【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~   作:独身冒険者

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お待たせしました


面倒そうな『秩序』

 さて、なんかもう色々とありましたが、やってきましたダンジョンに。

 

 とりあえず、すでにかなりの精神力を消耗したエーディルに無茶をさせない様にまずは上層でゆっくり連携を……と思ってたんだけどさ。

 

 全然上層だと余裕過ぎてダメみたいだ。

 

「ふっ!」

 

『ギャア!?』

 

 エーディルが槍杖を薙ぎ、コボルトの首が宙を舞って灰へと変わる。

 そのままエーディルは槍杖を振り回し、舞うように次々とコボルトを1人で倒していく。

 うん……この程度だったら前衛も全然出来るんだね、エーディル。

 

「こりゃもっと下に行かねぇと魔法の連携を試すどころじゃねぇな」

 

「だなぁ。まぁ、あんな杖を頼むくらいだからこれくらいはと思ってはいたけど……想像以上に動けるんだな」

 

「そりゃあ少し前までやつれていてもLv.2だしねぇ。なんだかんだステイタスで言えば、アタシらよりも上なんだ。これくらいはむしろ当然だろうさ」

 

 そういえば、そうか。

 なんか少し前までやつれてて奴隷だったイメージが強くて、ステイタスがそれなりに高いことを忘れちゃうんだよな。

 でも、思い出したらすでにランクアップ圏内にいて、ハルハよりも一部のステイタスは上だったか。

 

「しかし、本人もブランクがあるとの事ですし、無理して今日全てを試す必要もないのでは?」

 

「けどよ、今みてぇな戦闘だったら、それこそ本拠でも出来るじゃねぇか。だったら、やっぱり魔法を使わせる方を意識してもいいんじゃねぇか?」

 

「そうですな」

 

 そうするか。そもそもエーディルは後衛職だしな。

 

「エーディル」

 

「なにかや?」

 

「魔法だけど、最後の1つって言ってたし、3つ発現してるんだよな?」

 

「そうさな。余が会得している魔法は3つ。まだ見せておらぬのは【モォヅゥス・ヴィーヴァ】と言う魔法であるな」

 

「どんなのなんだい?」

 

「水の竜巻を放つ魔法でな。ただ、段階詠唱という特徴があり、最低で1本、最大で9本の竜巻を放つことが出来る」

 

「段階詠唱?」

 

「あの忌々しいハイエルフの『詠唱連結』の劣化版のようなものだ。あ奴のは詠唱を繋げる事で魔法を変質・強化するものだが、余のは詠唱を分割することにより段階的に魔法規模と威力を上げていく。最初の一節のみならば1本、二節詠えば2本とな」

 

 なるほど……。……いや、滅茶苦茶強いなホント。

 

「それだけの魔法があっても……ラキア王国に負けたのか?」

 

「神時代になり千年。確かに『神の恩恵』にて、戦いは量より質となった。しかし、何事にも限界はある。余が誇っていた軍は最大2万、されど実際に戦争に動かせる数はその半分の1万。対するラキアは3万。数の不利に加え、こちらは防衛戦……民草を守り、逃がしながらの戦いとなれば、どうにも後手に回り、撤退の機を逃してしまう事も珍しくない。余の魔法で一つの戦場で勝つことは出来ても、他が押し負ければ守り切れはせぬよ……」

 

 そうか。敵はラキアだけじゃないんだよな。

 モンスターや山賊、ラキアの侵攻に合わせて他の国も来る可能性がある。それらを警戒・牽制するための戦力も配置しなければならない。そうなれば、どうやっても限界はあるか。

 

 対してラキアは攻めるだけだ。攻める為だけの戦力が来てるんだから、3万フルに使えるよな。

 それに防衛戦・籠城戦は援軍ありきなことが多い。食料にも限界がある。だから……援軍が来るか、数の不利をひっくり返せるだけの眷属がいなければ……いずれは滅ぶか、降伏するしかない。

 

 滅べば当然戦力はなくなるし、降伏すれば兵士は捕虜になって戦線離脱して結局戦力は減る。降伏すれば住民達を守る必要もあるだろうしな。

 

