【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~   作:独身冒険者

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長めです


派閥会合・前編

 さて、夜になりました。

 

 ダンジョンから帰ってきた皆を迎えた俺とスセリ様は、俺は、ハルハ達から上げられた報告に頭を抱え、最後には胡坐をかいたまま額を畳に押し付けて羞恥に蹲っていた。

 

 そんな俺をスセリ様やハルハ達はニヤニヤと見つめていた。

 

 【ロキ・ファミリア】との諍いも十分頭が痛いんだけど……そんなことより――いや、それ以上に問題なのが……。

 

 

 俺の鍛錬、皆にモロバレだったんですね!!

 

 

 めっちゃ恥ずかしい!

 スセリ様はともかく、他の皆にまで知られてるとは思ってなかった!

 

 ヤダなんか恥ずかしくて死にそう。

 

 ガレスさんのフラグなんてどうでもいいくらい死にそう。

 まさか仲間にクリティカルヒットを貰うとは思ってなかったぞ!!

 

「くっくっくっ! 子供の隠し事なんぞ、バレぬと思う方が無茶と言うものよ」

 

「うぅ……」

 

「まぁ、無茶であれば止めておったが、確と翌日などの事を考えておった様じゃからの。妾は見守ることにしたという事じゃ」

 

「で、アタシらはまぁ、自分達の未熟さが原因だからね。口出しにくかったってわけさ」

 

「うう!」

 

 ……いっそ殺してください。

 

 それを【ロキ・ファミリア】に胸を張って暴露してくれちゃった巴とディムルの真っ直ぐさが、今はちょっと俺の心臓(ハート)を抉ってきて痛いの!

 

「まぁ、良いではないか。これで堂々と鍛錬出来るであろうよ。別に絶対に隠すものでもなし」

 

「……そうですけどね」

 

「さて、話を戻すとして……まぁ、妾としては巴達を咎めるつもりはないの。妾の愛し子はもちろん、妾を貶めて赦す理由はない」

 

 サラッと話を戻された……。まぁ、今は本題の方が大事だからいいんだけどさ。

 

 俺はどんよりした顔で体を起こし、

 

「俺も別に問題視する気はないですね。喧嘩を売ってきたのはあっちだし、巴達も相手を殺さないように配慮してたようだしな」

 

 っていうか、巴はともかくディムルがLv.2に勝てるとは思わなかった。

 ようやくランクアップ圏内に届いた能力値だし、まだうちでは勝率は高くない方だったしね。

 

 聞いた感じでは相手はランクアップして間もない感じだったみたいだけど。それでもディムルとの差はそれなりにあったはずだ。

 それを技術だけでほぼ一方的に勝ったなんて……やっぱりうちのファミリアって常識からズレてるのかなぁ?

 

「感謝致す」

 

「ありがとうございます」

 

「ただし、【ロキ・ファミリア】にも謝罪以上の償いは求めない」

 

「ふむ……その心は?」

 

 スセリ様がニヤケながら腕を組んで訊ねてくる。なんか試されてるみたいだけど……。 

 

「1つは同行していた先輩冒険者が積極的に止めはしなかったけど、窘めようとしていたこと。話ではしっかりとフィンさん達に報告して、派閥内で処罰を受けさせるつもりのようですしね」

 

「うむ」

 

「それと結果的にうちに被害はない事。下級回復薬で完治する程度の怪我しか負ってませんし、()()()()()()()にいちいち目くじら立てて、相手ファミリアに賠償を求めるのもぶっちゃけ面倒です」

 

「まぁ、そうなれば確実に遺恨は残るだろうねぇ」

 

「ああ。それに何より――今日すでに【重傑(エルガルム)】から、そんな暴走する奴が出るかもしれないから、その時は殺さなければボコボコにしてもいいって言われたからな」

 

「「「は?」」」

 

 まさかの言葉にハルハ達は呆けた声を出し、俺とスセリ様は苦笑するしかなかった。

 

 普通、自分の団員達が暴走するかもしれないから、その時はのしてくれていいとか言わないよな。

 

「まぁ、と言うことで……すでに先方から簡単に謝られてる感じだから、ここで更に責任を追及するとやっぱりややこしいことになりそうでさ。逆に相手の不快を買う気がするんだよね。闇派閥が跋扈する中で【ロキ・ファミリア】と必要以上に敵対するのは避けたい」

 

「なるほどねぇ……。まぁ、アタシは何もしてないし、簡単な意趣返しも出来たから文句はないよ」

 

 ハルハの言葉に他の面々も頷いてくれる。

 

 はぁ……これで後はフィンさん達と話をつければ、この問題は終わりだ。まぁ、本人達は反省はしても、俺達を敵視するのは変わらなさそうだけどさ。どっかでまた絡まれる気はする。

 ったく……ただでさえ【フレイヤ・ファミリア】とも因縁が出来たのに、今度は【ロキ・ファミリア】にまで因縁が出来てしまったな。

 

