【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~   作:独身冒険者

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遅くなりました
出来れば決着までの二話同時投稿したかったのですが、ちょっともう少し時間がかかりそうなので……(ーー;)


激情の眷属よ、獣となれ

 オラリオのあちこちで上がる煙、悲鳴、そして怒号と戦闘音。

 

 更に先ほどまでは青空が見えていたが、いつの間にか空が暗い雲に覆われていた。

 

 まさか、闇派閥にこっちの動きを読まれるどころか誘導されていたなんて……!

 

「おのれ……! オグール! お前は新人達を引き連れて、奴隷達を救出して避難させろ! 他の者は私と共に来い! 西地区に向かう!!」

 

「「「おう!!」」」

 

「【スセリ・ファミリア】は――」

 

 シャクティさんが俺達にも指示を出そうとしたところで、

 

 

ドオオォォン!!

 

 

 再び爆発が起こった。――東側で。

 

「あっちは……!」

 

「本拠の辺りじゃねぇか!?」

 

「スセリヒメ様は!?」

 

「ヘファイストス様といるはずだ! 今日は北西支店にいるはずだからギルドに近い! まだ安全なはずだ!」 

 

「くそっ! 構わん! 【スセリ・ファミリア】は東に向かえ! ドットム! お前は【迅雷童子】達と共に行け!!」

 

「いいんですか!」

 

「本拠が攻撃されているならば放置など出来まい! 早く行け!!」

 

「ありがとうございます! 行くぞ! みんな!」

 

 俺は礼を言うと同時に駆け出し、ハルハ達も後に続く。

 

「フロル! あんたは先に――」

 

「だめだ!」

 

「闇派閥が待ち構えているかもしれねぇ! いくら坊主でも単独で突っ込みゃ格好の的だ!」

 

「くっそおおお!!」

 

「焦るな! 本拠は誰もいない。建物はまた借金して直せばいい! 今はこの襲撃を乗り切ることだけを考えろ! 絶対に死ぬんじゃねぇぞ!」

 

 分かってる。それは分かってるけど……!

 

 くそっ! まさか完全に裏を掻かれるだなんて! 俺は建物の上に飛び上がって、周囲を見渡す。

 東西南北、北東、南西の六ケ所から煙が上がっている。くそっ! 西は【ヘルメス・ファミリア】とアリーゼ達がいるところだけど、例の闇派閥が目撃されてた場所じゃない!

 

 シャクティさんは西に向かった。そりゃそうだ。そこが今一番手薄なんだから。西は宿や飲食店が多く、旅人や一般人も多い。被害がたくさん出る可能性は極めて高い。

 それ以外の場所は多分問題ない。でも、北西に振り分けられた戦力をロイマンは動かなさいだろう。むしろ北東に動かす可能性が高い。

 

 となると……東は俺達だけで対処しないといけない!

 

 ……おい待て。まさか……これって……この襲撃って……!!

 

「ドットムさん! あの幻覚使いの女は収監所を襲った奴だって言ってたよな!?」

 

「あぁん!? それがどうし――」

 

「という事は、奴は【ネイコス・ファミリア】の関係者ってことじゃないのか!?」

 

 俺の推測にドットムさんやハルハ、アワラン達は目を丸くする。

 

 そう。あの収監所にいた恩恵持ちで一番警戒されていたのが【ネイコス・ファミリア】の連中だった。だから脱獄された時にシャクティさんは俺達にいの一番に教えに来てくれた。

 

 もし、あの女が【ネイコス・ファミリア】の団員だったとしたら。

 

 その女が偶々俺達が突入する商会で待ち構えていたなんて、あり得るのか? いいや! あり得ない!! 皆の話が本当ならば、あの女は間違いなく、俺達が来ると分かって待ち構えていた! 俺達を狙って誘き寄せたんだ! 

 

 という事は……! という事はだ!!