「余が誇った軍とて、最高戦力はLv.3が2人。Lv.2は余を含めて7人。質に関しても、ラキアよりやや…劣っていたのだ」

 

 レベルの差は本来簡単に覆せるものじゃない。

 十人のLv.2がいたら、百人のLv.1の軍勢であれば、押さえ込めると言われている。真っ向勝負であればの話だけどな。

 でも、流石に数百数千がずっと襲い掛かってきたら限界が来るに決まってる。

 

 そして……エーディルであれば臣下や民の為に、早めに降伏する選択をするだろう。

 その方が国民の被害が少ないだろうから。

 

「このオラリオであれば、3万だろうが4万だろうが全く問題ないだろうがな」

 

「まぁ、【ロキ・ファミリア】【フレイヤ・ファミリア】がいれば一蹴出来るもんな」

 

「LV.5やLv.6など、外の国からすれば階層主と変わらないでしょうからね」

 

「階層主か……」

 

「ん? どうした? アワラン」

 

「エーディルのあの魔法があれば俺達だけで18階層に挑めるんじゃねぇか?」

 

 アワランの言葉に、俺達は考え込む。

 ……可能性はあるだろうけど……。

 

「あの騎士団ってそこまで強くなかったぞ? ミノタウロスとかには勝てないと思うなぁ」

 

「我が騎士達の強さは余のレベルと『魔力』の能力値に通じている。現状では良くてLv.2成り立てか、Lv.1の上位と言ったところであろうな」

 

 十分じゃね?

 まぁ、ゴライアスと戦うには少し厳しいか。

 

「騎士達は生前のスキルや魔法は使えぬからの。武術に関しては生前のままだがな」

 

「強さは統一されてるのか?」

 

「いや、生前のステイタスに影響を受けておるな。故に個々で実力が違う」

 

「でも、魔法使えないって事はあの騎士団の中に魔術師とかはいないのか?」

 

「おるぞ。我が軍に所属した者は、魔術師であろうと剣術などを身に着けさせておったのでな」

 

 わぁお、結構ハードな軍隊ですね。

 

「国民ってやっぱりダークエルフが多かったのか?」

 

「いいや。王族や上位貴族にしかおらなんだよ。平民に下った者もいたが、その場合は大抵国を離れて行ったな。そのせいか王位継承には中々に揉め事が多かった」

 

「ダークエルフがいない事があったって事ですか?」

 

「そんな時もあったようだが、基本的には多すぎたのだ。知っての通りエルフ族は長寿だ。神の恩恵を得たことで、Lv.1やLv.2とは言え若さを長く保つことが出来るようになったのもあり、子孫はそこそこに繁栄していた。そのせいで継承権争いが派手だったのだよ。臣下の多くは他種族であったし、主神も継承権までは口出ししなかったのでな」

 

「あ~……なるほどなぁ。エーディルの時はどうだったんだ?」

 

「余は継承権一位であったし、先王が身を引く時には他の王族は若すぎるか、継承権を放棄して公爵家などに下っておったよ。まぁ、自分で言うのも何だが、余は非凡な才を持っておったのでな。文句はあまり出なかったよ」

 

 まぁ、あれだけの魔法と、これだけの貫禄があればなぁ……。

 多分国民にも人気だったんだろうな。

 

「今更かもしれないけど……国に戻らなくていいのか? ラキアに取り込まれたとはいえ、国は健在なんだろ?」

 

「無理なのだよ、団長殿」

 

 エーディルは足を止めて、まっすぐに俺を見つめる。

 

「余が奴隷になったのは、もう20年以上前の事でな……。すでに祖国は始祖とも余とも無縁の王が治めているはずだ。今更余が戻ったところで、余計な騒動を呼ぶだけであろうよ」

 

「え……と言う事は20年以上も奴隷として?」

 

「そこは少々複雑でなぁ……。主神が送還され、余も恭順を拒否した故、本来であれば処刑されるか幽閉される運命であったが……生き残った余の臣下達がラキアに恭順する代わりに、余がスヴァルディオに二度と戻らぬことを条件に余の存命を願い出たのだ。当時のラキア王はそれを受け入れ、余は当時親交のあったラキアの属国でもない他国へと移送されたのだが……数年ほど経った頃にその国がラキアではない国に侵攻されたのだ」

