【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~   作:独身冒険者

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さぁ、どんな人達が来たのかな?


個性的過ぎて不安

 というわけで、スセリ様の抱き枕にされた俺は居残りです。

 

 他の皆は当然ダンジョン。

 強くなってほしいからいいんだけどさ。そろそろ、入団希望者の対応方法をなんか考えるべきか?

 基本的にスセリ様はスカウトなんてしてこないし、ハルハ達もそんな余裕ないしな。でもなぁ……結局俺とスセリ様の面談はいるだろうし……。

 結局、今のやり方が一番いいのか。はぁ……。

 

「さて、ヒロ。実際のところどうするつもりじゃ?」

 

 後ろから抱き着いているスセリ様がもうすぐ来るであろう入団希望者について訊いてきた。

 

「そうですねぇ……。まぁ、基本的には全員受け入れるつもりではいますが……」

 

「例のダークエルフか?」

 

「ええ。そこに関しては流石に実際に話して、スセリ様にも判断を頂きたいですね」

 

「そうじゃのぅ。これまでの者達とは少々毛色が違うようじゃからな。アレスに復讐したいなどと言われても困るし、このファミリアを乗っ取ろうと目論まれてもの」

 

「乗っ取るかはさておき、すでにLv.2らしいですからリリッシュや他の連中と上手くやっていけるかはちょっと心配ですね。まぁ、冒険者としては新人ですから、大丈夫だとは思うんですけど……」

 

「やはりリヴェリアを避ける理由が気になるか」

 

「そうですね……エルフでしたら奴隷となった事を恥じる可能性は十分にありますけど……。【フレイヤ・ファミリア】と【ガネーシャ・ファミリア】を断った理由と合わせると、それは違う気がしまして」

 

「だろうの。恐らくはディムルに近いか、それとも国に仕えておったという話から王族という存在に思うところがあるのやもしれんな」

 

 なるほど。仕える王は生涯ただ一人!って奴か。それはあり得るな。

 

「妾としてはじゃじゃ馬アマゾネスの方が気になるがのぅ」

 

「……獣染みていると言うのがどういう状況なのかが分かりませんからねぇ」

 

「ヒロ。分かって言っておるじゃろう」

 

「……雄として見られてるってのはハルハの言い分ですから。まだ分からないじゃないですか」

 

「そうかの~」

 

「例えそうだとしても、俺はまだそんな気はないですよ」

 

「だと、ええがの~」

 

 アーディのこと、まだ拗ねてるなぁ。

 やれやれ……どうしたもんか。多分、数日は新人の対応に手一杯になると思うから、早めに機嫌を直してほしいんだけど。

 

 そんなこんなでご機嫌取りをしていると、門の方からアーディの声が聴こえ、俺とスセリ様は出迎えに向かった。

 

 門にいたのはシャクティさんとアーディ、そして例の4人だけなのだが……。

 

 

 

 件のじゃじゃ馬アマゾネス――首輪されてるんですが。

 

 

 

 リードはシャクティさんが握ってて、アマゾネスは「ヴ~」と唸っていた。

 

 すでに不安でしかありません。

 

 とりあえず、大広間の方に案内する。そこなら中庭に通じてるからな。 

 というか、洋式の応接室、使う事がほとんどないんだよね。何だかんだで座敷が皆気に入ってる。――その場で横になれるからね。

 

 さて、改めて連れて来られた4人を見る。

 

 正直まだやつれている。まぁ、それは当たり前か。栄養失調だったろうし、しばらくは固形物さえ食べるのに時間がかかったはずだ。

 でも、そうなると……入団してもすぐダンジョンや鍛錬をってわけにはいかなさそうだな。

 

 ちなみにじゃじゃ馬アマゾネスは今は大人しく座っている。

 

「じぃ~~~」

 

 っと、俺をず~~っと見ているけど。

 

 すっごい居辛い。

 

「はぁ……すまない、【迅雷童子】。このような方法で連れて来たくはなかったのだが……」

 

「いえ、俺は構わないんですが……シャクティ殿は街中で大丈夫だったんですか?」

 

 憲兵の長が人に首輪を付けてリードを持って連れ回るとか、印象悪くならない?

