【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~   作:独身冒険者

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遅くなりましたm(__)m
理由は後書きで

前回忘れていたキャラプロフィールもあります!

さぁ、お待たせしました!


黒き女帝

 【テミス・ファミリア】が来訪して2日。

 

 【テミス・ファミリア】一行はギルドに登録を済ませた後、主神と合流してそのまま去っていった。

 

 噂ではオラリオ南西辺りにいつの間にか建てられていた神殿風の建物へと入っていったそうだ。

 少し前になんか出来たなと思っていたが、まさか彼女達の拠点だったとは。

 

 それにしても南西方向って……【ガネーシャ・ファミリア】の拠点があったと思うんだけど……シャクティさん、また胃を痛めてそうだなぁ。

 

 恐ろしいのは、昨日には【テミス・ファミリア】の情報が広まっていたことだな。

 まぁ、ギルドが公表してんだろうけどさ。ギルドは登録されている団員の情報を秘匿しているわけではないし、新しい派閥に上級冒険者がいたら普通に掲示板に貼られる。

 

 ということで、公表された【テミス・ファミリア】の情報って言うのが……

 

 

【テミス・ファミリア】

 

団長 ジャンヌ・ダール Lv.2

 

副団長 ジィル・ドルェイ Lv.2

 

団員 ライル・エティエヌ Lv.2

 

団員 ジャド・ザントライ Lv.2

 

団員 アンダレ・ラヴァール Lv.1

 

……

 

 

 と、なんとLv.2が4人もいた。

 

 団員数は公表されている人数は55人と大所帯。すでに中堅派閥並みの戦力を保有しているようだ。

 もっとも、オラリオの場合少人数でのパーティー戦の方が多いから、実際はどうか分からないけど。

 

 まぁ、今のところ俺達とは関わりないから、動向に注意は払うも基本は不干渉で。

 

 さて、話は変わって、エーディルの杖が完成した……んだけど。

 

 

 もはやハルバードにしか見えない。

 

 

 杖は金属製の柄にほとんど覆われており、杖の先端部には槍のような両刃の短剣、その下には双刃の斧を思わせる刃が付いている。魔宝石は穂の根本に装飾のように嵌められており、豪華な槍にしか見えない。

 軽量金属と高価な精製金属(ミスリル)を遠慮なく使って(使わされて)造られており、見た目に比べて軽く、魔力伝導性も高い。

 

「本当に扱えんのか?」

 

「問題ないな」

 

 アワランの疑問に、エーディルは不敵な笑みを浮かべ、慣れた手つきで槍杖を片手で振り回し始める。

 雰囲気的には演舞に近いが、それでも遠心力を活かして攻撃する事は出来る動きをしている。明らかに実戦経験を持つ人の動きだ。

 まぁ、やはり後衛職だからか、鋭い身のこなしというわけじゃない。でも自衛には十分だろうな。

 

 あとは防具だが……これもあのレノア婆さんの店で整える事になった。

 魔力を籠めた金属糸を使って造り、耐魔力耐魔法性能を向上させる。その上、軽量でありながら刃への防御性能も持たせるんだ。金はかかるよなぁ……。でも、やはり後衛職の防御面は疎かにしては駄目だ。

 ただでさえ、冒険者やモンスターの戦いは魔法や矢などが飛んでくるんだから。

 

「まぁ、最低限戦えるのは分かったけどさ。一番の問題は……魔法がどんなものかじゃないのかい?」

 

「そうですな」

 

「まだ教えてくれないのかい?」

 

「うぅむ……まだ、であるな。余の魔法は自分で言うのもなんだが、希少魔法に属する。そして、かなり目立つ。見せるならば人目が少ないダンジョンの方が良かろうよ」

 

 ふむ……まぁ、春姫やリリルカのような魔法もあるしな。

 確かにその方が良いか。

 

 一番手っ取り早いのはステイタスを見せてもらう事だけど……まだ本人は嫌がってるし、流石に団員とは言え強制にステイタスを見るのはどうかと思う。

 別にファミリア内でもステイタスを秘匿するのは珍しくはないしな。

 