 

「また波乱万丈でありますなぁ……」

 

「うむ」

 

「余は一応賓客扱いであったために退避することになったのだが、その道中で山賊に襲われて捕まってな。それで奴隷となったのだよ」

 

「なんとまぁ……」

 

「ちなみにその国は無事だったのか?」

 

「その時は何とか凌いだようだが、その後にラキアに呑み込まれたようだ。故に、その国にも戻れぬだろうな」

 

「でも、このままここにいて名を馳せたら騒がれるんじゃないか? ダークエルフ達もだけど」

 

「まぁ、騒がれるであろうが、だからと言って祖国には戻れぬだろうよ。余とて立派に国を治めている者を押し退けてまで戻る気はない。ダークエルフ共に関しては……どうでも良いな。そもそも余の一族は(デック)の系譜より追放された身であるのでな。デック・アールヴの名も、ダークエルフの国王と王妃しか名乗れないという掟故で、名乗るなと言われればそれはそれで構わん」

 

 なんとも不憫と言うか……とことん波乱万丈な人生だなぁ。

 なんか……優しくしてあげよう。

 

 俺達は移動を再開し、11階層に下りる。

 

「ふむ……僅か10足らず下りてきただけだというのに、随分と様変わりするものよ」

 

 10階層でも興味深そうに周囲を見渡していたエーディルは、ここでも周囲を見渡していた。

 まぁ、さっきまで洞窟だったのに、いきなり霧に包まれた草原に変わるんだから誰だって驚くよな。

 

「さて、どうするか……。下に行くと狭くなるから、エーディルの魔法を試すにはここがある意味一番いいんだよな」

 

「そうだねぇ。とりあえず、シルバーバックでも探して、使わせてみるかい?」

 

「だな」

 

 ということで獲物探し。

 シルバーバックは別に希少モンスターでもないので、すぐに見つかったけど。

 

 俺達はエーディルを見て、

 

「じゃあ、見せてもらって良いか?」

 

「よかろう」

 

 エーディルは鷹揚に頷いて前に出る。

 

「――【渦巻くは母の怒り、うねりて我が子の外敵を押し流せ】」

 

 魔法円が輝いたかと思うと、左手を突き出した。

 

「【モォヅゥス・ヴィーヴァ】」

 

 左手前に蒼銀の魔法陣が展開され、一本の水竜巻が勢いよく発射された。

 

 水竜巻はあっという間にシルバーバックの上半身が呑み込まれ、身体が灰になる。

 おぉ……これで一番威力が低いってヤバくね?

 

 エーディルが顔を左に向ける。

 俺も同じ方向を見ると……わぁお、インファント・ドラゴンじゃん。

 

「ふむ……あれがインファント・ドラゴンかや?」

 

「ああ。どうする?」

 

「そうさなぁ……5割ほどで放ってみるとしよう」

 

 エーディルはこちらに気付いて雄叫びを上げるインファント・ドラゴンに再び左手を上げる。

 

「【渦巻くは母の怒り、うねりて我が子の外敵を押し流せ。その怒りは大地を抉り、あらゆる障害を砕きて揺り籠と成れ。九の光を以って突き刺せ】」

 

 展開されたのは先程の魔法陣が5つ含まれた巨大な魔法陣だった。

 

「【モォヅゥス・ヴィーヴァ】!」

 

 ドォン!!と間欠泉が噴き出したかのような爆音を轟かせて、5本の水竜巻が噴き出した。

 

 5本の水竜巻は意思を持った龍のようにうねりながらインファント・ドラゴンに襲い掛かり、一瞬でその巨体を喰い尽くした。

 

 ……とんでもないですね。Lv.2でこれ?