 いやまぁ、これが冒険者としては当然なのかもしれんけど、この状況では勘弁してほしい。

 

 それにしても、やっぱり子供の俺が団長やってるのはあまり受け入れられてないみたいだな。

 最初はフィンさん達もスセリ様の事を不快に思ってたし。やっぱり普通ではないのか。

 

 けど……そんなこと言われてもな~。

 主神に団員達が認めてるんだからどうしようもなくね? 俺だって団長にされて困ってんだからさ。今は弱小だからあんまり仕事なんてないけど。人が増えたり、等級も上がれば色々と事務手続きも増えるだろうしぃ。

 ……色々とメンドクサイ事になっていくんだなぁ。事務員とか雇えないかな? ……無理か。

 

「とりあえず、今後の事も考えて、俺達は鍛錬と探索を続けるってことで」

 

「結局、それしかやる事ないんだよな」

 

「馬鹿にされぬように強くなるしかありませぬか」

 

「フロルが成長すれば、やっかみも減っていくじゃろうて」

 

「先が長い話だなぁ……」

 

「こればっかりはしょうがないさ」

 

 俺って何歳になったら舐められなくなるんだ? 原作とかを考えれば……早くとも15,16? ……いや、長いよ。結局今の倍じゃん。暗黒期終わってる頃じゃん。面倒だよ。

 

 ………うん! 考えるの止めよ!

 

 鍛錬します! 今日からは堂々とね!

 

 ――っと、いかん。忘れる所だった。

 

「正重」

 

「む?」

 

「実は今日ヘファイストス様に会ったんだが――」

 

 例の二振りの刀の買取について話をする。

 借金はチャラになるが、同時に正重の手に戻る機会も永遠に失われるかもしれない。

 

 魔剣はいずれ必ず壊れるものだけど、不壊属性の刀はしっかりと手入れすれば十年は使える武器だ。流石にこっちに関しては、買い戻せるなら買い戻すべきではと、俺は思う。

 

 でも――

 

「問題、ない」

 

 正重は迷うことなく言い切った。

 

「本当にいいのか?」

 

「うむ。ヘファイストス様、使い手、ちゃんと選ぶ。なら、その武器、振るわれるべき」

 

 相応しい使い手がいるならば、その武器の運命を私情で狂わせるわけにはいかないということか。

 

「それに、いずれ、俺、もっといい刀、打つ。だから、問題ない」

 

「……分かった。なら、甘えさせてもらう。ありがとう」

 

「うむ」

 

 これはますます精進して正重の武器に相応しい使い手にならないとな。

 

 だから……これからも頑張ろう。

 

 

………

……

 

 翌日。

 

 今日は俺も探索に行くつもりで、いつも通りスセリ様の朝食を食べていると、ドットムさんがやって来た。

 

「あれ? いつもより早いじゃないか」

 

「残念だが坊主。今日も探索は無理だぞ」

 

「へ?」

 

 いきなり何ですか!?

 なに!? 何をやらせる気ですか?!

 

 ドットムさんは憐みの顔を浮かべながら、懐から封書を差し出してきた。 

 明らかに上質の紙で、封蝋に刻まれた印璽はギルドの物だ。

 

 ……げっ、強制任務(ミッション)

 

「シャクティとギルドから伝達だ。今日の昼過ぎにギルド本部で、ギルド傘下の派閥の代表が集まって会合を開くんだと。で、ガネーシャ(うち)やロキと協力体制敷いてるお前さんもお呼ばれされたってわけだ」

 

「……神じゃなくて派閥での会合? 何で急に?」

 

 便箋を受け取りながら首を傾げる。

 隣で食事をしていたスセリ様や、偶々食事の時間が被ったディムルやハルハ、リリッシュも首を傾げていた。

 

「俺も流石に詳しくは聞いてねぇ。多分【勇者】やシャクティがなんか気になる情報を手にしたんだろうな。まぁ、状況から考えて闇派閥の事だろうよ」

 

「……何か大規模の襲撃が予測されてるって事か」

 

「儂の予想では、だがな」

 

 そういえば、昨日ガレスさんがそんなこと言ってたなぁ。勘弁してくれよ……。

 

「どこまで呼ばれたかは知らねぇが、少なくともフレイヤとヘファイストスんとこは呼ばれてるだろ」

 

 なんでそんなとこにうちが……。

 

 俺はげんなりしながら便箋の封を解き、中身を取り出す。

 

 入っていたのは1枚の羊皮紙のみ。

 記されているのはドットムさんが言った内容。時間と場所、そして参加可能人数だ。

 

「……各派閥から2人まで、か」

 

「そりゃあギルド本部はそこまでデカくねぇしな。団長と参謀ってところだろうな」

 

 ですよね。

 手紙をスセリ様に手渡して、俺は腕を組んで誰を連れて行くか思案する。

 

「……ん~……もし本当に闇派閥の大規模襲撃が予想されるなら、ハルハ達はむしろ今のうちにダンジョンでステイタスを上げといてほしいな。少しでも生き残れる可能性を上げときたい」