「となると、やっぱり装備を整えないとな」

 

「やれやれ……これで使い辛かったら笑い話にもならないねぇ」

 

「すでに発現している魔法に文句を言われても困る」

 

 そりゃそうだ。そもそも魔法を使いやすくする為に場を整えるのが、俺達前衛の役目だしね。

 リリッシュのだって倒した後の後始末が面倒だってだけで、別に使い勝手が悪いわけじゃないんだよな。

 

 ということで、俺達はエーディルの装備が整い次第、エーディルを連れてダンジョンアタックを仕掛ける事を決めたのであった。

 

  

 

 

 

 

 そして、数日後。

 

 エーディルの防具が完成した。

 

 まぁ、見た目は防具というよりドレスだけどさ。

 ザ貴族令嬢のようなふっくらしたスカートのヒラヒラドレスではなく、貴婦人というか……簡易的なパーティーで着るような黒と紫のエンパイアスタイルのドレスだ。

 ロングスカートに末広がりの袖で、見事なプロポーションを上品に強調してる。

 ……うん、まさに女王って感じ。

 

「それで動けるのか?」

 

「問題ない。裾を踏んで転ぶような無様は見せぬよ」

 

 ならいいけどさ。

 

 俺とエーディルは店の外で待っていたハルハ達と合流し、そのままダンジョンへと赴くことにした。

 他の新人達は今日はスセリ様にお願いしてある。ミュリネはスセリ様と梓がいれば問題ないだろう。

 

 今日はドットムさんと正重がサポーター役。

 正重はせっかくだからと大量に造った武器を俺に試してほしいらしい。俺も色んな武器を試したいので否はないです。頼もしい限りですな。

 

 色んな期待や不安を抱えながら、バベルへと歩いていると……。

 

 すぐ近くの通りから、リヴェリアさんとエルフの団員達が現れた。

 

「む……お前達は…【スセリ・ファミリア】か」

 

 リヴェリアさんも俺達に気付き、他のエルフ達も俺達に顔を向ける。

 その内の数人が顔を顰める。多分あの中の誰かが前にディムル達を挑発して負けた奴がいるようだな。

 

 それにしても……ちょっとタイミング悪いなぁ。

  

「どうも、【九魔姫(ナイン・ヘル)】」

 

「ああ。これからダンジョンのようだな」

 

「ええ」

 

 リヴェリアさんは小さく頷くと、やはりと言うべきかエーディルへと顔を向ける。

 

「……ダークエルフ。例の奴隷商から救け出した者か。ふむ……?」

 

 そう呟いたリヴェリアさんは何やら訝しむようにエーディルを見つめる。

 

 それにエーディルは目を細め、

 

「奴隷の身に落ちて救け出されたエルフが見苦しいか? 白の王女とやらは随分と穢れなき目をお持ちのようだ」

 

 と、思いっきり喧嘩を売りやがりました。

 

 当然ながらリヴェリアさんの周囲にいたエルフ達は殺気立ち、リヴェリアさんも眉を顰める。

 

「そのような目で見たわけではない。この身に王族の血が流れているのは事実だが、私は郷を出奔した身で今は冒険者だ。奴隷となり冒険者になったとはいえ、不遇から救われた者を喜びはしても、侮蔑する理由はない」

 

「それはそれは……。そのお優しき御心、感激の極みであるな。王女は誠に慈悲深い」

 

「……何が言いたい?」

 

「いやなに。王族が堅苦しいとその責務を放り出しておきながら、随分とまぁ、取り巻きを連れて上から物事を語るなどとは欠片も思っておらぬよ」

 

 思ってんじゃん。

 こりゃダメだな……相当毛嫌いしてる。

 

 流石のリヴェリアさんも苛立ちを隠せなくなってきてる。

 でも、その前に他のエルフ達が我慢の限界を迎えた。

 

「貴様! 一体何様のつもりだ!? リヴェリア様は歴とした我らが王女! 無礼にも程があるぞ!」

 

「責務を果たさぬ王族など飾りにも劣る愚物よ。そのような者に示す礼など余は持ち得ぬ。――王族とは『血』ではない。『責務』と『強慾』を併せ持ちて為し得……羨望と憧憬を他に抱かせる者を指すと、余は思っている」

