【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~   作:独身冒険者

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闇を抱えし居合娘

 エーディルの二つ名が【黒魔妃(スヴァルト・ヘル)】に決まった。

 

 字面とかから間違いなくリヴェリアさんの【九魔姫(ナイン・ヘル)】を意識してる感じだよね。

 エーディルは、

 

「まぁ……我が祖国に通ずるものもあるから、受け入れるとしよう」

 

 と、渋々な感じで受け入れていた。

 元女王ともなれば、冒険者の二つ名程度では一喜一憂しないか。

 

「百年も玉座におれば、色々と好き勝手に呼ばれるものよ。お主も近いうちに……というか、すでに陰で何かしら呼ばれておるだろうよ」

 

 ですよね。

 うちって結構言われてると思う。目立つし、目立ってるし。

 

 それにしても、ジャンヌさんの【御旗の聖女(デア・オルレアン)】って……この世界にもオルレアンってあったんだ。んで、同じような事起きてたんだ。

 ダンまちの主要キャラって、前世の英雄神話にある程度基づいてるけど……この後いつか火炙りにされたりしないよね? ……よね?

 

 流石に彼女がそんな目に遭うのはちょっと不憫すぎる。前世のジャンヌ・ダルクもそうだけど。

 

 そして、やらかした男の二つ名もなんか哀れだな。狂犬扱いされてんじゃん。

 まぁ……間違ってないけど。

 

 これでとりあえず、ランクアップ組全員に二つ名が付いたわけだ。

 次はディムルになるはずだ。団員が増えたら分からんが、今のところ増やす予定も余裕もないからな。

 

 ちなみに我らが野生児ミュリネだが、これが意外とダンジョンで大人しくというか、秀郷達と連携を取れるようになってきた。

 最初に突っ込むのは変わらないけど、驚いたことにその後に一度大きく下がって、秀郷やディムルが攻撃する間を作り、2人の攻撃ルートを広げている。

 

 いつの間にと皆で首を捻ったが、答えは本拠でやってる組手だった。

 つまり俺対ハルハ達の、更に酷くなった一対多の組手のハルハ達の動きを見て覚えたらしい。

 

 なので、今はミュリネも俺達の組手に参加させている。

 速攻でポイってしてるけど。でも、速攻で体勢立て直して何度も突っ込んでくるあいつのタフネスと動きはツァオやハルハに通じるものがある。

 

 相変わらず武具問題は解決しないけど。

 

 この前ナイフを持たせてみた――速攻ですっぽ抜けてすぐ後ろにいたハルハの顔面へ飛んで行ってたけど。

 

 あの時のハルハの鬼気迫る渾身の白刃取りは、俺だけでなくスセリ様も思わず拍手していた。

 

 ということで、ミュリネにはしばらくナイフや剣などの刃付きの武器は持たせないことになった。

 

 対して梓は意外と武器の扱いが上手いことが判明した。

 やっぱり舞踊をしているからかね? まぁ、よく分からんけど、梓は現在薙刀をメイン武器にしている。

 でも、梓は雰囲気的に魔導士側になるだろうから、杖か何かの魔法発動媒体を見繕っておくべきかなとエーディルやリリッシュに相談している。

 

 でも、それも梓の魔法が発現してからの話だが。

 

 秀郷の弓は上層であれば視界に捉えられれば、ほぼ百発百中の精密さと飛距離を誇っていた。

 いやもうね……上層のモンスター相手に無双だよ。流石にインファント・ドラゴンは無理だけど、他は一方的に倒せる。

 

 ただ……矢の消耗と補充が課題だ。

 モンスターに刺した矢は出来る限り回収しているけど、再使用出来る確率は半々と言ったところ。

 補充はまず無理だからな。サポーター役に大量に背負ってもらうしかない。正重が作れるけど、材料が足りるかも分からないしな。

 原作やアニメではあまり描かれてなかったけど、意外とダンジョンでは弓矢は難しいな。奥に進めば進むほど、消耗と補給が課題になっていく。

 

