【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~   作:独身冒険者

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泣いたよ、フィアナ騎士団……( ; ; )(リヴェリアさんの前世さんドコ?)


寂しかったの

 ツァオがランクアップし、戦力は増強されたのは嬉しい。

 

 でも、戦術が増えたわけじゃない。19階層で戦える時間が延びただけだ。

 

 ありがたいことなんだけど、それじゃあ解決になってない。

 いや、多分これからの事を考えたら、ダンジョン攻略ってこんなもんなんだろうけどさ。

 

 深層くらいに挑める冒険者にもなれば、スキルも魔法も出尽くしているだろうし。

 戦略の幅を広げる方法はランクアップでステイタスを上げるか、団員を増やすくらいになるんだろう。

 

 とりあえず、ランクアップしたツァオの感覚の違和感を拭わないといけないので、数日は17階層までで引き返し、本拠での組手や鍛錬に時間を割く。

 

 ということで、

 

「はぁ!!」

 

 俺は右ストレートを繰り出し、ツァオが左手で拳を逸らす。

 

「しぃ!!」

 

 その背後からハルハがハイキックを放ち、ツァオは大きく上半身を横に傾けながら腰を捻り、左脚を振り上げてハルハの蹴りに合わせる。

 

 現在、俺、ハルハ、ツァオの3人で三つ巴の乱取りをしている。ツァオの希望だ。

 まぁ、もう珍しくもない光景ですね。

 

 ただ、ぶっちゃけると……この2人との組手は一番しんどい!!

 

「はっはぁ!!」

 

 ハルハが俺に飛び掛かってきて、拳を連続で振るう。

 拳の嵐を躱し、逸らし、受け止め、打ち払う。最近また鋭くなったな……!

 

 反撃に出ようとした時、横からツァオが割り込んできた。

 

「おおおおおおお!!」

 

 ズダン!と地面を強く踏み込んで、ハルハ同様連続で拳を繰り出して来た。

 

 俺とハルハに向かって。

 

「ぐっ! づっ、はああああああ!!」

 

 一発右肩に浴びた俺は、捌き切れないと判断して、2人同様拳の嵐で対抗する。

 

 

ガガガガガガガガガガ――!!!!

 

 

 無数の打撃音が本拠に響き渡る。

 

 だが恐ろしいのは、ツァオの拳。

 

 正確にはその軌道。

 

 俺やハルハの拳は直進か曲振。でも、ツァオの拳は更に螺旋と円が含まれている。

 

 こっちの拳が弾かれ、絡め捕られる。

 

 何より重くて硬い。

 

 これだよ。ツァオの武術は前世で言う中国拳法の類なんだろう。

 力の籠め方、流し方が、支え方が、自他共に巧い。

 

 だからこそ、あれだけの盾役を熟せるのだろうけど。

 

 どんな漫画キャラだよ!

 盾がない方が実は強いとかさぁ!!

 

「でぇえ!?」

 

 俺は後ろに吹き飛ばされて地面を転がる。 

 

 やっぱ背が足りない俺は不利だなぁ! ステイタスが上じゃなかったら、とっくの昔に吹っ飛ばされてたぞ!

 足を地に着けて踏ん張ってたら、真上から豪雨の様に圧し潰そうと迫り。飛び上がったら、真正面から嵐の様に圧し飛ばそうと襲い掛かってくる。

 

 これまではステイタスでごり押し出来たけど、今は同じLv.2だ。

 ステイタスの差なんて、技と体格で覆されるだろう。

 

 ツァオが距離を詰めて、拳を振り下ろしてくる。

 俺は紙一重で半身になって躱し、突き出された腕を掴んで背負い投げようとしたが――

 

「ふっ!!」

 

 ツァオは息を鋭く吹くと同時に腕を素早く捻って、俺の手を弾く。

 

 これだよ!!