 

「ダイジョブダイジョブ。この人があちこち動き回って、お姉ちゃんがその都度引っ張って制止してたから。見てた人達は何となく事情を察してくれてると思うよ」

 

「……お疲れ様です」

 

「……ああ」

 

 現オラリオ一の苦労人ですね。

 労いたいけど、労えるモノがありません。まぁ、いつか何かお返ししよう。

 

「さて、事情は今朝話したから割愛しよう。早速各々自己紹介をしてもらう」

 

 ちなみに俺とスセリ様は元奴隷の人達と向き合う形で座り、シャクティさんとアーディは俺達の左側に座っている。

 それこそ仲介人のように。

 

 シャクティさんの進行で、まずはドワーフの男性から自己紹介してもらう事になった。

 

「俺は、タチバナ・秀郷(ひでさと)と言う」

 

 タチバナさんは茶髪を総髪に纏めている男性。種族はドワーフだそうだが、身長が190C近くもある。

 今はやつれているし、筋肉も衰えているから細いけど、多分鍛え直せば正重にも負けない体格になると思う。原作の【タケミカヅチ・ファミリア】の団長カシマ・桜花とみたいな感じかも。

 という事はツァオに近い立ち位置か?

 

「生まれは極東と聞きましたけど、何故奴隷商に?」

 

「敬語は、いらない……。俺は、生まれは極東だが、生まれてすぐに大陸に移住した。極東に近い大陸の外れの田舎の小さな村で、狩人として暮らしていた。……そこに山賊団が村を襲い……」

 

「そうですか……」

 

「家族はその時に皆、殺された。村もないし、父母の故郷は知らない。だから、ここで暮らし、助けられた恩を返したいと思った」

 

「なるほど……」

 

「見た目は大きいが、一番得意なのは弓だ。一応ナイフや鉈を使ってはいたが、どちらかと言うと解体や血抜き用だったから、あまり得意ではない」

 

 え、マジで? 弓なの? スッゲェ威力高そうだな。

 しかも、狩人?

 

「という事は……斥候のような事もある程度出来る?」

 

「獣相手であれば……。ダンジョンで通じるかどうかは分からない」

 

 ですよね。

 でも、その手の知識と経験があるのは助かる。

 

「冒険者になるという事は、モンスターだけでなく、闇派閥……人と戦い、殺し合う事になるが……それは大丈夫か?」

 

「……それは、分からない。でも……努力する」

 

 まぁ、そう簡単には行かないよな。でも、無理に殺す必要もないか。

 やる気はあるんだし、後衛職は欲しかったから文句はない。

 

 という事で入団決定です。おめでとうございます。

 

 では、次の方。

 

「わ、(わたくし)はアサマ・コノハナノ・梓と申します」

 

 綺麗な所作で三つ指付いて頭を下げるアサマさんは、耳が長いけど―エルフだから当然だけど―黒長髪の大和撫子感半端ない少女。

 【アストレア・ファミリア】の輝夜さんに近い雰囲気。こっちは儚さ全開だけど。吹けば吹っ飛びそうな儚さ。

 

 なんか……輝夜さんとサンジョウノ・春姫を足して2で割った感じ。

 

 和装が確実に似合いそうだけど、今はシンプルなワンピース。

 まぁ、お金がないからね。そこは仕方ない。

 

 アサマさんは頭を上げて、儚く微笑み、

 

「先日は、兄上と私を救って頂きありがとうございました」

 

「いや、お兄さんは……」

 

「救われました。遺体を綺麗にしてもらい、きちんと埋葬して頂けたのですから」

 

「……」

 