 秀郷にはやっぱり弓矢以外の近接系メイン武器を鍛えてもらう必要があるな。

 それも含めて、まだまだ新人3人は先が長い。

 

 焦らないように、焦らせないように気を付けないとな。

 俺という成長率異常団長のせいで、追い詰められる可能性はあるからな。ベル程じゃないにしろ、俺も異常な速さでランクアップしてるし。

 

 さて、そんな俺だが、今日はダンジョンに行かず本拠で鍛錬。

 なのでハルハ達はもちろんのことだが、今日は新人達も休みなので全員本拠にいる。

 

 いつも通り汗だく息絶え絶えの組手を一周(巴→アワラン→ディムル→正重→ツァオ→ハルハ→全員→スセリ様→全員)して、水浴びして汗を流してから一服していた時、

 

「フロル~、やっほ~」

 

「ん? アーディ? それに……」 

 

「こんにちは、【迅雷童子】。お邪魔するわ」

 

 神アストレアと、アリーゼ、輝夜さん、ライラさんもいた。

 アリーゼ達は何回か来たことあるけど、神アストレアは初めてだな。

 

 一体何の用だ?

 

「遊びに来たよ~」

 

「あ、そう」

 

 さいですか。

 流石アーディ。多分、神アストレア達を巻き込んで連れて来たな?

 

 アーディの声が聞こえたのか、スセリ様がやってきた。

 

「なんじゃ、小娘だけでなくアストレアまで来おったのか」

 

「突然ごめんなさいね、スセリヒメ。そこで彼女にあって、お誘いされたの。私はまだお邪魔したことなかったし」

 

「別に構わんが、我が子らは鍛錬を終えたばかりじゃから、後ろの娘共は退屈やもしれんぞ?」

 

「うちの子達は別にあなたの子供ほど鍛錬好きでもないから大丈夫よ」

 

 ですよね。

 神アストレアは苦笑しながら言い、輝夜さんとライラさんが呆れていた。アリーゼとアーディはニコニコしていたが。

 

「ふむ……そうかのぅ」

 

 スセリ様は意味ありげに、輝夜さんを一瞬見てそう呟いた。

 それに輝夜さんは一瞬目を見開いて、眉を顰めた。

 

 どうやらスセリ様は輝夜さんの素性と言うか、事情を詳しく知っているみたいだ。

 

 やっぱりゴジョウノの名には意味があるのか?

 

 巴や正重は詳しくは知らなかったから俺も知らないけど、巴が知る数少ない噂では何やら朝廷の暗部を担っているらしいとのことだ。本当かどうかは知らんけど。

 

 すると、

 

「どうかの? 輝夜。せっかくじゃ。妾の愛し子と戦ってみると良い」

 

 スセリ様が俺を指差しながらとんでもないことを言い放った。

 

「……【迅雷童子】殿と?」

 

「スセリ様?」

 

「どういうつもりかしら?」

 

 神アストレアも流石に困惑している。

 これには流石にアーディもアリーゼ、ライラさんも目を丸くしている。

 

「なに、我が愛し子の腕前に興味がありそうだったのでな。極東の娘であれば、村正の刀にも興味があろう?」

 

「……」

 

 図星だったのか、輝夜さんは顔を顰めるだけで反論しない。

 まぁ、なんか前から妙に挑発的と言うか、突っかかってくる感じだったしな。

 

 っていうか、その言い方。真剣で戦うってこと?

 

「真剣でやるんですか?」

 

「ふっ……いくらゴジョウノの娘とは言え、未だLv.1。Lv.3に至ったお前であれば、殺さずに刃を交えることくらい出来よう?」

 

 ……いやまぁ、流石にディムル程ではないだろうから行けるだろうけど……。それを口にする度胸は流石にないなぁ。

 しかし、スセリ様に俺のそんな考えなどお見通しだったようで、

 

「はぁ……そこで何も言わぬのは肯定と同じじゃぞ、フロル」

 

 ……しまった。

 輝夜さんも気づいていたのか、僅かに怒気を噴き出しながら笑っていない笑みを浮かべた。

 