 

 

「この襲撃は――俺達が標的なんだ……!!」

 

 

「どういう事だよ!?」

 

「【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】の本拠近くに姿を見せていたのは、フィンさん達や【小巨人】を本拠に釘付けにするため! 狙いを明確にしなかったのは、バベルとダンジョンが狙いかもしれないと目を向けさせて、残った第一級冒険者をそこに集中させるため! 南西、北西、北東は規模が大きい【イシュタル・ファミリア】や【ヘファイストス・ファミリア】、ギルドの足止め! 【ガネーシャ・ファミリア】は東が担当だったけど、手薄になってる西が襲われれば誰が考えたって【ガネーシャ・ファミリア】が動くと思うし、シャクティさんならそうするし、そうなった!! そして――東が襲われれば本拠がある俺達は絶対に東に駆け付ける!!」

 

「そこに待ち構えていると言うわけですか!」

 

「その可能性が高いと思う!」

 

「ってこたぁ、この先にいるのは――」

 

「ああ……【ネイコス・ファミリア】だ」

 

「けど前はあんな女いなかったけどねぇ」

 

「前にスセリ様と話してたけど……多分、前に戦った奴ら以外にも団員がいたんだ、闇派閥側に。ギルドにも知らされず、表には出てこなかっただけで」

 

「なるほどねぇ。つまり、今回が本番ってわけだ!」

 

 ハルハは虚仮にされた怒りもあり、非常に好戦的な笑みを浮かべ殺気を纏う。

 

 問題は前にアワラン達が倒した連中が主力かどうか。もし、あれがただの下っ端レベルだったらかなり厳しい。

 更に人数的にも厳しいかもしれない。前回よりも相手の人数は多いはずだ。引き際を間違えたら……終わりだな。

 

 悲鳴が大きくなってきて、立ち上がる煙も近くなってきた。

 

「本拠からは少しズレてるな……」

 

 油断は出来ないけど、スセリ様が実はちょっと戻ってたら……と言う最悪の事態は免れてる可能性は高くなった。

 

 その時、

 

「……おい待て。あの方向は……」

 

 アワランが何かに気付いたのか目を見開いて、煙が上がっている方角を見ていた。

 

 俺もその方角を見て、必死に頭の中で地図を思い浮かべる。

 

 そして、俺も他の皆も気付いた。気付いてしまった。

 

 そうだ……! あの方角は……!

 

 

「あそこはまさか、越中屋……!」

 

 

 そう、越中屋がある所だ。

 

「そんな……!」

 

「明里……!!」

 

「くそっ!! アワラン! 行け!」

 

「フロル!?」

 

「本拠や他の場所は俺とリリッシュで回る! ハルハ、正重、ディムル、巴、ツァオ、ドットムさんはアワランと一緒に越中屋に行け!! 明里さん達を助けたら、本拠に避難させろ! いいか!? 絶対に無理するな!!」

 

「フロル……! すまねぇ!!」

 

「速くしな、アワラン! 置いてくよ!」

 

「分かってんよ!!」

 

「ドットムさん、皆を頼む!」

 

「任せとけ! そっちも無理すんなよ!!」

 

「ああ!」

 

 アワラン達は越中屋を目指して全力で駆けていく。

 

 俺とリリッシュはそのまま本拠を目指して走る。奇襲に備えて腰に差し直していた刀を抜き、リリッシュに速度を合わせる。

 

 戦闘音が聞こえるから他にも戦っている冒険者も少なからずいるようだ。

 彼らと合流できればいいけど……!

 

 そして、もう少しで本拠が見えて来ると言うところで――

 

 

「あ~あ~来ちまったよ~。怪我どころか消耗してる感じもねぇじゃ~ん。ケテラの奴、しくじりやがったなぁ?」

 

 

 通りのど真ん中に、男が立っていた。

 

 巴の大刀を細くして槍の様にした武器を肩に担いだ茶髪ウェーブヘアの男。

 

 コイツ……素性を聞くまでもない。

 ゲーゼスと同じ空気を纏ってやがる。

 

「さてぇ……どうしたもんかねぇ。そこまでピンピンしてるのは流石に想定外だったわ~」

 

「……やっぱり、俺達が狙いだったのか? 【ネイコス・ファミリア】」  

 

「……へぇ。気付きやがったのか。ガキの癖に頭が回るみてぇだなぁ。それとも、その後ろのチビの入れ知恵かぁ? まぁ、どっちでもいいか。ここまでくりゃあ()()()()、殺し合うだけだしな~」

 

 よくほざく……。

 

「周りに手下を潜ませておいて、何が正々堂々だ」

 

「あぁ? お前、そこまで分かんの?」

 

「殺気も視線も全く隠す気ない奴らに気付かない方がどうかしてる」

 

「あ~~……まぁ、俺らは暗殺者じゃねぇしなぁ。バレてんならしゃあねぇか」 

 

