【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~   作:独身冒険者

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お待たせしました

あれですね。今回のポケモンは二次創作意欲が滅茶苦茶刺激されますね!


『法』と『審判』を司るもの

 梓達が入団して3日。

 

 梓、秀郷、エーディルの3人はまだ走り込みや簡単な筋トレなどの体力づくりをメインに行わせており、まだ戦いに関する鍛錬は行わせていない。

 ミュリネは最初は梓達に付き合うけど、すぐに飽きてしまうので、俺やスセリ様が投げまくって遊んでやっている。ぶっちゃけ、どうかと思わなくもないが……ミュリネの奴、意外と根性あって1,2時間飛び掛かってくるから、なんだかんだ鍛錬になっているので諦める事にした。

 

 俺もダンジョンに行っているが、まだ階層は進めていない。

 ディムルもいるし、まだまだアワラン達もステイタス的には20階層は早いからな。

 

 さて、新人達の様子だが……梓は意外と運動神経があるようで走り込みなどのフォームは綺麗だった。

 体力がないってのはあるけど、それはこれから付けて行けばいいから特に問題ではない。

 

 秀郷は流石に狩人として山や森を駆け回っていたから運動能力は良い。

 視力も高いし、意外と身体が柔らかい。これは本当に期待出来る。

 

 エーディルも魔導士と言っておきながらちゃんと動けるようだ。

 今エーディルの杖は正重が加工中。それが出来てから、戦闘の鍛錬も始める予定だ。流石にLv.2。他の3人よりも回復と言うか、体調が戻るのが早い。

 けどそれはつまり、どんどん美魔女化しているという事で……色気の倍増が凄まじい。そこに風格が加わるので、スセリ様が2人いるみたいに感じる。

 エーディルはディムルと違い、自分の容姿を隠す気は一切ない。堂々としており、見られて当然と言う意識が完全に染み込んでる感じ。……多分、俺や他の男達に裸見られても動じないと思う。それくらい堂々としてて、本当にやりづらい。

 

 なので、もちろん梓達のことは周囲では噂の的になっている。

 

「あの【スセリ・ファミリア】にまた新しい奴が入団したらしいぞ」

 

「アマゾネスとダークエルフでしょ? この前一緒にいるところ見たわ」

 

「いや、他にもいるらしいぜ?」

 

「でも、その者達は【象神の杖】が連れていたらしいですよ?」

 

「あれじゃないか? 違法に奴隷にされていた連中。ガネーシャやデメテルとかにも数人、新人入ったらしいし」

 

「でも、わざわざ【スセリ・ファミリア】に入ったって事は、やっぱり何か突出したものがあるのかしら?」

 

「っていうか、ダークエルフ滅茶苦茶美人じゃなかったか?」

 

 など、街を歩いているとそんな声が聞こえてくる。

 まぁ、これまでの団員が団員だったから仕方がないかもしれんが、これはこれで梓達へのプレッシャー半端ない気がするな。

 そこら辺も気をつけてやらないとな。変なやっかみに絡まれないようにしないと。

 

 でも、4人とはいえ、人が増えた以上支出が嫌でも増えるわけで。

 これまで以上に探索での稼ぎが必要になってくる。場合によってはまた借金生活になるかもしれない……。まだ遠征の強制任務(ミッション)はないけど、いずれ言われるだろうから、それまでにやはり蓄えを増やしておかないといけない。

 でも、梓達を放置するわけにもいかない。……人手が足りないなぁ。

 

 でも、それは他のファミリアも同じか。

 だからこそ、無茶をして死んでしまう冒険者が後を絶たない。後輩を育てるために安全な上層で戦うだけでは、生活が苦しくなる。だから、金を稼ぐために中層に赴いて少しでも多く稼ごうと無理をしてダンジョンに呑み込まれてしまう。

 

 それだけは避けないといけない。

 だから当分は生活が苦しくても、堅実にやっていくしかない。

 

 そんなことを考えていた俺は、スセリ様と梓達新人を連れてオラリオ案内をしていた。……と言っても、闇派閥の襲撃であちこちボロボロなんだが……。

 それでも頑張って住人達は活気を出そうとしている。所々破損した屋台で店を開いて、歩く人達に声をかけている。

 ちなみにミュリネは梓の服の裾を摘む様に待ってキョロキョロしながら付いてきている。スセリ様がいるからかとても大人しい。

 

「ふむ……やはりいつの世、どこの国であっても、苦境を乗り越える力と言うのは非力な一般市民から生まれるものよな」

 

 君は一体どの視点からおっしゃっておられるのですか?