「ほぉ……流石は『世界記録童子(レコードホルダー)』ですなぁ。ちんたらチャンバラしてる小娘程度、お茶の子さいさいというわけですか」

 

「ありゃりゃ……」

 

 ライラさん、諦めの声出さないで。……まぁ、これは逃げれそうにないけど。

 

 でも、確かに俺もちょっと気になるし、仕方ないか。

 

 俺は小さくため息を吐いて、この後素振りする気だったのですぐ傍に置いておいた刀を手に取る。

 そこでようやく騒動に気付いたというか、輝夜さんの怒気に気付いたんだろうな。ハルハ達が顔を出した。

 

「おや……誰かと思ったら噂の正義さん達じゃないか。なんだい? 手合わせするのかい?」

 

「まぁ……ちょっとな」

 

 俺は刀を腰に差しながら空笑いする。

 というか、正義さんて。

 

 神アストレア――もうアストレア様でいいか。アストレア様は少し心配な表情でスセリ様の横に座り、更にその横にアリーゼ達も座る。アーディは巴の傍に。仲良くなったな、君ら。

 ちなみにアリーゼ達は誰も心配してない。むしろ、なんか面白がっている。

 

 さて、互いに向かい合ったものの……。

 

 ……どうしよ、やる気出ない。

 

 

「フロル、言っておくが――無様を見せたら一週間昼夜ずっと抱き枕と鍛錬じゃぞ」

 

 

 頑張りまーす!!

 

 流石にそれは恥ずか死ぬ!

 

 輝夜さんが毒気が抜かれたように呆れ顔を浮かべたが、すぐに顔を引き締めて柄を握り、居合を構える。

 俺もそれに倣って居合の構えを取る。

 

 ……それにしても、袴じゃなくて普通の着物でよく戦えるな。

 踏み込み辛そうだけど……構えは見事の一言だ。隙はほとんどない。……これ、ちょっと思ってたほど差がないかもしれん。この人……()()()()()()()()

 

 どうやら暗部に関わってたってのは嘘じゃないらしい。

 

 ん~……どうしたもんか。

 

 互いに居合の構えだから、どっちかが動かないと始まらない。

 これは……俺が動くべきか。

 

 俺は地面を蹴って、刀を抜きながら輝夜さんに斬りかかる。

 全力じゃない。反応を見たいから半分程度の速さで。

 

 輝夜さんは目を細め、鯉口を切る。

 

「――居合の太刀」

 

 抜刀しようとした瞬間、俺は歩幅を小さく、そして摺り足に変え、方向転換しながら一気にスピードを上げて輝夜さんの左側に回り込む。

 

 いくら居合が速かろうが、刀を差してある側は基本的に居合の死角。

 俺より速くない限り、絶対に刃は届かない。

 

 だから――

 

「ちぃ!!」

 

 飛んでくるのは『鞘』しかない。

 

 でも悪いな、輝夜さん。

 

 居合――抜刀術の技は、前世の漫画で腐るほど見てるんだ。

 

 だから、鞘で攻撃してくる奇策は、もう知ってる。

 

ガァン!!

 

 輝夜さんが苦し紛れに逆手で薙いだ鞘に、俺もまた逆手で抜いた鞘を叩きつける。

 

「っ!?」

 

 驚く輝夜さんの顔に向かって、俺は突きを繰り出す。もちろん全力じゃないけど。

 

「ぐっ……!!」

 

 輝夜さんは大きく仰け反りながら後ろに跳び下がるが、そう逃げると読んでいた俺はほぼ同時に駆け出して間合いを開かせない。

 

 これもまた居合の弱点。抜刀後に間合いを詰められると後手に回る。

 まぁ、これは普通に剣術で戦えばいいだけの話なんだけど、抜刀術を得手とする剣士は居合を潰されると結構リズムが崩れやすい――らしい、スセリ様曰く。

 

 俺は刀を翻して峰で斬りかかる。

 だが、なんと輝夜さんは俺の攻撃を受け止めながら、()()()()()()()

 

 マジか!?

 そんな無理矢理居合に引き戻すのか!