 男が手を挙げると、左右の路地陰から団員と思われるゴロツキと、闇派閥の白と黒の装束を着た連中が出てくる。

 ざっと見て、20人くらい。

 

「さぁてっとぉ、悪い悪い。名乗ってなかったなぁ。【ネイコス・ファミリア】団長、バグルズ・ヤラレルンだ。周りからは【人喰魔(センティピード)】って呼ばれてる」

 

「団長、それにヤラレルン、ね。ってことは、前に戦った奴は……」

 

「ああ、俺の弟だぜぇ。お前らが戦ったのは、ギルドやオラリオの情報収集で潜入させるために造ったダミーだよ。弟以外の団員はただの数合わせだったんだがぁ……勝手にお前らに喧嘩売りやがって、計画が全部おじゃんになっちまったぜぇ」

 

「……なるほど。それが俺達を狙った理由か」

 

「あぁ、そうさ。やられたらやり返す。当たり前の事だろぉ?」

 

 ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべるバグルズ。

 

 ……確かにうちとお前らは明確な敵対関係だろう。

 でも、だからって……関係ない人達や街まで巻き込んで……!

 

 ギリッ……と込み上げてきた怒りに歯噛みして、バグルズを睨みつける。

 

 俺の怒りを見て、バグルズは更に口を吊り上げ、

 

「良ぃ~~顔だぁ~~。それそれ~~それが見たかったんだよ~」

 

「お前……!」

 

「おいおいおいおいおぉ~い。俺らは闇派閥だぜぇ? まさか正々堂々とお前らに挑むと思ってたのかぁ? それともぉ? ゲーゼス達みたいにぃ、ダンジョンで襲い掛かるとでも思ってたのかぁ?」

 

 バグルズの周囲にいた部下達もヘラヘラケラケラと嗤う。

 

「俺はよぉ~団長で闇派閥の幹部を担っちゃいるがぁ、あんまり喧嘩は得意じゃなくてよ~。モンスターやダンジョンにも興味ねぇから、中々ステイタスも上がらなくてまだLv.3でさぁ~。どっちかって言うと頭脳派なんだよな〜。だから、お前らをどう孤立させて、邪魔が入らないようにするか、滅茶苦茶考えたんだぜぇ?」

 

「……ここ最近闇派閥の奴らが目撃されてたのは……」

 

「俺様の策だなぁ。苦労したんだぜぇ? 【勇者】にバレねぇように死にたがりの構成員共を各地にばら撒いてぇ、他の面倒な連中の足止めの為に他の闇派閥の幹部共を誑かしてぇ、借り作ってよぉ〜。そっからはケテラの魔法をうまく使ってぇ、コソコソ探ってやがる【ヘルメス・ファミリア】に偽情報渡してぇ、お前らが捕えに来るだろう商人を先にケテラに殺させてぇ、幻覚に嵌った隙を突くはずだったんだけどなぁ……」

 

「たったそれだけのために、ここまで……!」

 

「おいおいお〜い。それだけってお前なぁ。こちとらいつでも何処でも行ける訳じゃねぇんだぞ? 裏でコソコソしなきゃ表に出れねぇ俺らがぁ、表に出るにはかーなーりーのー準備と手筈がいるんだぜぇ。ここまでするんじゃねぇ。()()()()()()()()思い通りに動かせねぇんだよ」

 

 奴の目に狂気が浮かび始める。

 

「俺が好きなのはよぉ~、人間の怒り狂う様や泣き叫ぶ様を見下ろしてぇ、その顔のまま殺すのが好きなんだよなぁ。とぉくぅにぃ~……ソイツの家族や恋人、顔見知りを殺した時とかが最高なんだよぉ」

 

「……クズが」

 

「だろうな~、でも止めらんねぇんだわぁ。っとぉ、そういえば話変わるけどよぉ。お仲間はどこに行ったんだ?」

 

「さぁな。お前達のきょて――」

 

 

「もしかしてぇ――越中屋ってところかぁ?」

 

 

「っ――!」

 

「きひひひひっ! お前酷い奴だなぁ!! 今頃お前の仲間――怒り狂って殺されてるんじゃないか?」

 

 

 ……もう、駄目だ。

 

 

「……リリッシュ」

 

「ん」

 

「ここは、もういい……。ハルハ達のところに行ってやってくれ。悪いけど――もう、我慢出来ない」

 

