【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~   作:独身冒険者

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ちょっとこれから更新遅れるかもしれません

――ちょっとモンスターボール投げないといけないのでね!


育成方針

 買い物を終えて帰宅し、俺は自己鍛錬をしながら邪魔をしてくる―本人にその気はないけどな―ミュリネの相手をして過ごす。

 

 エーディルは早速買って来たチェスでスセリ様と縁側で対戦していた。和風建築の縁側でチェスってスゲェ違和感。ちなみに梓と秀郷は自室で少し休んでいる。

 というか、スセリ様はチェス出来るんだな。

 

 そう呟くと、

 

「何億と生きておれば、天界でもこの手の娯楽は広まるものよ。そもそも、これらの遊戯を広めたのも神じゃしの」

 

 あ、そうなんですか?

 

「生み出したのは子供達じゃが、当時の子供達はモンスターの猛威で他国との交流は細いものであったしな。とても広める余裕などなかった。そこを妾達が生み出した精霊達や、千年前に降臨した神共が広めていったんじゃよ」

 

「へぇ~」

 

「ふむ……過去の英雄譚にも記されておったり、せなんだりだが……古き技や叡智は精霊達より人間に与えられたものと云われている。それはモンスターに打ち勝つモノだけではなかったと言うわけか。まぁ、そんな娯楽を広めたなどと詩吟や語り部が伝えるものではないか。どうしても英雄の活躍を語りたくなるものよな」

 

 そう言いながらエーディルは盤から視線を外さず、迷うことなく駒を動かす。

 

 さっきからエーディル、凄い速さで駒を動かしてるな。しかも会話しながらなのに。とんでもない頭の回転の速さってことだよな?

 頼もしいやら、怖いやらだなぁ……。

 

 そんなことを考えていると、ハルハ達が帰ってきた。

 

「おかえり。今日は随分と早かったな」

 

「そりゃあ流石に噂の新人が来るって話だしねぇ。気になってあんまり集中出来そうになかったんだよ」

 

「まぁ、その内の1人はもう目の前にいるけどな」

 

 出迎えた俺の横には、「ヴ~~」と唸りながらハルハ達を見て警戒心全開のミュリネがいる。

 まぁ、初めて顔を合わせるから仕方ないけどさ。

 

「コイツが噂のじゃじゃ馬アマゾネスかい?」

 

「まぁな。ミュリネだ」

 

「ここにいるってことは、やっぱり全員入団させたってわけだね」

 

「ああ。それで色々と相談したいこともあるから、とりあえず一息ついたら広間の方に集まってくれ」

 

「メンドクサイねぇ……」

 

「流石に全員で中層ってわけにはいかないんだ。まだやつれてるから今すぐダンジョンにってわけでもないし、今後の方針を考えようってだけだよ。せっかくドットムもいるんだし、今のうちに新人の育成方法を覚えよう」

 

「そりゃそうだがよ……だから、お前は何歳なんだよ。ホントは小人族じゃないのか?」

 

「違うって知ってるだろ? とりあえず、広間で待ってるからな。俺は新入りを集めて来るから」

 

 俺はミュリネを伴って梓達を呼びに行く。

 やや緊張気味の梓達を連れて広間に行くと、エーディルはまだ広間の縁側でスセリ様とチェスをしていた。

 盛り上がってますね?

 

「神とは初めて打つが、やはり中々に手強い。久々でもあるし、つい熱が入ってしまった」

 

 そう言いながらも、やはり盤から視線を外さないエーディル。

 スセリ様も腕を組みながら右手で顎を撫で、眉を顰めながら盤を睨んでいた。スセリ様もかなり真剣だ。

 

「今は2勝2敗での。正念場なんじゃよ」

 

 おお……マジで接戦だな。そりゃ集中するわけだ。

 

 というわけで、俺達は縁側の2人を置いて広間に座る。

 5分ほどするとハルハ達も広間にやって来た。

 

 そして、スセリ様とチェスをしているエーディルを見て、

 

「あれが恩恵持ちだったダークエルフかい。それにしても……チェスなんていつの間に買ったんだい?」

 

「今日だよ。ギルドに登録するついでにな」

 

「なんでまたチェスを?」

 

「指揮とか俯瞰的な視点を持つ鍛錬だってさ。まぁ、冒険者はスキルや魔法があるし、駒の力が大きく違うから完全にそのまま活かせるわけじゃないだろうけどさ」

 

「ふぅん……で、スセリヒメ様と盛り上がってんのかい?」

 

「俺や梓達は打てないからな。ハルハ達は打てるのか?」

 

「「打てるわけないだろ?」」

 

「私もチェスは……」

 

「某は将棋でしたら」

 

「我は無理」

 

「うむ」

 

「私もルールは知ってるけど、打ったことはない」

 

 だろ?