 

「そうじゃのぅ。アワランやリリッシュ達Lv.1組は率先して鍛えねばならんし、アワラン達のランクアップを狙うのであれば、やはり中層以下の探索が必須。そうなるとフロルが行けぬ以上、ハルハ達は共に行かねば少々リスクが高いか」

 

「ですよねぇ。はぁ~……うちからは俺1人で、か……」

 

 1人でダンジョン中層よりもヤバイ化け物が集まる死地に行けってか……。

 でも、スセリ様の言う通り、ハルハやドットムさんは絶対にアワラン達の同行から外せない。っていうか、そもそもうちのファミリアに外していい戦力なんて基本いない。

 

 悲しいかな。外れてもまだ問題ないのが、団長である俺って凄く悲しい……!

 

 各主神を呼ばないのは、闇派閥に襲われる可能性を減らすためだ。

 それにロキとフレイヤ、イシュタルが揃ったら、絶対に話は纏まらない。神会でだってなぁなぁらしいからな。

 

 あ~……嫌だなぁ!!

 

「ギルドから招集された以上、顔は出しとけ」

 

「そうじゃな。それこそ、知らぬ場所で勝手に話を決められて強制任務(ミッション)をまた押し付けられかねん」

 

「ですよねぇ……」

 

 仕方ない。情報収集のつもりで行くか……。

 

「それに昨日の【ロキ・ファミリア】のいざこざも話がつけられるじゃろ。面倒事は纏めて終わらせて来れば良かろうて」

 

「……はぁい」

 

 それもそれで気が重い。

 

 ちくしょう……覚えてろよ、ギルド長め! いつかお前を過労で瘦せさせてやる!!

 

 

 

 

 という事で、今日もハルハ達を見送り、時間までスセリ様と鍛錬。

 昼前に終了して汗を流し、昼食をスセリ様と食べて、ギルドに出発。もちろん装備を身に着けて。

 

 スセリ様は1人でホームと言うのも危険なので、ヘファイストス様の所にでも顔を出すとの事。

 ついでに正重の事も話をしてくれるそうだ。感謝です。

 

 俺は重い足取りでギルド本部へと足を進める。

 大派閥がいる中に行きたくないよなぁ。今思い返したら、俺ってオラリオでも随一の派閥の人達ばっか知り合いだな。【アストレア・ファミリア】くらいか? 同等な派閥って。

 正直【ネイコス・ファミリア】のせいで、他の派閥との関わり合いって難しくなってるんだよな。前から知り合いだったらいざ知らず。新たにってのはそう簡単じゃない。

 主神も同席すればいいのかもしれないけど、そんなリスクは冒せない。

 

 なので、交流がどんどん減っているのが現状だ。

 多分、その解決策も話し合うつもりなんだろうが……纏まるかねぇ。言い合いになる未来しか思い浮かばない。

 

 憂鬱な気分が深まりながらも、無慈悲なことにギルド本部に到着してしまった。

 中に入ると、相も変わらず冒険者や依頼人と思われる人達で溢れかえっていた。

 

 とりあえず、受付に声をかけようとしたら、

 

「お待ちしておりました。フロル・ベルム氏」

 

 スーナさんが近づいてきて綺麗な一礼をしながら挨拶してきた。

 ちなみにスーナさんとはなんだかんだでそこそこダンジョンの情報などを教えてもらっている。ドットムさんにばかり情報収集を頼るわけにもいかないからな。

 

 それにツァオのランクアップに関しても報告してるしな。めっちゃ頬が引き攣ってたけど。

 

 案内された先は大きな会議室。

 

 すでにちらほらと俺同様招集されたファミリアの人達がいた。

 椅子は間隔をあけてポツポツと置かれてる。最低限って感じ。すでにいる人達は1人が座って、1人が傍に立ってる。多分座ってるのが団長、立ってるのが副団長か参謀、か。

 

 さて……俺はどこがいいのかな?

 多分奥に置いてある長机が上座なんだろうな。となると……俺は後ろが良いか。

 

「【迅雷童子】」

 

「ん?」

 

 後ろから声をかけられて振り向く。

 

「シャクティさん」

 

「突然の呼び出しですまない。来てくれて感謝する」

 

「いえ」

 

 別にシャクティさんが呼び出したわけでもないのに、相変わらず律義な人だな。

 そして、シャクティさんの後ろには、アリーゼとライラさんがいた。

 

「【アストレア・ファミリア】も呼ばれたのか」

 

「いいえ! 呼ばれてないわ!」

 

 あれ?

