【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~   作:独身冒険者

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早く書けたのでいてまえ!


なんか個性的な元奴隷達らしい

 アワランを荒療治で前を向かせて3日。

 

 まだ全然時間が経ってないからかなり無理矢理だったが……なんとか立ち直ってくれた。

 それにありがたいことにファミリア全体にも良い影響を及ぼした。

 

 あれから皆で型や素振りをして、組手をする。それもただの組手ではなく、しっかりと目的を定め、制限やルールを決めて行っている。

 質を上げているんだ。そのおかげか、ランクアップしたステイタスと身体の感覚の差異はすぐに解消出来た。

 

 そして、ダンジョン探索も今は階層を伸ばす事ではなく、改めて連携やスキル、新調した装備の確認などに集中している。

 

 ちなみにドットムさんだけど、俺がステイタスを追いついてしまったが、これまで通りアドバイザーを続けてもらう事にした。

 まだまだ俺はダンジョンの事は知らないし、経験や知識を教えてもらいたいからだ。

 

「まぁ……お前さんらがそれでいいなら、いいけどよ。こうなってくると、いつまで儂がお前らに付いていけるかって話になってきてんなぁ……」

 

 って、ちょっと危機感覚えてたみたいだけど。

 

 まぁ、とりあえずいつもの調子というか、うちらしい雰囲気に戻った。

 

 気合新たに頑張ろう!

 

 

 

 と、思っていたんだけれど。

 

 

 

………

……

 

 翌日。

 

 朝早くにシャクティさんとアーディが訪ねてきた。

 

「早くにすまない。少し話がある。時間を貰えないだろうか?」

 

「構いませんよ。探索は午後からの予定にしてたので。俺だけでいいですか?」

 

「いや、神スセリヒメや団員達も出来れば同席して貰いたい」

 

 という事でスセリ様を呼んで、ハルハ達にも声をかける。

 

 シャクティさんとアーディを大広間に案内し、全員揃うまで少し待つことに。

 

「ドットムから少し話を聞いたが、彼…【硬熱闘士(アダマンテウス)】は落ち着いたようだな。それに、ここから気合の入った掛け声がよく聞こえるようになったと噂になっている。あの事件は我々も責任を感じていたのでな……」

 

「いえ、シャクティさんが責任を感じることはありませんよ。あの状況ではどうしようもなかった事です。俺達に起きた問題は俺達の弱さが原因なので、気にしないでください」

 

「……そうか。そう言えば、【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】の事は聞いているか?」

 

「ええ、ランクアップしたようですね」

 

 そう、アレン・フローメルも先日Lv.3にランクアップしたのだ。

 噂では俺がランクアップした事が情報紙に載った直後から、苛烈な程にダンジョンや本拠で戦うようになったらしい。常に傷だらけだったそうだ。

 

 まぁ、前に戦った時もすでに俺よりステイタスは上だったんだ。元々資格があったのだろう。別に驚くことではないかな。

 あの後で会う事も、戦う事もなかったが、正直意識されてるのは間違いないようだ。……襲われないように気を付けよ。

 

 ちなみにアーディは気付けば俺の隣に座ってる。

  

 何でかは知らんし、気付いたら横にいた。

 あの事件の後から妙に距離感が近くなった気がする。……なんかしたっけ? あの後偶然会った時に物凄く心配されたけど、一昨日くらいに会った時にはもう大丈夫と伝えたんだけどな。

 アリーゼ達も妙に気を使ってたしな……。まぁ、明里さんの事はアーディ達にも簡単に知られてるから仕方ないことかもしれんけど。

 

 でもな、アーディ……シャクティさんの額に青筋が浮かんできているぞ?

 

 そして――スセリ様が真後ろで腕を組んで仁王立ちしているのだが……。

 

 

 ――俺の後ろで。

 

 

「油断も隙も無いのぅ……フロルや」

 

「お、俺でございますか……?」

 

「お前がしっかりと断ればいい話であろう?」

 

「……そ、ソウデゴザイマスデスネ」

 

「そして小娘」

 

 スセリ様はすでに青筋に加えて、血走り始めている目をアーディに向ける。

 

 でも、アーディはまったく怯えずにニコニコとスセリ様に顔を向ける。

 

「はい」

 

「他派閥の本拠で白昼堂々と団長を誘惑するとは、随分といい度胸じゃなぁ?」

 

「誘惑なんてしてないですよ。スセリヒメ様と同じです。可愛いフロルを近くで見たいだけですよ」

 

「ならば別に隣でなくともよかろう?」

 

「フロルの頭って撫でたくなるんですよね~」

 

「ほぅ……それは大いに同意するが、それでも何故お主が撫でる必要がある?」

 

「フロルが可愛くてとっても頑張ってるからです」

 

「ぬぬぬ……!」

 

 ……天然なのか、分かってやってるのか分からんが、スセリ様が押されてる……!

