【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~   作:独身冒険者

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題名回収は一章最後になります


転生した男はいよいよダンジョンに挑む

 スセリ様に鍛えてもらって、早半年。

 

 全く強くなった気はしていないが、スセリ様からすれば俺は順調どころかかなり成長が早い方らしい。

 そのためか、先月から武器の練習も始まった。

 

 今練習しているのは短刀二刀流、刀、太刀、槍、弓の5種。

 どう考えても手を出し過ぎな気がするが、スセリ様は、

 

「いいからやらんか」

 

 と言って、容赦なくボコボコにしてくる。

 

 もちろん、体術の修行も続けている。

 けど、やりすぎると成長が阻害されるとのことで、最近は武器の扱いと戦い方を学ぶことに重きを置いている。

 

 ちなみに未だにスセリ様は俺に『ステイタス』を見せてくれない。

 

 週一回のペースで更新してはいるが、何故か一度も見せてくれない。

 

「ステイタスは良くも悪くも客観的過ぎるんじゃよ。戦いはステイタスが全てではない。ヒロ、最初にも言うたが今のお前にとって大事なのは、ステイタスよりも身のこなしや戦い方じゃ。余所見などしとる暇などない」

 

 〝ヒロ〟とは俺の前世の名前〝博幸〟の愛称だ。

 俺はもう前世の名前を名乗る気はなかったのだが、

 

「前世も含めて今のお前であろう。じゃから……せめて妾くらいは憶えておいてやろう。それに……妾だけの呼び名というのは非常に捨てがたい♪」

 

 本音は思いっきり後者な気がするが、勝てる気もしないので大人しく教えた。

 もちろん、他人の前ではフロルと呼ぶが、2人っきりの時はヒロと呼ぶようになった。

 

 ちなみにちなみに、スセリ様のエンブレムは『蛇とムカデが絡まっている剣』だった。背中の紋は『ムカデと蛇が巻きついているハート』らしいけど……。

 剣はなんとなく【草薙の剣】を思わせるデザイン。『蛇とムカデ』も合わせると、もう思いっきり御父上のスサノオを思わせるエンブレムだな。

 

「父上ならば八岐大蛇と嵐のエンブレムとなるじゃろうな。蛇とムカデは夫のオオクニヌシとの出会いと出奔の話を表しておるんじゃよ」

 

 とのことらしい。

 

 まぁ、確かにスセリ様の豪快さと嫉妬深さを的確に表している気もする。

 口には出来なかったけど。

 

 とまぁ……こんな感じで実感は出来ないが、俺は成長しているらしい。

 

 だが、実感できないせいか、まだまだ足りないと感じてしまう。

 

 思い浮かぶのは主人公ベルやいずれ現れるであろう【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン達。

 

 アニメで見た彼らの『冒険』に比べれば、まだまだ足りない。

 

 俺はベルのような英雄の器ではないだろう。アイズのようにひたすら強さを求める程貪欲にもなれないだろう。【猛者】オッタルのように女神に心の底から傾倒することも出来ないし、【勇者】フィンのように叶えたい願いがあるわけでもない。

 

 今の俺は生きていくこと、スセリ様の恩に応えるだけで精いっぱいだ。

 自分の願いや目標なんて考える暇もない。

 

 それでも、いや……だからこそ憧れる。

 

 俺も冒険してみたい……。

 

 それが今の、俺の願いかもしれない。

 

…………

………

……

 

 そして、遂に一年が経過した。

 

 6歳になった俺はいよいよダンジョンへと赴くことになる。

 

「けど、大丈夫なんですか? いくらスセリ様の眷属になったとは言え、子供の俺1人でダンジョンに入るなんてギルドが認めますかね?」

 

「別に認めてもらう必要などないわい。ギルドに行くのは単純に登録するだけで、後は換金くらいじゃろうて。お前が注意すべきはギルドではなく、他のファミリアの連中じゃ」

 

 確かにガキの俺が1人でダンジョンとかいい気分じゃないだろうし、格好の餌だよな。

 だからこそ、スセリ様は俺に修行をつけてくれたんだし。

 

 スセリ様の修行はモンスターよりも対人戦を重きに置いていることは、途中で理解できた。

 

