少し複雑じゃのぅ。喜ぶべきか、このせいで無茶をすると嘆くべきか」

 

「あははは……」

 

 笑うしかありません。

 

「全く……。それにしても、お前はほんに変なところで運が悪くて、運が良いの。普通であれば絶望的でしかない状況で、ここぞという時に最高の助っ人が来ておる」

 

 確かに……。

 フィンさん達に椿さん、シャクティさん達に【猛者】達。

 

 今のオラリオじゃこれ以上ない面子だな。

 喜ぶべきかどうかは本当に分からんけど。

 

「まぁ、それもまた冒険者にとって必要な素質ではあるから良いとしよう。生き残れたのであれば、瑣末なことよ。問題は……それにお前が慣れてはおらぬかという事じゃ」

 

「……慣れる?」

 

 俺は首を傾げる。

 スセリ様は小さくため息を吐き、

 

「ヒロや。お前、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「!?」

 

 スセリ様の言葉に目を見張って固まる。

 ……それ、は……。

 

「本来、冒険者は蹴落とし合う競争相手。己こそが最強、英雄たらんとする以上、必ず潰し合う定め。もし、それでも手を差し伸べるのであれば、それは失い難き友か……敵にもならぬ小物か」

 

「っ……!」

 

「ガネーシャのシャクティやヘファイストスの椿は、まぁ特殊な例じゃろうな。じゃが、間違いなく【勇者】や【猛者】はお前を障害にもならぬ小物と思うておったであろうな。……それでもお前はまた次も助けて欲しいか?」

 

 そんなわけがない。

 

 そんなこと、認められるわけがない。

 

「故に、今一度己を見つめ直すが良い。何のために強くなり、何のために冒険者をし、何を得て、失ってきたのかを、な」

 

「……はい」

 

「今日一日は身体を休め、まずは精神から見つめ直せ。心が定まらずに肉体を鍛えたところで惰性に終わりかねんからの」

 

 そう言って、スセリ様は部屋を後にした。

 

 俺はその場でゴロンと仰向けに寝転がる。

 

「……何のために、か」

 

 生き残るため。

 

 すぐに浮かび上がるのはこれだけど、そんなの当たり前のことだ。わざわざ叫ぶほどの事じゃない。

 じゃあ、なんだ?

 

 ……テルリアさん。

 もう大事な人を奪わせたくない? いや、それも当たり前のことだ。 

 

 冒険者を続けているのは何故か。

 贖罪? 違う。

 

 ……見返したい。

 

 誰に?

 

 俺を忘れた神に。

 

 俺を見捨てた連中に。

 

 俺を嘲笑った奴等に。

 

 俺よりもずっと強く、英雄な人達に。

 

 でも、これは不純で醜い感情と動機だ。

 否定はしないし、出来ない。

 

 これも俺だ。

 でも、これが一番か?

 

 それも違う。

 

 俺は――応えたい。

 

 俺を生んでくれた両親に。

 

 俺を認めてくれる仲間達に。

 

 俺を見守ってくれるミアハ様やヘファイストス様達に。

 

 俺を支え助けてくれたテルリアさんに。

 

 

 そして――俺を見つけて鍛えてくれたスセリ様に。

 

 

 俺は、貰った恩に応えたい。

 

 お金で返せない。働くにも幼過ぎる。

 

 だから――戦うんだ。

 

 

 そしていつか……英雄になりたい。

 

 

 皆に認められずとも、スセリ様や仲間、テルリアさんには誇れる英雄に。

 

 

 皆は無理でも、誰かは助けられる英雄に。

 

 

 だから、俺は、強くなりたい。

 

 

 それが、俺の『根っこ』だ。

 

 

 

 

 翌日。

 俺は基礎鍛錬から始めた。

 

 走り込み、腕立て、腹筋、また走り込む。

 

 次に正拳突きや上段蹴りなどの無手の型の練習。

 

 それが終われば、武器の素振りを始める。

 木刀、木槍、木斧、弓、木のナイフ。

 

 それを丸一日かけて続ける。

 朝日が昇って、夕陽が沈むまで続ける。 

 

 休憩の合間に飯を食べて、食べ終わったらまた鍛錬に戻る。

 ただただひたすらに、無心に、それを続ける。

 

 謹慎して4日目。鍛錬を始めて3日目。

 ハルハ達は謹慎が解けたが、俺を気遣ってかダンジョンに行くことなく、本拠で同じく鍛錬や組手をしていた。

 

「団長、ずっとやってんな」

 

「まぁ、組手が禁止されてるからねぇ」

 