 反撃される前に全力で横に跳ぶ。その直後にツァオの拳が振り抜かれる。

 

 すぐに体勢を整えると、今度はハルハが踵落としを繰り出して来た。

 頭の上で両腕を交えて受け止め、その脚を掴んで振り回す。

 

「くっ!」

 

「っ!」

 

 人間(アマゾネス)ハンマーで近づこうとしていたツァオを牽制し、ハルハを放り投げる。なんかゴメン!

 

 今度は俺から距離を詰めて、攻撃を仕掛ける。

 

 まだ!! 負けたくないです!!

 

 だって、ここで負けたら――

 

 

 スセリ様の鍛錬厳しくなるからあああ!!

 

 

 

 

 

 その日の夕方。 

 

「……………きゅう」

 

 ボロボロでうつ伏せに倒れているオイラです。

 

「ふはははは!! まだまだ未熟じゃなぁ!!」

 

 仁王立ちして高笑いするスセリ様。

 

 おかしいなぁ……勝ったのになぁ……。

 なんで厳しくなってるんだろう。

 

 ステイタスのごり押しだったのは否定しませんが、ツァオとハルハの2人に勝ったんだよ。

 なのに、その直後にポーションも使わせてもらえることもなく、そのまま鍛錬に入りましたよ? そして、ボッコボコに殴られて、ポンポン投げられましたよ?

 

 ……なんで?

 

「最近ダンジョンやハルハ達との組手ばかりで、妾と遊ぶ時間が減ったのが不満じゃった」

 

 欲望ドストレート!?

 

「せっかくじゃ。まだやれるであろう? 今日はとことん妾とやろうではないか♪」

 

 そんな獣みたいな笑みで言われても!?

 

 スセリ様は両腕を広げながら

 

「さぁ……遊び尽くそうではないか♪ 妾が満足するまで、な」

 

 それって徹夜コースじゃないですかああああ!!

 

「ツァオの技も教えてやろう。他の武術ものぅ。団長の意地とやらを見せてみよ、フ・ロ・ル♪」

 

「が……頑張りまぁあああす!!」

 

 どうにでもなれやーー!!

 

   

………

……

 

 翌朝。

 

 オイラは今現在もスセリ様の腕の中です。

 

 昨日の夕方に散々弄ばれて、そのまま久々にず~~っと抱き枕にされてた。

 本当に限界を迎えて倒れたところで、

 

『うむ、では今から明日一日は妾と過ごしてもらうぞ』

 

 と、いきなり何やら決まった。

 

「昨日も言ったが、最近あまり2人の時間がなかったでなぁ。寂しかったんじゃよ~」

 

 いやまぁ、それは事実ですが。そんな子供みたいに言われても。

 

 ちなみに他の皆はダンジョンに行ってる。

 俺だけ休み。というか、主神のお相手というお仕事。

 

 スセリ様がこうなると何が困るって、俺じゃないと対応できないということ。

 仕方ないよね。俺のためのファミリアで、俺のために降誕したんだから。

 

 他の団員でもその時は気を紛らわせることが出来るが、俺が顔を見せると途端に拗ねる。

 まぁ、これはスセリ様に限らず、他の神も似たようなものらしい。そりゃ娯楽を求めてきたんだから我慢しなくていいなら我慢しないよな。

 

「最近少々煮詰め過ぎではないかと思うてな。気持ちは分からんでもないが、我が恩恵を得ようが、前世の記憶を抱えていようが、お前の身体はまだ子供。心身の乖離は時に体調の乱れを引き起こす。成長を阻害せぬ為にも、適度な休息は必要じゃ」

 

 ……そうかもしれないですけどね。落ち着かないんですよ。

 

「そこら辺はまだまだ未熟じゃのう。気の動静の切り替えが出来ねば、戦場で精神力が先に尽きてしまうぞ?」

 

 むぅ……ぐぅの音も出ません。

 

 その後、昼前に本拠を出て、メインストリートを2人でブラブラすることに。

 まぁ、闇派閥のせいでほとんどの店が閉まってるんだけどさ。開いてるのは食品を扱う店か飲食系だ。中には服や雑貨を扱う店も開いてるけど、極少数だ。

 