 

「なっ……!?」

 

「この……奴隷上がりが……!」

 

 男エルフが怒りに震えながら、エーディルのことを貶す。

 本人は無意識だったのだろうけど、奴隷だった過去を愚弄する発言は先ほどのリヴェリアさんの言葉を台無しにした事に気付いていない。

 その周りのエルフ達もな。

 

 気付いてるのは俺達と、リヴェリアさんとすぐ傍にいた少女エルフ。

 

 特にリヴェリアさんは苦虫を嚙み潰したような渋顔になっている。

 これに関しては、そちらの責任なので俺は口を出す気はない。

 

「ふっ……やはりそれが貴様らの本音か。このような者達が迷宮都市の秩序を護る最強派閥の一角とは……【ロキ・ファミリア】とやらの底が知れるというものよな」

 

「っ!! 貴様ぁ……! 貴様こそ上から物を言う態度ではないか!? どの立場で我らに物を申している!!」

 

「あぁ、すまぬ。余は生まれてからというもの、常に上から物を言う人生であった故な。奴隷に落ちた程度で直るものではなかったようだ。まぁ、直す気など元からないのだがな」

 

 ……やっぱり王族だったってことか。

 ラキア王国に負けて降伏したから奴隷落ちしたってわけだな……。ラキア王国も流石に元王族を処刑する事は出来なかったのか。まぁ、どっかの小説とかで力づくでの国盗りは王族とかを皆殺しにすると逆に反逆が起こる可能性を高めてしまうから、飼い殺しにすることが多いって聞いたことがある。

 奴隷落ちしたってのも、何かしら事情があるのかもしれないな。

 

 さて……とは言うものの、そろそろ落とし所を考えないと駄目か。

 

 俺が口を開こうとした時、

 

 

「きゃあああああ!?」

 

闇派閥(イヴィルス)だあああ!!」

 

 

 と、悲鳴が聞こえてきた。

 

 それに俺達はもちろん、リヴェリアさん達も悲鳴がした方に顔を向ける。

 

「闇派閥だと!?」

 

「こんなところにまで……!」

 

 ここはギルド本部の近く。

 冒険者も多くいるから、これまで襲撃頻度は多くなかったんだが……!

 

「ちっ! これからダンジョンだってのによ!」

 

「行くぞ!」

 

 俺達やリヴェリアさんが闇派閥を撃退しようとしたが、

 

「――待て」

 

 エーディルが俺達を呼び止める。

 

「なんだ――」

 

 

「良い機会だ。ここは余に任せて貰おう」

 

 

 エーディルはそう宣って、堂々とした足取りで俺達の合間を縫って前に出る。

 

 いや、任せると言っても…流石に……。

 

「ふざけるな! 貴様1人で何が出来る!?」

 

 当然の疑問をロキ派の男エルフが叫ぶ。

 これには流石のリヴェリアさんも顔を顰めている。

 

「黙れよ、小僧。貴様如きの浅慮で矮小な理で語るな」

 

 エーディルは背を向けたまま、男エルフに強い口調で言い放ち、ガン!と杖を地面に突き立てる。

 

 

「見せてやろう。余が抱く――最高の魔法を」

 

 

 そう告げると同時にエーディルの足元より風が生じ、直後に白銀に輝く魔法円(マジックサークル)が生まれる。

 

 

「――【集え、天衣無縫の騎士団よ。今こそ(いくさ)の時】」

 

 

「【汝らの忠義は我が剣。汝らの献身は我が鎧。汝らの咆哮は我が盾となる】」

 

 

「【其は永久(とわ)の契り。この身朽ち果てる其の時まで、この身は王を拝命せし】」

 

 

 エーディルの詠唱する姿に俺は完全に呑まれて――見惚れていた。

 

 あまりにも堂々として、どこか幻想的で、そして威厳を纏っている。

 

 まさしくそれは――王たる者の姿だった。

 

「なんという魔力……!」

 

「これは……!」

 

 リヴェリアさん達も瞠目して、黒き女王を見つめていた。

 