 将来本当にリヴェリアさんに並ぶ大魔導師になるぞ、これ。

 

「やっぱゴライアスいけるんじゃねぇか?」

 

 アワランが呆れた顔でさっきと同じことを口にする。

 まぁ、気持ちは分からなくもないけどさ。

 

「流石にエーディルの魔力が保たないだろ。ゴライアス相手に温存なんて出来ないだろうから、それぞれ一発放ったらもう撃てないのはキツいと思うぞ?」

 

「だな。連携次第なところは確かにまだあるが、エーディルを守る事になるお前らがまだまだだぞ」

 

 ドットムさんの言う通り、エーディルが詠唱を終えるまで注意を引きつけたり、エーディルをカバーする俺らがまだまだゴライアスの攻撃に耐えられるレベルじゃないと思うんだよな。

 まだ皆Lv.2になったばかりで、ディムルはまだLv.1で、新人達はそもそも中層に連れて来れる段階でもない。

 流石にまだ無茶だな。

 

「せめてエーディルと……もう1人Lv.3になってからだな。俺達だけで挑戦を考えるなら」

 

「先の長い話だねぇ……」

 

「どうだろうな? 結構Lv.2からLv.3に上がるのは最初より早い事が多いって聞くぞ?」

 

「まぁ、中層以下は探索やモンスターの危険度が跳ね上がるし、ある程度無茶出来る限度も分かるくらいの経験はしてるはずだからよ。Lv.3になる期間は短い奴は確かに少なくねぇ。……ただし、その分命懸けだがな」

 

 だろうな。

 今は闇派閥もいるし、経験値って意味では稼ぎやすいかもしれないが……判断がかなりシビアになる。

 エーディルがそれなりにダンジョンに慣れてからじゃないと、20階層より下はまだ厳しいと思う。

 

「アワラン達もランクアップしたばっかりだし、しばらくはディムルのランクアップとエーディルがダンジョンに慣れる事を第一に考えよう。エーディルが慣れてくれば、パーティーを分けてダンジョンに挑めるようになるだろうし」

 

「まぁ……焦ってもしゃあねぇか」

 

 アワランは腕を組んでため息を吐く。

 おお……成長したなぁ。

 

 俺のそんな思いに気付いたのか、アワランは顔を顰めて俺に視線を向ける。

 

「なんか変な事考えてただろ? いくら馬鹿な俺だって、お前にぶん殴られた上にあんだけのこと言われたんだから、無茶して強くなろうなんざもう思わねぇよ」

 

「くくくっ! あれだけ思いっきりぶん殴られて気絶させられればねぇ」

 

「そうですなぁ。あれは戦士と言うか……男子としては、その……嫌でも響くでしょうなぁ」

 

「聞いて見てるだけの我々ですら、グッと来ましたからね……」

 

「「うむ」」

 

「恥ずかしかった」

 

「うっせぇよ!!」

 

「ほぉ~う。それはそれは……余も是非見てみたかったものであるなぁ」

 

「見せるか! スセリヒメ様に見られてたってだけでも最悪なんだからな!?」

 

 だろうね。

 まぁ、俺はもう何度も見せてるから今更だけどさ。いや、その時は恥ずかしいけどね。

 

 そんなことを話しながら、今日はここらへんで戻ろうとなった時、下へと降りる通路からとある一団がやってきた。

 

 その一団は『開かれた本と天秤』のエンブレムが描かれた旗を掲げていた。

 

「あれは……」

 

「あれが噂の【テミス・ファミリア】か?」

 

「そうみたいだねぇ」

 

「もう中層まで挑んでいるようですね……」

 

「まぁ、Lv.2が4人もいるし、団員数も多いからな。力押しでもある程度は行けるんじゃないか?」

 

 俺達は周囲を警戒しながら【テミス・ファミリア】が通り過ぎるのを待つ。

 

 だが……集団の半ばにいた騎士の1人が俺達に顔を向けて足を止めた。

 それに合わせて他の騎士達も足を止める。

 

「貴様達は……」

 

 なんかいきなり訝しまれながら貴様呼ばわりされたんだが。騎士の癖に失礼な奴だな。

 

 ちなみにその騎士は青紫色の弱めパーマで、神経質そうな顔をしていた。

 そして、その騎士は俺を見て、更に顔を顰める。

 

「……何故このような場所に子供がいる?」

 

「子供?」

 

 騎士達の視線が俺に集中する。

 今の俺の身長は小人族にだって負けてない。見た目子供でも騒がれる程じゃないと思うんだが……外から来て間もないし、仕方がないのか?