 

「でも【象神の杖(アンクーシャ)】が、せっかくだから参加しろって声かけてくれたの!」

 

「【アストレア・ファミリア】は確かにまだ全員Lv.1の下級派閥だが、積極的に巡回を行っている。我が派閥としては今後のオラリオを守っていく上の中核に成り得る派閥を放置しておく余裕はないと判断した迄だ」

 

「なるほど」

 

「ところで【迅雷童子】、お前さんは1人なのか?」

 

「ああ。他の団員は今日もダンジョンだ。ここ最近色々あってな。今回の招集の事もあるし、ステイタス向上とランクアップ目指すってことになったんだ」

 

 ライラさんの質問に答えると、シャクティさんが小さくため息を吐く。

 

「【フレイヤ・ファミリア】や【ロキ・ファミリア】との諍いは聞いている。冒険者である以上、いがみ競い合うのは常ではあるが……決定的な敵対だけは避けてくれ。ドットムを巻き込みたくはない」

 

「分かってます。こっちは両方に少なからず恩があるので、必要以上にいがみ合ったり、敵対心持つ気はないですよ。派閥としてはどうやってもあっちが上ですしね」

 

「分かってくれているならいいが……。まぁ、君の派閥はオラリオで一番勢いがあると言われている派閥だ。他の派閥の気持ちも分かるがな」

 

 それは俺も分かりますが、喧嘩を売ってくるのは向こうですので。

 

 そんな言い訳を心の中でしながら、そのまま俺は何故かシャクティさんに連れられて長机の目の前の椅子に連れてかれる。

 

 ……あれ?

 

 アリーザはシャクティさんの後ろ。ライラさんはその隣に立つ。

 

 ……あれ?

 

「【スセリ・ファミリア】と【ガネーシャ・ファミリア】が懇意であるのはすでに周知の事実だ。今更取り繕う意味はない」

 

 ……えぇ~……さっき問題起こすなって言ってたじゃん。

 これでまた『生意気な!』と思われて絡まれたらどうするんですか? ……頑張って抗うしかないですよね。あぁ……お腹痛くなりそう。

 

 どんどんとギルドに呼ばれた派閥の代表達が集う。

 

 そして、粗方会議室が埋まってきたところで――

 

「おい、来たぜ」

 

「ああ……【フレイヤ・ファミリア】」

 

 ミアさんとオッタルが堂々とした足取りで現れた。

 

 全く気負っていないのに、こっちは圧し潰されそうな存在感。

 

 会う度に思い出させられる、『頂点』に君臨する者の格。

 

 でも、俺が多分一番感じているのは――『武』を極めた者――俺達が目指すべき『頂点』に立っている『嫉妬』だ。

 この圧迫感は俺の『嫉妬』が、そう感じさせているんだ。

 

 自分が乗り越える『壁』として。

 

 ――あぁ、ちくしょう。

 

 俺もやっぱり、ダンジョン行きたかったなぁ。

 

 そんなことを思っていると、フィンさんにリヴェリアさん、そしてギルド長のロイマンが入ってきて扉が閉まる。

 

 フィンさん達は長机の前まで移動し、俺達に向かい合う様に立つ。

 

「さて――急な呼びかけにも関わらず、こうして集まって貰って感謝する」

 

 フィンさんが挨拶を述べ始める。

 やっぱり、招集の発起人はフィンさんか。

 

「今回集まったのは他でもない……ここ最近闇派閥と思われる者達による怪しい動きを複数確認した。その動きから考えて……大規模な侵攻作戦を目論んでいる可能性が浮上した」

 

 推測と口にしながらも断言に近い色を含ませる【勇者】の言葉に騒めく会議室。

 

「その根拠は?」

 

 オッタルを後ろに侍らせているミアさんが腕を組んで言い放つ。

 

「連中がオラリオのあちこちでこそこそしてるなんざ今更な話だろ。なんで急に大規模襲撃なんて話になるんだい?」

 

 ミラさんの言う通り、これまで闇派閥はオラリオ中で襲撃を繰り返して来た。

 それは一か所であったり、複数個所であったり。

 

 確かに怪しい動きが複数個所で見つかったからって、それが大規模襲撃になるとは限らない。

 

「順を追って説明しよう」

 

 というのは、ここにいる全員が分かっている話。今のは話を円滑に進める予定調和って奴だろう。

 

「確かにこれまでも闇派閥はオラリオ中で暴れてきた。単純な破壊工作に殺人、物資の奪取、魔石工場やギルド関連施設の破壊、そして派閥壊滅。その動きに統率性はなく、好き勝手に暴れていたという印象が強かった」

 

「今回は違うと?」

 

 ある程度事情を知っているはずのシャクティさんが合の手を入れる。

 

 フィンさんは小さく頷き、

 

「先ほども言ったように奴らの動きに統率はなかったが、いくつか共通点がある。その内の一つが、『上位派閥との接敵回避』だ」

 

「闇派閥にも武闘派と呼ばれる実力者や派閥が確認されており、事実過去には【オシリス・ファミリア】という古豪が存在した例もある。だが、当時の最強派閥(ゼウスとヘラ)に壊滅させられた今、その時ほどの力がない闇派閥は、リスクを避けるために現オラリオ最大派閥である【ロキ・ファミリア】【フレイヤ・ファミリア】、そして憲兵を担っている【ガネーシャ・ファミリア】を筆頭に、上級冒険者を擁する派閥との戦闘を避ける傾向にあった」