 

「舐めるなよ小僧」

 

 え、なんか口悪っ。

 

 俺は驚きながらも腕に力を込めて、無理矢理刀を振り抜いて輝夜さんを押し飛ばし距離を開ける。

 

 その隙に俺は鞘を腰に差して、柄を両手で握る。

 なんとなくステイタスの差は把握できた。ここからはあっちの技を見たい。

 

 互いに体勢を立て直したのを確認して、今度は小細工無しでまっすぐ突っ込む。

 

 輝夜さんはまた小さく舌打ちして、

 

「居合の太刀――」

 

 右足を前に出し半身になり、上半身を前に傾ける。

 

 来る!!

 

「『一閃』」 

  

 一瞬たりとも目を離していないはずなのに、気づいたら刀が抜かれて迫ってきていた。

 

 俺は目を見開きながら反射的に左に身体を流し、更に上半身を大きく後ろに倒して仰け反る。

 

 仰け反るとほぼ同時に刀の切っ先が顔の上を通り過ぎた。

 

「なっ……!?」

 

 俺は無理矢理上半身を起こしながら左に跳ぶ。

 刀を振り抜いた側に跳べば、斬りかかられるパターンはかなり限られるからな。

 

 追撃はないみたいだけど、しかし想像以上に速かったな……。

 でも今の……思ったより間合いが開いていた気がする。……連撃を意識してるのか? もしかして【天翔龍閃】みたいな二段構え?

 

 怖ぇな!? いきなり使う技じゃなくない!?

 

 間を開けるのはやっぱり悪手だな。

 ここは攻め続ける!

 

 一気に詰め寄って、連続で刀を振るう。

 輝夜さんは納刀する暇もなく、俺の攻撃を捌き続けている。でも、反撃する余裕はなさそう。防ぐのだけで精一杯って感じ。

 

「ぐっ……!」

 

 剣術の腕は俺より上かもしれんが、残念だったな。

 

 ステイタスの差はもちろんだけど――

 

 

 やっぱり、武器の差はデカかったようだ。

 

 

 ずっと峰で攻撃してた刀を返し、全力で刃側で輝夜さんの刀の鍔元を斬りつける。

 

パキィィン!

 

「!?」

 

 輝夜さんの刀を根元から斬り落とす。

 これで攻撃手段は――無くなってないよな。

 

「居合の太刀――『双葉』」

 

 柄を投げ捨てて、後ろ腰に差してあった二振りの小太刀を掴み、抜刀と同時に十数本の斬撃が繰り出された。

 

 俺も全力で連撃を放ち、急所に当たりそうな斬撃だけを弾きながら後ろに下がる。

 

 ふぅ……ちょっと危なかった。何発か掠ったな。

 それにしても、居合に加えて小太刀二刀流ってマジで抜刀斎の世界から来た人みたいだな。

 

「……『双葉』までも凌ぐか。ステイタスの差もあるとは言え、的確に攻撃を見極めて捌くその腕は異質を通り越して異常だな」

 

 失礼な。これは純粋にそこでニヤニヤ見てる女神様に教えてもらった技術だ。

 っていうか、年上だとしてもステイタスの差を上回りかねない技を持ってる貴女に言われたくない!

 

 ホントにステイタスの差があって、正重の刀じゃなかったら死んでたぞ!?

 

 あと! なんか喋り方完全に変わってるよ?! そっちが素か!

 

「……で、まだやるか? そっちの武器は完全に潰れたようだけど」

 

 小太刀も二振りとも刃がボロボロになっている。

 今の打ち合いだけでそこまで刃毀れするということは、やはりあまり良質な武器ではないようだ。

 

 まぁ、まだ全員Lv.1だし、巡回にも積極的に参加してるから金策もギリギリだろうからな。武器にまで金を回す余裕はないのかもしれないが。

 でも、シャクティさん達と仲がいいからヘファイストス様やゴブニュ様の派閥と繋がりくらい出来てそうだけど……。

 

「……これでも私が手を出せる中では業物だったのだが……やはり上級冒険者の武器には及ばないか」

 