 

 でもね、アーディ……。

 

 

 

 その皺寄せは俺に来るんだよ!?

 

 

  

 これはしばらくスセリ様の抱き枕コースだな……。

 

「ス、スセリ様。とりあえず、落ち着いてシャクティ殿の話を聞きましょう」

 

「アーディ。お前もこれ以上余計な諍いを起こすな。大人しくこっちに座れ」

 

「……仕方ないのぅ」

 

「は~い」 

 

 俺とシャクティさんは何とか収まった事に小さくため息を吐く。

 

 そこにハルハ達とドットムさんが入ってきた。

 ……外で様子を窺ってたな?

 

 ジト目をハルハ達に向けるが見事にスルーされました。ちくしょう!

 

「はぁ……お待たせしました、シャクティ殿」

 

「ああ……また妹が粗相する前にさっさと本題に入らせてもらおう」

 

 すでに疲れ気味の顔で向かい合う俺とシャクティさんに、スセリ様やハルハ達は苦笑する。

 アーディは変わらず可愛らしくニコニコしている。

 

 なんか……シャクティさんと話す時は毎回疲れてる気がする。

 主にアーディのおかげで。

 

「話は他でもない。例の救出した違法奴隷達の事だ」

 

 あぁ……あの後、ディアンケヒトやミアハ様の治療院で治療を受けて、何とか生きてた人達は全員無事だったのは聞いたな。

 襲撃時はアーディ達がすぐに助け出して護衛してたらしい。

 

 結構時間経ってるけど、今になってその話をしてきたってことは治療が終わって、全員動けるようになったってことかな?

 

「摘発した商会に加え、それらと関係が深い商会を捜査し、先日ようやく聞き取りや治療、今後の身の振りについての調査が一段落したのでな。その報告と――とある相談をしに来た」

 

「ふむ? 相談とな?」

 

「まずは報告からさせてもらう。今回摘発した商会は全部で7つ。救出した者達の人数は合わせて58人となった。……死者を含めれば72人。更に……聞き取りの結果すでに売られた者や輸送の途中で命を落とした者を含めると……二百人近くに及ぶ。あくまで聞き取りで確認できた人数で、だがな」

 

「つまり、被害者はその数倍に及ぶと……」

 

「ああ……だが、もうその者達を探し出す手立てはない。……例の暗殺派閥に関係書類や証拠は全て処分されてしまったのでな」

 

「【セクメト・ファミリア】でしたか? 闇派閥、と言うわけではないんですよね?」

 

「恐らくは、な。暗殺組織だから闇派閥と云えば闇派閥だが、あくまで金と金の関係と思われる」

 

「セクメトの連中はオラリオだけじゃなく、大陸中で活動してるファミリアだ。まぁ、オラリオであんな連中に声かけるなんざ闇派閥くれぇだから、オラリオにいる連中は闇派閥と言ってもいいだろうがな。結構な人数が潜んでると思っていいだろうよ。」

 

「つまり、油断出来ない派閥ってわけだ」

 

「ああ。規模も大きいと考えられるため、連中の戦力が読めない。今後は暗殺にも警戒してくれ」

 

 難しいこと言うなぁ。

 見張りを出す余裕はないんだよなぁ……。

 

「話を戻すが、とりあえず救出した者の対応を優先する事になり、一旦捜査は中断となった。……一応【ヘルメス・ファミリア】に引き続き調査を依頼してはいるが……今回の件でどこまでその情報が信頼出来るかは判断が難しくなった」

 

「まぁ、今回はあの優男も完全にしてやられたからのぅ」

 

 確かに、今回の襲撃において対応が後手に回ってしまった要因は【ヘルメス・ファミリア】によりギルドに報告された罠情報だからな。

 バグルズ達の方が一枚上手だっただけの話ではあるが……完全に商会摘発が大規模襲撃の最後の引き金となったのだから、標的となった俺達以上に自責の念は大きいのかもしれない。

 

「違法奴隷を扱っていたのは事実だったからなぁ。まぁ、流石に当分は同じ手は使ってこねぇだろうが……」

 

「あの【殺帝】ならば、そこを突いて罠を仕掛ける可能性がある。【勇者】もその辺りを警戒しているようだ」

 

「でしょうね……」

 

「それで、解放した者の約半数は故郷、または親族や知り合いのいる国や街に行く事になり、残りの半数はオラリオやメレンに残る事を選んだ」

 

「半数ですか……。多いのか少ないのか……」

 

 30人程度だから、まぁ多いと言うほどではないのか?