 そんなの普通の事だけど……今のオラリオや奴隷となった人達からすれば、確かに恵まれているのだろう。

 事実……太吉郎さんや三枝子さんの遺体は、一部欠損してたり潰れていたからな。

 

 冒険者になれば、そもそも遺体がない事も珍しくない。

 モンスターに喰われたり、潰されたりしてるからな。

 

 奴隷も同じだ。捨てられたり、燃やされたり、まともに身体なんて残る事なんてまずないだろう。

 そう考えると…な。

 

「でも、何故うちに? 故郷に帰らなくて良いんですか?」

 

「私にも敬語は要りませんよ。兄上のお墓はここにありますので。それに……きっともう私は郷には入れて貰えないでしょうから」

 

「……と言うと?」

 

「私の郷は……というよりも、極東に在るエルフの郷は非常に閉鎖的でして……」

 

「ああ、うん。それは極東出身の団員からも聞いてる。資源の提供などとの引き換えに、不干渉を契っていると」

 

「はい。その理由はご存じですか?」

 

「いや、そこまでは……」

 

「エルフの多くは大聖樹、または聖樹と共に暮らし、樹や森を守護しています。極東にも大聖樹に匹敵する魔力を抱く聖樹があり、それを護っているのですが……長年他種族を遠ざけてきた事で、排他の眼は身内に向くようになりました」

 

「つまり……罪を犯した者や――郷を一度でも出た者は二度と戻れない?」

 

「……はい」

 

 アサマさんは泣き笑いのような寂しげな笑みを浮かべ、

 

「どんな理由であれ、郷を出た者は――穢れた者として見なされます。たとえ、身内の陰謀で郷から誘拐されたのだとしても」

 

 ……つまり、彼女達は仲間によって奴隷商に売られたというわけか。

 それでも、彼女達の故郷は郷の外と関りを持った者を受け入れない。聖樹を護る為に。

 

「私達の祖父は郷の長老会の一員でした。郷も一枚岩ではありません。小さな郷の中で……とても醜い権力争いが起きていたのです。誘拐されてから、ようやく私達はそれを理解しました」

 

 まぁ、外から誰も来ないなら、欲望の目は身内に向くよな。

 前世の会社とかで起こるくだらない権力争いと全く変わらないな。潔癖で誇り高いとされるエルフだからこそ、この手の権力への欲望には抗えなくなり、時に強引な手段に手を出す事があるってわけか。

 自分のテリトリー内だから、証拠さえ見つからなければ、権力で疑惑や追及も握り潰せるだろうしな。

 

「故郷に帰れない理由は分かった。でも、なんでうちに、探索系ファミリアに入団したいと思ったんだ? さっきタチバナさんにも言ったけど、冒険者は血生臭くて命懸けだ。非戦闘員の団員でもいいとは思うが、それでも今のオラリオを考えると、自衛の手段は身に着けて貰わないといけない。その覚悟は、出来てるのか?」

 

「…………正直に言わせて頂ければ、自信はありません」

 

 まぁ、そうだろうな。

 これまで戦いとも無縁だったろうし、人殺しなんて普通は無理に決まってる。

 

 俺達が麻痺してるだけなんだ。

 

 でも、闇派閥と因縁を持つ俺達と一緒にいるならば、最低限身を護る……人を殺せる技を身に着けて貰わないといけない。

 非戦闘員だとしても。

 

「ですが……それでも兄と私を救って頂いた、貴方に尽くしたい。そう、思っています」

 

「……」

 

「あの時、私は貴方を神だと思いました。雷光を纏う貴方を」

 

 お、おう……なんかちょっと怖いこと言い出したぞ。

 

「でも、私が一番記憶に残っているのは、兄を私の前に運んでくれた時の貴方の、哀しそうな顔でした」

 

「……」

 

「貴方が殺したわけでもなく、貴方の知り合いであったわけでもないのに、とても大切な人を喪ったような……そんな顔を、貴方は兄上に向けてくれました。そんな優しい貴方を、支えたいと、思ったのです」