「言っておくが、妾とてまだ1階層だけの攻略しか認めんからの。勝手に2階層など行きおったら、5日間食事抜きに昼夜問わず修行させるぞ」

 

「肝に銘じておきますですハイ」

 

 逆らいません、絶対に。

 死んじゃいますから。

 

 スセリ様は俺の答えに頷いて、

 

「では、お前に武具を授ける」

 

「え? いつの間に用意されてたんですか?」

 

「少しずつの。と言っても、別に特別製でもなんでもない安物じゃ。まぁ、防具に関しては子供用故にオーダーメイドじゃから、ある意味特別製ではあるがな」

 

「……ですよね~」

 

「じゃから、そういう意味でも無理をするでないぞ。流石に何度も防具を作り直してやるわけにはいかん」

 

「はい」

 

 武器はどうしたって消耗するからね。

 けど、防具も武器もってなると流石に金がかかり過ぎる。1階層じゃ稼ぎなんて、たかが知れてるだろうし。

 スセリ様にこれ以上負担をかけるわけにいかない。

 

 頑張らねば!!

 

「これ。気合を入れるのはいいが、入れ過ぎるでない」

 

「あ、ハイ。スミマセヌ」

 

「全く……些かか不安じゃの。まぁ、よい。とりあえず……これがお前の武具じゃ!!」

 

 気を取り直して、スセリ様が俺の目の前にドガン!と箱を置く。

 

 まぁ、ずっとスセリ様の横にあったんだけどね。

 

 だが、それでも俺はワクワクしながら箱の蓋を開ける。

 

 中に入っていたのは、甲冑を思わせる防具と二振りの脇差だ。

 

 まぁ、スセリ様は極東の女神様だもんな。

 装備も極東風になるのは当然だろう。

 

 防具は鉢金、胸当て、手甲、脛当てと最低限。けど、俺は動き回る戦い方が主体だから重くするだけ邪魔なだけだろう。

 

 脇差も俺にとっては十分刀に等しい。

 これに関してはスセリ様に前から言われていたことなので、申し訳ないがそこまで感動はない。

 でも、やっぱり自分の装備を目の前にすると、これから冒険に行くという実感が湧いてきた。

 

「ありがとうございます、スセリ様」

 

「うむ。では、早速装備してみようかの」

 

「はい!」

 

 スセリ様に手伝ってもらって、防具を身に着けていく。

 脇差は一振りは腰に、もう一振りは背中に携える。ちなみに防具の下の服も和風だ。

 

 アニメの【タケミカヅチ・ファミリア】に近い雰囲気を感じる。

 色は菫じゃなくて、紅だけどね。

 

 まぁ、その【タケミカヅチ・ファミリア】はまだオラリオにいないはずだけど。

 

 ……スセリ様とタケミカヅチって、仲いいのかな?

 俺は極東出身ではないけれど、やはり主神が同じ極東出身だから仲良くしたい。まぁ、そうなると必然的に主人公達とも関わることになるけど。

 

 まぁ、スセリ様はあまりファミリアを大きくする気が無いらしいから、お互い小派閥として関りを持つことになるかもしれないな。

 

 ……主人公達よりも早くダンジョンに挑むんだ。最低限先輩面出来るように頑張ろう。

 

 

 

 そして、俺とスセリ様はギルドへとやってきた。

 

 武器を携えた子供の俺が入ってきたことに職員や周囲の冒険者は顔を顰めるも、スセリ様は堂々とした足取りで受付へと歩み寄る。

 

「妾は須勢理毘売命。此度は我が【スセリ・ファミリア】の子、フロル・ベルムの冒険者登録に参った」

 

「は、はい……。あの、そのぉ……登録するフロルというのは……」

 

「もちろん、この子じゃ」

 

 受付をしていた緑色の長髪の女性の言葉に、スセリ様はニヤリと笑って俺の頭に手を置く。

 

 それに受付嬢は僅かに眉尻を下げる。

 

「……その子は小人族ではない、ですよね?」

 

「うむ。まごうことなきヒューマンじゃな。ちなみに歳は6つじゃ」

 

「……」

 

 受付嬢は俺の歳を聞いて、更に困惑の表情を浮かべる。

 

 まぁ、嫌だよね。

 命にかかわる場所に子供が行くことを認めるのって。

 

