【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~   作:独身冒険者

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遅くなりました


派閥会合・後編

 問題を共通認識出来たところで、ようやく対応策について話し合う事に。

 

「付け入る隙があるとすれば、襲撃場所が分散している事のみ。闇派閥と一括りにされてはいるが、結局は好き勝手に暴れたい無法者達だ。派閥を混ぜて戦力を配置するとは思えない。つまり、各場所の戦力はこれまでの戦いで把握されている枠を超えてくる可能性は低い。……向こうに切り札がなければ、だけどね」

 

 フィンさんが苦笑しながら言葉を付け加える。

 確かにそこは懸念すべき点ではあるが、そこを警戒していては何も出来なくなってしまう。

 

「更に理想を言えば、やはり事が起きる前に防げることに越したことはない。襲撃前に闇派閥の機先を潰すのが最も被害が少ない」

 

「それはその通りだが……」

 

「それが出来りゃ苦労しねぇだろ……」

 

「そうだね。――だが、全て潰す必要はない。1つ……いや、2つ……。2つ潰すことが出来れば、他の4か所とバベルを守り切るに十分な戦力を回すことが出来る」

 

「2つって言っても……どこを?」 

 

 どこだって潰せるものなら潰しておきたいはずだ。

 選べって言われても選べるものではないだろう。

 

「現状、最も迅速に潰せると考える場所は3つ。北、南、北西だ」

 

 【ロキ・ファミリア】本拠、【フレイヤ・ファミリア】本拠、ギルド本部周辺、か……。

 

 まぁ、確かに単独派閥で十分以上に戦えるロキとフレイヤの派閥は分かる。闇派閥の構成員が隠れ潜んでいる場所を、力で叩き潰せばぶっちゃけ終わっちゃうだろう。

 でも、ギルド本部の方は?

 

「何で北西なの? 北西は逆に冒険者で溢れかえって、潜伏場所はいくらでもあるんじゃない?」

 

「これまでであれば、その通り。とてもではないが、炙り出す事は不可能だっただろう。――だが、これからは違う。ギルドを中心とした情報網を形成し、ギルド本部周辺に存在する商業系派閥と協力体制を敷く」

 

「と言うと……どういう事?」

 

「この周囲はギルド、そして商業系派閥の管理下にある建物が多い。更に派閥に属していない商会に関しては、ギルドと【ガネーシャ・ファミリア】の権限で情報を提供してもらい、可能な範囲で捜索させてもらう。その情報を全て集めれば、潜伏場所や侵入経路はかなり絞られる」

 

 確かにそれなら行けるかもしれないけど……そんな簡単に情報を提供してくれたり、捜索させてくれるのか?

 

「……私達商業系派閥は確かにギルド傘下ではあるけど、流石に全部全部情報を明け渡すのは話が変わるわよ?」

 

 【デメテル・ファミリア】の代表が腕を組み、顔を顰め乍ら苦情を言う。

 その周囲にいる商業系ファミリアも同じように渋り顔だ。

 

「必要なのは所有している建物の情報だけで構わない。流石にギルド傘下の派閥まで疑惑の目を向けるつもりはない。あくまで捜索するのは他国や個人の商会だけだ。先程も【象神の杖】からの話もあったように、闇派閥と繋がっている商会が存在する可能性がある以上、ギルド周囲の調査は必要不可欠……と言う名目で押し切る」

 

「拒否したら?」

 

「当然、後ろ暗い事があるという事でギルドの要注意リストに載る。そしてその場合、ギルドとの取引や商業に関する権利を一部制限する事になるだろうね」

 

 フィンの言葉にロイマンに視線が集中し、腕を組んだロイマンも渋々と言った感じで頷いた。

 

「あまり強権を振るいたくはないが……この神ウラノスがおられるギルド本部やオラリオの主要事業である魔石工業を狙われたとあれば、致し方あるまい」

 

 魔石事業に関してはともかく、このギルド本部が闇派閥の手に落ちるのは避けなければいけないのは誰もが同意するしかない。

 神ウラノスがダンジョンの暴走を抑え込んでいるのは公然の事実。他の神でも出来るんだろうけど、それを変わる神もまた少ないだろう。信用問題もあるだろうしな。

 

「だが、君達の懸念ももっともだ。だから、最優先は北と南。この2か所さえ抑え込めば、僕達やミア達も各所に配置出来る」

 

「……抑え込めなかった場合は?」

 