「やれやれ……これでは逢引(デェト)の雰囲気もへったくれもないの」

 

「まぁ、そんな状況じゃないですからねぇ」

 

 いつ闇派閥が出てくるか分からない状況で店を開いて人を集めれば襲われるかもしれないからな。

 店を壊され、商品を壊されたら赤字なんて話じゃないだろう。

 

 開かれてる店は基本的にギルド傘下、ギルドより支援を受けている商店だ。

 だから壊されてもギルドからの助成金が出るし、ギルドから依頼された建設系ファミリアが再建してくれる。商品に関しても商業系ファミリアと提携してるらしいから仕入れもあまり問題ではないらしい。

 まぁ、少しずつ商業系ファミリアの方も外からの仕入れが難しくなってきてるらしいけど。

 

 闇派閥の勢力がオラリオ外でも暗躍を始めたのだ。

 それだけ構成員というか、闇派閥の甘言に乗る欲深い奴が多いってことか……。

 

 その理由は意外と簡単だ。

 

 オラリオが独占している『魔石系産業』である。

 オラリオの外でもモンスターは現れるが、当然ながらその数は少ないし、倒したらそれで終わり。新たに産まれることは基本ない。

 だから、外の世界では魔石を手にする機会は少なく、文明の発展はどちらかと言えば前世の地球に近い。

 

 だが、オラリオでは魔石が無限に湧く。

 それ故に、オラリオは魔石を利用した製品の開発や研究が世界一で、世界中に輸出しているのだが……それら魔石関係事業を全て管理しているのは【ギルド】である。

 ギルドに許可を得ることなく魔石で商品を造ると、捕縛され追放される。輸出入も基本ギルド直営の商店が行っており、そこに一般商店は介入出来ない。商業系ファミリアであってもそうだ。

 

 これが意外と商人達から恨みと不満を買っており、それを考えれば他国なんて当然ムカついているだろう。

 そこに闇派閥が『俺らがオラリオを潰せば、魔石関連事業は好きにしていい』と言われたら、飛びつく者は少なくないだろう。

 

 オラリオを潰す意味と結果を分かっていないが故に。

 

 オラリオを潰すとは、ギルドを潰すという事。

 ギルドを潰すという事は、主神である神ウラノスを送還するという事。

 神ウラノスが送還されるという事は、ダンジョンを神威で抑えられなくなるという事。

 ダンジョンを抑えられなくなるという事は、モンスターを抑えられなくなるという事。

 

 つまり、再びダンジョンからモンスターが世界に溢れ出すという事だ。

 

 もちろん、古代とは違い、今は神の恩恵を授かった冒険者達がいる。

 すぐに崩壊する事はないだろうが……未だ誰も攻略していない深層の深層から、最下層付近からモンスターが現れたら終わりだろう。

 何故ならそれは3大クエスト並みのモンスターに違いないからだ。

 

 ベヒモスとリヴァイアサンを倒すのに、約千年。

 その千年でも最後の黒竜には届かなかった。

 

 それと同等以上のモンスターが出てくるかもしれない。

 

 多分、その時にオラリオには抗う戦力はないだろう。

 

 その事実に、ダンジョンを知らない国々は気付かない。

 

 そして悔しい事に、その事実を知らしめる術をギルド側、『秩序』側の者は有していない。

 だって、今は50階層すら行ける派閥が1つしかいないのだから。

 行けるのは【フレイヤ・ファミリア】だけ。

 【ロキ・ファミリア】はまだ届いていない。

 

 つまり、『ダンジョンにはもっとヤバいモンスターがいるよ!』とは誰も言えないわけだ。

 出ないかもしれない、という考えに、人は簡単に飛びつくだろう。

 闇派閥の存在がそれを証明している。

 

 だから……人間の愚かな欲望は止まらない。

 

