【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~   作:独身冒険者

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悪商会に突入せよ!

 更に2週間が経過し、俺も8歳になった。

 

 状況が状況だから盛大にお祝いってのは無理だけど、スセリ様はもちろん、ハルハ達からもお祝いしてもらったのは嬉しかった。

 人が増えるとこういう良い面もあると改めて実感。スセリ様は少し拗ねてたけどね。

 

 ……ちなみになぜかアーディが俺の誕生日を把握してた。

 

「フロル~おめでと~」

 

 と、お祝いに藍色の羽織をくれた。

 シャクティさんも一緒にお金を出してくれたそうで、なんだかむず痒いですねハイ。

 

 ただね……身長あんまり伸びてないの。現在135C。

 ……え。成長止まらないよね? やだよ? 大人になっても150C台とか。

 

 と、なんだかんだあったけど。日々は大きく変わらない。

 探索に行って、鍛錬して、巡回して、時々休む。

 

 闇派閥は結局大きな動きを見せていない。

 巡回は毎日変わりなくやれているが、最初の派閥会合時の緊張感が緩み始めている気がしてならない。

 

 でも、フィンさんやシャクティさんは、

 

「どちらかと言えば、嵐の前の静けさ、と言った方だろうね。こっちの気が緩む一瞬を待っているのさ」

 

「巡回を始めたとはいえ、こっちも思想も目的もバラバラの寄せ集めだ。利益が少なければ、気が抜けもするだろう」

 

 ぶっちゃけ、俺も2人の意見には同意だ。多分、近々連中は攻めてくるだろう。

 

 ……でも、

 

「正直なところ、僕も【迅雷童子】同様闇派閥の動きに違和感を覚えている。だが、はっきりとその狙いが見えない。だから、現状ではこれ以上の手の打ちようがない」

 

「確かに情報もないまま、また会合しても意味はないだろうな。逆に不信感が増すだけだ」

 

「ですよねぇ」

 

「幸いミアも同じように気持ち悪さを感じてくれている。各自出来る限り、注意深く周囲を警戒してくれ」

 

 結局、今できることは変わらない。

 でも、やっぱり嫌な予感は消えない。

 

 そんな時に、突然シャクティさんがうちの本拠にやって来た。

 その内容っていうのが……、

 

「商会の一斉摘発?」

 

 大広間にて全員集まって話を聞くことにした俺達は、俺、スセリ様を半円状に囲むように座り、俺とスセリ様の正面にシャクティさんとドットムさんが座っている。

 ドットムさんはシャクティさんが来る前からいたけど、団長が来たという事でシャクティさん側に座った。まぁ、当然だよな。

 

 で、話を戻して、

 

「ああ。先日の会合時に話した、闇派閥と繋がっていて違法に人身売買を行っている商会の1つを見つけた。と言っても、匿名での密告だがな」

 

「……匿名での密告?」

 

 そんな怪しさ満点なので大丈夫なのか?

 スセリ様も同じ思いのようで、

 

「それは敵の罠の可能性はないのか?」

 

「完全にないとは言い難いが……可能性も低い」

 

「その理由は?」

 

「ギルドに密告してきたのは【ヘルメス・ファミリア】の者だからだ」

 

 【ヘルメス・ファミリア】の名前に、俺とスセリ様の眉間に皺が寄る。

 それを見たシャクティさんはため息を吐いて、

 

「そちらと【ヘルメス・ファミリア】のいざこざは聞いているが、この手の情報で【ヘルメス・ファミリア】を疑うことは出来ない。これまでの実績がある」

 

「分かってます。でも……その話を俺達に持ってくるように言ったのは【ヘルメス・ファミリア】じゃないですよね?」

 

「今回は違う。流石にそこまで向こうの融通を聴くつもりはないし、理由もない。むしろ、商会を強制捜査するだけならば、そのまま【ヘルメス・ファミリア】に頼ればいいからな」

 

「では、何故俺達に?」

 