 

 まぁ、熱中してる2人は置いといて、とりあえず梓達の自己紹介をさせる。

 

 梓と秀郷は問題なく自己紹介を終え、問題はミュリネだが……。

 

「フン!」

 

 と、思いっきり顔を背けた。

 

 やっぱり、そう簡単にはいかないか……。

 

「はぁ……」

 

「なるほどねぇ……こりゃあじゃじゃ馬と言われるわけだ」

 

「まぁ、ある意味冒険者向けではあるかもなぁ」

 

 ハルハやアワラン達は跳ね返りな性格のミュリネに苦笑する。

 うちの連中は生意気なくらいで怒る奴はいないと思ったけどさ。でも、とりあえずミュリネは気配などで相手の力量を計れない事は分かった。

 まぁ、冒険者と言うか、恩恵持ちは気配や体格だけじゃ分からないところあるからなぁ。まだ上級冒険者と相対したり、戦った経験のないミュリネじゃ仕方がないだろうけどさ。

 

 どうしたもんか……。

 と、頭を悩ませたら……ツァオが無言で立ち上がって、素早くミュリネの前に移動する。

 

「ヴぅ!!」

 

「……」

 

 ツァオは威嚇するミュリネを無視して、あの頭に手を伸ばそうとする。

 もちろん、そんなことをすれば……。

 

「ヴァウ!!」

 

 ミュリネが手を払い除けようと腕を振るう。

 

 しかし、ツァオはその腕を伸ばしていた手で難なく掴む。

 でもミュリネはすぐさまもう一方の腕で殴りかかろうとしたが、ツァオがミュリネの腕を掴んでいる手を引いてミュリネのバランスを崩して攻撃を中断させる。

 

「ガァウ!!」

 

 それでもミュリネは諦めずに飛び掛かろうとしたが、

 

「――駄目」

 

 空いた左手でミュリネの頭を押さえて、動きを制止する。更に左足を素早く軽く振り、ミュリネの両足を払う。

 ミュリネは受け身を取ることも出来ずに畳の上に倒れる。

 

「あう!?」

 

「挑むならちゃんと相手を見極める。がむしゃらに攻撃しない」

 

「ぐぅうガァ!!」

 

 なんか急にツァオが指導を始めたが、ミュリネは言葉を無視してまた飛び掛かる。

 

 しかし、そんな突撃がツァオに通じるわけがなく、また軽々といなされて背中から畳に叩きつけられる。

 

「ギャン!?」

 

 ……止めるべき?

 というか、まさかツァオが動くとは思わなかったな。どちらかと言うと優しく指導するイメージだったんだけど……。

 

 俺がそんなことを思っている間に、ツァオは仰向けに倒れたミュリネの顔を覗き込むように近づける。

 ミュリネは金縛りにあったように、視線を合わせたまま動けなくなった。

 

「我らはお前より強い。ちゃんと言う事、聞くように」

 

 ミュリネは完全に気圧されたようで小さくコクコクと頷いた。

 それを確認したツァオは圧を霧散させて微笑み、優しく頭を撫でる。ミュリネはポカンとした顔をしていたが、体から力を抜いて安堵したように息を吐く。

 あぁ……なるほど。躾をしたわけね。

 

 ツァオは倒れたミュリネをヒョイと抱き起こし、そのまま自分の横に座らせる。ミュリネはポカンとした表情のままだが、大人しく座っている。

 

「……まぁ、ミュリネに関しては皆で色々と教育していこう。今の戦い方を見てもらって分かったと思うけど、本当に獣に近い感じでな。なのにすでに発現してるスキルが少し厄介なんだよ」

 

「スキルですか?」

 

 俺はミュリネに発現してるスキルについて説明する。

 その内容にハルハ達は呆れるやら危機感を感じて顔を顰める。

 

「そりゃあ……ちと面倒だねぇ。1人で戦わせるのは当分無理そうだね」

 

「それに最悪押さえ込める者でないとダメそうですね」

 

「そうなると、多分秀郷も一緒にいるだろうから、最低2人は同行するべきだと思ってるんだ。秀郷は後衛っぽいし、梓も行くにしても多分後衛か中衛、最悪サポーターだろうからさ」