 訊きにくい質問をシャクティさんがする。これは憲兵でもある【ガネーシャ・ファミリア】でなければ訊けないことだろう。

 

「申し訳ないがバベルを最優先で守ることになる。【ロキ・ファミリア(僕達)】からはガレスを、【フレイヤ・ファミリア】からはミアかオッタルのどちらかをバベルの守護に派遣してもらう」

 

「あそこにゃうちの女神もいるからねぇ……」

 

 ミアさんが顔を顰めてため息を吐く。ちなみにオッタルはずっと黙ったままだ。

 

 でも、確かにそれが現実的ではあるよな。そうなると……結局他の個所はこれまで通り、それぞれで探り、警備を厳重にしないといけないってことか。

 

 その後も話し合いは続き……結果、北はフィンさんとリヴェリアさん主体で【ロキ・ファミリア】が。南はミアさん率いる【フレイヤ・ファミリア】。北西はギルド長ロイマンを筆頭に、本拠を設置している【ディアンケヒト・ファミリア】と【ゴブニュ・ファミリア】を主体に、戦力としてオッタルが。

 北東は【ヘファイストス・ファミリア】と各派閥勇士、そしてガレスさん。南西は【イシュタル・ファミリア】とこれまた各派閥勇士(と言う名の娼館に世話になっていて潰れると困る野郎共)。

 そして、東は【ガネーシャ・ファミリア】と俺達【スセリ・ファミリア】。バベルはガレスさんとオッタルが兼任って感じになった。

 

 だが、【ガネーシャ・ファミリア】は各地の巡回や他の主要施設、門番など、考えるだけで億劫になる箇所の警邏と警備を担っている。

 なので、基本的に東はやはり本拠がある俺達がメインにってことになるだろう。やれやれ……流石にこれは嫌だなんて言ってる場合じゃないなぁ。またダンジョン探索が遠のきそうだ。

 

「さて……続いてだけど、今後の協力体制についての話し合いを行いたい」

 

「それって意味あるのか? 無理に手を組むのも余計な軋轢を生みかねない」

 

「だが、上手く回れば闇派閥への効果的な牽制になる。今回で必ず結論を出す必要はないが、後回しにしていい問題でもない。現状【ガネーシャ・ファミリア】の負担があまりにも大きい」

 

「我ら【ガネーシャ・ファミリア】から頼みたいのは巡回だ。入団したばかりの団員の力まで借りなければ手が回らない状況の今、闇派閥の脅威を抑え込めない可能性は出来る限り減らしたい」

 

「私達【アストレア・ファミリア】も巡回をしてるけど、実力的にも人数的にも焼け石に水って感じだしね……」

 

 他派閥からの言葉に、リヴェリアさん、シャクティさん、アリーゼが現状の憂いを正直に話す。

 

 そうは言ってもなぁ……。いや、巡回が嫌だって訳ではなく、探索もある中で巡回もとなると、シャクティさんが言っていたようにこっちも全団員で対応しなきゃいけない。

 まぁ、だからこその話し合いなんだけどさ。

 

 でも、先程他派閥の代表の人が言ったように、不和の可能性は無視できないものだ。それを解消するのは簡単じゃない。

 

 それに……現状巡回は善意によるボランティアだ。

 それが悪いわけでもないし、ある意味冒険者の特権に対する責務ではあるのかもしれないが、生活していかなければならない以上、どうやっても資金稼ぎに手を取られるのはしょうがない話だ。

 弱小派閥はただでさえ日々の食費に装備代、家賃や借金返済とかに手一杯だからな。

 

 うちだって借金があるから余裕があるとは言えないし。少し前までの闇派閥との戦いはギルドからの強制任務(ミッション)で報酬が少なからず出たから、まだ良かったけどさ。

 善意だけでやっていけるほど、今のオラリオは冒険者に寛容じゃない。

 

 ……となると、他の派閥の冒険者を引き入れる為に一番いいのは……。

 

「ギルドからの冒険者依頼(クエスト)って形にすればどうだろう?」

 

 俺は深く考えずに頭に浮かんだことを口にしてしまった事を、言い終わって視線が俺に集まった時に気付いて後悔した。

 しまった……! つい口にしてしまった。

 

 俺が眉を顰めるのと同時に、フィンさんが獲物を捕らえた狩人の様な笑みを浮かべた。

 

「詳しく話を聞かせてもらえるかい? 【迅雷童子】」

 

「ギルドからは強制任務(ミッション)をすでに出すことで、各派閥に協力してもらっている。今更冒険者依頼(クエスト)を出す事に何の意味がある!?」

 