 

 ……これは、追い返すわけにはいかないか。

 こんな優しい人に戦いを教えるなんて正直嫌だけど……死なせるわけにはいかない。

 

「……分かった」

 

 頷いて、スセリ様に顔を向ける。

 スセリ様は肩を竦めて苦笑する。

 

「まぁ、任せておくがよい。最低限動けるように鍛えてやろうではないか」

 

 お願いします。

 

 では……問題のお二人に――

 

 すると、じゃじゃ馬アマゾネスがズイッと覗き込むように詰め寄って来た。

 

「おぉう!?」

 

「強いオス!! ボス!!」

 

「はい?」

 

 雄? ボス?

 

 じゃじゃ馬アマゾネスは褐色肌に小柄な少女。胸は小さめで、イメージとしてはティオナ・ヒリュテに近いかも。

 髪は暗赤色のウルフカットって感じ。まぁ、無造作に短髪にしてるだけだけどな。

 

 服装はチューブトップブラタイプにショートパンツ。装飾品は一切なし。

 その代わりと言ってはなんだが、目元に赤のアイシャドウ、右手と前腕に爪や牙を思わせる刺青が彫られている。

 

 ……なんか顔つきや雰囲気がハルハに近いな。ハルハを更に野性味を強めて、幼くした感じだ。妹分っぽい。

 

「ビカビカ! キレイ! 強イ! ボス!」

 

 ……全く分からん!! 通訳希望!!

 

「あ、多分ですけど」

 

 アサマさんが困惑顔で手を上げ、

 

「彼女はあの時、かなり危ない状態でした。暗い地下で意識が朦朧としている中、貴方の雷光がとても強く、綺麗に見えたんだと思います」

 

「な、なるほど……」

 

 でも、それが何でボスって事に?

 

「【ディアンケヒト・ファミリア】の治癒師の話では、治療が終わって意識が戻った際、君の事を何度もしつこく訊いてきたそうだ。それでその者が知る限りの情報を話し、君の事を気に入ったんだろう。ボスと言うのは……恐らく動物の群れなどで見られるように、一番強い雄が群れの長になる事とアマゾネスの強い男に惚れやすい習性が混ざった結果だと思われる」

 

 そんな冷静に分析しないで、シャクティさん!

 

「な、名前は?」

 

「ミュリネ! ミュリネ!」

 

 ミュリネね。なんかこの感じ的に姓は持ってなさそうだな。

 なんか武器とかも使わなさそう。最悪噛みつきそう。

 

 それに近づかれて気付いたが、結構身体中に細かい傷がある。

 

「その方はあの奴隷商の人達に一番暴行を受けておりました。そのおかげで(わたくし)達、他の女性は無事だったとも言えます」

 

「その感じでは場の状況を理解して、素直に大人しくするタイプでもなさそうじゃからなぁ。隙あらば噛み付こうとしておったんじゃろう」

 

「あと半日遅かったら死んでいただろうと治癒師が言っていた。【ネイコス・ファミリア】の者と入れ替わる前は簡単に治療されていたそうだが、入れ替わってからは放置されていたようだ」

 

 まぁ、口封じしようとしてたもんな。

 勝手に死んでくれるなら、治療なんざしないよな。これまでも多分暴れすぎて買い手がいなかったんだろう。娼館なんて絶対無理だろうし、どこかのファミリアとかに売りたくても、下手に恩恵を与えて報復されたらたまらないもんな。

 

 入れ替わらずとも殺されてた可能性があったんじゃないか?