 

「そうでありますなぁ。まず間違いなくミュリネ殿に1人はかかりきりになりそうですからな」

 

「うむ」

 

「まぁ、ダンジョンに行くのも今すぐじゃねぇだろうし、坊主と同じように半年くれぇは基礎鍛錬と組手だけでも良いんじゃねぇか? 坊主共相手ならステイタスも上がるだろうしよ」

 

 確かにそれでも良いか。

 俺は一年基礎に費やしたし、梓はそれくらいを目処に考えた方が逆に伸びるかもしれない。

 

「問題はそっちのダークエルフの方だろうよ」

 

 ドットムの言葉に全員の視線がエーディルに向く。

 その当人はチェスを終えたようで縁側から立ち上がって、こちらに身体を向けたところだった。

 

 その後ろでスセリ様が胸を張っていたので、多分スセリ様が勝ったんだろうな。

 

「さて、失礼した。遊戯とは言え勝負事を途中で投げ捨てるのは性に合わなくてな」

 

 エーディルはあまり悪びれる様子もなく謝罪を述べて、座敷に座る。

 

「余の名はエーディル。姓の方は訳あってまだ名乗れぬが、主神様には話してある。その上で入団を認めて頂いた事は先に伝えておこう」

 

「……なるほどねぇ。こりゃ【象神の杖】でも警戒するだろうさ」

 

「まぁ、今言ってたようにスセリ様に判断して頂いた。その結果、ゴタゴタは起こるかもしれないが、オラリオ中のエルフを敵にするほどではないとのことだ。……まぁ、リヴェリア殿の事は好かないようだから、そこら辺が厄介だけど」

 

「十分オラリオ中のエルフを敵に回す可能性があるじゃねぇか」

 

「闇派閥と戦う時とかは喧嘩は売らないってさ。そこは嘘じゃない事はスセリ様が確認してる」

 

「うむ、間違いないの。あくまで個人間での諍いに収めるつもりでおる。であれば、冒険者としては珍しくも無いじゃろうて。リヴェリアとて周りに口出しされるのは好かんじゃろうしな」

 

「不安しかありませんね……」

 

「まぁ、魔導士としても実力はあるみたいだし、俺としてはここでエーディルを逃すのはもったいないと思う。これからはパーティーを分ける事も考えれば、魔導士がリリッシュだけなのはかなりキツい」

 

 正直、今のところ俺達が保有してる魔法ってほとんど詠唱長いんだよな。ハルハは平行詠唱出来るからまだ良いけど、リリッシュはまだ練習中で、正重は練習してない。

 アワランやディムルは殲滅型の魔法じゃないし、俺の魔法が一番良いけどあまり長時間だったり、何度も使える余裕はない。

 

 だから結局リリッシュ頼みになっているけど、やっぱり魔導士1人は負担がデカ過ぎる。だからもう1人欲しい。

 となれば、即戦力になるエーディルを手放す理由はない。不安はあるけどさ。

 

「まぁ、そうだねぇ……」

 

「それに冒険者としては新人だけど、多分戦闘経験はかなりあると思う。リリッシュはあまりやる気のない後方指揮も出来ると思うんだよ」

 

 まぁ、そもそもこれまでうちは後衛がリリッシュしかいなかったんだけどさ。

 でも、今回後衛が増えたし、何より単純に人数が増えた。流石に俺が指揮を出すのも限界がある。

 

「どうだ? エーディル」

 

「まぁ、出来る出来ぬで言えば出来るが……流石に上位派閥の者達が相手であったり、ダンジョン内での指揮となると任せろとは言えぬな。口にするのも腹立たしいが、余はあのラキア(脳筋)に押し負けた身よ。敗将の指揮がこの迷宮都市でどこまで通じるかは保障せぬ」

 

 ラキア王国の戦い方は数万による恩恵持ち兵士による物量戦術だ。

 昔はそこに『クロッゾの魔剣』も加わり、一気に勢力を拡大していた国。魔剣を喪った今では全盛期ほどの猛威はないが、それでも数十万の兵士というのはそこら辺の国からしたら悪夢に等しい。

 第一級冒険者でもなければ、数の利を覆すことは出来ないだろう。 

 

 だから、エーディルの国も負けたのは仕方がないと言える。

 指揮経験が無いに比べたら、全然マシだろう。

 