 ロイマンが小馬鹿にするように、顔を顰めながら言い放ってきた。

 

 ……ぐぅ。ここで今更はぐらかす事に意味はないか。

 

「確かに強制任務(ミッション)はある。でも、それは結局ギルドに認められた派閥だけの話。強制任務(ミッション)が出なかった派閥は無報酬。【アストレア・ファミリア】のように正義感と信念のみで、動く……動ける冒険者は余裕がある中堅上位か大手派閥が普通だ。その日暮らしになりがちな弱小派閥や入団したての新人にオラリオを守る余裕はない。それに強制任務(ミッション)は派閥に出されるもの。個人にやる気があっても、派閥に余裕がなければその意気は続かないし、意味がない」

 

「……確かにね」

 

「アタシらだっていつもギリギリだしな」

 

「そうね。探索の合間だったり、探索班と巡回班に分けて何とかってところ。【ガネーシャ・ファミリア】と手を組めたし、探索に同行させてもらってるからやっていけてるけど」

 

「心意気があっても他の派閥と交流関係のない冒険者に、オラリオを守るために力を貸せと言ったところで、生活が出来なければ手を貸しようがない。だから、()()()()()()()()()()()冒険者依頼(クエスト)というわけか」

 

「それに強制任務(ミッション)はオラリオ防衛には有効だが、活動を制限されるデメリットも負担も大きい……。しかも、現状強制任務(ミッション)が出されているのは中堅派閥がメインで、上位派閥にはあまり出されていない。不平感も募るだろう」

 

 俺の言葉に一番割を食っているであろう【アストレア・ファミリア】のライラさんとアリーゼが肩を竦め、その話にリヴェリアさんが俺の提言に納得の色を示し、シャクティさんは強制任務の問題点を挙げる。多分、少し前の俺達の事を思い浮かべてくれているんだろうな。

 

 シャクティさんの言葉に、ロイマンが汗を大量に流して首を横に振る。

 

「し、仕方なかろう! ただでさえ冒険者がダンジョンから回収してくる魔石の数は減る一方なのだ! 上層の魔石では小さすぎて商品を作るには時間も手間もかかる! そ、それを補うには少しでも上質な魔石による商品を作るしかない! となれば、【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】などの下層や深層に潜れる派閥に頼るしかないではないか! 強い派閥にダンジョンに潜って資源を回収してもらわなければ、どちらにしろオラリオは破滅なのだぞ!」

 

 それも分かる。

 

 だからこそ――

 

「だからこそ、冒険者依頼(クエスト)がいいんだ。ロイマン」

 

 フィンさんが毅然とした態度で、力強く言い放つ。

 

冒険者依頼(クエスト)であれば、派閥でも個人でも依頼を受けることが出来る。つまり、僕とリヴェリアが派閥を率いてダンジョンに遠征に行き、ガレスが地上に残って巡回に参加するといった対応も取れるという事だ。冒険者依頼(クエスト)で報酬も出るのであれば、【アストレア・ファミリア】のように探索と巡回の選択に頭を悩ませる必要性はずっと減る。何より、これまで巡回に協力的でなかった派閥からも、手を貸してくれる冒険者が現れるかもしれない。これは無視できない魅力だと思わないかい?」

 

「それは……そうだが……」

 

「でも、それじゃあ烏合の衆と変わらないんじゃないかい? 結局他派閥同士で手を組みにくい状況は変わらないだろ?」

 

 ミアさんが新たな懸念を告げる。

 

 

 何故か俺に視線を留めたままで。

 

 

 ……え? なんか俺に解決策を出せって言ってる?

 何かフィンさんや他の面々からも視線を感じる!

 

「どうだい? 【迅雷童子】。何か案はあるかい?」

 

 お、おのれフィンさん……! この人も逃がす気ねぇ!