 それを邪神と呼ばれる神々が楽しんでいるから厄介なんだよなぁ。

 

 そんな事を考えながら歩いていると、

 

「む、ヘファイストスではないか」

 

 スセリ様の声に視線を上げると、ヘファイストス様がとある店から姿を現した。

 その店には【ヘファイストス・ファミリア】の看板が下げられている事から、あの店は支店の一つのようだ。

 

「あら。スセリヒメに、フロル・ベルムじゃない」

 

 ヘファイストス様もこちらに気付いて、軽く手を上げて挨拶をくれる。

 神様って他の派閥の子共に対しては二つ名かフルネームで呼ぶ慣習みたいなのがあるんだよな。まぁ、神ヘルメスはアニメではベル達を馴れ馴れしく呼んでたけどな。流石にフィンさん達は二つ名とかだったけど。

 

「店の見回りか?」

 

「まぁね。鍛冶師にとって鍛冶場の維持は命に関わるから、損傷したり、足りない物がないか確認して回って手配してあげないといけないのよ」

 

「……それを主神御自ら?」

 

「人手が足りないの。見習いの子達は上級の子達の補佐で手一杯。店番だってかなりギリギリで回してる状況でね。だから資材や素材の調達・補充は私がやってあげないと時間がかかっちゃうのよ」

 

「ふむ……ゴブニュのところは街の再建の方に駆り出されとるらしいからの。その分、武具に関してはそっちに依頼が殺到しておるか」

 

「そういうことね。椿を始め、ほとんどの子達が二週間近く鍛冶場に籠ってるわ」

 

 わぁ……そこまでか。

 

「特に腕の立つ子達は専属冒険者も多いからね。とりあえず、今は武具を造れるだけ造るって感じよ」

 

「じゃが、それでは素材が間に合わんのではないか? 特にダンジョンで採れる上質の鉱石やドロップアイテムは」

 

「そこを交渉するのが、私の仕事って事。余裕がありそうな派閥に依頼を出して、採って来てもらう。で、報酬として武具の製作費を割引するって感じね」

 

 なるほど。それならかなり安く上級武器を手にすることが出来るってわけか。

 昔の様に長々とダンジョンに籠れない状況だし、少しでも節約できるに越したことはない。

 

「で、そっちは?」

 

逢引(デェト)じゃ」

 

「……こんな状況でよくもまぁ」

 

 思いっきり呆れられたが、俺に半目を向けられても困ります。

 

 俺だって巻き込まれてるんです。

 

 特に寄る場所もなかったので、俺達はそのままヘファイストス様に付いていくことにした。

 ヘファイストス様の護衛って感じ。

 

 ……いや、俺の負担とプレッシャー半端なくない?

 

「女神二柱を両手に華にしておきながら、そんな疲れた顔するでないわ」

 

「そんなこと言われましても」

 

「椿の事と言い、何度も悪いわね、フロル・ベルム。この埋め合わせは何か考えるわ。村正の子に素材をと言いたいところだけど、さっきも言った通り、うちも素材が足りない状況だから」

 

「……いえ、無理のない範囲で構いません」

 

 スセリ様が言い出したことだから、そこまでしてもらわなくてもいいけどな。

 一応ヘファイストス様にはお金出して貰ったし、正重に色々便宜を図ってくれたしなぁ……。

 

「でもいいの? スセリヒメ。せっかくのデートだったんでしょ?」

 

「まぁ、一番は愛し子を休ませる事が目的じゃからな。それにここで別れて、お主が誰かに襲われでもしたら寝覚めが悪い。お主にはまだ借金もあるしのぅ」

 

「あぁ……実はその件なんだけど」

 

「ぬ?」

 

「あの二振りの刀、買い取らせて貰えないかしら?」

 

「え?」

 

 俺はまさかの言葉に目を丸くした。

 

 ヘファイストス様は腕を組んで眉を顰め、

 

「悔しいけど、闇派閥との戦いに勝つためには、あの刀の力がいつか必要になる。そう思ってるの」

 