「【勇者】のように1人で全体を把握したり、敵の動きを読む事も出来ない。だから単純に指揮系統を増やすしかないだろ?」

 

「ですな。前回とて、敵の狙いを看破した団長殿とは最終的に別行動でありましたし」

 

「で、全員揃ってブチギレたしねぇ。まぁ、ちゃんと考えてるなら文句はないよ。同情心だけだったら流石に反対したけどね」

 

 ハルハの言葉にアワラン達も頷いてくれた。

 ふぅ……何とか受け入れて貰えた。まぁ、まだまだこれからだろうけどさ。

 

「じゃあ、これから皆よろしくと言う事で」

 

「うむ。話が纏まったようで何よりだの。ではせっかくじゃし、歓迎会がてら宴会でもするとしよう」

 

「お、久しぶりだねぇ」

 

 確かに最後に宴会したのは……正重のランクアップの時か。歓迎会だったら巴とツァオの時が最後。一年は経ってないけど、大分前のように感じるなぁ。

 

「でもこの人数、大丈夫ですか?」

 

「流石に何人か手伝って貰わんとの」

 

「で、では(わたくし)が……!」

 

「馬鹿もん。歓迎される側が準備に参加するでない。ディムル、巴、正重、手伝っておくれ」

 

「はい」

 

「承知」

 

「うむ」

 

 スセリ様は3人を伴って広間を出ていく。

 その背中を見送りながら、エーディルが眉を顰めていた。

 

「……主神が、食事の準備をするのか?」

 

「ここではそうだな。他にもないわけではないんだろうけど」

 

 デメテル様とかは眷属や市民に振る舞ったりすることはあるらしい。まぁ、毎日で眷属全員にではないだろうけど。

 

「なんともはや……」

 

「正確にはそこの団長の為に、だけどな。俺達はついでだよ」

 

「これからはどうなるかねぇ……。流石にこの人数は毎日はしんどいんじゃないかい?」

 

「まぁ、当番でも決めて手伝うしかないんじゃないか?」

 

「……面倒だねぇ」

 

「そこら辺も後で話し合うとしよう」

 

「うむ」

 

「わ、私も明日からお手伝いします!」

 

「俺も、下拵えとかならば手伝える」

 

「余は一度もしたことがない。期待はせんでくれ」

 

 でしょうね。

 多分、誰も期待してなかったと思う。

 

 でも、料理当番って意外と切実な問題だな。

 基本的に新人か非戦闘員が担当するんだろうけど……うちはスセリ様が作りたがってるからなぁ。

 

 俺としてはもう少し楽してもいいとは思うけど……そもそもの原因が俺だから何とも言い辛い。

 

 とりあえず、俺は新人団員と交流を深める事にした。

 と言っても、ミュリネは俺に付きまとってくるし、エーディルは多分まだ全部話さないだろうから、まずは梓と秀郷に声をかける。

 

 料理が出来るまで色々と話をすると、梓は歌や舞が好きだそうだ。秀郷は弓の腕は村一番だったらしく、モンスターも何度かは仕留めたこともあるらしい。

 滅茶苦茶期待値上がっていきますね、秀郷さんや!

 

 エーディルもハルハ達と交流を重ねていた。

 

「ほぅ……あのディムルと言う娘、オディナ家の者だったのか」

 

「やっぱり知ってんのかい」

 

「エルフという種族は同胞の醜聞や悲劇が広まるのが早いのだよ。己が種族に恥じる、または害する存在を許せんのだろうな。誇り高く潔癖と言えば聞こえは良いが、逆に言えば傲慢堅物で排他的な輩という事だ。余は別に王族と騎士が駆け落ちしようがどうでも良かったが、周りが騒がしくてな」

 

「じゃあ別にディムルに思う事はねぇのか?」

 

「ないな。あの娘は別に駆け落ちした当人でもなかろう? 誘拐なら話は変わるが、両者同意の上での駆け落ちならば子孫を責める必要はなかろうよ。そんなことをする暇と余裕があれば、余は他の事に労力を回させる」

 

 ドライと言うか、心の底から他人事のように考えてるみたいだ。

 後はディムルがエーディルをどう思うかだな。相性が悪そうには思えないけど。

 

 とりあえず、全員良い感じに馴染み始めているとは思う。

 

 この感じで、皆で強くなれればいいな。

 

 皆で、頑張っていこう。

 

 

 俺は志を新たにし――歓迎会を楽しむことにした。

 

 

 




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