 

「これが世界の中心と呼ばれているオラリオとは思えませんね……」

 

「ああ……外ではここまで追い込まれてるとは伝わっていないな」

 

 まぁ、ギルドはこんな状況を知られたくないよな。

 全部は無理だろうけど、ある程度は情報を隠蔽しているはずだ。それにこの前みたいに撃退したとかは大袈裟に広めてるだろうし。

 そして、それ以上に冒険者の偉業を宣伝してるんだろうなぁ……。少しでもオラリオが衰えていないことを知らしめたいはずだからな。……あのギルドの豚エルフは。

 

「この都市の乱れと崩壊は世界の混乱と同義であるからな。近隣諸国も無闇に騒ぐ真似はせぬだろうよ。むしろ、愚かな国ならば闇派閥に力を貸す可能性すらある」

 

「え!? 何でですか!?」

 

「他国にとってオラリオの冒険者はモンスターと変わらぬ、いやモンスター以上に国を脅かしかねない脅威ということだ。迷宮を持たぬ国々で最も高い恩恵持ちはLv.3が精々……むしろLv.2止まりの国の方が多いか。まぁ、いくつかの国ではLv.3や4がいるそうだが、大抵一人のみ。だが、オラリオはそれどころではない。そんな連中が攻めてきたら一巻の終わりと思うのは何もおかしなことではあるまいよ」

 

「そんな……でもオラリオの人達が他国に攻め入るなんて……」

 

「ないとは言い切れまい? 例えば、【フレイヤ・ファミリア】という女神至上主義の爆弾がいる」

 

 そうなんだよなぁ……。

 まぁ、基本的に神フレイヤは国を欲しいとは思わないだろうけど、きっかけ次第では何を言い出すか分からない。そして、団長以外の団員達は神フレイヤを貶されでもしたら、一瞬でブチ切れて神フレイヤの制止を無視して滅ぼす可能性は十分にある。

 

「【ロキ・ファミリア】や【ガネーシャ・ファミリア】、そして少し前までオラリオの顔であった【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】などであれば心配はないであろうが、ここには名が馳せておらぬファミリアが腐るほど存在する。その内の一つがオラリオを見限って国攻めして来たら……運良く勝ったとしても被害は甚大であろうな」

 

「……それだけの戦力がこの都市にあるのに、闇派閥に追い詰められてるのか……」

 

「闇派閥も冒険者ではないだけで恩恵持ちの連中だからな。奴らもどうやってか、ステイタスをかなり伸ばしてるし、何より邪神の誘惑に負ける人間が冒険者以上に多いんだ」

 

「そんな……」

 

「別に驚くことではないぞ? それこそ、少し前の余らのように己の境遇に絶望していたり、冒険者同士の抗争で家族を喪ったり、単純に己が人生に絶望しこの世界を壊したいと狂ったり、そしてただただ人が苦しむところが見たいなどとな。オラリオを目の敵にする理由など探せば山ほど見つかるものよ」

 

「邪神連中からすれば、別にオラリオを本当に崩壊させることが出来ずとも、混乱させることが出来ればそれだけで十分じゃろうからな。別に眷属がどれだけ増え、どれだけ死のうがあまり気にせぬであろう」

 

 邪神の多くは闘争や諍い、そして死に関する事柄を司る神々だ。だからこそ、眷属が死ぬ事も喜ばしく思う奴もいる。

 

「闇派閥の中には死後の転生を約束する事を条件に、オラリオで暴れるように仕向ける神もいるそうだ。以前、その眷属がダンジョン内でモンスターの囮になって冒険者に襲わせたこともある」

 

「……死後の、転生」

 

「ああ。……多分、自分の命令に従って死んだら、生まれ変わる時に愛する人とまた会えるとか言われてたんだろうな」

 

 本当に人の弱さを上手く突いてくる。

 これは冒険者であっても抗えない可能性が高い。冒険者なら、この手の絶望は嫌と言う程味わうからな。

 

「……そういう、事ですか……」

 