 

「【告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に】」

 

 

「【誓いを此処に。この意、この(ことわり)に従うならば】」

 

 

「【我が命運、汝が剣に委ねよう】!」

 

 

 詠う黒の女王はゆっくりと右手に握る槍杖を掲げる。

 

 

「【我が名は――スヴァルディオ】!!」

 

 

 カアァン!!と強く石突で地面を叩き、同時に魔法円が大きく広がった。

 

 

 

「【エイスゥツ・グラズヘイム】」

 

 

 

 魔法名が告げられた瞬間、周囲の地面から幾つもの淡い光の柱が立ち上り――そこから騎士が現れた。

 

 黒銀の甲冑で全身を覆う重騎士。

 

 それがエーディルの周囲に大量に出現したんだ。ざっと見るだけでも5、60人はいる。

 

 剣、大剣、槍、斧、盾。様々な武器を携える騎士の大軍。

 体格もそれぞれに異なり、中には女性と思わしき騎士もいた。

 

 そんな騎士大軍の中心に仁王立つエーディルは――間違いなく『女帝』だった。

 

 エーディルは左手を上げる。

 騎士大軍は一斉に武器を抜き、あるいは構える。

 

 そして――左手は振り下ろされた。

 

 

「――蹂躙せよ」

 

『ヴオオオオオ!!』

 

 

 王命が告げられると同時に、騎士達は唸り声のような雄叫びを上げて突撃を開始した。

 

 突然の黒騎士の大軍の襲撃に、闇派閥はもちろん、市民や他の冒険者達は驚愕し、混乱していた。

 

「な、なんだコイツらギャアアアア!?」

 

「ど、どこから現くべぇ!?」

 

『ヴオオオオオ!!』

 

 黒騎士達は闇派閥を容赦なく殲滅していく。

 

「これは……魔法なのか?」

 

「こんな魔法、が……」

 

 エルフ達は瞠目して呆然としていた。

 それは俺達も同じだ。こんな魔法があるなんて、誰が想像していただろうか。

 

「これは……召喚魔法(サモンマジック)。だが……この数は……。それに……()()()()()()()だと?」

 

 リヴェリアさんも驚きを隠せない様だ。

 

「召喚魔法だと? そんな低次元のものと同じにするでないわ、白の王族(リヨス・アールヴ)

 

 エーディルは前を向いたまま、リヴェリアさんの呟きに反論する。

 

「かの騎士達は、かつて余に忠義を誓いて己が剣を捧げ、数多の戦場で我が国のために命を散らさせ、散らした英雄。死して尚、余の為に戦う事を誓約した我が誇り、我が王威そのもの」

 

 あの騎士達はただの使い魔ではなく、かつて本当に生きていた人間達ってことか?

 それを魔法で呼び戻す? そんな魔法があるのか?

 

「我が魔法【エイスゥツ・グラズヘイム】は、我が英雄達の魂を一時的にこの現世に帰還させ、余の魔力を用いて鎧騎士の肉体を与える『還帰魔法(リヴァイブマジック)』。余は1人で在って、1人に在らず。余があの者達を忘れぬ限り、たとえ国が滅びようとも――余はあの者達の王であり、余こそが『国』である」

 

 ……国の本質は土地でも王でもなく『人々』だと、何かで、どこかで聞いたことがある。

 そこに暮らす人々がいるから、王は君臨出来、国が存在出来るのだと。そして人々が国を忘れない限り、国の名前や王が変わろうともその国は何処かで形を変えて在り続ける。

 

 その逆もまた然り。王がいるから人々がいる。

 だから、王だった者が国が滅んでも国民の事を忘れなければ、その国は滅んでいないと言える。

 

「もっとも、言うほど簡単な魔法ではないがな。いくつもの条件を満たしてようやく我が騎士を呼び戻すことが出来る。だか呼び戻せたとしても、ご覧の通り碌に会話も出来ぬ状態で少々寂しいものだがな」

 

 いやいやいやいや、十分すぎるだろう。

 エーディル1人で、俺達の保有戦力が一気に数倍に増えたぞ……。

 