「……ん」

 

 リリッシュは何も言わずに頷いてすぐに振り返って走り出し、来た道を戻っていく。

 

 俺は離れて行く足音と気配を背中で見送り――

 

「俺はこれまで、お前達相手でも、殺す事は気が引けていた。どんなに最低で卑劣な事が出来ても、同じ人間だと思っていたから」

 

「あぁん?」

 

「でも――間違っていた。お前を……俺が知る人達と同じ人間だなんて、思って良いわけがなかった」

 

 そうだ。同じ人間が……こんなふざけた理由で人を殺せるものかよ。

 

 モンスターの方がまだ、生物としてマシに思えてくる。

 

 俺は刀を納め、左手で鞘を握り締める。

 

「……くははは。まさかぁ……この人数と格上の俺様相手に1人で勝つ気でいるんじゃあ…ないよなぁ?」

 

 ()()は笑いながらも額に青筋を浮かべ、全く笑っていない目を俺に向ける。

 

「お前の弟は格下のはずの俺の団員に負けたぞ。その手下は大人数相手で、恩恵を得たばかりの俺の団員を倒せなかったぞ。――ゴチャゴチャ言ってないで、さっさと掛かってこい。団長同士で決着をつけ、今度こそこのくだらない因縁を斬り捨てる」

 

「……きひひひ、きひゃはははははは!!!」 

 

 クズは左手で目を覆って、狂ったように笑い始めた。

 いや……最初から狂ってたな、奴は。

 

「いいぜぇオマエぇ!! ホンッットに最高にクソッタレな程ムカつくぜえ!! ああああ!! やっぱりお前は俺様がぶっ殺してやるよクソガキィ!!」

 

 目を血走らせて狂い叫ぶクズ。

 

「手足をぶった切ってぇ!! お前の仲間の前に転がしてぇ!! お前の目の前で仲間を殺す所と死体を晒してぇ!! お前がだぁい好きな女神の前に運んでやるよお!!」

 

「お前には無理だ。そしてお前の死体は――肉片も残さない」

 

 モンスターみたいに……灰にしてやる。

 

 

 そして俺も……お前を冒険者としてでも、人間としてでもなく――怒りに吼える獣として、殺してやる。

 

 

「――【鳴神を此処に】」

 

 魔法を発動して、雷を纏う。

 

「きはははっ! 出たなぁ! その魔法の効果とお前の動きは、これまで十分過ぎるほどに観察させてもらったからなぁ!! その程度じゃ――」

 

 

 まだだ。

 

 

「【鳴神を此処に】」

 

 更に雷を纏う。

 

「……あ?」

 

 出し惜しみは、しない。

 

「【鳴神を此処に】!!」

 

 纏う雷が膨れ上がり、俺の髪が白く輝く。

 

 【パナギア・ケルヴノス】の三重付与。

 

 今の俺の限界だ。

 

 長時間は戦えないが――そもそも敵を前に何十分と戦う事の方が少ないんだ。

 敵の首領が相手だ……短期決戦で終わらせる!

 

「ひゃっはぁ!! 面白れぇ!! さぁ来いよぉ!!」

 

「おおおお!!」

 

 

 お前は!! 俺が殺す!!

 

 

………

……

 

 時は少し遡り。

 

 アワラン達は全速力で越中屋へと向かっていた。

 

 途中で闇派閥の末端構成員が襲い掛かってくるが、全て駆け抜けざまに一撃で沈めていた。

 

 しかし、その道中。越中屋に近づけば近づく程……建物の崩壊が目立つように、闇派閥の攻勢が激しくなってきていた。

 

「くっそ……!」

 

「奴らが東を狙う理由はギルドの交易所じゃなかったのかい!?」

 

「こちらは小さな商会や他国出身の方々の住まいが集まる場所……! このタイミングで狙われる場所ではありませぬぞ……!」

 

「その交易所の方は逆に煙が全く上がってません!」

 

「ちぃ……! 坊主の言う通り、奴らの狙いはお前らみてぇだな!」

 

「だとしても何でここを! 越中屋を襲うんだよ!?」

 

「そこまで分かるか!! 奴らの考えなど知らんわ!」

 

「今は走る!!」

 

「そうです! 越中屋に急ぎましょう!!」

 

「くっそおおお!!」

 

 進行方向に立ち上がる煙。

 