 

 ……くそぅ。思いついてるから嫌なんだよなぁ。

 

「……あることにはあります。信頼出来る派閥の上級冒険者を隊長とするんです」

 

「上級冒険者を隊長って……どういう事?」

 

 アリーゼは理解できなかったのか首を傾げるが、フィンさんやシャクティさん達は分かってくれたのか、感心するような表情を浮かべてくれていた。

 

「巡回の冒険者依頼(クエスト)を受けている【ガネーシャ・ファミリア】【ロキ・ファミリア】【フレイヤ・ファミリア】などのオラリオ防衛に尽力してくれてる事が判明している派閥の上級冒険者を隊長とし、中堅以下の派閥、および単独で依頼を受けた冒険者を含めた小隊を作って指揮を執ってもらう。もちろん、依頼を受けた際にある程度組みたい人、組みたくない人を確認する必要があるし、それでも他派閥の人と組みたくないって奴は出るだろうけど、その場合は何か問題を起こしたり、闇派閥に襲われて死んでも、その冒険者の自己責任。冒険者依頼(クエスト)本来の形を変える必要はない」

 

「それでも問題なく隊を組めれば、十分機能するだろうな。ふむ……それならば我がファミリアから出す人員も減らし、他に回す余裕も出来る」

 

「それに他派閥と交流する機会も増える。派閥としては無理でも、依頼(クエスト)中ならば円滑な協力関係を築くことは可能だ。そうなれば、いずれある程度固定された隊も出来るだろう」

 

「面白い事考えるじゃないか、坊主。リヴェリアの話に加えて、弱小派閥は上級冒険者の戦い方や考え方、警戒する際の視点を学ぶ機会にもなって、上級冒険者は指揮の練習になるわけだ。これまで埋もれてたけど、巡回の経験を経て頭角を現す奴も出てくるかもしれないねぇ」

 

「そうだね。今後今回のような大規模な作戦を行う時にも、その情報は非常に参考になる」

 

「それなら私達も憂いなく巡回に専念出来るわ!」

 

「まぁ、ダンジョンの方が稼ぎがいいんだろうけどな」

 

 そこはロイマンに頑張って交渉してください。

 

 それにこれは冒険者だけに利点があるわけじゃない。

 

「……だが、報酬はどうする? 流石にそこまでの大金は出せんぞ!」

 

「担当地区ごとに商会や商業系派閥からもお金を出して貰えばいいのでは? もしくは依頼達成の証明書を証拠に、証明書につき一度だけ、店がある地区を担当してくれた冒険者には一部商品などの割引とか。【デメテル・ファミリア】ならば食品の割引、ヘファイストスやゴブニュならば武具の販売や整備の割引など」

 

 ロイマンの嘆きにこれまた俺がすぐさま案を出す。

 もういいや。今後の俺達の活動にも繋がるんだ。言いたい事言お。

 

「ふむ……それならば私達も損はあれど顧客を得る機会でもある。メリットとデメリットは釣り合ってますね。まぁ、どこまで割り引くかについての話し合いはいると思いますが」

 

「そうだな。主神にも一度相談したい」

 

「とりあえず、冒険者依頼(クエスト)の報酬額を決めようか。それと……ミア、オッタル、【フレイヤ・ファミリア】はどうする?」

 

「そうだねぇ……まぁ、アタシはやってもいいけど、この猪坊主を始め他の奴らは微妙なところだろうね」

 

「……」

 

 オッタルがなんか複雑そうな顔してるけど。いや、あれは葛藤か? 参加するべきか、これまで通り基本我関せずか、神フレイヤの護衛に就くのかで迷ってる感じかね。

 

「【フレイヤ・ファミリア】は無理して参加する必要もないのではないか? 我々【ロキ・ファミリア】が参加するのであれば、むしろ【フレイヤ・ファミリア】は援軍として各地に駆け付けられる戦力にしておく方が良い」

 

「ふむ……確かにその方が闇派閥もこちらの動きが読みにくくなるか」

 

 リヴェリアさんの言葉にフィンさんが顎に手を当てて、小さく頷く。

 何とか話は纏まりそうですね。良かったよ……。

 

 今回の話はまぁ……簡単に言えば派遣バイトみたいなもんだ。

 だから、まだ俺でも考え付いたけどさ。流石に細かい金額の話は無理だからね?

 

 という事で、この後はロイマン、フィンさん、シャクティさん、ミアさん、商業系派閥の方々で具体的な話し合いをする事に。

 

 あとの人達は解散。俺も帰ろ!