「単純に人手が足りない。【ヘルメス・ファミリア】は他の商会の調査も依頼していて、可能であればこれから話す件と同時に強制捜査に踏み込みたい。【ヘルメス・ファミリア】にはそちらを担当してもらう予定だ。そして【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】には、我々が空けた穴を埋めてもらうことになっている。他のファミリアにもいくつか声をかけたが……あまりいい返事はもらえなくてな」

 

「【アストレア・ファミリア】はどうしたんだい?」

 

「すでに【ヘルメス・ファミリア】の補佐についてもらっている」

 

 ふむぅ……これは……断り辛い流れだな。

 こっちはドットムさんをお借りしてるしな。ある程度は【ガネーシャ・ファミリア】に協力しないとちょっと申し訳ない。

 

 スセリ様に視線を向け、スセリ様が頷くのを確認する。

 

「詳細をお願いします」

 

「ああ。ギルド、【ヘルメス・ファミリア】【ガネーシャ・ファミリア】【イシュタル・ファミリア】【ディオニュソス・ファミリア】などの捜査を経て、4つの商会が候補に挙がった」

 

 その商会全てがやはり娼婦、娼男を仲介・紹介する業務に関わっていた。

 そして、その娼婦・娼男全ては外部から()()()()()()

 

「……多いのか少ないのか。判断し辛いところですねぇ」

 

「危惧していた予想よりは少ない。だが現実的には、残念ながら多いと言わざるを得ない」

 

「4つの商会の背後関係は問題ないのかい? 国が背後(バック)にいるとなると厄介事になりかねないよ」

 

「問題ない。証拠さえ押さえられれば、国は黙らせられる。他国もオラリオを敵に回したくはないだろう。恐らく斬り捨てられる」

 

 それはそれでどうなんだと思わなくはないが、流石に国にまで手を出す余裕はないから放置するしかないか。

 

「という事は、4つの商会を同時に一斉摘発ですか?」

 

「その予定だ。日を分ければ逃げられてしまうし、闇派閥もこれ幸いとその隙を狙ってくるかもしれんからな」

 

「俺達が参加する場合の振り分けは?」

 

「【イシュタル・ファミリア】で1つ。【ディオニュソス・ファミリア】と【ガネーシャ・ファミリア】の分隊。【ヘルメス・ファミリア】と【アストレア・ファミリア】。そして、【スセリ・ファミリア】と私達だ」

 

「え? シャクティさん、こっちに来るんですか?」

 

「ああ。その代わり、上級冒険者の大多数はディオニュソスの方に行かせる。こちらの第一級は私を含め数人。残りは第三級の中堅と新人となる」

 

「ふむ……という事は、フロル達の担当はまだ脅威度が低い場所なわけじゃな?」

 

「ああ。規模も小さい商会だ。少数精鋭で一気に制圧し、私と君達は他の場所の応援に向かってもらう」

 

「結局駆け回されんのかよ……」

 

 以前の強制任務の時も結構あちこち走らされたからな~。

 まぁ、規模も規模だししょうがないか。

 

「うちはアストレア以外とは親しくないからな。消去法でそうなるだろうさ」

 

「で、あろうの。先に告げておくが、救援はディオニュソスの方で頼む」

 

「……善処はしよう」

 

「あははは……」

 

 【ヘルメス・ファミリア】とは険悪だし、【イシュタル・ファミリア】は……違う意味で危険だからなぁ。

 

 という事で、俺達も参加することになった。

 

 俺達が摘発する商会の名は『ジャマンナ商会』。

 南東側の市壁沿いに拠点を持つ他国所属の商会で、店の後ろに小さな住宅兼倉庫を所持しているとのこと。

 捕まった違法奴隷達はその倉庫に閉じ込められているらしい。

 

「何でこれまでバレなかったんですか?」

 

「現在調査中ではあるが……恐らく馬車などに隠し場所があったのだろう。眠らされて意識がない状態で運び込まれた可能性が高い」

 

「よく考えるもんだなぁ……」

 

「しかし、倉庫にいるというのはどうやって? 違法奴隷ならばそれこそ隠し部屋や地下などに隠し、そう簡単に見つかることは無いと思われますが……」

 