 誰もが頭を過ぎる絶望と後悔――そして湧き上がる怒り。

 

 それを振り払うように、ただただ走る。

 

 僅かな希望を信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが現実は――残酷だった。

 

 

 

 

 

 

 

 辿り着いた越中屋。

 

 

 そこで見た光景は――無惨な瓦礫の山。

 

 

 そして――

 

 

「おぉ? 何だよ、ガキはこっちに来なかったのかよ?」

 

 

 瓦礫の頂上に立つのは嘲笑を浮かべるディーチ。

 

 

 その足元には――1人の少女が胸から血を流して横たわっていた。

 

 

「―――ああ?」

 

 アワラン達はその光景に脚を止めて、目を見開く。  

 

 少女は、明里は、ディーチの足元で倒れ――アワラン達に顔を向けて目を見開いていた。

 

 だがその瞳は、ただただ無機質な漆黒だった。

 

 何も映していない、映せない――無。

 

 表情もただただ――無。

 

 誰もが好いた向日葵のような笑顔。誰もが心温まる優しい色の瞳。

 

 

 それはもう、どこにもなかった。

 

 

 奪われてしまった。

 

 

――ビキリ 

 

 

 戦士達の額に、青筋が浮かぶ。

 

 込み上がる激情に、身体が追い付かない。

 

 

 だが激情の火種はそれだけではなかった。

 

 

 視界の端に映る瓦礫の山の下腹部。

 

 和服を着ていた男性と思われる下半身が突き出していた。

 

 上半身は瓦礫に潰されている――太吉郎がよく着ていた柄の着物を着た下半身。

 

 そこから少し離れた中腹部。

 

 女性と思われる細い片腕と黒の長髪が、瓦礫から覗いていた。

 

 僅かに見える片腕の袖の柄は――三枝子が好んでいたモノだ。

 

 

――ギリィ! 

 

 

 次に響くは、歯を食いしばり、柄や拳を握り締める音。

 

「くくくっ! どぉ~だ~? お前らの為に用意した『舞台』だぜ? 悔しいか? 苛つくか? 許せねぇか? まぁ、安心しろって――俺も最っ高にお前らにムカついてるからよお!!」

 

 ディーチもまた目を血走らせて叫ぶ。

 

「兄貴の計画に泥を塗りやがって!! 雑魚の分際で俺の邪魔をしやがって!! 復讐されて当然って話だ!! そうだよ!! この女共はお前らのせいで死んだんだ!! お前らがあの時俺らにやられてりゃ、もう少し長生き出来ただろうになぁ!!」

 

 完全な逆恨みだが、バグルズやディーチ達からすれば真っ当で正当な復讐なのだとほざく。

 

 狂っている。

 

 そんな生優しい言葉で片付けていい事ではない。

 

 全てに於ける価値観が、徹底的に違うのだ。

 

 理解し合えるなど絶対に思えない程に、『命』への価値観が違う。

 

「ただお前らをぶちのめすなんてツマんねぇ!! お前らに関わった馬鹿な一般人共を皆殺しにしてぇ!! お前らが泣き叫ぶ顔を見ねぇと気が済まねぇんだよ!! そのためだったら何だってやってやるよぉ!!」

 

 結局はただの気晴らし紛いの八つ当たり。

 

 そのためだけに、【ネイコス・ファミリア】はオラリオ中を巻き込んだ。

 

 そのためだけに、明里達は殺された。

 

 それを『闇派閥だから仕方がない』と受け入れられる程――己らは達観していないし、受け入れる気もない!!

 

「お前らのせいで! オラリオは大混乱だ!! お前らのせいで! 被害が増えていくぞぉ!! お前らのせいで!! この女みたいな死体が増えてくぜぇ!!」

 

 ディーチは嘲笑いながら――

 

 

 

 明里の頭を踏みつけた。

 

 

 

――――ブチッ 

 

 

 

 張り詰め過ぎた糸が――キレた。

 

 

 

『―――――!!!!』

 

 

 

 嫉妬と激情の眷属達は――憤怒の咆哮をあげた。

 

 

 

 




あぁ……本当にメンタル削られます。自分で書いといて何言ってんだって話ですが。
これを書いてるとリューの復讐が至極真っ当にしか思えなくなってきて、本当に皆よく立ち直ったと思いますね

さぁ、次回。決着です
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