 まぁ、強気な女を無理矢理従わせることに快感を覚える変態には需要があったのかもしれんけど。

 

 ミュリネは本当に犬のように嬉しそうな顔で俺の周りを四つん這いでクルクル回って、猫のように俺の身体に自分の身体を擦り付けてくる。

 

 ……うん。性的に襲われる感じはないけど、これはこれで気が抜けないな。

 ホントに気を付けないととんでもない相手に喧嘩吹っ掛けそう。

 

 ……ぶっちゃけ入れたくないけど、ここまで嬉しそうにされてたらなぁ。

 はぁ……他の団員達の言う事聞いてくれるかが肝だな。

 

「はぁ……悪いが、ここに座ってもう少し待っててくれるか?」

 

「分かっタ!」

 

 ミュリネは素直に俺の横に座る。

 うん……とりあえず、入団決定ですよね。

 

 シャクティさんの『言う事聞くから引き取れ!』って殺気にも等しい視線が半端ないです。

 

 俺は何とかそれに耐えながら、最後の難関に挑むことにした。

 

「で、最後は貴女ですが……」

 

「うむ、ようやくかや」

 

 背に流れる紫の長髪に、毛先が薄く銀に輝いており、アマゾネスよりもやや濃い目の褐色肌。そして、やつれているにも関わらず、ハルハにも負けない豊満なスタイルをしている。しかも、ディムルにも負けない程の美人。

 これ……肉付き戻ったら、とんでもない魔性の女になるんじゃないか?

 

「余の名はエーディル。身の上話はすでにそちらの【象神の杖(アンクーシャ)】嬢から聞いておるであろう? ならば、その辺りは割愛させてもらおう」

 

 妖艶、されどどこか勝気な笑みを浮かべてエーディルさんは言う。

 シャクティさんをお嬢さん呼びって新鮮だな。

 

 背筋もピシッと伸びているだけでなく、僅かに胸も張っているようで、明らかにこれまでの3人とは風格が違う。

 これは確かにシャクティさんも警戒するはずだ。

 

 ぶっちゃけ、リヴェリアさんと相対しているように錯覚しそうだ。

 自信に満ち溢れており、なのに傲慢ではない。自然体なんだ。威厳を醸し出すのが当たり前。

 

 ……正直、貴族どころか王族と言われても納得出来るんだけど……。

 

 って言うか、自分の事『余』って言ってんじゃん。

 

「その……なんで貴女はここに?」

 

「余もあの地下牢におってな。あの雷付与魔法を見て、お主に興味を持ったのだよ。エルフでもない、ヒューマンの、しかも子供が随分と面白い魔法を使うのは好奇心が擽られるものよな」

 

「でも、それならもっと規模が大きいファミリアでも良いのでは?」

 

「別に余は英雄譚(オラトリア)に興味はないが、せっかく神より恩恵を授かり魔法を身に着けた故な。魔法は極めてみたくてな。だが入るならば、強い所より興味がある所に所属したいと思うのが魔導士の性の一つよ」

 

「……それだけ、じゃないですよね?」

 

「……ほぅ」

 

「魔法に興味があるなら、猶更【九魔姫(ナイン・ヘル)】の元に行かれるべきでは?」

 

「断る」

 

 エーディルさんははっきりと拒絶した。

 

 その顔には明確な嫌悪感が浮かんでいた。

 

「その理由は?」

 

「好かぬ。それに限る」

 

 ……これは今詳しく訊いても駄目だな。

   

「一応、うちは【ロキ・ファミリア】と協定関係にあるのですが……。場合によっては【ロキ・ファミリア】の指揮下に入ることもある。それについては?」

 

「別に【ロキ・ファミリア】には何も思うところはない。今のオラリオならば考えられる共闘は闇派閥と戦う時であろうが、それは余とて現状と奴らの脅威を無視してまでいがみ合う程愚かではない。必要であれば下らぬ指揮でも従うし、あの忌々しいハイエルフとも肩を並べてやるが、共闘の必要はないと判断すれば、己が感情を隠す気はない」

 

 う~む……滅茶苦茶不安ではあるが、嘘は言ってないようだし、信念のようなものは持っているようだ。

 それにまぁ、必要でなければ自分の感情に従うのは当然のことなので、俺的には止めて貰いたいがそこまで無理強いは出来ない。

 