 梓も秀郷も、もしあのまま救出されずにいて、あの牢屋にいたままだったら、多分邪神の誘惑に負けていた可能性が高い。

 そして、2人が抱えている絶望はまだ消えたわけじゃない。いや、多分一生消える事はないだろう。俺達だって、そうだからな。

 

「だから強くなるしかないんだ。実力だけでなく、心も含めてな」

 

「言う程簡単ではないがの」

 

 そうですね。

 

 

 すると、後ろの方がなにやら騒がしくなり、更には妙に物々しい気配を感じ取った。

 

 

「ん?」

 

「ふむ?」

 

「ほぅ?」

 

 俺、スセリ様、エーディルがほぼ同時に後ろを振り返る。

 梓達は俺達が振り返った事に首を捻りながら、同じく後ろに目を向ける。

 

 遠くに見えたのは団旗と思われる旗、そして馬の足音に馬車の走行音。

 どこかの国の使節団が来たのか?

 

 俺達も巻き込まれないように大通りの端に寄る。

 

 団体が近づくにつれ、甲冑と思われる鉄が擦れる音や足音が耳に届く。

 

 ……結構大人数だな。

 

 

 ようやく見えた旗に刻まれていたのは――『開かれた本と天秤』。

 

 

 あれは……もしかしてファミリアなのか?

 

 目の前にやってきたのは、まさしく騎士団だった。

 

 三列に整列し、訓練された乱れのない一糸乱れぬ行進。種族はバラバラだが、見た感じアマゾネスはおらず、ヒューマン、エルフ、獣人しか見当たらないな……。

 

 視線を後方にズラすと……隊長格と思われる個々にアレンジした鎧を身に着けた騎士達が馬に乗っており、これまた見事な陣形を維持している。

 

 そして、その団体の中心には……大きな馬車があった。

 貴族や神々が時折乗っている立派な天蓋付きの箱馬車ではなく、よく見る荷馬車タイプ。かなりの大型でかなりは造りは頑丈で、拵えは立派だけど。

 

 その馬車の中心には、玉座のような豪華な椅子。

 

 

 そして、そこには一人の女性――いや、女神が座っていた。

 

 

 艶のある白金の長髪、鋭い目つきでスレンダーな体型の女神だ。

 

 

 そしてもう1人。

 

 その玉座の隣に、女神と同じ白金のショートヘアの女性騎士が団旗を握って立っていた。

 

 ……原作やアニメでは見たことないな。それにあの女性騎士……なんかジャンヌ・ダルクみたい。

 

「あ奴はテミスではないか」

 

「テミス、ですか?」

 

「うむ。ヘファイストスやアストレアと同郷の女神じゃな。『法』と『審判』を司る生真面目な奴でな。よくアルテミスの奴と、ヘルメスなどの阿呆共を懲らしめておったな」

 

 という事はギリシャ系統の神様なのか。

 前世でも俺は聞いたことはないなぁ……俺が無知なだけの可能性は高いけど。

 

「ふむ……神テミスであるか。余の記憶が正しければ、ここより北東にある【ラムニシア法国】に拠点を構えており、彼の女神が率いるファミリアはラムニシアの守護騎士団を務めておったはずだが……国から出奔してきたのか……?」

 

 エーディルが片眼を瞑って胸の下で腕を組みながら、神テミスを片目で見ながら呟いた。

 

 ふむ……つまり国を護っているはずの連中が、何故かオラリオにやって来たわけだ。

 確かに普通ならあり得ない。神の眷属なんだ。モンスターや山賊の脅威から国を護らないといけないはずなのに、それを放棄してこのオラリオに来るなんて変な話だ。

 

「ふむ……テミスが、ではないであろうな。あ奴は融通が利かぬ性格でのぅ。基本的に一度決めた事は、それが破綻せぬ限り変えぬし、投げ出す事はせぬ。つまり、その守護騎士団とやらを始めたのであれば、その国が滅ぶか、騎士団そのものが無くなるか……国から追い出されでもしない限り、ここには来ぬであろうて」

 

「という事は、あの隣の女性騎士辺りですかね」

 

「で、あろうな」

 

 俺達が話していると、ちょうど目の前にやってきた神テミスが顔を俺達、正確にはスセリ様に向けたかと思うと、小さく笑みを浮かべて片手を上げ挨拶してきた。

 