 

 と、思ったのに。

 

「ちょっといいかい? 【迅雷童子】」

 

 フィンさんとリヴェリアさんが声をかけてきた。

 どうやら小休憩のようだ。

 

 あ、そういえば忘れてた。

 

「ノアール達から昨日の顛末は報告を受けている。うちの団員達が申し訳なかったね」

 

「いえ。まぁうちの連中は誰も怪我してませんし、腹の虫も治まったようなので、スセリ様と俺としてはこれ以上は特に何かを求める気はありません。それは団員達も納得してます」

 

「そうか……。それは助かるけど、それはそれで情けなくなってしまうな……」

 

「あの者達は暫くは本拠で謹慎処分とした。またしばらくは巡回などに参加させ、心身共に鍛え直すとのことだ。ノアール達も罰として、ボガルド達に付き合うこととなった」

 

「いくら君のファミリアが君を筆頭に粒揃いとは言え、流石にLv.2がLv.1に一方的に負けたのはね。ステイタスに振り回された、なんてすら言えない。基礎から鍛え直す必要があるだろうね」

 

 リヴェリアさんは眉を顰めて小さくため息を吐き、フィンさんは苦笑してはいるが、少しお怒りっぽい。俺達に、ではなくボガルド達や自分にって感じだけど。

 多分、ボガルド達が吐いた暴言も細かく報告されたんだろうな。リヴェリアさんとかは、王族としての立場で相手を貶めるとか苛つきそうだもんね。

 

「それにしても……今回は助かったよ。君の提案のおかげで、想定よりも早く、そして簡単に話が纏まりそうだ」

 

「うちも他人事ではないのですから。また強制任務(ミッション)は正直勘弁願いたいので……」

 

「あははは! そうだね。……でも、今回の件で君がただ勢いがある新人という印象は、大きく変わったはずだ。今回会合に参加した面々やその派閥は好意的に捉えてくれたようだけど、他の者達はそうとは限らない。注意しておくことだね」

 

「……ありがとうございます」

 

 だったら呼ばないでくれ! そして話を振らないでくれ!

 正直今回の件でなんか絡まれたら、フィンさんとミアさんのせいだからね!?

 

「少し話が逸れてしまったね。とりあえず、今回の件はしっかりと団員達にも周知し、今後君達はもちろん他派閥の者達への対応には注意させるよ」

 

「私の方も、同族の団員達に確と言いつけておく。確かに王族ではあるが、ここはエルフの里でもないし、私は王族が嫌で出奔した身で冒険者としてここにいる。血筋を笠に着て、他の同族を見下すつもりはない」

 

「お願いします」

 

「もっとも……それに関しては、すでに他の同族達からかなり絞られたようだがな」

 

 ですよね。エルフなら多分極端だと思うんだよ。

 笠に着るか、王族の名を利用するなんて烏滸がましいって嫌悪するか、どっちかだと思う。

 

 その時、

 

「おやおや! 随分と仲が良さそうじゃないの君達! 私も混ぜておくれよ!」

 

 急に元気な声が横入りしてきた。

 

 揃って顔を向けると、そこにいたのはハットを被った灰色がかった金髪の美女。

 人懐っこい笑みを浮かべてるんだけど……なんか胡散臭い。

 

 この感じ、もしかして……。

 

「君か、リディス」

 

「やぁやぁ、フィン。ズルいじゃないか。将来有望な少年を自分達ばかりコネかけるなんて」

 

「そんなつもりはないよ。大事な話があっただけさ」

 

「例の【道化の奮腕】達のことかい?」

 

 リディスと呼ばれた女性はニコニコとしながら、ズバッと言い当ててきた。

 ますますその笑みが胡散臭くなった。 

 

「流石【ヘルメス・ファミリア】、と言っておこうか」

 

 やっぱり……。

 

 まだアスフィはいないはずだから、この人が今の団長って事か?

 なんか、滅茶苦茶神ヘルメスに似てるなぁ。

 

 リディスさんはその胡散臭い笑みを俺に向けて、

 

「初めまして、【迅雷童子】くん。私の名はリディス。【ヘルメス・ファミリア】の団長だよ。今後ともよろし――」

 

「くするつもりは今のところないですね」

 

「え゛」

 

 リディスさんが笑みを浮かべたまま固まった。

 

 フィンさんとリヴェリアさんも意外そうな顔を浮かべて、俺を見る。

 

「うちの主神より、【ヘルメス・ファミリア】とは関わらないようにと厳命されてまして」

 

 まぁ、俺自身あんまり関わる気ないんだけどさ。

 神ヘルメスも胡散臭いし、フィクサー気取りだし……入団拒否されたし。

 

 まぁ、【ヘルメス・ファミリア】の活動からしたら子供なんて受け入れられるわけないんだけどさ。

 でも、やっぱりなんかムカつくんだ。

 

 これは俺とスセリ様の同意です。

 

 神ヘルメスはゼウスともまだ繋がってるそうなので、スセリ様は情報を与える気も近づけさせるつもりもないらしい。

 前回の神会で脅したって言ってたし。

 