「ふむ……故に、必要な時に、相応しい者に渡せるように所有権を正式に買い取りたいということじゃな?」

 

「ええ……出来れば、こんなお願いしたくなかったんだけど……。あれだけ高品質の魔剣と不壊属性(デュランダル)の武器は、今のうちの鍛治師でもそう簡単には造れない。だからこそ、いつか必ず振るう時が来るわ」

 

「……」

 

 オラリオ最大最高峰鍛治派閥の主神が断言するんだ。その可能性は非常に高いのだろう。 

 だかあれは、正重にとって由縁が強すぎる代物だ。そう簡単にハイとは言えない。

 

「……正重に決めさせてください。あの刀の持ち主は、正重ですから」

 

「分かってるわ」

 

「では、今晩でも話してみるとしよう。その結果はまた伝えに行くわい」

 

「ええ、ありがとう」

 

 むぅ……ヘファイストス様がそこまで危惧してるって事は、やっぱり少しずつ追い込まれて来てるってことか。

 買取になれば、借金はチャラだけど……やっぱり正重の大事な物を売ったとなると、喜べないなぁ……。正重に何か埋め合わせしないとダメか。

 

 ヘファイストス様を送り届けた先は、1つの大きな工房だった。

 

「まぁったく! この忙しい時に手前渾身の大斧を砕いたなどとあっけらかんとほざきおって!! 流石に手前とて文句の百や千も出てくるぞ!!」

 

 ……なんかしばらく聞きたくなかった声が工房内から響いてきた。

 

「だからすまんと何度も言っとろうが。儂とて壊したくて壊しとるわけではないわい」

 

 そして、もう1人。

 これまた聞き覚えがある野太い声。

 

 あぁ……そういえば、あの人って椿さんが専属鍛冶師なんだったっけ……。

 

 ヘファイストス様がノックもせずに扉を開ける。同時に熱波と汗、鉄の匂いが襲い掛かってくる。

 

 ヘファイストス様はもちろん、俺もスセリ様も正重の工房である程度は慣れてるから問題はないけどさ。

 

「椿、入るわよ」

 

「んん? ……主神様ではないか。それにスセリヒメ様にフロ坊までおるではないか!」

 

「ほう、これはまた面白い組み合わせじゃのう」

 

 工房の端に置かれている木製のテーブルに座っていた2人――椿さんとガレスさんは、こちらに顔を向けて面白い物を見つけたとばかりにニカリと似通った笑みを浮かべた。

 

 ……うん。この2人、似た者同士だ!!

 

「妾達は途中で出会っただけで、護衛ついでの付き添いじゃよ。話に関わる気はないでな。と言うか、お主らがおるならば、もう護衛は十分じゃろ」

 

 スセリ様がそう言って、俺に顔を向ける。

 

 あ、ここで別れますか。異存なしですハイ。

 

 しかし、

 

「フロ坊、お前からもこの馬鹿力に文句でも言ってやれ。この男、獅子丸がミノタウロスを倒した時に使った斧をもう壊しよったのだぞ?」

 

「へ? あの大斧ですか?」

 

「うむ。縁起がいいとか言って気前良く買いおった癖に、半年も待たずに刀身を粉々にしよったわ」

 

 あの時の大斧は俺も見たけど、かなりの上物だったはず。あれをもう砕いた?

 いや、マジでどんな力で振るって、何と戦ったんですか?