「そこは正重の武器がって言って欲しいな。少なくとも俺や前衛職の武具は全部正重が拵えてくれた物だし」

 

「なるほどな……。村正の名は伊達ではないという事か」

 

「ところで――まだ何か隠してるよな?」

 

 なんか暗部に関わってたとしては、真っ当な剣術だった。

 隠してるというか修得してないだけなのか、封印してるのかは分からないけど、でもなんかまだ出し切ってない気がした。

 

 輝夜さんは眉を顰め、

 

「……出せる力は出した。それが答えだ」

 

「なるほど。まぁ、殺し合いでもなければ出せない技もあるか」

 

 奥の手はしっかりあるという事ね。

 

「で、やっぱり実家は()()()()家だったのか?」

 

「……」

 

 何も言わなかったが、眉間の皺が深くなったので多分正解だな。

 なるほど……そんな家の出身者がオラリオに来て、正義と秩序の眷族ねぇ。

 

 まぁ、暗殺一家の御曹司が殺しが嫌で家出する漫画とかあったし、ありえないことじゃないよな。あまりツッコんでもいいことはなさそうだ。

 

 でも、Lv.1でこれか。ランクアップしたら、うちの連中に負けないくらい格上殺し(ジャイアントキリング)しそうだな。

 

 とりあえず、俺はスセリ様達に顔を向ける。

 

「これくらいでいいですか?」

 

「そうだのぅ。まぁ、互いの事を理解できたようじゃし、今回は良しとしよう」

 

 ほっ……。

 

「じゃが、フロル。いくら居合を極めかけておるとはいえ、少々後手に回り過ぎだの。妾の予想では、もう少し傷を負わずに勝つはずであったのでな」

 

「……あ、はい。面目ありません」

 

「そこは明日にでも叩き直してやるとしようかの。で……」

 

 スセリ様は輝夜さんに顔を向ける。

 

「どうじゃったかの、輝夜。妾に鍛えられた愛し子は」

 

「……そうですねぇ。理解していたつもりでしたが、改めてその異質さを実感できました。麒麟児……それとも正真正銘『童子』なのか、言葉に困ってしまいますが……」

 

「くくくっ! 別に好きなように思えばよかろう。さて……フロルや」

 

「はい?」

 

「己にとって忌むべき過去、業があり、それが己の技となった時、お前はそれを秘めるか否か?」

 

「秘めませんね。敵を倒し、生き残るためにそんな物を隠す余裕は俺にはありません」

 

 考えるまでもない。

 もちろん、敵にバレたら困るのであれば話は変わるが、問題ないのであれば惜しみなく使う。

 隠して誰かが死ぬくらいなら、使って護れるだけの人を護る方がいいに決まってる。

 

 対策されるかもしれないなら、それに対してまた対策を常日頃から考えておけばいいしな。

 

 スセリ様は満足げに俺の言葉に頷き、また輝夜さんに顔を戻す。

 

「だ、そうじゃぞ?」

 

「……」

 

「お主の血がどうであれ、お主の技がどのように忌まわしき過去を元に生み出されたとしても、所詮は『力』と『技』でしかない。大事なのは、お主自身が何を為したか。重要なのはそれだけよ」

 

「……分かっております」

 

「神に嘘は通じぬぞ、愚か者。悟った者気取りをするなど百年早いわ、小娘」

 

「っ……!」

 

「アストレアはこの手の事には見守り続ける甘いところがある故、口出しはせんであろうがな。その眷族を名乗り、『正義』を為すのであれば己を偽るなど愚行そのものよ。そんな輩が我が子らと肩を並べるのを見過ごせるほど、妾は優しくない」

 

 ……随分とツッコむなぁ。

 なんか思うところがあるんだろうか? 極東出身ってだけじゃないと思うんだよな。

 

「……」

 

 輝夜さんは黙ったままだが、葛藤しているのは分かる。

 多分、輝夜さんの『核』を刺激したんだろうな。

 

「これ以上は流石に口出しは出来ぬ故、もう言わぬが……しかと考えておくことじゃな」

 