 でも声をかけてきたってことは……眷属が勝手にしたなら仕方ないってことにする気かねぇ。

 

 

 そんな抜け道認めるとでも思ってんのか。

 

 

「という事ですので、すいませんがお引き取りください」

 

 ニッコリと、営業スマイルで拒絶する俺。

 

「……あ、あははは~。ま、参ったなぁ……」

 

 リディスさんは頬を掻いて困惑しているが、俺はそれを無視してフィンさん達に顔を向けて一礼する。

 

「では、俺はここで」

 

 フィンさんとリヴェリアさんは苦笑しながら頷き、俺は会議室を後にする。

 

 というか、いたんだな。【ヘルメス・ファミリア】。

 さっき名前が全く出なくて、発言もしなかったって事は、やっぱりアスフィがいないから暗躍する手段が限られて、あまり目立ってないのかな?

 

 まぁ、少なくともリディスさんは、神ヘルメス同様あまり信用してはいけない部類の人って事が分かったから良しとしよう。

 

 とりあえず――スセリ様に報告しておくか。

 

 神ヘルメスがどんな目に遭おうが、知ったこっちゃない。

 

 はぁ……また今後の探索予定、話し合わないとなぁ……。メンドクサイ。

 

 

 

 

 フロルを見送ったリディスはため息を吐いて項垂れる。

 

「はぁ~……やれやれ。これは大分毛嫌いされちゃってるなぁ」

 

「初対面のようだったけれど、彼に何かしたのかい? 彼があそこまで露骨に拒絶するのは珍しい」

 

「それに主神にもかなり警戒されているようだが……」

 

 フィンとリヴェリアの問いかけに、リディスは頭を上げて苦笑しながら肩を竦める。

 

「いや~、したと言えばしたし、してないって言えばしてないんだけどねぇ……」

 

「? どういう意味だ?」

 

「数年前、彼が冒険者になる前、【スセリ・ファミリア】に入る前に、うちに入りたいってやって来た彼をにべもなく断って追い返した。でもそれ以降、彼が冒険者になってからは一度も絡んではない……って感じ」

 

「ふむ……なるほどね。でも、それならそこまで警戒される理由にはなってないと思うけど?」

 

「……うちの主神様がね。あっちの主神様に完璧に嫌われて警戒されてるのさ。ほら、うちの主神って少し前まで大神の腰巾着だったじゃん?」

 

「……その名前が出るという事は……彼はやっぱり――あのベルム夫妻の子供なのかい?」

 

 得心がいった様子のフィンが述べた内容に、リヴェリアは目を丸くして、リディスは再び肩を竦める。

 

「やっぱり知ってたんだ」

 

「いや、確証まではなかったよ。でも、彼の境遇とベルムの名から、その可能性が高いとは思っていた」

 

 フロルの一番の注目すべき点は、7歳でランクアップした事ではない。

 

 7歳でファミリアの団長になった事、もっと細かく言えば、6.7歳の少年がスセリヒメ初めての眷属であるという事柄だ。

 

 商業系ファミリアなどであれば、いないわけではないが基本的に団員の子供であるのが普通だ。

 探索系では余程の事情か、エルフやアマゾネスなど将来有望である種族であるか。ヒューマンで親がいない子供など、普通は受け入れない。

 冒険者志望の人間が嫌と言うほど集う、このオラリオであれば尚更。

 

「だが、神スセリヒメは彼を最初の眷属としている。少なくとも、神スセリヒメはそれまで誰も眷属にせず、ファミリアとして登録していなかった。もちろん、その前にも眷属がいた可能性はあるけれど、ロキの話では『あいつに限って、それはない』と断言していた。となると、やはり神スセリヒメは彼を最初の眷属に選んだことになる」

 

「それっておかしなことかい? 珍しくはあるけど、才能が有りそうならあり得る話だと思うけど?」

 

「――オラリオの外であればね」

 

 リディスの疑問にすぐさま反論したフィン。

 その内容にリディスは首を傾げ、リヴェリアも一瞬眉を顰めるもすぐにその答えに辿り着いた。

 

「……なるほど。確かにオラリオの外であれば、おかしなことでない。我々や【フレイヤ・ファミリア】然り、半数以上のファミリアはオラリオの外で結成され、このオラリオにやってくる」

 