 

 フィンさんに続き、リヴェリアさんも説明に参加する。

 

 ふむ……確かに、これまで闇派閥の襲撃では【ガネーシャ・ファミリア】が現れると基本的に撤退してたな。他の場所でも【ロキ・ファミリア】が現れると逃げ出す事が多かったらしい。【フレイヤ・ファミリア】は言わずもがな。

 

 探索系派閥を筆頭に上位派閥は抗争を避けるために、本拠の位置がそれぞれ離れている。

 

 だから闇派閥はその本拠から離れた場所で暴れることが多かったんだけど……。

 

「しかし、ここ最近闇派閥と思われる動きが確認・報告された場所が、これまでとは異なってきている」

 

 フィンさんが言い終わると同時に、リヴェリアさんが奥の壁に設置されたボードに貼り付けられた地図の前に立ち、羽根ペンを手に持つ。

 

「報告が上がった場所は、北東、北西、南西、東、そして――北と南。この六ケ所だ」  

 

 フィンさんが告げた場所をリヴェリアさんが手早く地図に赤丸を描く。

 

 赤丸が全て記されると同時に、会議室がこれまでで一番ざわつき、また殺気立つ。

 

 当然だ。今回告げられた場所ほぼ全てが、大手派閥本拠のすぐ傍なのだから。

 

「まずは北東。ここは言うまでもなく、魔石工場が連なる工業地帯。オラリオとギルドの心臓部とも言える場所だ。ここの警備は最優先で現在も各派閥の者達が巡回を行っている」

 

 そして【ヘファイストス・ファミリア】の本拠や団員達の工房が存在する地区でもある。

   

 でも、ここは以前から執拗に狙われていた場所だ。ここに闇派閥が現れることは、驚くことじゃない。問題はその後だ。

 

 北西は通称『冒険者通り』と呼ばれ、冒険者にとって必要な物資や装備を整える商店、酒場、そして――このギルド本部が存在する地区。

 

「この地区は【ゴブニュ・ファミリア】【ディアンケヒト・ファミリア】の本部はもちろん、ヘファイストスやデメテル、ミアハなどの支店も多数存在している。ここが壊滅すれば、間違いなくオラリオは機能不全に陥る」

 

 ここにはヘファイストス様の執務室もある。

 冒険者に関わる事業を展開している商業系ファミリアは、まず確実にこの北西ストリートに本拠にも等しい拠点を構えている。

 もちろん、ここにもこれまで闇派閥が襲い掛かることはあったけど、あくまで嫌がらせレベルだった。それは当然だ。だって、この通りには常に多くの冒険者がいるのだから。【ロキ・ファミリア】の本拠も近いしな。

 

「南西は『ダイダロス通り』と『歓楽街』。ダイダロス通りに関しては、これまでも数え切れないほどの襲撃があったため、意外ではないかもしれないが、今回は……歓楽街の方で闇派閥の姿が目撃されている」

 

 歓楽街は【イシュタル・ファミリア】の支配地区だけど、昼間は店は開いていないので人気は少ない。だからか、これまであまり被害はなかった。

 今更ここを狙う理由は何だろう?

 

 するとシャクティさんが立ち上がり、

 

「ちなみに歓楽街では現在とある疑惑が持ち上がり、【イシュタル・ファミリア】と共に調査中の案件がある」

 

「とある疑惑?」

 

「一部の娼婦、男娼が、闇派閥によって誘拐され、歓楽街に売られた者達の可能性がある」

 

『!!』 

 

 マジで?

 

 つまり歓楽街の中に闇派閥の人間がいるって事?

 

「元々歓楽街に身を置く娼婦達は、様々な理由で身売りした者達だ。まぁ、アマゾネスの様な種族としての特性として娼婦になる者もいるがな。アマゾネスを除き、身売りする者達の約半分は商会を通じて娼婦になる」

 

「という事は、商人の中に闇派閥と繋がってる奴がいるってわけか」

 

「そうだ。現在【イシュタル・ファミリア】に協力を仰ぎ、極秘裏に娼婦達に事情聴取をしている」

 

「今のところ、違法に売られた娼婦は見つかってないわぁ。まぁもっともぉ、全ての娼館がイシュタル様の統治下にあるわけじゃないからぁ、微妙なところかもねぇ」

 

 そう話すのは【イシュタル・ファミリア】代表のアマゾネス。

 藤色の膝裏まで伸びる長い艶髪を一本の三つ編みに束ねているTHE美魔女って感じの人。

 

 この時期はまだあの蛙女が団長ではないらしい。

 

 それにしても、ふむ……。神イシュタルも全てを支配下に置いているわけでもないのか。あくまで、歓楽街を仕切る顔役って事かな?