 

「何を言っている、ジィル。彼はあの【迅雷童子】だ」

 

「……【迅雷童子】だと? あんな子供が?」

 

 あんな子供がって言われてもなぁ……。俺の事を知ってるなら、俺がなんで有名なのか知ってるはずだろうに。7歳でランクアップしたんだから今も子供に決まってるだろ。

 

「子供がダンジョンに挑むなど……! やはりオラリオには厳格な秩序が必要なようだな」

 

 どんな理論だよ。

 別にダンジョンに挑んでる子供は俺だけじゃないぞ? 目立ってるのが俺だけってだけだし、そもそも一体何歳だったら挑んでもいいって判断するんだ?

 

「やめろ、ジィル。まだオラリオの現状を把握しきれていない状況で、安易な判断を下すな」

 

「その判断を待っていた結果が今のオラリオであろう!?」

 

 それは否定しないが、子供をダンジョンに行かさないようにしたところで大して変わらんよ。

 

「最大派閥とか言う【ロキ・ファミリア】も【フレイヤ・ファミリア】も不甲斐ない! 力を持っていながら、秩序を保たずに好き勝手にするなど……!」

 

 そりゃあ探索系ファミリアの最優先はダンジョンの攻略だからな。

 治安維持はあくまで迷宮探索の弊害にならないようにするためだから、一番の問題はギルドにある。

 

 まぁ、ゼウスとヘラを追放した責任はいくらかあるだろうけどさ。

 

 でもなぁ……この前ここに来たばかりのファミリアがフィンさん達をどうこう言うのは何か納得出来ないなぁ。

 

「そこまでになさい、ジィル」

 

 俺……と言うか俺達が彼らに呆れ始めていると、大きいわけでもないのにはっきりと俺達にまで声が届く。

 

 騎士集団の後方から現れたのは、団長のジャンヌ・ダールだった。

 

「ジャンヌ……!」

 

「貴方がオラリオの秩序について憂慮する事を咎めるつもりはありません。その法と秩序への熱意は好ましいとも思っています。……ですが、だからと言って周りを貶めて良いわけではありません」

 

「ですが……!」

 

「そもそも、貴方が子供と言ったあの少年も、我らより強く、このオラリオの為に幾度となく悪と戦って来ています。我々も祖国において治安維持の実績も自負も、誇りもありますが、この都市では何も実績はありません。そのような態度では、我らこそが不秩序の種となりかねません」

 

「ぐっ……!」

 

 なんか思ったよりまともと言うか、柔軟な思考をお持ちのようだ。宥めていた騎士も誠実そう。

 

 ジャンヌは俺達に向くと、頭を下げる。

 それにジィルと呼ばれた騎士はもちろん、他の騎士達も驚きを露わにする。

 

「ジャ――!?」

 

「部下の非礼、誠に申し訳ありません、【迅雷童子】。そして【スセリ・ファミリア】の皆々様」

 

 誠実さしか感じられないその謝罪に、俺達は拍子抜けというか、困惑した顔を見合わせ、

 

「……まぁ、直接侮辱をされたわけではないので、特に問題視する気はありません。謝罪を受け取ります」

 

「感謝します」

 

 ジャンヌは頭を上げ、微笑みを浮かべる。

 

「お噂は我々の耳にも届いています。我が神も貴方の事は気にかけておりました」

 

「スセリ様の話では、神テミスとは交流があったようですからね」

 

「ええ。故に、我らもまた貴方達と友誼を結べればと思っております」

 

「……」

 

 俺はジャンヌの言葉に眉間に皺を寄せ、すぐに頷くことが出来なかった。

 

 いや、別に【テミス・ファミリア】、いや正確にはジャンヌや神テミスとの友誼を結ぶ事に文句はないんだが……う~ん……。

 

 なんか……今の情報だけじゃ交流を深めてもあまり意味がない気がする。

 ジャンヌの後ろにいる騎士の大半が不快感を隠しもしない、この状況では。

 

「……その言葉は嬉しいけど……今はその手をまだ取れない」

 

『なっ……!?』

 

「……やはり、そうですか」 

  