 

「そして今回の本題が、そのオラリオで暮らす事を選択した者達だ」

 

「んあ? 本題ってなんかの相談だろ? 残った連中となんの関係があんだよ?」

 

 アワランの疑問に同意するように俺やハルハ達も訝しむ。

 別に俺達は商売をしてるわけじゃないし、物件や炊き出しをしてるわけでもないから手助けしようがないんだが……。

 

 いや待て。……まさか。

 

「もしかして冒険者になりたい人がいるんですか?」

 

 俺の問いにシャクティさんが頷いた。

 

「正確には、【スセリ・ファミリア】に入団希望している者達がいる、だな」

 

「うちに入団したいぃ? 奴隷だった連中がかい? 正気かい?」

 

「我々も何度も確認した。だが、全員答えは変わらなかった」

 

 シャクティさんも顔を顰めながら話を続ける。

 

「だが、理解出来ないわけでもない。なぜなら希望したのは我々が突入したあの地下牢にいた者達だからな。あの時の【迅雷童子】の活躍を見て、何かしら惹かれる物があったのだろう」

 

「あのお兄さんを殺されたエルフさんもいたよ」

 

「……彼女か」

 

 間に合わずに殺されてしまった兄に泣きながら、両手を傷付けながら手を伸ばして呼んでいたエルフの女性。

 無事だったのは嬉しいが、なんだってうちに……。

 

「そのエルフだが、兄の遺体はオラリオの墓地に埋葬した。更に名前や話を聞く限り、極東の生まれのようだ。他にも1人、極東出身の者がいる。恐らくは神スセリヒメやそちらの【小甲鬼】達も選んだ理由なのだろう」

 

「なるほど……確かに極東系の神はオラリオではスセリヒメ様だけですからな」

 

「まぁ、それなら話は分かりましたが……極東にまで奴隷商の手が伸びてるんですか……」

 

 極東からオラリオまではかなりの距離がある。輸送費とか馬鹿にならないと思うんだが……。

 

「希少性と言う意味では価値が上がるのだろう。詳しくは知らんし、知りたくもないがな」

 

「某が知る限りではありまするが、極東に住むエルフ族は大陸のエルフの方々と違い、全くと言って良い程に郷から出て来ませぬ。極東を統治している【朝廷】と繋がりはあるようですが、不可侵不侵攻の約定を交わし、最低限の資源を納めているだけと聞いた事がありますな」

 

「我も大陸から来たエルフは会った事はあるが、極東の郷出身のエルフは会った事がない」

 

「うむ」

 

 ツァオと正重も巴の言葉に同意するように頷く。

 

 なるほど……どうやら極東のエルフはかなりの引き篭もりというか、鎖国状態に近いようだ。

 それなら確かに奴隷としての希少性はあるの…か? なんか特殊な魔法とかを使えるとかあるのかね?

 

「ちなみに入団希望者は4人。今話に出た極東出身の女エルフ、同じく極東出身の男ドワーフ、じゃじゃ馬のアマゾネスに元恩恵持ちの女ダークエルフだ」

 

「うん、後半2人がおかしくないですか?」

 

 じゃじゃ馬って断言して、元恩恵持ち?

 なんでそんな人達がうちに来たがるのよ?

 

「アマゾネスはかなり気性が荒いと言うか……その…獣染みている」

 

「「「獣染みている?」」」

 

「話し方も片言で、まるで獣に育てられたかのような仕草をすんだよ。四つん這いで歯を剥き出しにして唸ったりな」

 

「もしかしたら幼少の時から奴隷として扱われて来たのかもしれん。テイムされたモンスターや獣と同じ場所にでも入れられていた可能性が高い」

 

「そんな奴がなんで尚更ここに来たがるんだよ?」

 

 アワランの疑問に俺も同意。

 

「先程も言ったように、あの時の【迅雷童子】に惹かれるモノがあったのだろう。恐らくはアマゾネスの性でな」

 

「あ〜…あの時一番派手に暴れたフロルを雄として選んだわけか」

 

 同じアマゾネスのハルハの言葉に、全員が納得し――出来るか!!

 それって俺を襲いに来るってことじゃん!

 

「そいつは恩恵もらったことないんだろ? ならフロルなら簡単に返り討ちに出来るじゃないか」

 

「仲間になった奴にまで警戒したくないよ!?」

 

 いずれ【ロキ・ファミリア】に入るティオネ・ヒリュテよりも酷そうだぞ!?