「だが、オラリオで結成されたならば、少し話が変わる。このオラリオは冒険者、そして冒険者志望の者達が集う街。彼に固執する理由は普通に考えればない。まぁ……神々の基準は僕達の理解の外だから、本当のところは分からないけどね」

 

「まぁ、それはともかく。それで何で彼があの2人の子供だって思ったのさ」

 

「実は僕達は彼が冒険者になったばかりの頃にちょっと縁があってね。その時の彼の言葉が気になってたのさ」

 

「……あの時か」

 

「ああ。彼は言っていた。『どの店も、どのファミリアも、どの神も、居場所を求めた俺を追い返した。けど、神スセリヒメはそんな子供を探し、見つけ、助け、力をくれ、鍛え、そして帰る場所をくれた』と。その言葉から彼が家族や家を失ったことは容易に想像がつく。そこで少し団員達に調べて貰ったところ、当時彼と思われる子供が多くのファミリアを訪れ、時に持参金を払って入団しようとしていた事が分かった。しかも、その当時彼は野宿生活だった可能性が高い。更にそれがいつ頃から見られるようになったのかを調べたら……ゼウスとヘラの追放、闇派閥の活性化とほぼ同じであることが判明した」

 

「……そして、ベルム、か」

 

「ああ。僕の記憶が正しければ、彼ら一家は本拠を離れてダイダロス通りに家を設けていたはず……。でも、そこを離れて野宿生活をしなければならない状況に陥っていたのだとしたら……」

 

「その通り。ベルム家はかの大神の追放後、ダイダロス通りを襲った闇派閥に強盗に入られている。周囲の家の生贄にされてね」

 

 リヴィスは自分達が調べた情報を惜しげもなく話した。

 

「彼は下水道や路地裏、闇派閥に破壊された家屋などに隠れ潜んで暮らしていたようだ。何とか持ち出せたお金で各ファミリアに入団を申し込んでいたようだけど、結果は知っての通り。断られるか、金を奪われて放り出されるか。最後は寝床を暴かれて、隠してたお金も奪われたようだ……冒険者に、ね」

 

「なるほど。その時に神スセリヒメに救われたと言うわけか……。それならば、あの時の気迫も頷ける。……あの者の聡明さの理由にはなりそうにないがな」

 

「そうなんだよ~。で、あの世界記録でしょ? 流石にうちの主神もあの子の素性に気付いたわけなんだけど……前回の神会で、神スセリヒメにガッツリ脅されちゃったらしいんだよね。もう死人かってレベルの顔真っ白さに、凍死寸前のガクブル具合で帰ってきてさ。立ち直るのに4日はかかったよ」

 

「それはそれは……。まぁ、ロキですら『下手に手を出すな』って言い付けてきたくらいだからね。でも、そんな状況で近づいて大丈夫だったのかい?」

 

「いや~……この場や君達が一緒にいる時なら行けるかなぁって思ったんだけど……やらかしたっぽいな~。これはぁ……ヘルメス様死んだかなぁ」

 

「余計な事するからだよ、アホ娘」

 

 リディスが額を押さえて項垂れると、ミアが腕を組んで声をかけてきた。

 

「【小巨人】……やっぱり貴女も気付いてたの?」

 

「アタシは坊主が生まれてすぐの頃に何度か母親の関係で会ったことがあるのさ……。あのバカたれ共が黒竜討伐に出た時には、坊主もでかくなってたし、流石にまた問題をややこしくしないように会わなくなってたけどね。……両親が死んじまった時には探しに行こうと思ったけど、クソッタレ共が暴れ出したからそっちに手を取られちまって、駆け付けた時にはもう家は荒らされた後だったけどね」

 

 ミアは顔を盛大に顰めて、正直に話す。

 その内容にフィンは首を傾げ、

 

「その後は探さなかったのかい? 君ならオラリオ中を駆け回りそうだけど」

 

「……その家に大量の血の跡が広がってたんだよ。死体はなかったけどね。普通に考えて、あの家には坊主しかいなかったんだ。そう思っちまってもしょうがないだろ?」

 

「なるほどね……。これで君が妙に彼に意識を向けていたのか納得出来たよ」

 

「うちの女神からも、あの坊主に余計な手を出すなって忠告されてるよ。まぁ、坊主の素性に気付いてるのはアタシを含めて2,3人ってとこだけどね。オッタルだってまだ気付いてないよ」

 

「うげぇ……神フレイヤまでそう言ってるの? これ、本格的にヤバいかも。しばらくは主神共々身を顰めて情報収集に徹するとしようかな……」

 

「その方が良いかもね。この状況だ。闇派閥の事に専念してくれ」

 

「あ~あ、私はただ将来有望のかわい子くんと話したかっただけなんだけどな~」

 

 そう言ったリディスは肩を落として弱弱しく手を振って、フィン達に挨拶してトボトボと会議室を後にする。

 

 フィンはその後ろ姿に苦笑し、リヴェリアとミアは呆れた視線を向ける。

 

 

 その後、フィン達は話し合いの場に戻っていくのだった。

 

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簡単キャラプロフィール!