「……」

 

 輝夜さんは黙ったまま小さく頷いた。

 さて、ちょっと空気を変えた方が良さそうだな。

 

 実は、さっきからスセリ様の後ろで少し挙動不審っぽい人がいるんだよ。

 

「正重、どうかしたのか?」 

 

 全員の視線が正重に向く。

 いきなり視線が集中した正重は少し戸惑っていたが、俺達の視線はすぐに正重の顔から手元へと向く。

 

「それ……刀か?」

 

 正重が握っていたのは一振りの刀だった。

 

「む……う、む……」

 

「……もしかして、輝夜さんにか?」

 

「……うむ」

 

 正重は少し恥ずかしそうに頷いた。

 

「前に、戦い、見た時、刀が、合ってない、見えた。それが、気になっていた」

 

「だから、会えた時に渡せたらって?」

 

「うむ」

 

 ふむ……珍しいな。正重が他のファミリアの人の事に気にかけて渡せるかどうかも分からない武器を造るなんて。

 まぁ、ちょうどと言うか、俺が武器を壊してしまったしな。今回はスセリ様が無茶振りしたし。

 

 と言う事で、刀は輝夜さんにあげることに。

 今後は流石に少しはお金をもらうことになるけど。整備に関しては急ぎであればお金をもらい、余裕があれば無料でとなった。

 

 アストレア様達はその後スセリ様とお茶を少し飲んだ後に本拠を後にした。

 

 アーディ?

 アーディはまだいるよ。ドットムさんと帰るつもりらしい。

 

「で、ツァオ達には輝夜さんはどう見えたんだ?」

 

 アストレア様達が見えなくなったところで、俺は観戦してたハルハ達に輝夜さんの事を訊いてみることに。

 

「そうですなぁ……。団長殿を前にこう言うのもなんですが、正直あの歳にしてはかなり研鑽を積んでおりましたな。それに、場数も踏んでおられるようでした」

 

「うむ。身のこなしはまだ粗が目立った。しかし、剣術に関しては下級冒険者では相手にならないと思う」

 

「だねぇ。ありゃあ、下手に挑めば気付いた時には斬られてるね。他の子は分からないけど、あの娘は伸びるんじゃないかい?」

 

 結構高評価だな、やっぱり。

 

「居合ってのはフロルを見ててヤバいって思ってたけどよ。極めるとどうしたらいいか分かんなくなんな」

 

「そうですね。攻めていいのか、見でいるべきか、手の内が少しでもわかってしまうと判断できません」

 

「居合は間合いにさえ入れば、先手でも後手でも行ける技だからの。まぁ、先程のように抜刀後の対応は厳しくなるが」

 

「そこらへんはある意味槍に通じるかもな」

 

「確かに……」

 

「しかし、あれほどの手練れをゴジョウノが手放すとは……」

 

「出奔と言うか、飛び出して来たんじゃないかい? 本人はあまり実家の事を好いてないみたいだったしねぇ」

 

「まぁ、戦った感じ、巴達の言ってた噂は合ってたと思う。多分、裏家業的な生業があって、それが嫌だったんだろうな」

 

「そうでもなければ、アストレアが受け入れはせぬだろうよ。まだまだ心の内側に溜め込んでおる生娘じゃったがな」

 

「だから、あんなことを?」

 

「下手に放置しておっては周りを巻き込んで崩れ落ちそうな気配もあったでな。軽く刺激して様子を見ておきたかったんじゃよ。まぁ、今回の件でまだまともな方に落ち着くであろう」

 

 だといいですけどね。

 俺は【アストレア・ファミリア】の壊滅理由を知らないんだよなぁ。闇派閥が関わっていそうなのは、リュー・リオンの話からなんとなく分かるけど。きっかけまでは知らない。

 

 まぁ、俺達だって本編にいないから今後どうなるかまだ分からないんだ。

 

 他人の事より、まずはやっぱり自分達の生き残る確率を少しでも上げていくことに集中しないとな。

 

 頑張ろ。

 

 




輝夜さんの本性を知るのは、もう少し先になりますw
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