【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~ 作:独身冒険者
皆さんは買いました?
まだの方は買った方が良いですよ。ゲームと同じだからと思ってる方……実はちゃんと加筆されてるんですよ!
しかも、ゲームでは名前しか出なかった闇派閥二大武闘派とされていたのに、フィンにあっさり潰されたアパテー、アルクトの幹部が!
梓さん達は無事に恩恵を授かることが出来、スセリ様の眷属になった。
まぁ、エーディルと違って、残りの3人はこれが初めてなので、もちろんステイタスは綺麗にゼロ。
でも、ミュリネはスキルが発現してたんだが……それがちょっと厄介なんだよ。
ミュリネ
Lv.1
力 :I 0
耐久:I 0
器用:I 0
敏捷:I 0
魔力:I 0
《魔法》
《スキル》
【
・武器防具非装備での戦闘時、『力』『耐久』『敏捷』超高補正
・異常耐性強化
・痛覚鈍化
うん――どこまで野生児だよって話だよな。
いや、アマゾネスってそんなもんかもしれんけど、武器までダメってのは流石にないだろ。……あ、でも原作のヒリュテ姉妹は結構素手で暴れてたっけ?
じゃあ良いのか? それに……そもそもミュリネって武器の使い方覚えられんのかな?
ハルハやアワランだったらヤベェなって素直に喜べるんだけど……ミュリネだと不安しか湧かん。
しかも痛覚が鈍くなるって暴走しそうじゃないか……これ、絶対目が離せないなぁ。
体調を整えてもらう間に、ハルハ達の言う事を聞くようにしないとダメか……。
今回はこれまでと違って、完全に戦いの素人ばかりだ。しっかりと方針を決めて、ドットムやハルハ達とも協力していかないとな。
エーディルはどうするかねぇ……。リリッシュよりもステイタスは上だけど、冒険者としてはリリッシュの方が先輩か。良い関係が築けたらいいけど、なんかリリッシュの奴、後方指揮サボりそうなんだよなぁ。
これは本当に一度しっかり話し合いしないと駄目だな。
皆だって自分の事もある。出来れば中層で経験値を積みたいはずだ。せっかくいい感じで前を向き始めたのに、ここで水を差すというか、足踏みさせるのもなぁ……。
いや、後輩を指導するのもいい経験にはなると思うんだけどさ。全員タイプが見事に違うからなぁ。秀郷は弓がメインだし、梓なんて……なぁ。
スセリ様との鍛錬でどこまで伸びるかにもよるか……。
原作のサンジョウノ・春姫は武器での戦いはへっぽこもへっぽこだったしな。梓もちょっと同じ雰囲気を感じるんだよなぁ……。
まぁ、とりあえずまずは食事をしっかり摂って、基礎鍛錬をして筋力を取り戻して貰わないとな。
それとそれぞれの部屋も決まった。
秀郷、梓、ミュリネは和室に、エーディルは洋室に。ミュリネが何故和室かというと、俺や梓が和室側だから。
なんかいつの間にかミュリネが梓に懐いてた。ありがたいです。
ちなみにエーディルはリリッシュ同様早速書庫に顔を出していたが、
「随分と寂れておる。知恵もまた武となると言うに……」
と、呆れられた。
まぁ、言ってることは分かるけど、リリッシュ以外に本を買う奴がいない。というか、買う余裕がなかったんだよな。
でも、これからは買って行かないといけないんだろうな。
「それと、ちと買いたい娯楽品がある」
「娯楽品?」
「札物と遊戯盤だ。そこまで高いものでもあるまい?」
「それはそうだが……何故?」
「あの手の遊戯は凡人にとってはただの暇潰しに過ぎぬが、智を武器とする魔導士魔術師にとっては立派な研鑽であり、鍛錬でもあるのだよ」
「……なるほど。指揮や俯瞰的な視点を鍛えるって訳か」
「……くっ、くくくく! 今の言葉で理解出来るか! やはり貴様は面白そうだ!」
「でも、チェスは分かるけど、カードもか?」
「まぁ、それは買うてから説明した方が理解しやすかろう。金ならば余の借金という事で構わぬので、買うてたもれ」
……まぁ、嗜好品があるのは悪いことではないから、買ってもいいか。
ついでにギルドに報告しに行くか。
「というわけで、ちょっと行ってきます」
「余も付いて行かせもらう」
「ふむ……まぁ、よかろう。妾は簡単に恩恵について説明しておく」
「お願いします」
「ボス! 行ク!」
出かけようと背を向けたところに、ミュリネが勢いよく突っ込んで来て、無防備だった俺は思いっきり押し飛ばされた。
「ぶへっ!?」
「ボス! 一緒! 行く!」
そ、それはいいけど、ちょっとどいてくれませんか?