 俺達が呆気に取られている間も黒騎士達は闇派閥を撃退していくが、それでも次々と闇派閥の連中が現れる。

 それに黒騎士達も残念だがそこまで強くはない。多分、エーディルのステイタスや元々のステイタスが高くないことが関係してるんだろう。

 

「このままじゃ時間がかかり過ぎる……!」

 

「やっぱり俺らも行こ――」

 

「ふむ、ならば次の一手と行こうかや」

 

 エーディルはそう言うと、槍杖の穂先を前に出す。

 

 

「――【三度の厳冬を越え、訪れたるは終焉】」

 

 

 エーディルが新たな詠唱を詠い始める。

 でも……なんかこれって……。

 

 

「【大いなる輝天(きてん)は闇へと吞まれて、大いなる大地は崩れ散る】」

 

  

 やっぱりこれって……リヴェリアさんと同じ! ラグナロクの詠唱!

 

 

「【解き放たれるは邪火。暴虐と破滅が世界を覆う】」

 

 

 輝く魔法円の上で紡がれる歌声。

 

 その詠い手の姿に、俺は、俺達は、とあるエルフの王女の姿が重なった。

 

 

「【堕ちろ、命の星々。轟き響け、虹光(ぐこう)の角笛】!」

 

 

 だからだろうか、最後の一節を誰もが予感していた。

 

 

「【――()()()()()()()()】!!!」

 

 

 エーディルの足元の魔法円が一瞬で広がって、この戦場一体を覆う。その直後に魔法円は砕け散り、天へと舞い上がる。

 そして、その天上に大量の小さな魔法陣が円環を為し、幾重にも重なり……まるで角笛のような形を築く。

 

 エーディルは不敵な笑みを浮かべ、その瞳を見開いた。

 

 

「【ステルナ・ギャラルホルン】!!」

 

 

 流星群が降り堕ちた。

 大量の魔法陣から一斉に光線が放たれ、俺達の頭上を覆う。

 

 でも、

 

「こ、こんなものが街に落ちたら……!」

 

 リヴェリアさんの傍にいた男エルフが、俺と同じ危惧を口にする。

 

「舐めるなと言った」

 

 エーディルが告げた直後、流星が不自然に軌道を変えた。

 直角に落ちたり、うねって方向を変えたり、逆に上昇して建物を避けたりしている。

 

 そして流星群は()()()()()()()()、襲いかかってその身体を貫き抉っていく。

 

「こ、今度はなんだ!? ひっ! ぐがぁ!?」

 

「きゃああああ!?」

 

「ぎぃえあ!?」

 

 流星群と黒騎士団によって闇派閥はあっという間に全滅した。

 黒騎士団は武器を納め、または下げると、エーディルに向かって片膝をついて礼をしてから消えていった。 

 

 いやはや……これはどこからどうツッコんだらいいんだ?

 それに今の魔法は……。

 

「全方位殲滅、いや狙撃魔法か……。先程広がった魔法円で標的を選別していたようだな」

 

 リヴェリアさんが目を細めてエーディルの魔法を分析する。

 

 そして、鋭い目つきでエーディルを見据える。

 

「スヴァルディオ、そしてアールヴ……。その名を名乗ると言う事は……」

 

 エーディルはリヴェリアさんとまっすぐ、堂々と向かい合い、

 

 

「余が名はエーディル・デック・アールヴ・スヴァルディオ。古代に霊峰アルヴ山脈を離れ、黒き国【スヴァルディオ王国】を建国した黒の王族(ハイエルフ)の末裔。そして――祖国を護れずに無様を晒した、暗君である」

 

 

 ……うわぁお。ダークエルフの王族で、一国の元女王ってかい。

 そりゃあ……スセリ様も安易に話せないよなぁ。

 

「なんと……」

 

 これにはディムルもかなりの衝撃を受けている。あっちのエルフ達も顔を青くしている。

 あれだけ馬鹿にしていた相手が実はハイエルフだったら、まぁビビるよね。

 

「デ、(デック)の系譜だと……!?」

 

「黒の王族は古代に霊峰を護る為に戦い、ほぼ途絶えたはず……!」

 

「それも間違いではない。余の祖先は一族と仲違いにて袂を分かち、同胞が決戦で数を減らす前に霊峰を出て、共に霊峰を出た一族を纏めて国を造った。その時に余の祖先は黒の王族から追放された故、歴史から忘れられたのであろうよ。我が一族は伴侶と腹心以外にアールヴの名は明かさぬ掟があった故、国民のほとんどが我らの祖先を知らぬ。そして……今はもう余1人しかおらぬ」

 

 つまり、スヴァルディオ王国とやらにいた黒のハイエルフはもう死んでしまったと。……例の戦争でかな?