 

・ドットム・グレイロック

 

所属:【ガネーシャ・ファミリア】

 

種族:ドワーフ

 

職業:冒険者

 

到達階層:36階層

 

武器:斧、大剣、鎚

 

所持金:3009872ヴァリス

 

 

好きなもの:酒、ミア、気骨のある奴

 

苦手なもの:ヒョロッとした奴、口が達者な奴、甘いもの

 

嫌いなもの:闇派閥、ナヨナヨした奴、雨

 

 

装備

蛮月(ばんげつ)

・半月大刀

・正重作 価格190000ヴァリス(ヘファイストス談)

・超硬金属と波紋鋼で鍛造された重量武器

・片手で扱う事を念頭にしているため、両手で握ると逆に扱い辛い。そのため、まともに振るえるのは他に正重と巴くらい。盾にもなるが、その場合は消耗が非常に激しい

 

 

 【ガネーシャ・ファミリア】より出向してきた老練ドワーフ。ファミリア内でも最古参に属する大ベテランで、顔はかなり広い。

 ガネーシャにスカウトされて入団したが、あまり憲兵活動には興味がない。でもファミリアの雰囲気やガネーシャの人となりならぬ、神となりは気に入っている。

 

 身長153cm、73歳。

 

 ドワーフらしく豪快な性格の持ち主。片腕を失くしても、落ち込まずにその後の人生の楽しみ方を探し、ダンジョンに頻回に潜っている猛者。

 腕を失ったのは、25年前。まだフィン達がオラリオに来訪しておらず、オッタルも生まれていない頃、階層主のアンフィス・バエナとの戦闘中に仲間を庇って食い千切られた。

 もし腕を失っていなかったら、間違いなくミアやガレスと殴り合い、【ガネーシャ・ファミリア】一の剛腕として名を轟かせていただろうと惜しまれる程。

 

 現場主義のため、後進育成に不満はないが、大抵の場合シャクティ達に『もう少し手柔らかにしてやれ』と注意されてしまう。

 しかし、本人は『生き延びるためだ。鍛錬だからこそ、死ぬ直前まで追い込んでやりゃあいい』と宣って、改善する気はない。それが原因で新人育成から外されて暇になっていた所に【スセリ・ファミリア】のアドバイザーの話が来た。

 新進気鋭と噂のファミリアがどんな所で、世界記録少年がどんな奴か気になっていたので、快く承諾し――良い意味で予想を裏切られた。

 

 自分が何を言うまでもなく、厳しい鍛錬を行なっていた。しかも、本人達はそれで満足していない。まだまだ強くなろうと試行錯誤している。

 そんな若者を気に入らない訳がなく、ぶっちゃけ改宗してもいいなとすら思っている。流石にそれは腕を失っても団員として認めてくれたガネーシャやシャクティに申し訳ないので言わないが。

 

 フロルの素性については気付いているが、誰にも話していない。別に親が誰であろうと冒険者はあまり関係ないし、冒険者の子供であればむしろ冒険者になって当然と考えているからである。

 フロルについては、純粋にどこまで成長するのか楽しみにしている。

 

 そして、隙あらばアーディとくっつけたいと思っている。

 

 ハルハやアワラン達に関しても成長を楽しみにしており、ハルハやアワランなどと呑むのも楽しみの一つとなっている。

 子供や孫がいたらこんな感じなんだろうなと、密かに思っている。

 

 ミアのことはマジ惚れで、一時期真剣に告白しようか悩んで、仲間達に殴って止められた。

 その数年後に今のような体格になり、しばらくヤケ酒に走ってこれまた仲間達に殴って正気に戻された。

 それでも性格も好みな為、ミアが酒場を開いたら、自分も引退して手伝ってもいいなと考えている。多分、ミアには「いらないよ!」と殴り断られると思うが。

 

 




リディスの容姿や話し方は、私の勝手な想像です
女版ヘルメスと言われていたそうなので、こんな感じかなと思っています
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