俺はミュリネを無理矢理押しのけて立ち上がる。
ったく……なんかティオネ・ヒリュテに押し倒される未来のフィンさんを笑えなくなってきたぞ。
「はぁ……まぁ、そ奴に恩恵の説明などしても理解出来るとは思えんな……。連れて行くがよい」
ですよね。やれやれ……。
ということで、俺はエーディル、ミュリネを連れて、ギルドへと向かう。
ありがたいことにミュリネはちゃんと二足歩行でした。いや、失礼なことだけど、さっきまでは四足歩行姿ばっかだったんだよ。和式側だったからいいんだけどさ。
それでもやっぱり流石に外でまでってなると困るじゃん? さっきまで首輪にリードされてたわけだし。
流石に今はリードしていない。
どこか行きそうになるけど、声をかけたらちゃんと止まるからな。……まぁ、ちょっと不満そうだから、後でなんか飯でも買ってやるかな?
そういえば……じゃが丸くんはまだないんだな。
原作ではたくさん種類があって、どこにでも見かけるほど屋台があったけど、今はまだじゃが丸と言う名前すら見かけない。
「そう言えば……エーディル」
「なにかや?」
「杖はどうするんだ? うちは流石に杖までは自作出来ないぞ」
魔導士が使う杖は特殊な素材を使い、更に魔法効果を増幅させる『魔宝石』という物が必要不可欠だ。
これは
多分『神秘』の希少アビリティ持ちなんだろうな。まぁ、『神秘』アビリティはその人その人でかなり効果が違うみたいだけど。
リリッシュも専門の店で杖の整備をお願いしている。同じ店で良いとは思うんだけど……。
「ふむ……そうさなぁ。余が前に愛用しておった杖は少し普通の杖とは違うてな。
「槍?」
「正確にはハルバードに近いか。かの
「無理です諦めてください」
一億の借金だっていつ返せたか分からなかったんだからな? 無理に決まってる。
「分かっておるわ。昔ならいざ知らず、今の余はただの奴隷上がり。探索系上位派閥であろうともそんな金を捨てるように出せるファミリアも過去数えるくらいであろう事も知っておる。興して数年足らずのファミリアがそんな大金持っておった方が怪しいにも程があろうぞ」
「じゃあどうするんだ?」
「まぁ、杖や魔宝石はそこまで高価なものでなくともよい。その代わり、村正とやらにその杖を加工してもらえばいいだけのことよ。腕は確かなようだからな」
……なるほど。それでも金はかなり吹き飛びそうだけど……。装備に手を抜くわけにもいかないから仕方がないか。
「そう言えば、お前達もそうだけど、梓達も服とか買わないといけないな」
「先ほどの話では出ておらなんだが、解放された奴隷達には幾分かの賠償金が出るかもしれぬとのことだったぞ。まぁ、恐らくは潰した商会の金なのだろうから、あまり額は期待出来んがな」
まぁ、そりゃそうだよな。
流石に無一文で解放はしないか。となると……多分今はそこら辺の計算と整理をしているってことか? ギルドが罰則金を回収して、残りの金で振り分けるのか。
それとも商会の本部や本国に文句を言って取り立てるのか。……両方かな?