 だから商人達も便宜を図ってるんだろうけど、面従腹背的な野心家がいてもおかしくはないか。

 

 まぁ、歓楽街は神も入り浸ってるって話だし。スパイを紛れ込ませるのは持ってこいなんだろうなぁ。

 

「商会の方は我々が調査しているが、あまり順調とは言えん。数が多いのもあるし、そのような悪事の証拠を容易く露呈させる者を闇派閥が選ぶわけもない」

 

「でも、そんな身内がいるところを襲撃しようとしていると?」

 

 俺は首を傾げながら疑問を口にする。

 

「だからこそ、と言う考えも出来る。ヴァレッタならね」

 

「確かに、【殺帝(アラクニア)】ならば逆に襲う事で証拠を隠滅しようとするだろう。それで手を組んでいる商人に裏切らないように恐怖を与え、無関係の商人達には歓楽街も闇派閥の標的に思わせ、外に警戒心を向けさせる。その隙に更に内側に蜘蛛の巣を張る」

 

 なるほど。あの女なら身内くらい普通に殺すか。

 

 

 そして、東は――うちの本拠の近くだ。

 

 

「目撃情報が多いのはギルド施設。この辺りには魔石商品を管理する施設が多数存在する。ここで外からやって来た商人と取引する。ここを襲われればオラリオの収益は大損害だ! 絶対に守り抜かねばならん!!」

 

 ロイマンが唾を飛ばし、ブヨブヨした腹を揺らしながら怒鳴る。

 

 それは分かるけど、なんか他の思惑もあるようで素直に同意できん……。

 でも、うちの本拠や越中屋もあるんだ。油断は出来ないな。

 

「そして北と南。ここまでくれば、わざわざ詳細を話すまでもないだろう」

 

アタシら(フレイヤ)アンタら(ロキ)の本拠の近くってわけか。舐めた真似してくれるじゃないか……!」

 

 ミアさんが不快に顔を歪めて吐き捨てる。

 

 【フレイヤ・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】の本拠の近くにまで姿を見せてる……?

 流石にそれは何かおかしくないか?

 

「つまり……闇派閥は【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】を相手取れる戦力がいるって事か?」

 

 ライラさんの言葉に俺達は顔を顰めたり、顔を青くしたりと様々な反応を見せる。

 

 でも、

 

「いや、その可能性は低い」

 

 フィンさんが即座に否定する。

 

「もし本当に僕達に倒せる存在が現れたのであれば、もっと気取られぬようにするはず。わざわざ警戒させる意味はない。いつも通りの襲撃に見せかけて……最初から切り札を出して一気に仕留める、と言うのが一番効果的だ。少なくともヴァレッタであれば、そうするだろう」

 

「そう【勇者】が考えることを読んで、って言う可能性は?」

 

「ないとは言い切れないが、それにしては大掛かりに過ぎる。今の布陣であれば、最低でもLv.6とLv.5がそれぞれ4枚以上ないと、僕達とミア達に同時に勝つのは不可能だろう。流石にそこまでの戦力を用意出来るとは思えない」

 

「……では何が狙いなのだ?」

 

「恐らく狙いは――戦力の分散と固定」

 

 戦力の分散……つまり、各戦力をそれぞれの場所に留めておきたいってことか?

 

 という事は……。

 

「本命はその六ケ所以外の場所、という事……?」

 

「流石だね、【迅雷童子】。僕もそう睨んでいる」

 

 独り言のつもりだったが、フィンさん達にはばっちり聞こえていたようだ。

 でも、やっぱりそう考えるよな。

 

 ……だが、

 

「陽動の可能性があるとはいえ……」

 

「ああ、どこも手薄にしていい個所ではない」

 

「その通りだ。陽動と考え、人手を本命に回した瞬間にそこを狙ってくるのは間違いない」

 

「でも、これだけの場所が本当に全部陽動なの? だって他にもう闇派閥が狙う場所って無くない?」

 

 アリーゼの言葉に俺も眉を顰める。

 確かにそうなんだよな……。これまでずっと狙ってた場所を放置してるわけでもない。考えられるとしたら西のメインストリート? でも、あそこは酒場とか飲食店が立ち並ぶ程度で闇派閥が狙う程の価値はないはず……。

 

 となると……。

 

「連中の狙いはバベル、またはダンジョン?」

 

 俺の呟きに再び視線が集まる。

 

「へぇ、坊主。なんでそう思ったんだい?」

 

 ミアさんがなんかニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべて訊ねてきた。

 ……なんか答え辛いな。

 

「……確かに北東の魔石工場とか、このギルド本部とかも襲撃されたらオラリオは機能不全に陥りかねないけど、言ってしまえば()()()()です」

 

「そ、それだけだと!? 何を馬鹿な事――」

 

「時間はかかるかもしれないけど、それらはまだ復興出来る。でも、バベルはそうはいかない」

 

 ロイマンの怒鳴りを遮って、続きを口にする。

 

「バベルが崩壊したらモンスターが地上に溢れ出す。そうなれば新たな蓋が出来るまで、戦い続けなければならない。しかも、あそこには多くの神々が住んでいる。もし崩壊に巻き込まれれば……オラリオの戦力は半減なんて話じゃすまない」