 

「じゃから、すまんと言っておるじゃろうが」

 

 ガレスさんは顎髭を撫でながら、心底面倒臭そうに言う。

 何でも下層の階層主である『アンフィス・バエナ』との戦いで、咄嗟に盾として使ってしまったそうだ。

 まぁ、ガレスさんはドワーフだから、耐久性の高さを売りに前に出て味方の盾役になるってのはよく聞く戦法ではある。自分の役割に忠実に努めた結果、武器の方が先に壊れてしまったとのことだ。

 

「全く……ただでさえ材料も不足気味だというに……。お前程の冒険者に満足してもらうだけ得物となると、流石にすぐにとは言えぬ」

 

「それを相談しに来たのよ。儂とてお主らの状況は知っておる。近々ファミリアの連中を連れてダンジョンに潜る予定でな。形ばかりの遠征のようなものじゃが、この際素材集めの依頼も受けるつもりじゃ」

 

「ふむ……で、ついでに新しい武器を作れるだけの素材も集めてくる気ってわけね」

 

「いかにも」

 

 ヘファイストス様の言葉に頷くガレスさん。

 ヘファイストス様は顎に手を当てて小さく頷いており、どうやら否はなさそうな感じ。まぁ、さっきも依頼出してるみたいなこと言ってたしな。

 

「いいでしょ。こっちもそろそろ深層で採れる高品質の鉱石やドロップアイテムの調達を、ロキかフレイヤのところにお願いするつもりだったから。【ロキ・ファミリア】に依頼を出す事にするわ」

 

「心得た。まぁ、フィンやリヴァリアは行かぬから、どこまで量を確保出来るかは分からんがな」

 

「ぬ? フィン達は行かぬのか?」

 

「フィンが言うには少々闇派閥の動きがきな臭いらしい。今地上を離れるのは出来る限り避けたいそうじゃ」

 

「……貴方なら大丈夫だとは思うけど。深層に行くのにそんな手薄な陣営で大丈夫なの?」

 

「なぁに、階層を延ばすわけでもなし。ヒヨッコ共を鍛える良き機会じゃわい。がはははは!」

 

 ガレスさんはヘファイストス様の不安を吹き飛ばすかのように豪快に笑う。

 そして、本当に普通にこなして来そうだから凄いよな。これが経験を積んだ冒険者の信頼と風格って奴か。

 

「それにしても……ここ最近のオラリオはお主らの噂でと持ちきりじゃぞ、【迅雷童子】。獅子人のランクアップに――【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】との決闘などな」

 

「……【女神の戦車】とのことまで広まってるんですか?」

 

 あれは誰にも見られてないはずだし、俺達も他の人には話した事はない。ドットムさんもシャクティさんに報告はしてるだろうけど、シャクティさん含めあの人達が悪戯に広めるとも思えないんだが……。

 

「おう。儂はあの暴力女から聞いたがな」

 

「暴力女?」

 

「ミアじゃ、ミア」

 

「……あ〜……」

 

「【フレイヤ・ファミリア】の方から広まったようじゃのぅ」

 

 スセリ様も呆れ顔を浮かべる。

 

「あそこは女神に直接関わらなければ、団員の醜聞など気にも留めぬ連中じゃからな。【女神の戦車】は【フレイヤ・ファミリア】の有望株ではあるが、まだまだヒヨッコじゃ。蹴落とそうとした愚か者が広めでもしたのであろうな」

 

「……うわぁ」

 

 そいつ、アレンに殺されてそう。そして、俺もまた襲われそうだなぁ。

 

「でじゃ、その噂がうちのファミリアにも広まり、【女神の戦車】をライバル視しておった若い連中がお前さんにも目をつけた」

 

「え」

 

「諦めろ。伸びてくる連中が目の敵にされるのは、ここでは日常茶飯事よ」

 

「それはそうでしょうが……」

 

「もしうちの連中に絡まれて戦っても、殺したりしなければ問題はない。まぁ、そちらから喧嘩を売れば話は変わるかもしれんし、うちの連中が勝つかもしれんがな」

 

 簡単に言ってくれるなぁ……。

 流石に【ロキ・ファミリア】とまで因縁作りたくないんだけど。

 

「喧嘩を売って来そうなのはおるのかの?」

 

「おるな。お主らと同じLv.2で活きが良いのが2人ほどの。其奴らは確実にお主らに絡むじゃろう」

 

 断言しないでくれ!

 

 それってもう、フラグだからな!?

 

 

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