 けど、それをスセリ様が許すと思わないんだよな。

 

「ん? どうした? 何故止まっておる。早う手続きを進めんか」

 

「……ですが……流石に子供を……」

 

「ほう? これは驚いたのぉ」

 

 スセリ様は笑みを浮かべてはいるが、明らかに威圧感が増していた。

 更に細められた目から覗く瞳はどう見ても笑っていない。

 

「確かにギルドはこの街とダンジョンを管理する組織。そして、その職員であるお主らはその代弁者と言っても過言ではないのぅ。……じゃが、女神である妾がこの子は冒険者になっても問題ないと判断したことに、異を唱えるというのじゃな? たかが、一職員が」

 

「そ、それは――」

 

「それに冒険者になるのに年齢は関係なかったはずじゃが? であるのに、我が子を退けるということは……ウラノスは妾に喧嘩を売る、ということでいいんじゃな? 我が【スセリ・ファミリア】の存在を認めぬ、ということじゃな?」

 

 ……あの、スセリ様?

 少々喧嘩を売り過ぎではないでしょうか。

 

 いや……まぁ、間違っているわけではないんですがね。

 確かに極論で言えば、その通りなんですが。これではギルドから睨まれるだけですよ? いくらウラノスがギルドの運営に口出ししないとはいえ。

 

 受付嬢は完璧に委縮してしまい、すでに涙目だ。

 だが、スセリ様の威圧感は鎮まるどころか膨れ上がっているように感じる。

 

 そのせいか、他の職員は誰も助けに来ない。

 思ったより薄情だな。普通に考えたら、スセリ様の言い分は明らかに行きすぎだと思うんだけど。

 

「さて……返答は如何に?」

 

「あの……その…………はい、分かりました……」

 

 受付嬢は早く解放されたいのか、スセリ様に屈した。

 まぁ、登録するのは本来止められないから、どちらかと言えば駄目なのはギルドの方なんだけど……。

 

 俺は複雑な気持ちで登録を済ませる。

 

 そして、さっさとギルドを後にしたところで、俺はスセリ様に声をかける。

 

「いくら何でも喧嘩売り過ぎでは?」 

 

「構わん構わん。ウラノスはこの程度で文句など言わんじゃろうしの。それに言うたじゃろ。ギルドなんぞ別に寄らんでいい。睨まれようが知ったことではないわい」

 

「……俺に苦情が来ても知りませんよ?」

 

「その時はウラノスを殴り飛ばすだけじゃて。……お前を見下したこと、心底後悔させてやるわ」

 

 ……そうか。スセリ様は俺が子ども扱いされたことに怒ってたのか。

 子供なんだから間違ってないんだけどなぁ……。

 

 悪い気はしないけどさ。

 

 そんなことを考えている間に俺達はダンジョンの入り口、バベルの前に到着した。

 

 バベルは雲にも届きそうな程高い塔だ。

 

 一階から二十階は公共施設や換金所、各ファミリアの商業施設が軒を構え、二十階以上は神々が住んでいる。もっとも、住んでいるのは金があるファミリアの主神なのだが。

 あのフレイヤはこのバベルの最上階に住んでいるらしい。

 

 そして、その地下がダンジョンとなっている。

 

「よいか、フロル」

 

「はい」

 

「お前は冒険者じゃ。じゃが、()()()()()()()()()()()

 

「?」

 

 俺は小首を傾げる。

 

 なんかアニメでも『冒険者は冒険してはいけない』みたいな言葉があった気がするが、成長するには結局冒険する必要がある。

 だから、結局のところ冒険するしかないんじゃないだろうか?