 スセリ様も笑みを浮かべて軽く挨拶を返し、それに神テミスの傍にいた女性騎士が俺達の方に向いて一礼した。

 俺も軽く会釈して返礼し、騎士団をそのまま見送った。

 

「どうしますか? スセリ様。方向的にギルドっぽいですけど」

 

「そうじゃのぅ……他にやる事も無し。ちと様子を見に行くか。正直、テミスはオラリオと言うか、冒険者と相性が悪い気がしての」

 

「マジっすか」

 

「うむ。先程も言ったが、テミスは融通が利かん。アストレア同じく『正義』の女神ではあるが、テミスの掲げる『正義』は、正確には『掟』に近いモノでの。定めた規則を破った者は例外なく罰する。情状酌量というか、感情を持ち込まぬのだ。アストレアのような慈悲はないと言いきれるほどに厳格じゃ。故に、派閥の力がモノを言う、無秩序のように思えるオラリオでは絶対に他の派閥とぶつかるじゃろうな」

 

 つまり、これからは抗争が起こりまくる可能性があると。

 勘弁してくれ……。

 

「どう考えても、神フレイヤや神ロキとぶつかる気しかしないのですが……」

 

「ぶつかるじゃろうな。ギルドとガネーシャがどこまでテミスを抑え込めるかじゃろうが……ガネーシャとも中々に相性が悪いんじゃよなぁ……。ガネーシャは子供の為なら処罰されようとも規則を破って手助けする事を厭わぬしの」

 

 駄目じゃん。

 

「まぁ、まだテミスの子らがどういう者かは分からぬ。そこの見定めて判断するしかなかろうよ」

 

「ちなみにスセリ様は神テミスとは仲がよろしいので?」

 

 さっきも挨拶されてたし。

 

「まぁの。妾もテミスと共に制裁する側である事が多かったでな。……とは言うものの、それなりにやり過ぎるあ奴を宥める事も少なくなかったか。天界にいた頃は妾が宥めると、そこそこに矛を収めておったのじゃが……今回は互いにファミリアを率いる立場じゃからのぅ……。結局は子供らが主体であるし、妾も何処まで抑え側に回れるかは分からぬな」

 

 確かに、主神を抑えても、眷属が必ず従うかは分からないからなぁ。

 

「……これ、なんか俺達というか、俺も巻き込まれそうだなぁ……」

 

「そうさなぁ……。お前はガネーシャ、アストレアの子らとも仲が良いし、なんだかんだロキとフレイヤの団長とも繋がっておるからのぅ。押し付けられる可能性は低いとは言えぬであろうなぁ」

 

「お主は余計な苦労を背負う質だと、余でもすでに悟っておるぞ? 秩序を保たねば迷宮にも行けぬし、闇派閥に隙を突かれる事になりかねん。そう思えば、お主は絶対口やら手やら出すであろうよ」

 

 エーディルの言葉にぐぅの音も出ません。俺もそんな気はしてる。

 

 だって近くで喧嘩されるとか鬱陶しいじゃん? そこに顔見知りや世話になってる人いたらやっぱ気になるじゃん? 日本人気質が中々にこのオラリオでは厄病神になりつつある。

 

 これはまた気が抜けない状況になりそうだな……。

 

「厄介なのがうちの団員とも相性悪そうなんだよなぁ……」

 

「ハルハとアワラン、リリッシュは確実に合わぬな。あとはミュリネもか」

 

「おそらく余とも合わぬであろうよ」

 

 ですよね。

 というか、そもそもアマゾネスやドワーフとは相性悪い気がする。

 

 ……とりあえず、様子見に行くか。

 

 俺はテンション低めにスセリ様達と、【テミス・ファミリア】の後を移動する。

 

「でも、馬を使うって事はステイタスはそこまで高くないんですかね?」

 

「どうかな? 神が同行している故、必ずしもそうとは言えぬぞ?」

 

「それもそうか」

 

「あの……何故馬に乗ってる事がステイタスが低い事になるのですか?」

 

 梓が首を傾げながら訊ねてきた。

 

 あぁ……梓達は知らなかったか。

 

「Lv.3くらいになると、普通に走った方が馬より速いんだよ」

 

「……へ?」

 

「まぁ、Lv.2でも敏捷が高ければ馬より速い奴はいるけど。ドワーフとかでもLv.3くらいになれば馬には勝てるぞ?」

 