 後ろの騎士達が驚き、怒りの顔を浮かべるが、ジャンヌは俺の返答を予想していたようで残念そうな顔を浮かべる。

 

「互いに今が初対面。例え神と神が旧知の仲とは言え、それが我ら眷属に当て嵌まるのは別問題。……そういうことですね?」

 

「ええ。互いを知る時間が必要だと思います。そちらの言う『秩序』が、俺達の、冒険者と共存出来るのか。まだ分かりませんからね」

 

「貴様ぁ……!」

 

「このオラリオでは理想をどれだけ掲げようと、力がなければその理想は空想でしかない。それを無理にでも押し通したければ……強くなるしかない。だから、俺達は強くなろうとここにいる。貴方達が掲げる『法』と『秩序』がどんなものか、どのように目指すのか、それを見極めない限り、交流を深めるつもりはない。敵対する可能性があるなら、最初から友誼を結ばない方が気後れしなくて済むからな」

 

 俺の言葉にハルハ達は同意するように頷いてくれる。

 まぁ、オラリオの場合はそれが普通だからな。今は闇派閥の為に協力体制を敷いてはいるが、ダンジョン探索や普段の活動においては不干渉が基本だ。

 【ガネーシャ・ファミリア】はドットムさんがいるから、それなりに交流してるけどな。でも、向こうだってダンジョン探索などに関しては一切口を出さないし、邪魔をしない。それは他の派閥に対しても同じスタンスだ。問題行為が確認されない限り、ギルドも【ガネーシャ・ファミリア】もファミリアの活動に干渉しない。

 

 でも【テミス・ファミリア】はその保証が全くない。

 いや、それどころか今の感じでは干渉してくる可能性の方が高い。

 

 それは俺達の望むところではない。もちろん、他のファミリアもそうだろう。

 

「ここはこれで手打ちだ。俺達はしばらくここにいる。地上に戻るなら先に行ってくれ。……まぁ、消耗が厳しいと言うのであれば、俺達が先に行くが」

 

「お気遣い感謝しますが、その必要はありません。此度の探索はあくまで偵察が目的ですので、戦闘は最低限としていましたから」

 

 ジャンヌは俺達に頭を下げて、部下達に進軍の指示を出す。

 ジィルとか言う騎士も全く納得してない様子だが、渋々と、でも俺達を睨みつけながらジャンヌの命令に従った。

 

 進軍を再開する【テミス・ファミリア】を見送る俺は、大きなため息が無意識に出た。

 

「はぁ~~……やっぱ、面倒事になりそうだなぁ……」

 

「ホントにアンタはこの手のトラブルを引き寄せるねぇ」

 

「今回は強く否定させてくれ」

 

「まぁ、今回は向こうが勝手に盛り上がっただけだしなぁ……」

 

「団長の対応も間違っていないと思いますよ? あのような対応をされていきなり友誼を結ぼうと言われても、信用するのは難しかったでしょう」

 

「だろうな。確かにあの団長殿は信用に値する人格者であったようだが、その部下達は怪しいものよ。どこまであの女一人で制御出来るか……。団長殿の言う通り、静観が正解であろうよ」

 

「エーディルにそう言ってもらえたなら、少しは安心できるな。さて……もう少ししたら俺達も戻ろう。ドットムさんはシャクティさん達に報告した方が良さそうだし」

 

「みてぇだな……ったく、堅物はうちとも相性が悪ぃんだけどなぁ……」

 

 主神がノリで動く時ありますからね。

 

「ですが、団長殿がまだ分かり合えそうな方なのは僥倖でもありましょう」

 

「うむ」

 

 そうだけどな。

 うぅん……これはスセリ様に神テミスと会って貰った方が良いか? いや、流石にそこは神頼み過ぎか。

 

 やれやれ……これはもう……苦労するのは確定か。

 

 面倒なことになりそうだ。

 

 

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簡単?キャラプロフィール!!