 横目でスセリ様を見ると、スセリ様はやや眉間に皺を寄せているがしっかりと頷いた。

 やはり嘘はついてないようだ。

 

 さて、どうしたもんか……。

 魔導士がリリッシュだけな現状、すでにLv.2の魔導士をもう1人追加出来るのは魅力的だ。

 

 正直、苗字を名乗らなかった事も気になってるんだよなぁ……。 

 

「不安であるならば、余の事情や素性について話す事もやむを得ぬが……それならば他の者達を外して貰いたい。特に、恩人とは言え他派閥となる者は」

 

 それもまぁ……当然だな。

 ここは……そうだなぁ。

 

「スセリ様」

 

「なんじゃ?」

 

「申し訳無いのですが、ここはスセリ様とエーディルさんの2人でお話して頂いてよろしいですか?」

 

「……ほぅ」

 

「正直、エーディルさんについては俺一人で決めるのは少し……。うちのファミリアの方針は俺主体ではありますが、恩恵を授けるのはスセリ様ですので、今回は一度スセリ様にも判断をお願いしたいです。もし、入団を認めるにしても、まだ素性など隠しておいた方が良いのであれば、俺にも秘密にしておいて頂きたく」

 

「ふむ……まぁ、最悪断るにしても、事情を知る者は少ない方が良いか……。変に探ってくる神が出て来ぬとも限らぬしの。よかろう。エーディルもそれで良いか?」

 

「無論。余の意向を汲んで貰った以上、不平不満を口にする気はない」

 

「では、部屋を移すとしよう」

 

 そう言って、スセリ様とエーディルさんは別室へと移動する。

 

「はぁ……これは、今後うちに入団するエルフは慎重にならないと駄目か……」

 

 ディムルと戦った【ロキ・ファミリア】のエルフみたいに、王族への崇拝と言うか忠誠心が高い人とかだと確実に揉めそうだ。

 

「そう言えば、アサマさんはリヴェリアさん……ハイエルフの事はどう思ってるんですか?」

 

「え…そう、ですね……。正直……あまり……御伽噺と言うか、まさしく外国の話として聞いていましたし、あまり話題になる事もなかったので……どれくらい凄い御方なのか、よく分かってなくて……」

 

「あ〜……なるほど」

 

 まぁ、全く関わらなかったらそんなもんか。

 って事は、ディムルの事も特に問題なさそうだな。そこら辺は安心した。多分、あの感じだとエーディルさんもディムルの事はあまり問題にならないだろう。

 ディムルの方がエーディルさんをどう思うかは分からんけど。

 

「さて……明日からどうするか……」

 

「話が纏まりそうならば、神スセリヒメ達が戻り次第、私達は失礼させて貰う」

 

 これまで成り行きを見守っていたシャクティさんがホッと息を吐いて、告げる。

 

「はい、ありがとうございました」

 

「礼を言うのはこちらだ。正直なところ、そのアマゾネスとダークエルフは断られる可能性が高いと思っていた。そうなると受け入れ先に難儀していたのは間違いないのでな。お陰で肩の荷が下りた」

 

「他にも冒険者志望の人は?」

 

「何人かいるが、その者達は我らや【デメテル・ファミリア】、【イシュタル・ファミリア】等で引き取る事が決まった。冒険者以外の職を希望した者達も、何とか最低限の衣食住は提供出来る目処は立ちそうでな。そう時間もかからずにひと段落するはずだ」

 

 そこからは自己責任でって感じか。

 まぁ、【ガネーシャ・ファミリア】や他のファミリアも慈善事業には限界があるし、解放された以上はそこら辺が支援の限界だろうな。

 

 でも、今のオラリオで働くのは……厳しいだろうなぁ。

 闇派閥がいつどこに現れるか分からないし。まだメレンの方が安全かもしれない。

 