「すまないが、それを話す事は【ヘルメス・ファミリア】の手の内を明かす事になるため、詳細を話すのは控えさせて貰いたい」

 

 まぁ、そりゃそうだ。バレたら潜入調査しにくくなるもんな。

 

 とりあえず、奴隷達は倉庫の地下にいる可能性が高いそうだ。

  

「助けた奴隷はどうするんですか?」

 

「基本的にはギルド等で一時保護し、そこから故郷や住んでいた場所の確認後、移送手段を考える。もっとも……多くの者が身内を殺されるか、共に売られて帰る場所を失くしてしまい、オラリオかメレンにそのまま移住することが多いがな」

 

「帰る場所があっても、そこまで護衛してもらう金がねぇってのもあるがな。流石にギルドや俺らも出せる金には限界があるしな。護衛出来るわけでもねぇし」

 

 そうか……基本人攫いなんて山賊とかゴロツキだもんな。

 そういう連中が人攫う時に、家族とかにバレないようにコソコソする方が少ないよな。……殺す方が後腐れないんだ。逃げ延びる希望を潰す意味でも。追手を用意される可能性を潰す意味でも。

 

 しかも、狙われるのは小さな村や町。

 そういうところはモンスターにあまり襲われない場所が多く、防衛戦力が低いらしい。だから、山賊などに襲われたらひとたまりもなく、更に近くの大きな街に助けを求めてもあまり相手にされないそうだ。

 ここら辺は移動手段や連絡手段が限られてる中世時代の世界ってことなんだろうな。

 

 そして、オラリオで神の恩恵を持つ者達にはとある制限がある。

 

 それはオラリオ外への外出制限だ。

 

 オラリオは現在闇派閥の猛威もあるし、何よりダンジョンの異常事態対応の為に戦力を可能な限り留めておきたいというのがギルドの考えである。

 そして、その制限は上級冒険者程強くなる。

 

 だから、基本的にオラリオのギルド傘下の派閥は、オラリオを出る場合ギルドに申請して許可を貰う必要がある。

 これには余程の信頼関係がないと認められないらしいが、【ガネーシャ・ファミリア】は憲兵も担っているので、基本的にオラリオの外に出ることは認められない傾向にあるらしい。

 行けてメレンくらいまでだってさ。それ以上外となると中々ギルドから許可が出ないらしい。特に探索系派閥は。

 

 商業系や鍛冶系はそこまででもないらしい。まぁ、防衛戦力ではないもんな。

 だからデメテル様の畑はオラリオの外にあるし、ヘファイストス様は時折他国に出向いてるらしい。神ヘルメスも探索系ではあるが、運び屋的な商業系の仕事も行っているらしく、今回の様に外に出る事が認められてるらしい。

 ……ちなみに神フレイヤは本当はダメだけど、魅了でやり過ごして時折フラッといなくなることがあったらしい。だから、今は眷属達が護衛と言う名の監視をしているらしい。大変だな。

 

 ちょっと話が逸れたけど、つまりオラリオの冒険者は余程の事情がない限り、外に出る者の護衛は出来ないってことだ。

 たとえ闇派閥の被害者でも。助けられた後は自己責任らしい。

 

 そこをガネーシャ様達は善意で行うのだが、そこはもう処罰覚悟でシャクティさん達も諦めているらしい。そういうところが好ましいから、【ガネーシャ・ファミリア】にいるんだもんな。

 

 俺は……流石にそこまでは手を伸ばせそうにないな。

 

 俺はスセリ様と自分、そして団員達だけで精一杯だ。

 戦う以外で、誰かを救う力は――ない。

 

「その商会には闇派閥の者や恩恵持ちの護衛はいないのですか?」 

 

 ディムルが首を傾げて訊ねる。

 ちなみにディムルは今も顔を隠している。最近は派閥の面々とドットムさんだけの時は外すようになってきたんだけどな。

 

「いると想定して動く。いたとしても第三級格が2,3人だろうが、油断は出来ない」

 

「なるほどな」

 

 更にもし恩恵持ちがいても、必ずしも闇派閥ではないらしい。

 何でも恩恵だけもらって、普段は全く派閥に関わらない『はぐれ』的な人が少なからず存在するらしい。何だかんだ神は優しいから、普段は全く会いに来ない癖に更新にだけ来てもあまり怒らないんだと。まぁ、恩恵を与えるほど気に入ってるんだから、当然と言えば当然なのか?