でも少しでもお金がもらえるのはありがたい。ファミリアだってそんなに貯金があるわけじゃないからな。
とりあえず、まずはギルドを訪れる。
俺が中に入るとすぐにスーナさんが受付に出てきた。
「ようこそおいでくださいました、フロル・ベルム氏。本日はどのようなご用件でしょうか?」
と言いながらも、俺の後ろの2人に視線を向けている。
「どうもです。見ての通り、新しく団員が入ったので冒険者登録をお願いします」
「お話は伺っております。承知しました。少々お待ちください」
冒険者登録は本人でないと認められない。
だから、今回梓と秀郷は非戦闘員として登録し、後日冒険者として登録する事になる。梓に関しては当分は非戦闘員のままだろうけど。
「エーディルは自分で書けるだろうけど……ミュリネは書けない、よな?」
「??」
俺の問いかけにミュリネは「何言ってんの?」って感じで首を傾げる。
まぁ、書けないよね。書く以前に読めるかどうかも怪しいもん。
「代筆は出来るから大丈夫だろうけど……」
「その娘、自分の歳や出身地すらも答えられるか怪しいものよな」
そうなんだよなぁ……。そこはスーナさんと相談させてもらうしかないか。
「お待たせしました」
「すいません。こっちのアマゾネスは俺が代筆します。それと……ぶっちゃけコイツ、名前以外碌に分からないんですけど……」
「大丈夫ですよ。他国などの密偵でない事が証明されていれば、登録に問題はありません。そちらのお二方の事情は【ガネーシャ・ファミリア】より報告を受けておりますし、冒険者になる方には孤児の方も少なくないので」
まぁ、俺もそうだからな。
ということで、ミュリネの申請書には名前のみ。流石にこれはどうかと思ったので備考欄に事情を記載しておいた。
エーディルはスラスラと自筆で記載していたが、よく見たら結局ミュリネ同様名前だけと事情を記載するだけだった。年齢も書いてない。……ちょっと知りたかったんだけどな。エルフは見た目じゃ分からないからなぁ。
それと一応他の神から恩恵を授かったことも書いていたが、どこの神かは書いていなかった。まぁ、書いたら素性がバレるからだろうけどさ。
それでも申請が受理されるんだから、それはそれで不安になる。
また【ネイコス・ファミリア】みたいな奴らが出るんじゃないか?
でも、だからっていちいち細かく確認なんてしてたらギルドも仕事にならないだろうしな。難しい所だ。
まぁ、でも無事に2人の登録は終わった。これで2人は冒険者になったわけだ。
じゃあ、次はエーディルの杖を頼みに行ってみるか。
店自体はリリッシュと一緒に護衛と財布頼みで連れて行かれたことがあるから場所は知ってる。
ギルドを後にした俺達はその店に向かう事に。
ただ……道中の屋台でミュリネに餌付けをしておくことにした。
「ウマッ! ウマッ!」
肉串を串ごと喰いそうなほどの勢いで肉を頬張っている。
滅茶苦茶嬉しそうだから良いけど、串まで喰うなよ?
俺やエーディルも食べているけど……。
「エーディルは食べ歩きした事あるのか?」
「ないが、少し前まで皿もない状態で調理もされていない食事が当たり前であったからな。今更立ち食い、食べ歩きなど何とも思わんよ。それこそダンジョンに潜れば、優雅も高貴もあるまい?」
「そうだな」
やっぱり奴隷生活は大変なんだな……。俺の野宿生活はまだまだ生易しいって思うようになってきた。
「そう言うお主も主神様に会うまでは中々過酷な日々を送っておったのだろう?」
「へ? 何で知ってんの?」
「あの【
「……アーディ」
なにしてん? って言うか、なんで俺の過去知ってんの?
……もしかして、俺の両親の事、知ってんの?
あ……シャクティさんやドットムも知ってた可能性があったか。これまで俺の前で言わなかっただけなのかな?
いや、待て。だとしても、俺が野宿生活してたのまでは知らないはずじゃ…って、シャクティさんやドットムは顔が広いんだから、俺が入団しようとしたファミリアの誰かから話を聞いた可能性はあるか。
まぁ、結構あちこち行ったしな……。俺の顔を覚えていた人もいたんだろう。
「確かに大変だと思ってたけど……数カ月だったし、あの後スセリ様に助けてもらったからなぁ。それにまだ金はあったから食材とかは買えたし。やっぱりエーディル達ほどじゃないと思うけどな」
「馬鹿者。お主は当時まだ5歳くらいであったのだろう? 普通の5歳児は金があろうとも、家を追い出された時点でほぼ間違いなく衰弱死か餓死、そして暴漢共に殺されておるぞ。奴隷でも大抵の子供は同じ末路よ。早く買われれば話は別だがな」
そりゃそうだろうけど……。
「全く……お主はもう少し自分の異常性を理解した方が良いな」