 

「なるほどな……其方の素性も事情も理解はした。だが、それが私を敵視する理由ではあるまい?」

 

「当然であろう。余は正直黒の系譜の事などどうでもいい。余はあくまで余に忠義を捧げてくれた臣下と民の王であるが故に偉ぶっているだけで、エルフ族の王族の血筋であることになど欠片も誇りを持っておらぬ」

 

「……では何故?」

 

「では、はっきりと告げてやろう。王族の責務を放棄したにも関わらず、王族であるという理由だけで周りから持ち上げられている貴様が――あまりに滑稽に見えて、苛つくのだよ」

 

「なっ……!?」

 

「先ほども言ったが、王族とは血筋で敬い、敬われるものではない。責務を果たし、民草に夢を魅せ、先導する者であると余は理解している。さて……今の貴様は、果たしてそれに当て嵌まっているかや?」

 

「……」

 

 顔を顰めて黙り込むリヴェリアさん。

 エーディルはそんなリヴェリアさんをもう用はないとばかりに視線を外し、俺達に身体を向ける。

 

「さて、これまで素性や魔法を隠していた非礼を詫びよう。しかし、余の魔法は目立つだけでなくあまりにも素性に繋がっている故な。言の葉で伝えるだけでは足りぬと思い、魔法を見せてからか、あのハイエルフの前で明かす方が冷静に受け止めてくれると主神様と判断した」

 

「……まぁ、確かにステイタスだけ見ても実感は湧かなかっただろうな」

 

「そうだねぇ。こりゃホントに度肝を抜かれたよ」

 

「逆に俺達の活躍が全部奪われそうだぜ……。ホントにここに来る奴ってとんでもねぇ奴ばっかだな……」

 

 アワランが呆れたように言うが、お前もそのうちの1人だからな?

 

「しかし、あれほどの大魔法を2つも使い、精神力(マインド)は大丈夫なのですかな?」

 

「問題ない、と言いたいところだが、流石にもう両方発動する事は厳しいな。どちらかだけであれば後1回。最後の1つであれば、2回が限度であろう。まぁ、しばらく休ませてもらえばある程度は回復する」

 

 ということはスキルも発現してるってことか。そりゃそうだよな。あんな魔法を持ってて、王様だったんだし。

 

「さて……じゃあとりあえず軽くダンジョンに行ってみるか。エーディルのおかげで俺達は全く消耗してないし」

 

「うむ」

 

「気疲れはあるけどねぇ」

 

「ですね……」

 

「まぁ、連携確認とエーディルにダンジョンがどんな感じか知ってもらうだけで終わればいいだろ。スセリ様にも報告して、梓達にも話さないといけないしな」

 

「では、愚か者共も駆逐した事であるし、早速迷宮に赴くとしよう」

 

 そう言ったエーディルは最後にリヴェリアさん達の方を見る。

 

 リヴェリアさんはまだ眉間に皺を寄せて何やら考え込んでいるが、周囲のエルフ達は肩を跳ね上げる。完全にビビってますなぁ。

 

「ふん……安心せよ。余は貴様達の言う通り、今はただの奴隷上がりの冒険者に過ぎぬ。ハイエルフとして何か為したわけでもなし。亡国の女王などなんの権力もありはすまいよ。不敬を気にする必要はない」

 

 怯えた姿にエーディルは鼻で笑い、自分はすでに王族でも何でもないと宣言する。

 

「むしろ、余をハイエルフとして接しなどしたら許さぬぞ? 余はアールヴの血を引いている事を忌避するつもりはないし、名を捨てる気もないが、それは我が祖先達への敬意故よ。まぁ、元スヴァルディオ女王として声をかけてくるのであれば、少しは相手をしてやらんでもないがな」

 

 これって俺達にも言ってるよね?