 

 という事で、俺達は翌日から突入の準備を始めた。

 

 まぁ、一番大変のは正重なんだけどさ。

 鍛冶して、鍛錬して、整備してって大変です。

 

 俺達は18階層までで探索及び鍛錬。もちろん本拠でも組手しまくり。

 流石にランクアップは誰もしなかったし、目に見えて成長した奴もいないが、これは全員分かり切ってたことなので誰も文句は言わない。

 

 ただ……やっぱり嫌な予感は消えない。むしろ強くなってる気がする。

 流石にこの段階でそんなことを口にはしないけどさ。

 

 それに考えるべき事もあるんだよな。

 

「【ヘルメス・ファミリア】から提供された倉庫の簡単な見取り図だ」

 

 目の前に広げられたのは突入する倉庫の見取り図。ホントに最小最低限の情報しか載ってない。まぁ、そんなもんだろうけどさ。

 

 シャクティさん、俺、ドットムさん、ハルハ、リリッシュで作戦会議中。

 

「地下の出入り口は、建物入り口から少し奥になる。出入口はあまり広くないようだ。恐らく1人通るのがやっとだろう」

 

「問題は地下の広さですね……」

 

「そうだな。だから、突入する人数は限られる事になる」

 

 ですよね……となると……。

 

「うちからは俺、ハルハ、アワラン、ディムルってところか……」

 

「そうだねぇ。ただ、アタシもディムルも得物は限られるよ」

 

 大鎌と槍は厳しいかもしれないか。

 そうなるとハルハはともかく、ディムルは魔法が使えなくてハンデがデカいかもしれないな。

 

 正重とツァオは身体や背も大きいし、得物もでかい。

 巴は小柄だけど、武器が大物だから中々に取り回しが難しく、リリッシュは……地下で魔法なんて使われたら俺達が生き埋めになってしまう。

 

 なので、正重達は一階で待機。というか、逃げ出そうとした連中を捕えたり、地下に敵が入り込まないような援護部隊だな。

 

「我々も部隊を2つに分ける」

 

「2つですか? 突入と待機と考えると、全員が中に建物内に突入するってことですよね?」

 

「ああ。状況的に会長とその側近の捕縛、そして奴隷達の保護が最優先で、それ以下は基本放置となる」

 

「逃げ出した連中は闇派閥の連中も受け入れねぇだろうからな。殺されるか、路地裏当たりで野垂れ死ぬか、俺らに捕まるかだ」

 

 まぁ、人手もないし、しょうがないか。

  

「ちなみに、違法奴隷と商会の頭だったら、どっちが優先だい?」

 

「奴隷達だ。奴隷達さえ保護できれば、その商会はブラックリスト入りして賞金を懸けられる。まずまともな営業は出来なくなり、その商会と関りがあった他の商会や怪しい者を強制的に調べることが出来る」

 

 なるほど。つまり、『証拠』の確保が最優先というわけか。

 

「地下の広さが分からないのがやっぱり不安だな……」

 

「奴隷を閉じ込める檻や牢屋などを考えれば、案外広いかもしんねぇぞ。狭いと呼吸が苦しくなるからな」

 

 そうか。声とか漏れないように窓とか隙間とか基本ないだろうしな。酸素が薄くなる可能性があるのか。

 

 その後も打ち合わせをして、終了後に正重と武器の相談。

 今回は脇差、短剣系の武器の方が取り回しは良さそうだからね。

 

 ディムルは剣と短槍で行くらしい。

 ハルハは柄が短めの大鎌だってさ。やっぱりある程度慣れた武器が良いよな。

 

 ちなみにスセリ様は作戦中はヘファイストス様のところにいるらしい。

 ここにいるよりは安全だと思うのでありがたいです。

 

 

 

 ということで翌日。

 

 一斉摘発当日となった。

 

 

 

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