 ジャンプするだけでここら辺の建物より高く跳べるし。

 

 だから『神の恩恵』を持っていながら戦場とかで馬を使うって事は、ステイタスの低さをわざわざ教えてるに等しい。

 

「梓でももう少しステイタス上げれば、1人であの神テミスが乗ってる馬車を引けるくらいに力はつくと思う。多分秀郷やミュリネはもうすでに引ける」

 

「……」

 

 梓はポカンとした顔で「あれを……私一人で?」と呟いている。

 まぁ、信じられないよね。でもアニメでも【アポロン・ファミリア】の小人族が一人で馬車引いてたし。

 リリルカもスキルがあったとはいえ、デッカいバックパックや武器を背負ってるしな。

 

「それほどの力が着かねば、モンスターと戦うなど夢のまた夢ということよな。まぁ、それでも梓があのような馬車を引くなど、絵面が恐ろしく鬼畜であるか」

 

「いや、させる事はないと思うけどさ。……あ、でもサポーターとなるとどうなんだ? ……いや、そこはいないわけじゃないから変な目を向けられる事はないか」

 

 リリルカだって普通に考えたら、見た目ヤバいもんな。

 サポーターはデッカい鞄や籠を背負うイメージがあるから、サポーターと分かれば違和感は無くなる……か?

 ……駄目だ。やっぱりなんか俺的に悲壮感がデカすぎる。あんまり梓にサポーターやらせたくない。

 そんな事言ってられないだろうけど。

 

 そんなどうでもいい葛藤でモンモンとしていると、【テミス・ファミリア】一行はギルド本部前で止まった。

 

 突然の騎士集団に、ギルド長のロイマンが慌てて外に出てきた。

 まぁ、下手したらカチコミに見えるもんね。

 

 すると、神テミスが立ち上がり、

 

「我が名はテミス。此の度、オラリオの平定が為にラムニシアより参った。ここがギルド本部で相違ないか?」

 

「た、確かにここがギルド本部で間違いないが……」

 

「そうか。では、来訪の報せも出さずに面目ないが、其方達の主神…ウラノスと面会させて貰いたい。オラリオを治める組織の主神に挨拶もせぬのは我が信条に反する故、どうか取り次ぎ願いたい」

 

 内容的にはすごく丁寧で腰も低いけど……馬車の上から、無表情、嫌とは言わせる気が一切ない圧を発していて、それだけで勝気な神である事は理解できた。

 

 ロイマンも流石に神の威圧には逆らえなかったのか、慌てて側にいた職員に命令して本部内に走らせた。多分神ウラノスに訊きに行ったんだろうな。

 

「それと、我がファミリアをギルドに登録させて頂こう。――ジャンヌよ」

 

「はい」

 

 神テミスは傍に控えていた女性騎士に声をかけた。

 

 ていうか、今、ジャンヌって言った?

 

「登録等の手続き一切は任せる。私はウラノスと会ってくるのでな」

 

「お任せください。しかし、護衛はよろしいのですか?」

 

「いらぬ。ウラノスは眷属がいないと聞いている。新参の私が眷属を連れて行くのは公平ではない。対話は対等公平な立場で行われるべきものである」

 

「承知致しました」

 

「では、任せる」

 

 神テミスはまだ返事を貰っていないにも関わらず、馬車を降りてギルド内に入って行った。

 

 ロイマンが追いかけようとすると、女性騎士もロイマンの前に降り立った。

 

「街を騒がせた事を謝罪致します。ギルド長様」

 

 女性騎士は謝罪を述べながら、右手を胸元に当てる。

 

 

「私の名は、ジャンヌ・ダール。矮小な身なれど、【ラムニシア聖護騎士団】もとい【テミス・ファミリア】団長を拝命しています」

 

 

 この日、オラリオに新たな『正義の派閥』がやってきた。

 

 

 




と言うわけで、ジャンヌ・ダルクが参戦です!

テミスはローマ神話ではユースティティアと同一化されている、裁判所などの正義の神ですね。一説にはアストレアの母でもあるそうです。拙作では親子関係はありませんがね。
正直ギリシャ系が多くなるので、どうかなと思ったのですが、ユースティティアは長いし、シャマシュとかは流石に繋がり薄すぎると思い、テミスを主神とさせて頂きました
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