 

・エーディル・デック・アールヴ・スヴァルディオ

 

所属:【スセリ・ファミリア】(元【ヘイムダル・ファミリア】)

 

種族:ダークハイエルフ

 

職業:冒険者

 

到達階層:11階層

 

武器:杖、槍、細剣、短弓

 

所持金:50000ヴァリス

 

 

 

好きなもの:探求、繁栄、臣民

 

苦手なもの:馬鹿、天才

 

嫌いなもの:勘違いしたお調子者、脳筋、裏切り者

 

 

 

装備

《スヴァルト・プライド》

・魔導士専用武装 槍杖

・『魔女の隠れ家』店主レノア、および正重作 価格300000ヴァリス(ヘファイストス談)

軽量金属(ライトメタル)、精製金属《ミスリル》を複合して杖を覆い、長柄武器ハルバードとしても使用出来る第三等級武装でもある

・元々エーディルが愛用していた槍杖を模して造られた。ちなみに女王時代に愛用していた槍杖は魔法大国(アルテナ)で造られ、リヴェリアの杖と同じく『至高の五杖(マギア・ヴェンテ)』に数えられているが、現在ラキア王国の宝物庫に貯蔵されている。

 

 

 

 黒き国【スヴァルディオ王国】第29代目国王、および【ヘイムダル・ファミリア】第5代目団長であったダークエルフの元王族。

 古代の英雄時代において、霊峰アルヴ山脈に暮らしていた黒の王族から追放され、共に霊峰を出た一族を纏めて国を興した一族の末裔。ちなみに追放された理由は『白の王族同様一族の為に霊峰を捨てる選択をした』からである。故に歴史を知るダークエルフからは『臆病者』や『痴れ者』と蔑まれている一族。

 しかして、その真実は黒の系譜を途絶えさせない為に、その時の黒の王が「恐らく我らは滅びる。泥を呑んで生き延びてくれ」と弟に頭を下げて、霊峰から遠ざけたのであったが、長き歴史の中でそれは忘れ去られた。

 

 エーディルは27代目国王の長女として生を受け、幼少の頃よりその異才を発揮していた。しかし、父王が病で早くに世を去り、エーディルの叔父でもある王弟がエーディルが成長するまで国王を継いだ。

 その間にエーディルは希少魔法【エイスゥツ・グラズヘイム】を発現し、次期国王、そして騎士副総長として前線に立ち、臣民と交流を深め、敬愛を集め、39歳の若さで王位を継いだ。

 

 その結果、エーディルの即位に異議を唱える者は片手ほどしかおらず、主神ヘイムダルでさえ『過去最高』と言わしめた女王となった。

 

 スヴァルディオ王国は王都が大樹に囲まれ、材木や果物、穀物の名産地で、ダークエルフだけでなく、他種族も多く暮らしている自然豊かな国だった。

 それ故に侵略される事も多かったが、大魔法を操るエーディル束ねる屈強な騎士団に悉く撃退された。

 

 しかし、それらは全て周囲の中小国であり、ラキア王国ほどの大国には残念ながら及ばなかった。

 

 エーディルは早期の段階で敗北を確信してしまい、少しでも被害を減らす為に降伏を決めたが、ラキア王国が提示した『エーディルは女王を退いて、ラキア王国の臣下として忠誠を誓え』という条件だけはすぐに頷けなかった。

 

 いくら降伏するとは言え、国を捨てるのは己の矜持をも捨てる事に等しかったから。

 

 しかし、このままでは臣民達が殺され、悲嘆が広がる事に苦悩していた。

 そして、その苦しみは臣下達も同様で、自分達の為に悩み苦しむ女王の姿にどうすれば良いのかと日々密かに話し合いが行われていた。その中で出たのが、エーディルをラキア王国ではない他国に追放する事であったが、それが簡単に承諾されるわけがない事は誰もが予想出来ていた。

 

 だが、そこでとある大事件が起こった。

 

 

 エーディルを除く王族、および王族の血を引く貴族達、そしてその家族の集団自害であった。

 

 

 それは『エーディル以外に王に相応しい者はいない』と言う王族一同の宣言であり、同時に臣下達に『ラキア王国に勝つ以外にスヴァルディオ王国を護る術はない。それが無理ならばエーディルを護れ』と覚悟と決意を促すものだった。つまり、どちらにしろ王国が終わるならば、デック・アールヴ・スヴァルディオ王家の治世が終わるならば、エーディルを生かす為に動けと発破をかけたのだ。