 

「けど、流石にバベルを崩壊させる戦力なんてないだろ?」

 

 

「そうだな。だから俺なら――ダンジョンの入り口を崩壊させる」 

 

 

「「「!!」」」

 

 ライラさんの反論への答えに、ライラさんはもちろん、アリーゼやシャクティさん、他の面々も目を見開く。

 フィンさんやミアさんは、驚かないけど。

 

「誰もダンジョンに入れないようにする。これだけで十分オラリオに損害を与えられる」

 

「だ、だがどうやって……!?」

 

「流石にそこまでは分かりませんが……ダンジョン一階が崩壊すれば、その修繕は時間がかかりますよね? そして、その間は誰もダンジョンに潜れない」

 

「……そうだな。少なくとも2週間は封鎖するだろう。闇派閥の再襲撃を警戒するとなれば、更に時間はかかる可能性が高い」

 

「つまり、その間は誰も魔石を回収できないという事ですよね? そして、闇派閥はその隙に他の場所を襲ったり、修繕しかけた入り口を再び壊そうと何度も襲い掛かり、それを守るために人手が取られる。だから、また他の場所を。その繰り返しです。そうなれば――」

 

「高確率で暴動が起こるだろうね」 

 

「そしてオラリオは混沌に包まれる、か」

 

「だから、大規模侵攻。そう言う事ですよね?」

 

 フィンさんに顔を向けて訊ねる。

 

 フィンさんは真顔で小さく頷いて、

 

「その通り。そして現状……闇派閥の作戦を防ぐ手段が、僕達には情けない程に少ない」

 

 派閥同士の不和、不信感。

 これが闇派閥の大規模侵攻への足枷になっている。

 

 挙げられた六箇所を守るだけならば、各々好きに動けば良い。だけど、そうなるとバベルが敵の手に落ちかねない。

 しかしバベルを守れば、六箇所の手薄な場所が陥落する可能性が高い。

 

 このままでは確実にどこかが潰され、オラリオに大ダメージを与えられてしまう。

 

 それを防ぐ為には……こっちももっと纏まらないといけない。

 

「これが今回集まって貰った最大の理由。少なくとも今回に限っては、各派閥の因縁や蟠りを横に置く必要がある」

 

「だが、今回限りではその場凌ぎにしかならない。故に、ある程度協力や連携が取れる手段をここで講じておくべきだろうと、我々は判断した」

 

 ここの我々と言うのは、多分【ロキ・ファミリア】、【ガネーシャ・ファミリア】、ギルドのことだろう。

 

「なるほどなぁ」

 

「……うん! 私は異論無いわ! オラリオはもちろん、ここで暮らす人達を守る為に手を取り合うのは絶対に必要な事だわ!」

 

 アリーゼの言葉に場の雰囲気は肯定的なものに傾いた。

 俺も異論はない。誰も彼も疑うのは嫌だし、気分悪いし、疲れるからな。

 でも、問題はその手段だ。【ネイコス・ファミリア】によって作り出されたこの不信感を最小限にするだけの策は、そう簡単なものじゃない。

 

 とりあえずやってみよ、では最悪の事態を招く可能性もある。

 でも、迅速に動かないと闇派閥の動きに対抗出来ない。そうなれば、冒険者じゃない住人達も恐怖や不満が限界を迎え、その爆発はギルドや冒険者に向けられるだろう。

 

 やれやれ……本当に、頭が痛い。

 

 あーダンジョン行きてぇ〜。

 

 俺はうんざりしながらも、具体的な話を始めようとするフィンさんの言葉に、耳と意識を傾けた。

 

________________________

簡単キャラプロフィール!

 

・スセリヒメノミコト

 

所属:【スセリ・ファミリア】主神

 

種族:神

 

職業:フロルの母兼師匠(あれ?)

 

事柄:『嫉妬』『激情』

 

 

好きなもの:フロル、負けん気の強い者

 

苦手なもの:ミアハ(悪気なく構い倒すので怒りにくい)

 

嫌いなもの:浮気者、愚か者

 

 

 極東系に属する女神で、現在オラリオでは極東系唯一神。

 本来は極東に降臨するつもりだったが、フロルを見つけて変更した。普段は思慮深いのだが、好きな者に対してはある意味フレイヤやヘスティアを超える行動力と執着心を発揮する事で有名。

 

 身長171cm、年齢ン億歳。

 

 事柄から暴走しがちな危険な女神と思われやすく、思われているが、『嫉妬』も『激情』も、その真意は『揺るぎない愛情』と『困難を乗り越える勇気』を示す為のもの、つまりは『苦難を克服する為の献身』を表している。その一途さ故に『美の女神』とは相性が悪く、そのせいかフレイヤの『魅了』も実は効かない。

 これは『嵐』と『勇猛』を司る『英雄神』スサノオの娘故の性質であり、彼女は広く言えば『武』と『勝利』を司る女神なのである。

 