 ハイエルフとして褒めるなって事ね。まぁ、ずっとエルフ族の王としていたわけじゃなさそうだしな。多分他の種族もたくさん暮らして、臣下にしてたんだろう。

 そりゃあ、そっちの方がエーディルにとって重要だろうな。実際に治めていたんだし。

 

 ディムルはやり辛そうだけど、まぁディムルだってハイエルフの血筋ではあるんだ。多分気持ちは理解出来るだろう。

 やり辛いのは変わらないだろうけど。

 

 ということで、本当に色々と……色々とあったけど、俺達は後始末を他の人達に任せ、ダンジョンへと向かうのであった。

 

 ……明日からはまた周りからジロジロ見られるだろうけどな。

 

 まぁ、しばらくの我慢だ。

 まずはとんでもない戦力を得たことに――頭を抱える事にしよう。

 

 どう連携していいか……さっぱり分からん!

 

 

 

 

 

エーディル・デック・アールヴ・スヴァルディオ

Lv.2

 

力 :D 539

耐久:F 398

器用:D 523

敏捷:G 277

魔力:B 730

魔導:I

 

《魔法》

【モォヅゥス・ヴィーヴァ】

・波濤魔法 

・段階詠唱可能。中断した箇所で魔法規模が変化する

・詠唱式【渦巻くは母の怒り、うねりて我が子の外敵を押し流せ。その怒りは大地を抉り、あらゆる障害を砕きて揺り籠と成れ。九の光を以って突き刺せ。九の愛を以って包み込め。九の(かいな)を以って排除せよ。我が母よ、我が波よ、汝らが産み出す光は世界の果てへと至らん】

 

【ステルナ・ギャラルホルン】

・全方位狙撃魔法

・魔法円による標的設定可能。標的追尾能力あり

・標的設定時、標的以外の障害物回避可能

・詠唱式【三度の厳冬を越え、訪れるは終焉。大いなる輝天(きてん)は闇に呑まれて、大いなる大地は崩れ散る。解き放たれるは邪火。暴虐と破滅が世界を覆う。堕ちろ、命の星々。轟き響け、虹光(ぐこう)の角笛。この身はアールヴ】

 

【エイスゥツ・グラズヘイム】

・還帰召喚魔法

・召喚対象は生前に主従の誓約を交わし、その死後も術者に忠義を捧げる事を誓った者のみ

・術者、召喚対象が互いに主従関係を認識していなければ召喚不可

・召喚者は生前のスキル・魔法の発動不可

・召喚数に応じて消費魔力量増減

・Lv.および『魔力』アビリティ数値を召喚者ステイタスに換算。潜在値含む

・詠唱式【集え、天衣無縫の騎士団よ。今こそ(いくさ)の時。汝らの忠義は我が剣。汝らの献身は我が鎧。汝らの咆哮は我が盾となる。其は永久(とわ)の契り。この身朽ち果てる其の時まで、この身は王を拝命せし。告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。誓いを此処に。この意、この(ことわり)に従うならば、我が命運、汝が剣に委ねよう。我が名はスヴァルディオ】

 

 

《スキル》

妖精帝令(フェアリー・オーダー)

・魔法効果増幅

・射程拡大

・集団戦闘時『魔力』アビリティ高補正

 

黒妖女帝(スヴァルト・コヌンガル)

・『魔力』アビリティ強化

・主従誓約を結んだ者の魔法効果増大

・従者の数に比例して『魔力』アビリティ高補正

 

女王指揮(エンプレス・コマンド)

・集団戦闘時の伝播機能拡張

・集団戦闘時の視力・聴力強化

・『眠り』への高耐性

 

 

________________________

簡単キャラプロフィール!!