 そして、10分ほどするとスセリ様とエーディルさんが戻ってきた。

 

「お帰りなさい。いかがでしたか?」

 

「うむ……厄介と言えば厄介じゃが、大事になる程の問題と言うわけでもない。まぁ、知られればしばらくは大騒ぎになるじゃろうがな」

 

「それは十分大事で厄介なのでは?」

 

「安心せい。別に周りが敵になるなどの類ではない。入れても問題ないじゃろうて。じゃから、もう改宗を済ませたでの」

 

「あ、はい」

 

 まぁ、スセリ様が認めたのであれば大丈夫なのだろう。

 

 すると、

 

「ほれ、これがこ奴のステイタスじゃ」

 

 いやいや、シャクティさん達いるんですけど!?

 

 俺は慌ててキャッチして、シャクティさん達に見えないようにする。

 

 

 

エーディル・■≒⁑A@s……

Lv.2

 

力 :D 539

耐久:F 398

器用:D 523

敏捷:G 277

魔力:B 730

魔導:I

 

《魔≠」...

 

 

  

 苗字と魔法以下の欄が消されてる。

 っていうか……強いな。地味に魔力の次に力の能力値が高いってのが地味に凄い。

 

「言っておくが、『力』と『耐久』は奴隷生活のせいでな。あまり前衛は期待せんでくれ」

 

 あ、なるほど。暴行や虐待のせいで能力値が上がったのか。 

 

「ということで、他の3人も恩恵を授けるとしよう」

 

「では、我々はこれで失礼する」

 

「うむ、ご苦労じゃったの」

 

「じゃあね、フロル~」

 

「ああ、気を付けてな……」

 

 後ろからスセリ様に睨まれながら、俺はシャクティさんとアーディを見送る。

 門まで見送りに行くべきなのだが、新人達の対応(特にミュリネ)もあるので失礼だけど、ここでお別れ。

 

「さて……では、ミュリネから始めるとしよう。付いてくるが良い」

 

「ボス! いっしょ! 行く!」

 

「いや、流石にここは無理だから」

 

「なんで?」

 

「恩恵を授かるには背中を露出するんだよ。ミュリネの場合、そうなると上半身裸になるから」

 

「? それ、ダメ?」

 

「一応、俺も男だから」

 

「?? ボス、強いオス。ミュリネ、メス。子ど――」

 

「まだフロルには早いわバカもん」

 

 ゴン!!とスセリ様がミュリネの頭に強烈な拳骨を落とし、ミュリネは一撃で撃沈する。

 

 ミュリネは畳に顔から倒れ、スセリ様が素早く担ぎ上げる。

 

「全く……先が思いやられるのぅ。梓、お前も来い」

 

「は、はい!」

 

 アサマさん――もう梓でいいか。梓は素早く立ち上がって、少し顔を青くしながらスセリ様の後に続く。

 まぁ、まさかあそこまで過激な神とは思わなかっただろうな。

 

「これはこれは……武闘派とは噂で耳にしておったが……女神すらも武闘派であったか」

 

「まぁ、俺の師匠だからな」

 

「なぬ?」

 

「スセリ様、Lv.1相手ならガチンコで勝てるから。流石に今はステイタスに頼ったら俺が勝つけど、頼らなければ俺も他の団員もまだ勝ったことないな」

 

「……女神が、か?」

 

「女神がだな」

 

「……なんともはや……」

 

 流石のエーディルも呆気に取られている。

 

 まぁ、君も近いうちに、ここの異常さが分かると思うよ。

 

 身体でね。

 

 ちなみにミュリネだが、この後からスセリ様に怖がり逆らえなくなったのは、言うまでもない。

 

 




エーディルさんに素性などについてはもう少しお待ちを!

数話新人達の様子などを書いてから、キャラプロフィールを書きます

ちなみに……新キャララッシュはまだ終わっていない!

次の新キャラは……オリジナルファミリアだ!
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