「そんな事言われても……比較する人いないじゃん」
「比較対象がおらぬ時点でおかしいと言うことよ。普通は誰か一人、比較する対象が存在するものぞ。それが見つからぬなど、どれだけ特異な存在かの証明に他ならぬであろうが」
……おっしゃる通りで。
本当になんかやり辛いなぁ、エーディルさん。
「む……すまぬ、団長殿。ちとそこの店に寄る」
「ん? 分かった」
「ボス! おかわり!」
「……はいはい。エーディル、俺の財布渡しとくから、買いたいのあるなら買って構わない。もちろん、俺の財布が許す範囲でな。この後、お前の杖も見に行くから、忘れるなよ」
「分かっておる」
俺は屋台分の金を取り出して、財布をエーディルに渡す。
まぁ、エーディルが金を盗む事はないだろうしな。
すぐ近くの屋台で、今度はハムとチーズが挟まったパンを少し多めに買う。
一つ目をミュリネに渡すと、ミュリネはやはり勢いよく食べ始める。
「ウマ! ウマ!」
「……さいですか」
美味しそうで、楽しそうで何よりだよ。
食べ終わったらまた新しいパンを渡しながら、エーディルがいる店に戻る。
俺達が店前に着くと同時にエーディルが紙袋を抱えて出てきた。
「お、早かったな」
「買うものは決まっておったのでな」
財布を返してもらい、俺は首を傾げる。
「で、何を買ったんだ?」
「チェスという遊戯盤だよ。大陸将棋と言う物だな」
ああ、チェスか。それは昔からオラリオに広まっている盤遊戯だ。
でも、嗜好品だからそれなりに高価。だから、それこそ富裕層や中堅以上のファミリアくらいしか持っていない。
俺は前世でちょっと友人に教えてもらったくらいでほぼ素人。
「そう言えば、カードはなかったのか?」
「あれは魔導士向けであるからな。恐らくこれから行く店の方に売っている可能性がある」
なるほど。では、行きますか。
目指すは北西のメインストリート。
その内の一つの路地裏に曲がって、奥に進むと地下への階段があり、その階段を下まで降りると傷んだ木の扉がある。
扉に吊るされているボロボロの看板には『魔女の隠れ家』とかろうじて読める程度に書かれている。
「ここかや?」
「ああ。ここが魔導士や魔術師の店だ」
「ふむ……これを頼む」
チェスが入れられた袋を俺に渡し、エーディルは扉を開ける。
扉が開くと同時に、強烈な薬草なのか何か分からない臭いが放たれる。
「ウギュゥ!?」
後ろでミュリネが鼻を押さえて涙目になっていた。
ああ……嗅覚いいんだな。だったら、ここはかなりキツイかもなぁ。でも、ちょっと我慢しててくれ。
「おや、客かい?」
店奥から現れたのは、黒いローブに長い白髪、そして鉤鼻を持つTHE魔女の老婆。
彼女がこの店の店長で魔術師であるレノア婆さんだ。
「ふむ……お主、アルテナ出身の魔術師か」
「……へぇ」
「ならば腕は確かのようだな。杖を一つ、見せてもらいたい」
「そりゃどうも。金を払ってくれるなら文句はないよ」
レノア婆さんは杖を置いてある棚を指差して作業に戻る。
エーディルは長杖が置かれている棚へと足を進め、数秒ほど眺めたと思ったら迷う事なく一本の杖を手にした。
「これにしよう」
「そんな簡単に決めて大丈夫なのか?」
「問題ない。杖と魔力の同調性など簡単に見抜ける」
まぁ、エーディルが使う杖だから、自分が良いなら構わないけどさ。
「店主、これを貰う。あと、あれもだ」
エーディルは近くの棚に置かれていたタロットカードのような、様々な絵柄が描かれているカードの束を指差す。
「ほぅ……アンタ、こんな杖で良いのかい?」
「奴隷上がりの新人冒険者でな。動かせる金が少ない」
「あぁ……この前の。そういう事なら構わないけどね。魔宝石はどうするんだい?」
「それも低品質で構わん。一つ、この杖の先に付けてくれ」
「あいよ。じゃあ、明日にでもまた取りに来な」
「うむ。ところで店主」
「なんだい? 値引きはしな――」
「
エーディルの問いに、レノアは目を限界まで見開いて固まった。
だが、それも一瞬ですぐに警戒心を隠すこともせずにエーディルを睨みつける。
「……なんのことだい?」
「なるほど。すまぬ、くだらぬことを聞いた」
エーディルは満足気に頷いて、すぐさま話題を終わらせる。
フェルズの事知ってるのか、エーディル。こりゃ、やっぱりどっかの大物っぽいなぁ。
色々と気になる事はあるけど、とりあえずこれで買い物終了である。
まぁ……帰りもミュリネに色々飯を買うことになったけどな。
……俺の金が一気に吹っ飛んだ。またダンジョンに潜らないとなぁ。
あぁ……強くもなりたいけど、金も欲しい。
しばらくは出費ばっかりなんだろうな。
はぁ……頑張らないと。
俺は少しブルーになりながら、本拠へと戻るのであった。