 

・アサマ・コノハナノ・梓

 

所属:【スセリ・ファミリア】

 

種族:エルフ

 

職業:未定

 

到達階層:未挑戦

 

武器:未定

 

所持金:150000ヴァリス(慰謝料)

 

 

 

好きなもの:歌、舞踊、桜、フロル

 

苦手なもの:粗野な人、麺類(食べ辛い)、暗い場所

 

嫌いなもの:奴隷商、闇派閥

 

 

 

《装備》

なし

 

 

 

 極東の山奥にある隠れ里出身。聖樹を守護する郷の長老の孫エルフ。

 極東にあるエルフの郷は全て他種族に対して鎖国状態にあり、そのせいか内部での権力争いが絶えない、【フレイヤ・ファミリア】の『白黒の騎士』の故郷にも匹敵する程の醜さを呈する状況にある。

 

 梓とその兄は長老である祖父と敵対する一族に貶められ、郷を追い出されたところに山賊に捕らわれてしまう。その後は奴隷商に売られ、その希少さからオラリオで売られることとなり、オラリオにやって来た。

 道中はその価値と兄の挺身による守護により、奴隷としてはかなり良い待遇で運搬されていた。本人はそんなことなど分かるわけないので、過酷な経験と思っている。

 もっとも、オラリオに着いてからは闇派閥に関わる商会に引き取られて、正真正銘過酷な環境に置かれてしまうのだが……。

 

 郷では『巫女』の役を担っており、祭事において舞と歌を奉納していた。ちなみに梓の母も巫女役を務めている。

 本人も歌や舞を好んでおり、その腕前は郷でも上位に入る程。

 

 オラリオやハイエルフの事もちろん、魔道具、他種族、食事、建物、何もかもが噂レベルでしか知らず、それどころか超越存在である神やモンスターですら伝承レベルである程のド田舎であったため、完璧なる箱入り娘。

 そのため目にする物、体験するもの全てが新鮮だが、今はフロルや【スセリ・ファミリア】の者達のために何が出来るかを見つけるのに必死で楽しむ余裕はない。今のオラリオで楽しむことなど難しいので、それはそれで本人にとっては良かったのかもしれない。

 

 身長156C、14歳。

 

 『神の恩恵』を授かったものの箱入りだったため、スセリに拾われたばかりのフロル並みの状況。

 能力値はもちろん、魔法、スキル、武術も何もかも真っ新な状態の為、冒険者となるのか、サポーターとなるのか、非戦闘員になるかは未定状態。

 

 フロルへの想いは、まさに『白馬の王子様』的な一目惚れ。

 ただし、これまで色恋とは無縁に無縁だったため、純粋に恩返しと献身のために傍にいたいと思っており、恋心にはまだ気付いていない。

 

 スセリヒメもそれに気付いており、他派閥のアーディとは違い、その感情を抱くのは当然だと思っているため邪険にする気は今のところない――が、そう簡単にフロルを渡すつもりは欠片もない。

 

 ちなみにだが……アワランの事は少し苦手だったりする。

 

 恐らく原作含めた作中登場のエルフはもちろん、春姫以上に純真な乙女。

 

 ヒロイン・オブ・THEヒロインの可能性を秘めている。ライバルは多いが。

 

 




ということで、エーディルはハイエルフ+女王のハイブリッドエルフでした!
……皆様にはバレバレだったようですがね( ;∀;)

イメージはダークエルフ in FGOモルガン&イスカンダル
エイスゥツ・グラズヘイムは、言うまでもなく『アイオニオン・ヘタイロイ』とサーヴァント召喚詠唱です!

そして、彼女の魔法が時間がかかった理由です(-_-;)
いやね、どんな魔法にするかは当然ずっと前から考えてたんですが、名前が全っ然!しっくりくるのが見つからなくてですね……
北欧神話関係はご存じ古ノルド語なのですが、調べても中々古ノルド語が見つからなくて、見つけても発音が分からなかったりなど、発音が分かっても滅茶苦茶語呂悪かったりと散々でして……
本屋やアマゾンで辞典みたいなのないか探したんですが、これも中々に見つからなくてですね~
北欧神話が嫌いになりそうでした(笑)

エーディルの最後の魔法の詳細、キャラプロフィールや細かい経歴は次回!
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