 

「ふむ、言い方が拙かったかの。冒険すること自体は悪い事ではない。じゃが、冒険とは本来『命を懸けて成し遂げる』ことじゃ。毎日毎日冒険なぞしておったら、お前の身が保たぬ」

 

「……はい」

 

「冒険とは、『決して逃げれぬ戦い』を指す。つまり、そこで逃げれば『己の誇りを踏み躙り、願望を投げ捨てた』ということじゃ」

 

 俺はスセリ様が言いたいことを理解して、真剣な顔で頷く。

 

「じゃから、たとえ周りから惨めに見られようが、弱いと思われようが、必死に生き延びて、冒険する時まで力を蓄えよ。最初から強い者なぞおらぬ。誰もが未熟で、誰もが泥臭い醜態を晒しながら己を磨き上げていく。弱さを知らねば、真の強さは得られぬと心得よ」

 

「はい!」

 

 だから、スセリ様は修行時に俺を何度も容赦なく投げ、毎日ボロボロにしたんだ。

 正直スセリ様にやられたせいで、プライドなんて砕かれたも同然だ。

 

 今の俺にとって、一番カッコいいところを見せたいのはスセリ様なんだから。

 

 その人に無様な姿を晒させられたんだから、今更カッコつけたところでって話だ。

 まぁ、今の俺は子供ってのもあるけどね。カッコつけた所で、子供の背伸びにしか見えん。

 

「そして、神々の恩恵は安いものではない。お前を愛する妾が授けたモノであってもじゃ。ランクアップするためには、多くの神が認める程の経験を積み、偉業をなさねばならぬ。子供のお前がランクアップするには数年はかかるであろう。その覚悟はしておくがよい」

 

「はい」

 

 本来1年でランクアップすることすら偉業と言われる世界だ。

 アイズやベルはスキルのおかげもあって、ランクアップは早かったと思うけど、今の俺にそんな力はない……はずだ。ステイタスを知らないから何とも言えないけど。

 

 でもスセリ様が何も言わないのだから、俺にスキルはないんだろう。

 

 だから、俺は本当に泥臭く頑張るしかない。

 

 だからこそ、無理をしてはいけない。命の懸け所を間違ってはいけないってことなんだ。

 

「では……行って参ります」

 

「うむ。今日は馳走を用意して待っておるぞ」

 

「はい!」

 

 温かい笑みで送り出してくれるスセリ様に、俺は力強く返事をしてダンジョンへと歩き出す。

 

 期待、恐怖、高揚、不安、様々な感情が胸の中で渦巻きながら、俺はいよいよこの世界の舞台へと足を踏み入れるのだった。

 

 

…………

………

……

 

 スセリはあっという間に人混みの中に消えてしまった己が眷属の背を思い浮かべて、小さくため息を吐く。

 

「はぁ……やれやれ、何事もなく戻って来れば良いが……」

 

 スセリはそう呟きながら懐から一枚の紙を取り出す。

 

 それにはフロルのステイタスが記されていた。

 

「まさか、6歳にしてスキルが発現するとはのぅ……。いや、あ奴の境遇を考えれば当然なのかもしれんな」

 

 

 

フロル・ベルム

Lv.1

 

力 :I 91

耐久:H 119

器用:H 122

敏捷:H 158

魔力:I 0

 

《魔法》

【】 

【】

 

《スキル》

輪廻巡礼(エクセリアキャリア)

・アビリティ上限を一段階上げる。

・経験値高補正

 

 

 

「……前世を憶えているからこそのスキル、か。ヒロはSSまでアビリティを上げることが出来る……。大器晩成型のスキルじゃな。じゃが、そもそもアビリティをSまで上げることが難しい……。活かすも殺すもヒロ次第というわけじゃな」

 

 アビリティはSに近づくにつれて伸びが悪くなる。

 しかも大抵の場合、Sに上がるのはどれか一つの項目だけ。むしろ1つでもSに上がれば最高過ぎる。

 

 つまり、このスキルを活用するには、常に戦場に身を置かなければならないのだ。

 

「ある意味、冒険者に向いておるスキルではある。荒神にして英雄神の娘である妾の眷属に相応しいとも思う……が、どうにも行く先が不安じゃのぅ」

 

 それでもダンジョンに行った以上信じるしかない。 

 

 神がダンジョンに入るのは禁止事項となっている。

 神力の解放も同じく禁止されている。

 

 故にスセリは、フロルの帰還を信じて待つのみ。

 

「妾はただ待つのは苦手なんじゃよなぁ……やれやれ」

 

 スセリは再びため息を吐いて、自宅へと足を向ける。

 

 無事に帰ってくるであろうフロルへのご馳走を作るために。

 

 

 




ステイタスは出来る限り頑張りたいと思います!
もちろん、今後出す予定のオリキャラ達も!
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