  

 彼らの覚悟を履き違えることなく受け取った臣下達は、王を裏切るような選択であろうとも、エーディルを生かす、それも少しでも自由に生きてもらう為に自分達を犠牲にする事を選んだ。

 

 それが――『エーディルを親交ある他国へ追放し、新王の下にラキア王国の傘下に降る』であった。

 

 だが、神の眷属であるエーディルを、『神の恩恵』を持たない国が受け入れる事は中々に難しい事だった。

  

 眷属達の想いを汲んだヘイムダルは、アレスの前で自害して天界へと送還されてエーディル達に授けた恩恵を解除する事で覚悟を後押しした。

 

 一族、臣下、主神。

 己を支えてくれた者達の覚悟を受け取ったエーディルは『余の家族、臣下、民、そして主神を奪った貴様らに従う事なぞ未来永劫、転生しても断じてあり得ぬわ!!』と、アレスとラキア王に威風堂々と宣言した。

 

 その直後、あらゆる後悔を胸に抱いて湧き上がる慟哭に耐える臣下達に捕縛され、惜しまれながら国を追放される事になった。

 

 馬車で国を発ったエーディルを見送った臣下達はその夜、『この不忠、死を以って償います。どうか……我らがまた貴女の騎士として呼ばれない事を祈って』と、エーディルの平穏と安寧を願いながら――即効性の毒を飲み、永遠の眠りにつき、スヴァルディオ王国は滅びを迎えた。

 

 エーディル即位104年目のことである。

 

 その余りにも気高く深い忠誠に、流石の脳筋神アレスも不義にする事は出来ず、エーディルを諦める事にした。

 生き残った者達が宣告通りにラキア王国に忠誠を誓い、スムーズに豊かな国を手中に収めただけでも十分すぎる成果であったからだ。

 

 そして、エーディルは他国へと渡り、奴隷へと身を落とすまで穏やかな日々を()()()過ごした。

 

 身長171C。

 

 年齢――164歳。

 

 【エイスゥツ・グラズヘイム】所属騎士総数――5万4121人。

  *現在召喚上限は精神力(マインド)全振りで100人

 

 国を追放され、奴隷に身を落とした身であっても、多くの者に『王』として支えて貰い、生きることを望まれた事を誇りに想い、『スヴァルディオの王』であり続ける事を自身に誓っている。故に、服毒自殺した臣下達をいつか騎士としてまたこき使ってやると心の中で思っていた。

 そのため、傲慢不遜で不敵な言動をしているが、一度身内と定めた者や非力な一般市民に対しては慈悲深く献身的。特に子供は大好き。

 

 フロルの事は面白い存在として気に入っている。完全に母親目線でフロルを見ている為、スセリヒメにも気に入られていたりする。

 ちなみに夫は病死、子供はラキアが攻めてくる前の他国との戦争で死別している。以降は婚姻を結んでいない。

 

 ハルハ達に関しても、自分の事を棚に上げて面白い連中と思っている。

 ディムル、梓のことはエルフとしてやはり特に気にかけてはいる。

 

 リヴェリアの事を王族としてボコボコに貶したが、実は個人としては嫌っていない。あくまで王族として嫌っているだけ。『ギルドの豚エルフ』は手腕は認めているが、個人としては嫌い。

 

 本人も言っていたように黒の王族(デック・アールヴ)である事には全く誇りを持っていない。

 なので、宣言通りハイエルフである事を理由に敬ってきたらキレる確率100%である。

 

 

 

 ちなみに――前話の【エイスゥツ・グラズヘイム】には毒で自害した臣下達もしっかりと召喚されていた。

 

 

 故に再び主従に会わせてくれた【スセリ・ファミリア】と【ガネーシャ・ファミリア】には、主従共に感謝している。

 

 

 




こんなエーディルが何故Lv.2なのか?

それは即位後は戦争くらいしか前線に立たなかったからですね
流石に山賊退治やモンスター駆除などは余程のことがない限り、騎士団だけで対処してました

ダンまちのエルフの寿命ってどれくらいなんでしょうね?
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