「それにしても、何とも凄まじき集中力であるな。あの御歳であれだけの実力を得るのも納得出来るというものだ」

 

「「うむ」」

 

「我々も負けてはいられませんね」

 

 思い浮かべるは宿敵、そしてずっと先を行く上級冒険者達。

  

 怒り、嫉妬、尊敬、憧れ……そして喪失感と哀しみ。

 

 あらゆる感情を武器と拳に籠め、そして斬る。

 

 ぶっちゃけ無心とは程遠い。

 

 でも、生きてる以上、命を懸けてる以上、感情は切っても離せない。捨てることなんてできない。

 どれだけ感情を抑え込もうとしても、絶対にいつか限界が来て、それは身を滅ぼすかもしれない。

 

 ならば、無心を捨てる。

 

 全ての感情を受け入れ、己の一部にし、『芯』とする。

 

 その作業を、ただただ無心で行う。

 

 矛盾してるとは思うが、疑問疑心はもたず、これが正しいのだと信じて続ける。

 

 

 相手を斬り、次に会った時はこれまで抱かれたイメージを振り払えるように。

 

 

 子供だからと、舐められないように。

 

 

 俺は、スセリ様の眷属で、ファミリアの団長で、冒険者なのだから。

 

 

 

………

……

 

 鍛錬を続けて一週間。

 

 ステイタスは上がってもないだろうし、この程度で技が向上したわけでもないだろう。

 

 流石にそろそろ『このままでいいのか』と疑問を抱きそうになる。

 

「折れずにやっておるようじゃの、感心感心」

 

 スセリ様が声をかけてきた。

 

「さて、そろそろ己だけでは限界じゃろう。……一手、魅せてみよ」

 

「……はい」

 

 素振りをしていた木刀を置き、簡単に汗を拭ってからスセリ様と相対する。

 

 ずっと俺の近くで鍛錬や組み手をしていたハルハ達も手を止めて、こっちに目を向けるのを肌で感じる。

 

 俺とスセリ様は同時に構え……。

 

「――行きます!!」

 

「来い!!」

 

 と、俺はスセリ様へと攻めかかった。

 

 

 

 

 

「はぁ! はぁ! はぁ!」

 

 

 ダメでした。  

 

 

 ふっっっつうに投げ飛ばされたわ!!

 

 なんでよ!? ここって普通成長して驚かせるとこじゃないのか!? 俺の主人公体質!! ……え、ない? あ、そう……。

 

 あぁ、くそ……。変なこと考えちゃうほどちょっとショック。

 

「はぁ! はぁ! はぁ~~……」 

 

「なんじゃ。デカい溜息じゃのう」

 

「……いえ、流石にちょっと……」

 

「ぶぁっかもん。一週間程度で実力が上がるわけなかろう。少し自分を見つめ直しただけで強くなれるならば、とっくの昔にやらせとるわい」

 

 ですよね。

 

「まぁ、じゃが……何も変わっておらんわけでもない。動きは僅かだが鋭くなっておるし、妾の動きを視れるようになっておる。何より気迫も雰囲気も見違えておる。間違いなく一週間前のフロルよりは成長しておるよ」

 

「……」

 

「じゃが、それはあくまで内側の話であって身体は違うもんじゃて」

 

「ですよね……」

 

「それはこれから伸びていくからの。今日からはハルハ達との組手を許可する」

 

 スセリ様の言葉に俺は身体を起こす。

 

 スセリ様は腕を組んでニカリと笑う。

 

「他者との戦いで、この一週間の鍛錬で培ったものを磨くといい。ドットムのような上の者と戦うことで、また新たな己を見つけることも出来るじゃろうて。それをあと一週間続けよ」

 

「はい!」

 

 力強く頷いた俺はポーションを飲んで、ある程度体力を回復させてハルハ達の元へと向かう……んだけど……。

 

 ハルハ、アワラン、ドットムさんがすんげぇ獣みたいな笑みを浮かべてるんだけど!?

 

 巴、ツァオ、ディムルも笑みまでは浮かべていないが、なんかすんげぇ気迫を纏ってる。

 

 正重も他の連中ほどではないが、普段からでは考えられない気迫を放ってる。

 

 え……ちょっと待って……。

 なんで……そんなに盛り上がってるの?

 

「そりゃあ決まってんじゃないか。あんな気合に満ちたアンタを見て、アタシらが滾らないとでも?」

 

「……あ~……」

 

 ですよ、ね~……。

 

 

 その後、俺の悲鳴と、誰かさん達の高笑い、そして戦いの音が響き渡ったのは、言うまでもない。 

 

 

 




【フレイヤ・ファミリア】とはまた違う脳筋だよね
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