 そのためか天界全土の女神の中で、武力に関しては最強格。

 自分のモノに手を出す輩には容赦なく拳と蹴りを浴びせ、ぶん投げ、へし折るため、天界で恐れられるようになった。三大処女神と呼ばれているアルテミスとアテナからはよく懐かれており、最恐と恐れられていたヘラとは互いに良き奥様友達で――ヘラに武術を教えた張本人。

 

 周囲曰く、『スセリヒメは()()良識あるヤンデレ』『ヘラはあらゆる常識を捨てて狂い猛るヤンデレ』『だから、ヘラよりはまだマシ。でもヘラと比べてだからヤバいのは一緒だよね……マジ恐い』とのこと。

 

 基本的に相手側が余程のちょっかいを出さない限りは無害で、慈悲深い神であるため、争い事をあまり好まないツクヨミ、ヘスティア、デメテル、アストレア、ヘファイストスなどの温厚な女神とも良好な関係を築いており、彼女達に直接的ないし間接的に危害や迷惑をかけていた輩(ロキ、アフロディーテ、フレイヤ、イシュタルなど)から守ったり(物理)もしていたので、色んな意味で顔が広く、信頼も厚い。そして、男神からは信頼以上の恐怖も抱かせている――ヘラと仲が良く、共に暴れる時があるのが一番恐れられていた理由。ちなみにスセリヒメは、どちらかと言えば荒ぶるヘラを宥めていた方で、しかしヘラが大暴れして止めようとすると周辺一帯が崩壊しかねないので、結局元凶をさっさと潰す方が早いという結論になり――一緒に制裁する事になる。

 

 男神陣コメ:

 スサノオ『怒らすな危険、怖い』

 オオクニヌシ『献身的で可愛いんだけど、浮気したって思われたら……怖い』 

 ゼウス『尻を触れば片腕折られる、そんでヘラにチクって一緒に制裁してくる、超怖い』

 タケミカヅチ『困っていた女神を手助けしたら、いきなり頭から地面に叩き落とされた、怖い』

 ヘルメス『アルテミス達の沐浴を覗きに行ったら、チョロチョロとうざったいと殴られて埋められた、怖い』

 アポロン『ヘスティアに求愛してたら、気色悪い顔をヘニャヘニャと見せるなと飛び膝蹴りを浴びせてきた、怖い』

 などなど。

 

 女神陣コメ:

 ツクヨミ『相手が誰であろうと大切な人の為ならば迷わず動ける、凄い』

 ヘラ『ちょっと甘い所があるけど、話が合うから一緒にいて楽しい、でもゼウスは私の』

 ヘスティア『怒ると怖いけど、話せば分かってくれるしとても優しくて頼り甲斐のある神だよ、カッコいいのさ!』

 ヘファイストス『暴れられると厄介だけど、普段は頼り甲斐があって、それでお節介焼きなのよね、善い神よ』

 アストレア『正義や秩序とは違うかもしれないけど、自分の信念を真っ直ぐ持ってるの、とても優しい神よ』

 アルテミス『一途で献身的なその愛は素晴らしい。そして、その気高さや強さは尊敬に値する、真っ直ぐな女神だ』

 ロキ『下手に手を出すとマジでヤバい、怖い』

 アフロディーテ『ヘファイストスから浮気された事を相談されたらしく、ヘラ並みに怖い顔でアイアンクローされた、マジ怖い』

 イシュタル『奴の男を誘惑したらパイルドライバーやられた、くそったれ!』

 フレイヤ『痛いのは困るけど、彼女と遊ぶのは楽しいわ、怒らなければ』

 などなど。

 

 フロルの事は一目惚れ。理由はぶっちゃけフレイヤがベルに惚れたのとほぼ同じで、天界にいる時に偶々下界を覗き、不思議な輝きを放つ魂を擁するフロルに惹かれたからである。

 

 基本的に一途であるため、フロルが最優先である事は変わらないし、変えられないし、変える気もないが、ハルハ達団員達に愛情が無いわけではない。

 アワランの漢気は素直に嬉しいし、巴達極東出身の者達が成長していく様などは心の底から愛おしいと思っている。

 しかし、『嫉妬』や『激情』とは固執するからこそ真価を発揮するもの。故に、スセリヒメの真の愛は常に一人にのみ注がれる。

 

 お気に入りはフロルを抱き枕にすること。

 

 どれだけ団員が増えようとも、フロルの食事は自分が作る気でいる。

 

 アーディのことは『小娘め! フロルが欲しければ妾を倒すのだな!』と思っている。

 




実はスセリヒメもロキ同様、下界に下りて少し丸くなった神だったりする。

多分あと百年くらい早くオラリオに来てたら、ヘラと一緒に大暴れしてた可能性大(笑)。
そして、これこそが他の神々がスセリヒメを怖がってる理由。『下手な事すれば……ヘラが帰ってくるかも』と。
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