 

「そしてダークエルフの方だが」

 

 シャクティさんサラッと話進めないで!?

 

「郷などではなく、どこかの国の貴族、または魔導士として仕えていた可能性が高い。口調からはかなり知性と品格が感じられるし、本人も魔導士と言っていた。ガネーシャからも嘘はついていないとお墨付きは貰っている」

 

「じゃあLv.2って事かい?」

 

「ああ。奴隷になった経緯は仕えていた国が【ラキア王国】、神アレスが治める国家ファミリアに侵攻され、敗北した際に主神が神アレスへの従属を拒否して送還。その時に恩恵を失ったとの事だ」

 

「ラキア王国ですか……」

 

 ラキア王国は軍神アレスを主神とする大国ファミリアだ。

 かなり豊かな国で広大な領地を持っているそうだが、それでも他国に次々と進軍して戦争し、領地を拡大している。

 噂では負けた国は恩恵持ちをそのまま兵隊として改宗され、元主神はアレスの配下として生かされるらしい。確かヴェルフ・クロッゾの故郷がラキア王国だったはず。

 アニメではカットされてたけど、小説では魔剣を巡って一騒動起きていた。

 

 神アレスはラキア王国を建国する前からオラリオにも幾度も攻めて来ているそうだ。もちろん、全敗してるけど。

 ラキア王国はダンジョンもないから、ランクアップがかなり難しいそうだ。

 

「本人もラキアへの従属を拒絶。その結果、奴隷として売られ、各地を転々としてオラリオに来たらしい」

 

「結構な人生を……。そんな人が何でうちに? それこそ【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】とか、なんだったら【ガネーシャ・ファミリア】とか上位派閥にでも――」

 

「まず我がファミリアは……主神が暑苦しいから好かぬと言われた。【フレイヤ・ファミリア】も神に心酔する連中とは性に合わない。そして、【ロキ・ファミリア】は……ハイエルフ、【九魔姫】がいるから嫌だそうだ」

 

「……それ、オラリオにいるエルフに聞かれたら全員敵に回しますよ?」

 

 俺はそう言いながら、ディムルに顔を向ける。

 ディムルはヴェールの下で顔を顰めている雰囲気を出しながら、

 

「……それだけでは確かに反感を買うでしょうが……ちゃんとした理由を聞かねばなんとも……。私とて、リヴェリア様のいる【ロキ・ファミリア】は避けておりましたし」

 

「そうじゃのぅ。国に仕えておったという事は、そもそもエルフの郷の生まれではないのやもしれん。長い歴史の中で、ハイエルフの血筋に敵意や恨みを持たぬエルフもおらぬわけがないじゃろうしな」

 

「まぁ……確かに」

 

 でも、本当に恨みとか持ってたら、それはそれで厄介事だよなぁ。

 

「こちらとしても余計な火種を持ち込み、かつ押し付けたくはないが……本人の希望を無視するわけにもいかなくてな。すまないが、一度全員と会って、どうするかを決めて欲しい。別に必ず引き取れなどと言う気はない」

 

「儂等はあくまで仲介するまでが今回の役割だかんな」

 

 つまり、連れて来てからは丸投げって事ですね……。

 

 はぁ……心情的に入団を断るのは助けた手前気が引けるし、追い返してそれこそまた変な奴らに捕まったり、逆恨みで闇派閥に入られたら困る。

 特にあの女性エルフはなぁ……。目の前でお兄さんを殺されてしまったし……。

 かと言って、その人だけ受け入れるのも反感を買いそうだ……。

 

 やれやれ……とりあえず、全員受け入れる覚悟でいた方が気が楽そうだな。

 スセリ様に顔を向けると、肩を竦めてニヤリと意地悪そうに笑った。

 ……さっきの意趣返しで、これも俺に判断を丸投げする気だな? ハルハ達も俺を見て、ニヤニヤするか申し訳なさそうな顔を浮かべている。まぁ……君らはそうだよね。

 

「分かりました……。いつ頃がよろしいですか?」

 

「助かる。出来れば、今日の午後にでも頼みたい。間を空けるとオラリオ外に出る者達の対応に手が取られ、暇が無くなりそうだからな」

 

「……分かりました」

 

「本当にすまない」

 

 という事で……俺の居残りが決定し、時間までスセリ様のご機嫌取りに費やしたのは、もう、言うまでもないよね?

 

 




フロル……そろそろ心労で倒れそうだな笑

さて、次回からは新キャラ達が!
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